[文書名] より繁栄し安定した世界のための日米協力に関するファクトシート
日米両国は,幅広い共通のグローバルな優先課題を包含する戦略的パートナーシップを構築してきた。今日,日米パートナーシップは,両国が世界中の課題に対処すべく協力する中,両国に共通する利益,能力及び価値を適切に反映している。日米両国は,長年のパートナーシップを更なる高みへ導くために以下のとおり取り組むことを再確認する。
二国間の経済的及び人的つながりの拡大
日米両国は世界最大の経済大国の二つであり,世界の国内総生産(GDP)の30%近くを占めており,両国の経済は貿易と投資を通じて深く絡み合っている。この深い経済統合は,両国にとって雇用創出,賃金上昇,イノベーション及び更なる繁栄のための卓越した推進力となってきている。こうしたきずなを更に発展させるため,日米両国は以下のとおり取り組む。
・日米両国の経済的なきずなを更に深化。2014年の日米間の双方向の物とサービスの貿易額は2,790億ドルであった。米国の日本に対する直接投資残高は1,230億ドルであり,日本は米国に対する直接投資残高が二番目に多い国であり,残高は3,500億ドルに近い。
・両国間の強固で成長している二国間投資関係の重要性に留意しつつ,セレクトUSAとInvest Japanとの間の協力及び協働を拡大。
・米国のグローバル・エントリー・プログラム(GEP)への日本の参加及び日本の信頼できる渡航者プログラム(TTP)への米国の参加により迅速な旅行を促進。
・両国経済の将来の成長のための投資としての高速鉄道開発の重要性を認識しつつ,高速鉄道プロジェクトを含む日米それぞれにおけるインフラ開発についての協力を拡大。
・学生,研究者及び議員間交流の増加に向けた取組を含む,人的なつながりの強化を継続。「未来へのカケハシ・イニシアティブ」及び「TOMODACHIイニシアティブ」並びに大学間パートナーシップ促進のための「チーム・アップ」キャンペーン及び国際交流基金によるプログラムを促した日米文化教育交流会議の継続的な取組を歓迎。
の未来のための科学,技術及びイノベーションの活用
日米両国は,共に,以下の取組を行うため,両国の技術及び資源を活かしている。
科学,技術及びイノベーション
・2014年に延長された日米科学技術協力協定に基づき,学術機関,政府系研究開発機関及び産業界と緊密に協力し,日米科学技術協力合同高級委員会を通じて,生物医学研究,ロボット工学,材料研究,計算機・情報科学及び工学技術等の重要な研究課題における両国の協力を拡大。
・新しい技術を活用し,イノベーションを進めることで,高齢化社会の課題に対してよりよく対処するための方法を探求するために協働を継続。
宇宙
・責任ある,平和的で,安全な宇宙利用の確保へのコミットメントを再確認。
・次回会合が年内に東京で開催される予定の政府が一体となって取り組む宇宙に関する包括的日米対話を通じるなどして,広範で包摂的かつ戦略的な視点から宇宙に関する協力を強化。
・国際宇宙ステーションの継続運用の重要性を強調し,次回の国際宇宙探査フォーラムに向けた緊密な協力を確保。
・グローバルな環境及び気候に関する課題に対処するため,気象学及び地球科学を含む宇宙科学及び地球観測の分野における協力を増進。
・宇宙航空研究開発機構(JAXA)とアメリカ合衆国航空宇宙局(NASA)との共同のグローバルな降水観測計画並びに炭素観測衛星2号,温室効果ガス観測技術衛星1号及び2号に関する計画についての取極を通じたグローバルな炭素量測定に関する継続した協力を認識。
・グローバルな気象予測のために必要なデータの利用に空白が生じることを回避するため,地球環境変動観測ミッションの後継ミッションにおいて協力。
・宇宙からの測位,航法及びタイミング,強化された宇宙状況監視,海洋監視のための宇宙の利用,宇宙技術の研究開発及びミッション機材の相乗り(ホステッド・ペイロード)の利用に焦点を置きつつ,重要な宇宙システムの抗たん性及び相互運用可能性を強化。
・宇宙における責任ある行動及び宇宙の平和的利用を促進するため,宇宙活動に関する国際行動規範のような,透明性及び信頼醸成のための措置を設けるための国際的努力を支持。
サイバー及びインターネットエコノミー
・サイバー問題及びインターネットエコノミーに関する両国の強固な協力を強化及び拡大。
・開かれた,相互運用が可能な,安全で信頼できるサイバー空間,情報の自由な流通を確かなものとするためのインターネット・ガバナンスの複数利害関係者モデル及びフリーダム・オンライン連合により概要が示されたインターネット・フリーダム原則へのコミットメントを再確認。
・政府一体となった日米サイバー対話及びインターネットエコノミーに関する日米政策協力対話の次回会合を本年中に開催。国際電気通信連合(ITU)や国連総会等の関連の国際フォーラムに先立ち緊密に調整。
・知的財産,企業秘密又は国有企業若しくは商業部門に競争上の優位をもたらすことを意図したビジネスに関するその他の秘匿情報の,国家の支援を受けたサイバーを利用した窃盗を含む,サイバー事案及び脅威に関する情報共有を促進。
・2013年の国連情報セキュリティ政府専門家会合の提言に対するコミットメントを再確認。
