データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米首脳共同声明 「未来のためのグローバル・パートナー」

[場所] 
[年月日] 2024年4月10日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 過去3年間を経て、日米同盟は前例のない高みに到達した。我々がこの歴史的な瞬間に至ったのは、我々がそれぞれ、そして共に、わずか数年前には不可能と思われたような方法で、我々の共同での能力を強化するために勇気ある措置を講じたためである。本日、我々、ジョセフ・バイデン大統領と岸田文雄内閣総理大臣は、ワシントンD.C.における岸田総理大臣の公式訪問及び公式晩餐会において、日米間の戦略的協力の新しい時代を祝し、自由で開かれたインド太平洋及び世界を実現するために、日米両国が共に、そして他のパートナーと共に、絶え間ない努力を続けることを誓う。

 日米協力の新たな時代において、我々は、グローバルな事象がインド太平洋の安全保障と安定に影響を及ぼし、我々の共有する地域における動向が世界中に波及していることを認識する。そこで我々は、日米両国及び世界の利益のために現在及び将来の複雑で相互に関連する課題に対処するという目的に適うグローバルなパートナーシップを構築するため、あらゆる領域及びレベルで協働している。我々は、同盟協力が新たな高みに達するに当たり、パートナーシップのグローバルな性質を反映すべく関与を拡大している。

 我々の協力の中核には、志を同じくするパートナー及び多国間機関と協働して共通の課題に対処し、自由で開かれ、連結され、強じんで安全な世界を確保するという共通のコミットメントがある。これらの共同の取組は、人権と人間の尊厳の保護及び促進、全ての国家の主権及び領土一体性並びに武力による領土取得の禁止を含め、我々が共有する国際法に対する根本的な尊重に基づいている。パートナーとしての我々の目的は、多数の国々が発展し繁栄することを可能にしてきた、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化することであり、我々の同盟が21世紀の課題に取り組むための備えを確保することである。

 我々のグローバルなパートナーシップを前進させるため、我々は本日、防衛・安全保障協力の強化、宇宙における新たなフロンティアの開拓、技術革新の推進、経済安全保障の強化、気候変動対策の加速化、グローバルな外交及び開発における連携、そして我々の国民の間のつながりの強化に向けた、いくつかの新しい戦略的イニシアティブを発表する。グローバルなパートナーシップを通じ、我々はまた、戦略を一致させるとともに、将来の最も喫緊の課題及び機会に共に取り組むに当たり、かつてないほど結束している。


防衛・安全保障協力の強化

 我々のグローバルなパートナーシップの中核は、日米安全保障条約に基づく二国間の防衛・安全保障協力であり、これはかつてないほど強固である。我々は、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを確認する。バイデン大統領は、核を含むあらゆる能力を用いた、同条約第5条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明した。岸田総理は、日本の防衛力と役割を抜本的に強化し、同条約の下で米国との緊密な連携を強化することへの日本の揺るぎないコミットメントを改めて確認した。バイデン大統領はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認した。我々は、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとする行為を通じたものを含む、中国による東シナ海における力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも強い反対の意を改めて表明した。我々は、日米の抑止力・対処力を強化するため、南西諸島を含む地域における同盟の戦力態勢の最適化が進展していることを歓迎し、この取組を更に推進することの重要性を確認する。

 米国は、日本が自国の国家安全保障戦略に従い、2027日本会計年度に防衛力とそれを補完する取組に係る予算をGDP比2%へ増額する計画、反撃能力を保有する決定及び自衛隊の指揮・統制を強化するために自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含む、防衛力の抜本的強化のために日本が講じている措置を歓迎する。これらの取組は共に、日米同盟を強化し、インド太平洋地域の安定に貢献しつつ、日米の防衛関係をかつてないレベルに引き上げ、日米安全保障協力の新しい時代を切り拓くこととなる。

 我々は本日、日米同盟を更に前進させるためのいくつかの新たな戦略的イニシアティブを発表する。地域の安全保障上の課題が展開する速度を認識し、日米の二国間同盟体制がこうした極めて重要な変化に対応できるようにするため、我々は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる意図を表明する。より効果的な日米同盟の指揮・統制は、喫緊の地域の安全保障上の課題に直面するに当たり、抑止力を強化し、自由で開かれたインド太平洋を促進していく。我々は、日米それぞれの外務・防衛担当省庁に対し、日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)を通じて、この新しい関係を発展させるよう求める。このビジョンを支えるに当たり、我々はまた、日米共同情報分析組織(BIAC)を通じたものを含め、情報収集、警戒監視及び偵察活動における協力並びに同盟の情報共有能力を深化させるという目標を改めて確認する。

