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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米「2+2」共同記者会見(概要)

[場所] 
[年月日] 2013年10月3日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1 冒頭発言

(岸田外務大臣)

 本日、日米の外務・防衛の4閣僚による「2+2」会合を歴史上初めて日本で開催した。ケリー長官、ヘーゲル長官が忙しいスケジュールの中で来日し、そして日米同盟へのコミットメントを示されたことに心から感謝したい。

 会合では、厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境の今後の10年間をにらみ、非常に突っ込んだ意見を交わした。その上で、日米同盟がこの日本の防衛や地域の平和と安定のために何をするべきなのかについて、具体的な議論を行った。

 我々の出した答えは、共同発表において、戦略的な構想として示した。具体的には、この変化する安全保障環境に効果的に対応できるよう、価値観を共有する日米両国がより力強い同盟関係を実現し、地域及び国際社会に対して大きな責任を果たしていくということ、そしてその実現のため、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し作業を正式に開始し、15の分野で安保・防衛協力を拡大し、そして在日米軍再編のため協力を加速することで一致した。

 安全保障環境については、日本と地域を取り巻く安全保障環境、北朝鮮による核・ミサイル計画の着実な進展、海洋での力による現状変更の試み、サイバーや宇宙空間における破壊活動等の様々な課題に直面し、厳しさを増しているということを確認した。

 本日はこの地域情勢について、日米の認識が明確に一致しているということを確認し、我々は力による現状変更の試みに断固として反対し、特に法の支配が地域、国際社会全体にとって死活的に重要である点においても一致した。この関連で、米側から、尖閣諸島が日本の施政下にあり、日本の施政を害しようとするいかなる一方的行動にも反対するという、日米安保条約に対する力強い立場が改めて表明されたことを評価したい。また、私から「積極的平和主義」に基づく安倍内閣の安保政策について説明し、米側から歓迎の意が示された。

 日米安保・防衛協力については、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)について見直し作業を正式に開始し、2014年末までに作業を終えることで合意した。安保・防衛協力については、特にサイバーや宇宙についての日米協力を関係省庁横断的に具体的な形で進めることで一致した。

 在日米軍再編については、まず普天間飛行場の固定化はあってはならず、これを何としても回避しなければならないとの決意を再確認した。そのために辺野古への移設に向けて、強い意志で取り組んでいくことで一致した。

 また、先ほどグアム協定の改正議定書に署名した。我々は、抑止力の強化、そして、沖縄の負担軽減のために、この議定書を早期に締結し、在沖縄海兵隊の国外への移転を2020年代前半に開始すること、そして、嘉手納以南の土地の返還を着実に実施していくことで一致した。

 加えて、沖縄の方々の声に応え、返還予定地の立入り調査のための新たな枠組みについて、11月末までに日米間で実質的な了解を達成するべく作業をしていくことでも一致した。負担軽減のための取組は、これからも精力的に進めていきたいと考えている。

 今回の歴史的会合を通じて、より力強い日米同盟を実現するための構想を明快に打ち出すことができた。ケリー長官、そしてヘーゲル長官の指導力に心から感謝を申し上げたい。

(ケリー国務長官)

 岸田大臣、小野寺大臣、私の友人であり同僚であるヘーゲル長官と共にここにいることを光栄に思う。

 国務・国防両長官がそれぞれのカウンターパートと共に初めて日本に集まった今般の会合は歴史的なもの。オバマ大統領と米国国民を代表して、ヘーゲル長官と私は、本当に意欲的で有能なパートナーがこの地域にいることに感謝している。

 個人的にも、日本を再び訪問できてうれしく思う。祖父のいとこが駐日米国大使をかつて務めていた。また、現在、私のいとこが「トモダチ・プロジェクト」の仕事をしており、その夫が海軍のパイロットとして厚木で働き、日本の防衛に貢献している。このような個人的な絆は日本を訪れるたびに強化されている。本日は、非常に重要で、建設的な対話を行い、日米の防衛関係や同盟関係について議論した。

 日米同盟は、間違いなく、アジア太平洋地域全体の平和と安定と繁栄の礎である。この地域における我々の関係の基軸である。60年以上、在日米軍は北東アジアの政治的、経済的な発展を守るものとして機能してきた。日米は、パートナーとして、攻撃を抑止し、自然災害に対処し、テロや拡散と闘ってきた。また、この地域のシーレーンを守ってきた。さらにアジア全体の変貌につながっている顕著な経済成長の促進に貢献した。

