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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表

[場所] 
[年月日] 2017年8月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

I.概観

 日米同盟(以下「同盟」という。)は,アジア太平洋地域の平和,繁栄及び自由の礎である。また,このダイナミックなパートナーシップは,自由,民主主義,平和,人権,自由かつ公正な市場及び法の支配を含む,両国が共有する価値を促進する上で,一層重要になっている。閣僚は,厳しい安全保障環境の中で,ルールに基づく国際秩序を堅持していく決意を新たにした。

 本日,日米安全保障協議委員会(以下「SCC」という。)は,2017年2月10日の両国首脳の共同声明に基づき,地域の平和及び安全に対する挑戦である現在の及び新たに発生する脅威に対処するに当たって同盟が進むべき道筋を示した。SCCは,2015年の「日米防衛協力のための指針」を実施すること及び同盟を強化する更なる方策を追求することに対するコミットメントを再確認した。閣僚は,米国の核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じた,日本の安全に対する同盟のコミットメントを再確認した。

II.地域の戦略環境

 閣僚は,北朝鮮による度重なる挑発並びに核及び弾道ミサイル能力の開発を最も強い表現で非難した。これらは,新たな段階に入っており,地域及び国際の平和と安定に対する増大する脅威となっている。閣僚は,これらの脅威を抑止し,対処するため,同盟の能力を強化することにコミットした。閣僚はまた,北朝鮮に対し,核及び弾道ミサイル計画を終了し,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な朝鮮半島の非核化を実現するための具体的な行動を北朝鮮にとらせるべく,他国と協力して,北朝鮮に対する圧力をかけ続けることで一致した。閣僚は,国際社会に対し,新たに採択された決議第2371号を含む国際連合安全保障理事会決議を包括的かつ完全に履行するよう求めた。閣僚は,中国に対し,北朝鮮に一連の行動を改めさせるよう断固とした措置をとることを強く促した。閣僚は,北朝鮮に対し,組織的な人権侵害を止めるとともに,日本の拉致被害者及び米国市民を含む北朝鮮に拘束されている全ての外国人を即時に解放するよう求めた。

 閣僚は,東シナ海における安全保障環境に関し,継続的な懸念を表明した。閣僚はまた,2016年8月初旬の状況を想起した。閣僚は,東シナ海の平和と安定を確保するために協働することの重要性を再確認するとともに,日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されること,また,日米両国は,同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対することを再確認した。

 閣僚は,南シナ海における状況について深刻な懸念を表明し,埋立て及び係争ある地形の軍事化を含め,現状を変更し緊張を高める,関係当事者による威圧的な一方的行動への反対を再確認した。閣僚は,仲裁を含む法的及び外交的プロセスの完全な尊重を通じた海洋紛争の平和的な解決,並びに,航行及び上空飛行の自由その他の適法な海洋の利用の尊重を含め,海洋法に関する国際連合条約に反映されている海洋に関する国際法の遵守の重要性を改めて表明した。この関連で,閣僚は,2016年7月12日付けの仲裁裁判所の判断を想起した。閣僚は,南シナ海における行動規範(COC)の枠組みに関する承認を認識し,有意義で実効的で法的拘束力がある行動規範の妥結を期待する。閣僚は,航行の自由を支える各々の活動,二国間及び多数国間の訓練及び演習並びに調整された能力構築支援を通じたものを含め,南シナ海に対する継続的な関与の意義を強調した。

III.安全保障及び防衛協力の強化

(1)同盟としての対応

 閣僚は,厳しさを増す地域の安全保障環境において,あらゆる事態において同盟としての切れ目のない対応を確保するために,役割・任務・能力の見直しを通じたものも含め,日米同盟を更に強化する具体的な方策及び行動を立案するとの共通の意図を確認した。この目的のため,日本は,中期防衛力整備計画の次期計画期間を見据え,同盟における日本の役割を拡大し,防衛能力を強化させる意図を有する。米国は,最新鋭の能力を日本に展開することに引き続きコミットする。閣僚は,この点に関し既に進めている作業を加速させるため,事務当局に次の指針を示した。

・2015年の「日米防衛協力のための指針」の実施を加速し,日本の平和安全法制の下での更なる協力の形態を追求すること

・情報収集,警戒監視及び偵察,訓練及び演習,研究開発,能力構築並びに施設の共同使用等の様々な分野における新たな,かつ,拡大した行動を探求すること

(2)2015年の「日米防衛協力のための指針」の実施

 閣僚は,2015年の「日米防衛協力のための指針」を引き続き実施していくことについての日米両政府の揺るぎないコミットメントを再確認した。閣僚は,二国間の防衛協力の強化における節目として,相互のアセットの防護の運用を開始し,物品役務相互提供協定(ACSA)を発効させるという同盟における重要なステップを歓迎した。閣僚は,地域の事案に対応するために,同盟調整メカニズム(ACM)が成功裏に活用されていることに留意した。閣僚は,日本の安全並びにアジア太平洋地域の平和と安定を確保するに当たって米国の拡大抑止が果たす不可欠な役割を再確認し,拡大抑止協議を通じて本件における関与を深める意図を表明した。閣僚はまた,共同計画,防空及びミサイル防衛,非戦闘員を退避させるための活動,防衛装備・技術協力,情報協力及び情報保全等の分野における協力を強化し,加速することに対する共通のコミットメントを確認した。閣僚は,宇宙,特に,抗たん性,宇宙状況監視,ホステッド・ペイロード及び衛星通信に係る二国間協力の拡大に対する希望を確認した。閣僚は,同盟の抑止及び防衛を一層強化することの死活的な重要性を強調しつつ,適時に,深刻なサイバー事案への同盟としての対応に関する協議を深めることを求めた。

