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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の説明書(日米デジタル貿易協定説明書)

[場所] ワシントンDC
[年月日] 2019年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の説明書


{目次省略}

一 概説

 1 協定の成立経緯

  平成三十年(二千十八年)九月の日米首脳会議における日米共同声明を踏まえ、我が国及びアメリカ合衆国は、平成三十一年(二千十九年)四月に行われた第一回閣僚会議において、デジタル貿易協定の経緯に向けた交渉を開始することについて一致した。これを受け、両国間で交渉を行った結果、協定案文について最終的合意をみるに至ったので、令和元年(二千十九年)十月七日にワシントンにおいて、我が方在アメリカ合衆国杉山大使と先方ライトハイザー合衆国通商代表との間でこの協定の署名が行われた。

 2 協定締結の意義

  この協定の締結によって、我が国とアメリカ合衆国との間のデジタル貿易が促進され、両国間の経済的な結び付きがより強固になることを通じ、両国間の貿易が安定的に拡大し、ひいては自由で開かれた国際経済の発展につながることが期待される。

二 協定の内容

  この協定は、前文、本文二十二箇条及び末文から成っている。それらの概要は、次のとおりである。

 1 協定における用語の定義について定める(第一条)。

 2 協定の適用範囲について定める(第二条)。

 3 一般的例外について定める(第三条)。

 4 安全保障のための例外について定める(第四条)。

 5 信用秩序の維持のための例外並びに金融政策及び為替政策のための例外について定める(第五条)。

 6 第八条の規定を除くほか、この協定のいかなる規定も、租税に係る課税措置については、適用しないこと等を定める(第六条)。

 7 いずれの締約国も、一方の締約国の者と他方の締約国の者との間の電子的な送信に対して関税を課してはならないことを定める(第七条)。

 8 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の領域において創作等されたデジタル・プロダクトに対し、他の同種のデジタル・プロダクトに与える待遇より不利な待遇を与えてはならないこと等を定める(第八条)。

 9 各締約国は、電子的な取引を規律する法律的枠組みであって、千九百九十六年の電子商取引に関する国際連合国際商取引法委員会モデル法の原則に適合するものを維持すること等を定める(第九条)。

 10 締約国は、自国の法令に別段の定めがある場合を除くほか、署名が電子的な形式によるものであることのみを理由として当該署名の法的な有効性を否定してはならないこと等を定める(第十条)。

 11 いずれの締約国も、情報の電子的手段による国境を越える移転が対象者の事業の実施のために行われる場合には、当該移転を禁止し、又は制限してはならないこと等を定める(第十一条)。

 12 いずれの締約国も、自国の領域において事業を実施するための条件として、対象者に大使、当該領域においてコンピュータ関連設備を利用し、又は設置することを要求してはならないこと等を定める(第十二条)。

 13 いずれの締約国も、対象金融サービス提供者が当該締約国の領域外において利用し、又は設置する金融サービスのコンピュータ関連設備において処理される情報等に対し、当該締約国の金融規制当局が、規制等を目的として、迅速、直接的、完全及び継続的なアクセスを認められる場合には、対象金融サービス提供者に対し、当該締約国の領域において事業を実施するための条件として、当該領域において金融サービスのコンピュータ関連設備を利用し、又は設置することを要求してはならないこと等を定める(第十三条)。

 14 各締約国は、オンライン上の商業活動を行う消費者に損害を及ぼし、又は及ぼす恐れのある詐欺的又は欺まん的な商業活動を禁止するため、消費者の保護に関する法律を制定し、又は維持すること等を定める。(第十四条)

 15 各締約国は、デジタル貿易の利用者の個人情報の保護について定める法的枠組を採用し、又は維持すること等を定める(第十五条)。

 16 各締約国は、要求されていない商業上の電子メッセージの提供者に対し、受信者が当該要求されていない商業上の電子メッセージの現に行われている受信の防止を円滑に行うことができるようにすることを要求する措置等を採用し、又は維持すること等を定める(第十六条)。

 17 いずれの一方の締約国も、他方の締約国の者が所有するソフトウエアの一方の締約国の領域における輸入等の条件として、当該ソフトウエアのソース・コードの移転等又は当該ソース・コードにおいて表現されるアルゴリズムの移転等を要求してはならないこととして等を定める(第十七条)。

 18 いずれの締約国も、コンピュータを利用した双方向サービスによって保存等される情報に関連する損害についての責任を決定するに当たり、当該コンピュータを利用した双方サービスの提供者又は利用者を情報コンテンツ・プロバイダとして取り扱う措置を採用し、又は維持してはならないこと等を定める(第十八条)。

 19 両締約国は、コンピュータの安全性に係る事象への対応について責任を負うそれぞれの権限のある当局の能力を構築すること等を行うよう努めること等を定める(第十九条)

 20 締約国は、自国が政府の情報を公衆により利用可能なものとすることを選択する限りにおいて、政府の情報が機械による判読が可能であること等を確保するよう努めること等を定める(第二十条)。

 21 いずれの締約国も、暗号法を使用する情報通信技術産品の製造等の条件として、当該情報通信技術産品の製造者等に対し、暗号法に関連する財産的措置を有する情報を当該締約国に移転すること等を要求してはならないこと等を定める。(第二十一条)。

 22 協定の改正、効力発生及び終了について定める(第二十二条)。

三 協定に関連して作成された文章(デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定第十八条の規定に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定第十八条の規定に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の交換公文)

  日本国及びアメリカ合衆国は、日本国の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律が協定第十八条(コンピュータを利用した双方向サービス)の規定に反しないこと及び日本国がコンピュータを利用した双方向サービス提供者のせきにんを規律する自国の現行の法制を同条の規定を遵守するために変更する必要はないことを合意すること等を定める。

四 協定の実施のための国内措置

  この協定を実施するためには、新たな立法措置及び予算措置を必要としない。