 確かなことは、我々のパートナーシップが、今現在も強く、深く、強靱なものであり、共通の利益と価値に基づいている。我々は試練にも立ち向かってきた。日米関係はかつてないほど強化されている。その一方で、21世紀の新たな課題に対して引き続き適応していく。これが本日の議論の焦点である。

 本日、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を見直すことで合意した。今後何年もの間、我々の同盟を導く枠組みを形づくるために協力していくこととなる。ガイドラインの見直しは、1997年以降で初めてである。サイバー空間やテロ対策における新たな課題を始め、現在生じている変化を踏まえると、この見直しを行うこと、今後15年から20年間のロードマップを策定することは、非常に重要である。本日の議論によって、これらが打ち出された。

 ガイドラインは、前回は1997年に見直しが行われているが、これまでと大きく異なる性質の脅威に直面している。また、国際社会の平和と安定を実現する上での日本の役割は拡大しており、イラク等における多国籍軍の活動に自衛隊が派遣された。また、南スーダンとハイチでのPKOへの派遣も行われた。アデン湾で海賊対策、インド洋における「不朽の自由作戦」にも参加した。

 オバマ大統領は米国の利益と投資をアジアにリバランスするという戦略的で真剣な決意を示している。ヘーゲル長官と共に、オバマ政権の第一期目の取組を更に進展させていく決意である。

 太平洋の国として、米国は、太平洋におけるパートナーシップが米国の安全保障と繁栄にとって非常に重要と理解している。軍事上の協力関係と外交的な連携の双方を通じて、我々の深い協力関係を近代化するために来日した。その目的は、常に変化する21世紀の脅威を防ぎ、よりよく対処するためである。

 本日は、同盟の柔軟性と抑止力を高める方法について議論した。同時に、グアム協定を含め、米軍のプレゼンスをより持続可能なもとする状況を創り出した。

 米国は、米軍再編、特に普天間飛行場代替施設に関する再編の実施に対する安倍総理の決意を歓迎する。我々は、この分野で引き続き進展を実現できるという点に極めて自信を有している。これは日米両方の安全保障につながるものである。

 本日の共同発表は、これまでに生じた様々な変化を踏まえ、16年前のガイドラインを更新するための実質的なロードマップとなっている。これは、北朝鮮や、海洋安全保障に対する脅威といった、拡大している脅威に対処するためである。また、宇宙やサイバー空間、ミサイル防衛における大きな変化に適応するものである。東日本大震災のような自然災害に迅速に対処できるよう、日米間で定期的に訓練をしている。

 日本が変わりつつあると同時にとその周辺も変わりつつある。過去52年間の日米同盟のことを誇りに思いながら振り返るのみならず、今後50年間もまた同じように成功したものとなるよう、アジア太平洋地域での進展に向けた道のりを決定するために、我々は将来も見据えている。

(小野寺防衛大臣)

 シリア問題で大変多忙の中、こうして両長官が訪日されたことに感謝する。ヘーゲル長官とは毎月のようにお会いしているが、改めて、明日お誕生日だということで、お祝い申し上げたい。

 本日の会談の中で、特に東アジアの安全保障環境について意見交換した。我々は、北朝鮮の核・ミサイルに対する懸念について、また、東シナ海、中国との尖閣諸島をめぐる緊張関係等について説明し、日本としての対応について評価を得ている。

 その中で、今日は特に、日米ガイドラインの見直しについても議論がなされ、見直し作業の正式合意ということになった。防衛省としてはこの問題についてすぐに対応していきたいと考えている。

 個別の協力事案では、特に北朝鮮のミサイル対応として重要なTPY-2レーダーの追加配備先としての京都府京丹後市経ヶ岬分屯基地についての選定、あるいは準備作業について説明し、米側から評価を得た。

 また、本日午前中には、私とヘーゲル国防長官との間で、サイバー防衛に関する作業部会の設置についての合意がなされたことについての紹介もした。今後、サイバー、あるいは、宇宙分野で協力していくことが確認された。

 米軍再編の問題については、普天間飛行場の移設に関わる17年越しの努力を実現していくために、日米4閣僚で強い意志を再確認した。また、沖縄の負担軽減について、目に見える成果につながるための具体的な施策についても議論した。まず、本年4月の統合計画に従った土地の返還については、予定よりも早く進展してきているが、引き続き1日も早い土地の返還が実現するように全力で取り組むことを確認した。次にオスプレイについては、抑止力を維持しつつ、様々な機会を活用して沖縄県外での訓練移転を増加させることにより、沖縄の負担軽減をしていくことで一致した。また、オスプレイの国内での運用については、昨年9月の日米合同委員会合意を遵守すべく米国は最大限努力をしていると認識しているが、今般2個飛行隊の態勢が整ったこともあり、引き続きこの合意が遵守され、安全に最大限配慮されるよう日米両国は協力していくということが共通認識だと考えている。ホテル・ホテル訓練空域の使用制限の一部解除については、11月末までに日米間で原則合意をすることとし、その他の可能な措置についても協議を継続することで一致した。これらの成果も踏まえ、今後とも在日米軍再編を早期かつ着実に実施していくため、様々な努力を積み重ねていきたい。