・国家は,平時におけるサイバー空間での国家の行動について追加的で自発的な規範は既存の国際法と両立すべきであることを認識し,これらの規範を守るべきであることを確認。特に,日米両国は,国家が故意に重要なインフラに損害を与え,又は公衆に対してサービスを提供するインフラの活用を阻害するオンライン活動を実施し,又は,そうと知りながら当該オンライン活動を支援すべきでないとの見解を共有。日米両国は,各国の間で幅広く支持されることがサイバー空間の国際的な安定に貢献するであろうことに留意し,平時における具体的なサイバー規範を特定するために継続して議論することを約束。
・2020年オリンピック・パラリンピックの準備に焦点を当てた重要なインフラの保護及びミッション保証に係る政府一体となった協力を強化。
・国立標準技術研究所(NIST)の重要インフラのサイバー・セキュリティ改善枠組みに含まれているような原則の促進を通じた重要なインフラのグローバルな強靱性の拡大を追求。
・サイバー空間における脅威及び脆弱性に関する情報及びサイバー・ミッションのための防衛部隊の編成,訓練及び装備におけるベスト・プラクティスを共有。
エネルギー
・原子力は温室効果ガスの排出削減に貢献する重要なベースロード電源であるとの共通認識に基づき,民生用原子力に係る研究開発,核セキュリティ,廃炉及び環境管理,緊急事態管理,原子力安全及び規制等の分野を含む民生用原子力協力を,日米二国間委員会を通じて強化。福島第一原子力発電所及びその周辺地域の廃炉・除染活動に貢献してきた米企業及び米エネルギー省(DOE)の国立研究所による専門家ワークショップ,技術交流及び関与を継続。
・日米エネルギー戦略対話及び日米エネルギー政策対話を含む,戦略的意義及び技術面での協調に関する二国間での議論を通じ,エネルギーに関する対話を促進。
・液化天然ガス(LNG)のグローバルな追加的供給が日本及びその他の戦略的パートナーに資することから,将来の米国からのLNG輸出の見通しを歓迎。
・2014年の核セキュリティ・サミット(NSS)を受け,また,2016年に開催予定の次回NSSの成功に向けて,様々なイニシアティブに関して共同の取組を継続。特に,2016年に日本の高速炉臨界実験装置から全ての高濃縮ウラン燃料及びプルトニウム燃料を撤去するために協働。
・原子力損害の補完的な補償に関する条約が4月15日に発効したことを歓迎し,他国の参加を奨励するため協働。
・エネルギー及び関連分野の研究開発における協力に係る実施取極や二酸化炭素回収・貯留(CCS)分野での協力に関する協力覚書,沖縄ハワイ間のクリーン・省エネルギー開発と展開に関するパートナーシップの延長に係る署名によって,また,クリーンエネルギー大臣会合やアジア太平洋経済協力(APEC)における協働によって,低炭素社会構築のためのクリーンエネルギー技術分野における二国間及び多国間の協力を強化。
・メタンハイドレートの調査に関する日米の科学協力を継続。
地域及びグローバルな安定を促進するための協力
日米両国は,安全で安定した環境が,両国が共に行う全ての重要な取組を可能とすることを認識し,以下の分野で取り組む。
国連平和維持活動(PKO)
・米国のアフリカ平和維持部隊迅速対応パートナーシップ並びに国連及び日本によるアフリカ施設能力早期展開支援プロジェクト等を通じた平和維持能力構築に係る両国の協力を拡大。
海洋安全保障
・航行及び上空飛行の自由並びに海洋紛争の平和的解決を含む国際法の尊重を促進。
・アジア太平洋地域における海上保安及び海洋安全保障のための能力構築支援を調整。
・アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)を通じた海賊行為及び船舶に対する武装強盗への地域的協力を強化。
テロ・暴力的過激主義対策
・テロリストの活動及び暴力的過激主義に対して包括的に対処。
・暴力的過激主義対策に関する閣僚級会合(CVEサミット)の主催並びにコミュニティへの働きかけ及び強靱性に関するグローバル基金(GCERF)の設立といった米国のイニシアティブを支持。
・中東及びアフリカ地域における国境管理への能力強化支援を通じたテロ対策強化,中東における安定及び繁栄に向けた外交強化,所得格差の軽減及び若者の雇用と教育の促進を通じた過激主義を生み出さない社会の構築に向けた支援といった日本の取組を支持。
持続可能な開発を世界中で促進するための協働
日米両国は,持続可能な開発,繁栄及び平等をグローバルに推進するために,以下の共同の取組を行う。
開発協力
・第3回開発資金国際会議の成功を確保するため,両国の開発パートナーとの相互の協力・調整を強化。
・ミレニアム開発目標のモメンタムを活かし,極度の貧困の撲滅及び持続可能なグローバルな開発の促進のための強力な手段として機能する,野心的なポスト2015年開発アジェンダに関する国際的な合意を追求。
・食料安全保障の改善,保健と教育の支援,電気へのアクセスの増加及びアフリカ開発会議(TICAD)の目的と成果を促進するために,アフリカを含む,グローバルな開発における協力を促進する。