IV.三か国及び多数国間の協力

 閣僚は,地域における他のパートナー,特に,韓国,オーストラリア,インド及び東南アジア諸国との間で,三か国及び多数国間の安全保障及び防衛協力を進めるために同盟が現在行っている取組を強調した。閣僚は,地域における力強いプレゼンスを維持することに対する米国の継続的なコミットメント及び「自由で開かれたインド太平洋戦略」によって示された日本のイニシアティブに留意しつつ,ルールに基づく国際秩序を促進するために協力することの重要性を強調した。

 閣僚は,韓国との協力に関し,ミサイル警戒並びに対潜作戦及び海上阻止作戦訓練を含む三か国間の訓練を拡大すること及び情報共有を強化することの必要性を強調した。

 閣僚は,東南アジア諸国との協力に関し,海洋安全保障,防衛制度の構築,並びに人道支援及び災害救援(HA/DR)を含む分野における能力構築プログラム及び防衛装備・技術移転を一層強化する意図を確認した。閣僚は,この地域における海洋秩序を維持することの重要性を認識し,この点に関連する既存の取組を包含するような,政府全体にわたる,海洋安全保障に係る能力構築に関する対話を立ち上げることについての共通のコミットメントを確認した。

V.日本における米軍のプレゼンス

(1)在日米軍再編

 閣僚は,在日米軍の強固なプレゼンスを維持する観点から,在日米軍再編のための既存の取決めを実施することについての日米両政府のコミットメントを再確認した。これらの取決めは,厳しさを増す安全保障環境において,地元への影響を軽減し,在日米軍のプレゼンス及び活動に対する地元の支持を高めると同時に,運用能力及び抑止力を維持することを目的としている。

 閣僚は,この取組の不可欠な要素として,普天間飛行場の代替施設(FRF)の建設の再開を歓迎し,FRFをキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する計画が,運用上,政治上,財政上及び戦略上の懸念に対処し,普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認した。閣僚は,この計画に対する日米両政府の揺るぎないコミットメントを再確認し,同計画の可能な限り早期の完了及び長期にわたり望まれてきた普天間飛行場の日本への返還を達成するとの強い決意を強調した。この文脈で,閣僚は,一層の遅延が平和及び安全を提供する同盟の能力に及ぼす悪影響に留意しつつ,この建設計画の着実な実施を求めた。

 閣僚は,2016年に北部訓練場の過半が返還されたことを歓迎した。これは,1972年より後の,沖縄における単独では最大の土地の返還である。閣僚は,2015年12月に発表された土地の返還の進捗に留意し,それらの返還が更に実施されるよう求めた。閣僚はまた,沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画を着実に実施することの重要性及び同計画を可能な限り早期に更新することに対するコミットメントを再確認した。

 閣僚はまた,合計約9,000人の米海兵隊要員の,家族を伴った,沖縄からグアムを含む日本国外の場所への移転が進展していることを歓迎した。閣僚は,グアム協定の着実な実施を確認した。

 閣僚は,恒久的な艦載機着陸訓練用の施設を可能な限り早期に確保するための最大限の努力をすることに対する日本のコミットメントを歓迎した。

 閣僚は,ティルトローター機/回転翼機の訓練の移転を含む航空機訓練移転を引き続き促進する意図を確認した。このような移転は,訓練活動が沖縄に及ぼす影響の軽減に寄与してきた。

(2)在日米軍駐留経費負担(HNS)

 閣僚は,在日米軍駐留経費負担に係る現行の特別協定が2016年4月にその効力を発生したことを歓迎した。これは,同盟の柱の一つとなるものであり,日本における米軍のプレゼンスに対する日本の継続的な支援の象徴である。閣僚は,在日米軍駐留経費負担全体の水準が,日本の2015会計年度とおおむね同じ水準に維持されることを確認した。閣僚は,現行の特別協定の期間中の提供施設整備費は,各年度予算額で206億円を下回らないことを再確認した。

(3)その他の事項

 閣僚は,相互運用性及び抑止力を強化し,地元とのより強い関係を構築するとともに,日本の南西諸島におけるものも含め自衛隊の態勢を強化するために,日米両政府が共同使用を促進することを再確認した。

 閣僚は,相互の協議を通じて地位協定(SOFA)に関する課題に対処する決意を強調した。閣僚は,環境の管理及び軍属に関する補足協定の効力発生を歓迎し,これらの協定を着実に実施することの重要性を改めて表明した。閣僚は,米国が,日米地位協定上の地位を有する人員に対する教育・研修のプロセスを強化したことを認識した。