 全般として、この東アジア情勢の安全保障環境が安定するということ、ひいては、これがアジアの経済成長につながり、日米両国とも経済的にもプラスになる、その

ことで認識が一致した。いずれにしても、今後とも日米関係の強化に努め、そして日米同盟が東アジアの安全保障において重要な公共財であるということを再認識した。

(ヘーゲル国防長官)

 本日、素晴らしい同僚と一緒に、歴史的な会合に参加できたことを大変光栄に思う。

この会合自体がこれまでにないような日米同盟の強さと永続的な重要性の証である。

 日米は、国際的な平和、安全、繁栄を支えていく上で必要不可欠な役割を果たしている。二国間の防衛協力については、日本の防衛を含めて、これは我々の関係全体にとっても、オバマ政権のアジアへのリバランスにとっても、極めて重要な要素である。

 本日、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直しを発表したことで、我々は大きく前に足を踏み出した。これは1997年以来の見直しとなる。本日の決定を受けて、日米両政府は緊密に協力して、平時と全ての有事における役割と責任について新たなものにしていくことになる。我々の目的は、よりバランスのとれた、実効性のある同盟、つまり、日米双方が十全なパートナーとして、他国とも協力しながら、平和と安定のために取り組むことである。

 この一年間で見直しが行われていく中で、宇宙とサイバーを含む、新たな安全保障上の課題に対応するために必要な技術と能力を特定する。特にサイバーは、日米同盟の新たな焦点となっている。これが特に重要になっているのは、サイバー防衛政策作業部会の実施要領に署名されたということに表れている。

 また、日米、地域、更には世界に対する北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に照らし、ミサイル防衛も重要である。本日、2基目のTPY-2レーダーを京都府に配備する計画を発表した。この追加的なレーダーは、米国本土と日本を北朝鮮の弾道ミサイルから守る意味で重要である。21世紀の同盟の能力がこのように向上している。

 本日の会合では、米軍を地理的に分散し、運用面で抗たん性があり、政治的に持続可能なものにするため、在日米軍再編への決意も再確認された。また、グアム協定は、再編計画の進展に関する重要な指標になっている。米国と日本の部隊が一緒に訓練できるようにするなど、地域の戦略拠点としてグアムを整備していく。

 さらに、我々は最も高度な能力をこの地域に配備する。MV-22オスプレイの2個飛行隊を海兵隊が成功裏に導入した。また、オスプレイについては、自衛隊との共同訓練を増やしていく。オスプレイは、半分以上の飛行運用は沖縄県外、すなわち日本本土やこの地域内で行われている。

 本日、P-8哨戒機を初めて米国国外に配備することを発表した。P-8は先進的な能力を有しており、私は昨夏にそれを確認した。これによって海洋の状況認識や情報収集・警戒監視・偵察能力が高められる。

 本日は、東シナ海の重要な課題についても議論した。尖閣諸島に関する米国の長年の政策の原則について改めて述べた。尖閣諸島は、日本の施政下にあり、それゆえ、これは米国の日本に対する条約上の義務の対象になっているということを再確認した。我々は、米国は、日本の施政を害しようとするいかなる一方的、威圧的な行動に対して強く反対する。この件については、引き続き、日本と特に緊密に協議する。

 日米関係は、アジア太平洋地域の平和と安定と繁栄を半世紀以上支えてきた。本日、この同盟が21世紀もそうあり続けるようにした。

 より実効性のある日米関係と日米のパートナーシップを形づくる上で、岸田大臣、小野寺大臣、日本の国民の皆様に対し、温かいおもてなし、強い友情関係、皆様の努力に対して感謝申し上げる。また、オバマ大統領に代わり、米国の部隊に対しても感謝を述べたい。

2 質疑応答

(質問)

 今回、日米両政府は16年ぶりとなる日米防衛協力のための指針の見直しで合意した。その背景には、核・ミサイル計画を放棄しない北朝鮮への懸念に加えて、中国が軍事力の増強を続けているという戦略的な環境の変化が背景にある。そこで、ケリー長官に質問する。アメリカは今回のガイドラインの見直しを踏まえて、日米で連携し台頭する中国の軍事的脅威にどのように対処しようとしているのか。尖閣諸島における中国の公船の最近の行動をどのように認識されているのか。