 我々はまた、同盟の戦力態勢を強化し、高度な基地能力を構築し、脅威に対する抑止及び防衛に必要な備えを増強させるための取組を引き続き実施していく。我々は、日本固有のスタンド・オフ・プログラムを強化するための米国の物品及び技術的支援を含む、日本の一連の反撃能力の効果的な開発及び運用に向けた二国間協力を深化させることを決意する。米国は、日本がトマホーク(TLAM)システムの運用能力を獲得するための訓練計画及び艦艇の改修を開始するとのコミットメントを表明した。我々はまた、ハイエンドな地域の極超音速の脅威に対抗するための滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)協力開発プログラムを追求することを改めて確認した。

 日米両国は二国間関係を強化するのと同時に、志を同じくする地域のパートナーとの関係を引き続き構築していく。我々は本日、増大する経空脅威に対抗するため、日米豪の間で、ネットワーク化された防空面におけるアーキテクチャーに関して協力するビジョンを発表する。日本の強み及びAUKUS諸国との間の緊密な二国間防衛パートナーシップを認識し、AUKUS諸国―豪州、英国及び米国―はAUKUS第2の柱における先進能力プロジェクトに関する日本との協力を検討している。キャンプ・デービッド首脳会合からのモメンタムを維持し、我々は、日米韓の間の毎年の複数領域における共同訓練の実施に向けた進展を歓迎する。米英間の大西洋宣言及び日英間の広島アコードにおけるコミットメントを認識し、また、インド太平洋地域及び欧州・大西洋地域がかつてないほど相互に関連している中で、我々は、共通のかつ揺るぎない安全保障を強化するに当たり、2025年から開始される定期的な日米英三か国共同訓練の発表を歓迎する。昨年10月の豪州の米国公式訪問時における、無人航空システムに関する日本との三か国間協力を追求するとの発表に基づき、我々は、急速に台頭しつつある連携無人機及び自律性の分野における協力の機会を追求している。

 米国は、地域における抑止力を強化するための共同開発・生産を通じた協力を増進することになる、日本の防衛装備移転三原則及びその運用指針の改正を歓迎する。我々は、長期的に重要な能力の需要を満たし即応性を維持するためにそれぞれの産業基盤を活用することを目的とし、日米の防衛産業が連携する優先分野を特定するために、日米の関係省庁と連携し、防衛省と米国防省が共に主導する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)を開催する。この優先分野の特定の対象には、ミサイルの共同開発及び共同生産並びに前方に展開された米海軍艦船及び第4世代戦闘機を含む米空軍航空機の日本の民間施設における共同維持整備が含まれる。DICASは、既存の防衛装備庁・米国防省(研究・工学担当)定期協議(DSTCG)と共に、我々の防衛産業政策、取得及び科学技術のエコシステムをより統合し整合させていくものである。DICASは、日米「2+2」において、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に進捗の最新情報を提供する。我々はまた、AI及び先進的なシミュレーターを含む将来の戦闘機パイロットの教育及び即応性、そして即応態勢の整った次世代戦闘機の航空防衛力を維持するための日米共通のジェット練習機といった最先端技術の共同開発・生産の機会を追求する作業部会を設置することにコミットする。

 我々は、日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性を改めて確認し、二国間協力を更に強化していく。この観点から、我々は、次回の日米「2+2」の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に求める。我々は、同盟が増大するサイバー脅威に先んじ、情報・コミュニケーション技術分野における強じん性を構築することを確保するため、情報保全及びサイバーセキュリティに関する協力を引き続き深化させる。我々はまた、重要インフラの防護に関する協力を強化していく計画である。

 頻繁かつ深刻な気候変動に関連した自然災害及びその他の自然災害に迅速に対応することの重要性を認識し、我々は、日本における人道支援・災害救援のためのハブの設置に関する協力を模索する計画である。

 日米両国は、抑止力を維持し、及び地元への影響を軽減するため、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である辺野古における普天間飛行場代替施設の建設を含め、沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施に強くコミットしている。