・ミャンマー,デンマーク及び国際労働機関(ILO)と共に,労働の権利に関連する環境改善のため2014年11月に開始した「ミャンマーにおける基本的な労働の権利と労働慣行の促進イニシアティブ」という新たなパートナーシップを通じて,ミャンマーの改革の取組を支援するため協働を継続。
・支援総額のうちより多くの額を,後発開発途上国,低所得国,小島嶼開発途上国(SIDS),陸地に囲まれた開発途上国,脆弱で紛争の影響を受けた国を含む,支援の必要性が最も高く,公的財源を国内調達する能力が最も低い国に対して割り当てることの重要性を強調。
・第3回国連防災世界会議の成果及び日本の内閣府と米国土安全保障省連邦緊急事態庁との間で2014年12月に署名された協力覚書を踏まえ,東南アジア諸国連合(ASEAN)の防災分野における能力構築のための協力を含め,防災分野における協力を更に推進。
環境及び気候変動
・パリにおける国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)における気候変動合意の成功に向けて,二国間及び多国間で協力。
・2度目標を念頭に,米国が3月31日に発表した2025年には温室効果ガスの排出量を26〜28%削減するとの2020年以降の削減目標に留意し,日本ができる限り早期に,かつCOP21に十分先立ち,野心的な目標を提出する意思を持っていることを確認。日米両国は,低炭素経済への移行を加速化させていく必要性を認識。
・緑の気候基金(GCF)といった適切な措置により,気候変動に脆弱な国々の支援において協力。
・ハイドロフルオロカーボン(HFC)削減のためのモントリオール議定書改正の採択を支持。
・本年,違法・無報告・無規制(IUU)な漁業の撲滅のための共同の取組を通じたものを含め,海洋漁業資源の保存及び持続可能な利用並びにそれによる世界的な食料安全保障に係る協力に関する声明を発表。
・環太平洋パートナーシップ(TPP)協定において海洋生物資源に関する強固な規定を確保するために協働。
・地球環境ファシリティ(GEF)と協働した協力の可能性を追求することで水銀に関する水俣条約の目的に貢献するために取り組む。
・大気質の水準の改善や認定のため,地元政府との間で可能な協力を構想しながら,アジア太平洋地域における大気汚染の緩和のために取り組む。
・パートナー国が環境教育プログラムを形成し実施できるよう支援する上で協力。
・この環境分野での協力を前進させるため,米環境保護庁長官が日本の環境大臣と会談するために予定している本年後半の東京訪問を十分に活用。
女性・女児のエンパワーメント
・エチオピアにおけるビジネス開発プログラムや,米国のアフリカ女性起業家プログラム(AWEP)及び日本のビジネス・ウーマン起業家プログラム(BWEP)等の活動を通じたビジネス間のネットワーク形成事業といった活動により,東南アジア及びアフリカの女性の能力強化において協力。
・「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!)」と平等な未来パートナーシップ(EFP)と間の協力を歓迎。
・PROMOTEプログラムにおけるアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)と国際協力機構(JICA)との間の協力を通じたものを含め,アフガニスタンの女性及び女児に対する研修及びエンパワーメントを支援。
・コミュニティに基づいた日本の「みんなの学校」(School for All)概念,米国の「女子に教育を」(Let Girls Learn)イニシアティブ,ピースコー(Peace Corps)及び日本の青年海外協力隊との間の協力関係の更新,東南アジア等において日米それぞれの二国間協力プログラムに対し更に焦点を当て資源を割り当てること,NGOの活動への支援等を通じて,国際的に女児の教育を支援。
国際保健
・世界エイズ・結核・マラリア対策基金を通じたものを含む感染症対策及び母子保健の推進により国際保健分野において協力。
・西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行を完全に終結させ,被害を被った国々における持続可能な保健システムを再建し,アジア太平洋地域における保健システム強化のためエボラ危機から学んだ教訓を得るために協力を継続。
・世界健康安全保障アジェンダ(GHSA)を前進させるため,米国は30か国と協力し,日本はパートナー国が感染症の脅威を予防し,発見し,迅速に対応できるよう,自らがコミットしたGHSAの目標及びアクション・パッケージを達成し,世界保健機関(WHO)の国際保健規則の完全な実施に向けて前進させるため,3〜5か国とパートナーとなることを前向きに検討。日米両国は,共に,又はパートナー国と共に,パートナー国を決めるべく,これらの共通の目標に向けて世界健康安全保障における能力構築を同調させるために協力。
日米両国のパートナーシップは,両国の国民及び世界に対し,平和と繁栄,健康と環境保護及び先進技術をもたらす。日米両国のこれまでになく緊密なつながりに即して,こうした取組は深化し拡大し続けるであろう。