 続いて岸田外務大臣に質問する。今回のガイドラインの見直しや安倍政権が取り組もうとしている集団的自衛権の行使の容認など、日本の防衛政策の転換は周辺国からの警戒感を呼んでいる。日本として、こうした周辺国の懸念にどのように対応していくのか。

(答)

(岸田外務大臣)

 我が国は国際情勢の変化を踏まえて、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、同盟国たる米国を始め、関係諸国としっかり連携しながら、この地域及び国際社会の平和と安定のために、これまで以上に積極的に貢献していきたいと考えている。

 その際に、我が国の平和国家としての根幹、これは不変である。また、安全保障の法的基盤に関する検討については、あくまでも国際法上、各国が当然行い得る、この範囲内で検討を行うものであるということ、これもしっかり申し上げなければならない。

 既にこういった考え方については、安倍総理そして私からも国際会議、あるいはバイ会談等、様々な機会を捉えてこの説明を始めている。今回の「2+2」でも、こうした我が国の考え方について、米側に改めて説明した。そして、共同発表にもあるように、米側は日本の安全保障分野における様々な取組を歓迎し、そして我が国と緊密に連携していくこと、これを明らかにしている。周辺国に対しては、このような説明等をしっかりと透明性を持って、そして丁寧に行っていく、こうしたことを心掛けていきたい。今申し上げた点を是非、しっかりと説明し、理解を得て、環境を整備していきたい。

(ケリー長官)

 日米は明確な価値と利益の下に協力してきた、そして、それらは変わっていない、というのが、日米同盟の強みである。地域の他国はそのことをよく理解していると思う。

 中国とその利益についての質問だが、我々は、中国と大きな問題について協力できるような関係を構築しようとしている。意見の相違はある。我々は、その点を認識している。先般、カリフォルニアで米中首脳会談が行われ、先週には、私は王毅外交部長と会談した。意見の相違について、お互いに尊重し合い、透明性をもった形で議論をしたが、それと同時に、協力し得る分野を見出そうとしている。

 米中首脳は「新型の大国関係」と定義しているが、そのように称したとしても、我々は、我々にとっての利益や「越えてはならない線」というのも明確にしている。

 例えば、米国は、尖閣諸島について、長年の一貫した政策を明確にしてきた。すなわち、尖閣諸島の主権については立場をとらないが、それらは日本の施政の下にあると認識している。我々は、当事者に対して、その施政に挑戦するいかなる一方的な行動もとらないよう求めており、対話と外交によって解決すべきだと求めてきた。米

 国は、中国と密接に協力し、法の支配を見いだす、あるいは、対話を見いだすことによって、南シナ海、行動規範(COC)、貿易、その他の問題について中国と協力している。日本も同様である。我々は皆、法の支配や外交によって我々の選択や行動が支配されるよう、共通の基礎を見つけたいと考えている。我々はこれを継続する。中国の台頭については、中国が国際的な基準や価値に従って関与し、建設的な形で共通の問題に取り組むのであれば、歓迎すべきである。

 北朝鮮は、あらゆる法の支配やその他の国際的な規範の外で行動をとってきた。北朝鮮は、まずは朝鮮半島の非核化に関するものから始まる限りにおいて、米国は北朝鮮と交渉する用意がある、という点を理解する必要がある。

 六者会合の参加者は、非常に明快にしているが、北朝鮮が非核化すると決心し、また、非核化のための正当な交渉に参加することを決心する場合に限り、そのような協議に関与し、北朝鮮と平和的な関係を築き、北朝鮮における政権の変更を意図せず、不可侵協定を結ぶ用意がある。

 これまでの交渉パターンは繰り返さない、ということをこれまでに何度も明確にしている。これまでは、少しの譲歩と合意が実現し、その後、その合意が破られ、その間に核計画がそのまま進行するというのが過去のパターンである。我々は決してそのようなことを繰り返さない。

 私としては中国は重要なパートナーであると考えている。過去数か月、中国は、北朝鮮に対して非核化の重要性を理解させるという重要な決断をした。日本、米国、中国、ロシア、韓国は、北朝鮮側が非核化に対してコミットしなくてはならないという点について団結している。これが平和への道である。これが我々のコミットメントである。

(注)この後、米国記者から米国の対イラン政策に関する質疑とそれに対する応答が行われた。

(了)