宇宙における新たなフロンティアの開拓

 我々のグローバルなパートナーシップは宇宙にも及び、日米両国は太陽系探査と月への帰還を主導している。我々は本日、与圧ローバによる月面探査の実施取決めに署名したことを歓迎する。この取決めでは、日本が月面与圧ローバを提供して運用を維持する一方で、米国はアルテミス計画の将来のミッションで日本人宇宙飛行士による2回の月面着陸の機会を割り当てることを計画している。両首脳は、重要なベンチマークが達成されることを前提に、アルテミス計画の将来のミッションで日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するという共通の目標を発表した。日米両国は、このような挑戦的かつ人々を鼓舞する月面ミッションにおけるリスクを管理しつつ、この目標を促進するため、宇宙飛行士の訓練に関する協力を深化させる計画である。我々はまた、米国の産業との協力の可能性を含め、極超音速滑空体(HGV)等のミサイルのための地球低軌道(LEO)の探知・追尾のコンステレーションに関する二国間協力も発表する。

イノベーション、経済安全保障及び気候変動対策の主導

 日米両国は、イノベーションを促進し、産業基盤を強化し、強じんで信頼性のあるサプライチェーンを促進し、将来の戦略的新興産業を構築しつつ、同時にこの10年間で大幅な排出削減を追求するために、我々の経済、技術及び関連する戦略を最大限に整合させることを目指す。「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ(CoRe)」の下での取組に基づき、我々は、日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)等を通じたものを含め、重要・新興技術の振興及び保護等によって、日米の技術的な優位性を高めるとともに、我々の経済安全保障を強化する意図を有する。

 日米両国は、マイクロソフト社の日本におけるAI、クラウドインフラ、人材育成及び研究所への29億ドルの投資並びにトヨタ自動車の最近のバッテリー生産向けの80億ドルの追加投資を含むノースカロライナ州における累計139億ドルの投資等、相互投資を通じた強固な経済・商業関係を歓迎する。日本は、海外直接投資額にして8,000億ドル近くを誇る、最大の対米投資国であり、日本企業は全米50州で100万人近い米国人を雇用している。同様に、長年にわたり最大級の対日投資国として米国は日本の経済成長を支えており、世界最大級の金融セクターを有する2か国として、我々は、国境を越えた投資の促進及び金融安定の支援のためにパートナーシップを強化することにコミットしている。強固かつ創造的な経済国として、我々は、シリコンバレーにある「ジャパン・イノベーション・キャンパス」及び東京に設立される予定の「グローバル・スタートアップ・キャンパス」を通じ、イノベーションを促進するためにそれぞれのスタートアップ環境に対する投資及び持続可能な価値創造(SX)に向けて行動する企業に対する投資を加速することも計画している。我々は、「科学技術を通じたグローバル・イノベーション(GIST)」イニシアティブの下でのスタートアップ及びベンチャー・キャピタル企業に関する新たな日米人材交流プログラムを歓迎する。

 我々は、他の志を同じくするパートナーと実施するものも含めた研究交流、民間投資及び資本調達を通じ、AI、量子技術、半導体、バイオテクノロジー等の次世代の重要・新興技術の開発及び保護におけるグローバルなリーダーとしての共通の役割を強化することにコミットしている。我々は、改訂された事業取決めに基づく、理化学研究所とアルゴンヌ国立研究所(ANL)との間のAIforScienceに関する我々の協力を歓迎する。

 我々は、エヌビディア社、アーム社、アマゾン社及びマイクロソフト社並びに日本の企業連合からの資金提供を通じ、ワシントン大学及び筑波大学間並びにカーネギー・メロン大学及び慶應義塾大学間で、1億1000万ドルの新たなAI研究パートナーシップが成立したことを称賛する。我々は、広島AIプロセスを更に前進させ、両国のAIセーフティ・インスティテュート間の連携を強化することにコミットしている。

 我々の半導体協力の長い歴史に基づき、我々は、研究開発、設計、人材育成等の課題に関する協力のための共同技術アジェンダを確立する意図を有する。我々はまた、特に次世代半導体や先端パッケージングに関する、両国の民間部門間及び民間部門との強固な協力を歓迎する。我々はまた、特に成熟ノード(「レガシー」)半導体については、情報共有、政策調整並びに非市場的政策及び慣行から生じる脆弱性への対処を通じて、グローバルな半導体サプライチェーン強じん化に同志国と共に取り組んでいくことを計画している。我々はまた、量子コンピューティングに関する二国間協力の第一歩として、産業技術総合研究所(AIST)と米国国立標準技術研究所(NIST)との間の協力覚書の署名を称賛する。

 インド太平洋経済枠組み(IPEF)並びに昨年のG7及びアジア太平洋経済協力(APEC)における我々のそれぞれのリーダーシップに基づき、我々は、両国経済の強じん性、持続可能性、包摂性、経済成長、公平性及び競争力を引き続き促進する。我々は、IPEFサプライチェーン協定が最近発効したこと称賛する。我々は、グローバル・インフラ投資パートナーシップのロビト回廊に沿ったものや、鉱物資源安全保障パートナーシップ(MSP)及び強靱で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)に向けたパートナーシップを通じたものを含め、重要鉱物プロジェクトに関する協力を引き続き模索していく。我々は、二国間協力及びG7の経済的威圧に対する調整プラットフォームを含む志を同じくするパートナーとの取組を通じ、経済的威圧を抑止し対処するために協力している。我々は、日米経済版「2+2」及び日米商務・産業パートナーシップの下で、自由で公正なルールに基づく経済秩序を堅持し、非市場的政策及び慣行に対処し、信頼性があり、強じんかつ持続可能なサプライチェーンを構築し、また開かれた市場及び公正な競争を促進すべく取り組んでいる。我々は、データセキュリティに関するものも含め、信頼性のある自由なデータ流通の具体化に向けたコミットメントを推進する。我々はまた、強じんで責任ある水産物サプライチェーンの促進について議論する。

 日米両国は、気候危機が我々の時代の存亡に関わる挑戦であることを認識し、世界的な対応のリーダーとなる意図を有する。クリーン・エネルギーへの移行の加速化という共通の目標に向け、我々は、補完的かつ革新的なクリーン・エネルギー・サプライチェーンを促進し、産業競争力を向上させるため、この10年間のエネルギー移行の進展を加速させることを目指した日本のグリーン・トランスフォーメーション(GX)推進戦略及び米国のインフレ削減法を含め、それぞれの国内施策を実施し、それらの相乗効果と影響を最大化する方法に関する、新たなハイレベル対話を立ち上げる。本日、日本が米国のFloatingOffshoreWindShotの最初の国際的な協力者として加わることを発表する。我々は、クリーンエネルギー・エネルギーセキュリティ・イニシアティブ(CEESI)を通じて、各国の事情を考慮しながら、WindShotに沿った世界的な野心に向けて協働する意図を有し、技術コストを削減、脱炭素化を加速し、沿岸地域社会への便益をもたらす革新的なブレークスルーを追求していく。アカデミアとの連携を通じて浮体式洋上風力発電のコスト削減と量産化を目指す、日本が新たに立ち上げた産業プラットフォーム「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」を米国は歓迎する。

 我々は、フュージョンエネルギーの実証及び商業化を加速するための日米戦略的パートナーシップの発表を通じたフュージョンエネルギー開発を含む次世代クリーン・エネルギー技術の開発及び導入を更に主導する。

 米国は、予見可能な形でLNGを供給する能力を含め、日本及び他の同盟国のエネルギー安全保障を支援するための揺るぎないコミットメントを維持するとともに、ゼロ・エミッション・エネルギーへの世界的な移行を加速させ、化石燃料バリューチェーン全体でメタン排出を実行し得る限り最小化するために、他の化石燃料輸入国及び生産国と協力する。

 我々は、革新的で新しいクリーン・エネルギー技術の普及を促進し、排出量削減に有望な、エタノール由来のものを含む、持続可能な航空燃料(SAF)や原料に関し世界的な供給を拡大する意図を有する。

 我々はまた、パンデミックの予防、備え及び対応並びにより強じん、公平、かつ持続可能な保健システムの促進といった分野を含め、グローバルな健康安全保障及び技術革新を整合させるべく取り組んでいる。本日、我々は、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)及び米国の食品医薬品局(FDA)が協働し、がん患者が早期に薬剤を入手できるよう、がん治療薬に関する情報交換を行い、将来の治療薬開発や治療薬不足を防ぐ方法について議論する意図を有することを発表する。我々は、この協力を促進するために、PMDAがワシントンD.C.に今後設置する代表事務所を歓迎する。


グローバルな外交及び開発における連携

 我々が直面する課題は地理的側面を超えている。日米両国は、国連憲章を含む国際法を堅持するというコミットメントにおいて揺らぐことなく、全ての加盟国に対し、いかなる国家の領土一体性や政治的独立に対する武力による威嚇又は武力の行使を慎むことを含め、同憲章の目的及び原則を堅持するよう求める。我々は、常任理事国及び非常任理事国の議席の拡大等を通じ、国連安全保障理事会(安保理)の改革に引き続きコミットしている。バイデン大統領は、改革された国連安保理において日本が常任理事国となることへの支持を改めて表明した。

 我々は、昨年の広島でのコミットメントを改めて確認し、G7での協力を更に推進し、G7を超えたパートナーと協働していく決意である。

 我々は、インド太平洋における誤解と誤算のリスクを低減し、紛争を防止するため、全ての当事者が開かれた意思疎通のチャネルと実際的な措置を促進することの重要性を強調する。我々は特に、首脳レベルを含め、中国との間の率直な意思疎通の重要性を強調し、共通の関心分野において可能な場合に中国と協力する意思を表明する。

 我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された国際法と整合的な形で、全ての国が航行及び上空飛行の自由を含む権利と自由を行使できることの重要性を強調する。我々は、海上や空中での危険な遭遇や係争のある地形の軍事化、海上保安機関の船舶及び海上民兵の危険な使用等の南シナ海における不安定化をもたらす行動を含む、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。南シナ海における不法な海洋権益に関する主張を後押しする最近の中国による危険でエスカレートさせる行動や他国の海洋資源開発を妨害する試みは、UNCLOSに反映された国際法と整合的ではない。我々はまた、2016年の南シナ海に関する仲裁判断が同仲裁手続の当事国に対して最終的かつ法的拘束力を有することを強調する。我々は、地域の海洋安全保障を支援し、国際法を堅持するために、特にASEANにおけるパートナーと協働することを決意する。

 我々は、台湾に関する両国の基本的立場に変更はないことを強調し、世界の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を改めて表明する。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。

 我々は、国際金融アーキテクチャーの強化及びグローバル・インフラ投資パートナーシップの下での投資の促進のための具体的な進展を図るべく、パートナー諸国と引き続き協力している。我々は、世界銀行による300億ドルを超える新規融資を可能にするための我々が既に予定している貢献等を通じたより良く、より大きく、より効果的な国際開発金融機関の実現及び野心的な国際開発協会の増資とアジア開発基金の増資の確保にコミットしている。我々はまた、インド太平洋における民間部門の投資の重要性を強調する。我々は、日本、米国及び太平洋島嶼国間のデジタル通信インフラを強化するために、NECと共に、パシフィック・コネクト・イニシアティブを拡大する、ノース・パシフィック・コネクトのデジタル連結性へのグーグル社による10億ドルの投資の発表を歓迎する。昨年10月の海底ケーブルへの米豪の共同資金拠出コミットメントに続き、日本及び米国は、信頼でき、より強じんなネットワークを構築するために、志を同じくするパートナーと連携しつつ、ミクロネシア連邦及びツバルに対するケーブルシステムへの1,600万ドルを含む太平洋地域おける海底ケーブル整備のための資金を拠出する意図を有する。

 我々は、日米豪印(クアッド)への我々の確固たるコミットメントと、地域に成果をもたらし続ける、安定し、繁栄し、包摂的である自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンを改めて確認する。我々は、ASEAN、太平洋諸島フォーラム(PIF)及び環インド洋連合を含む、地域機関に対する日米豪印(クアッド)の揺るぎない支持及び尊重を改めて表明する。我々はまた、ASEAN中心性・一体性及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック」に対する支持を改めて確認する。東南アジア諸国はインド太平洋における重要なパートナーであり、日米比三か国は、経済安全保障及び経済的強じん性を促進しつつ、三か国間の防衛及び安全保障協力を強化することを目指す。日米両国は、太平洋の卓越した機関であるPIFやブルーパシフィックにおけるパートナー(PBP)を通じたものを含め、「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に明記された地域の優先事項を支援するために取り組む意図を改めて確認した。

 我々は、自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンを追求する中で、地域の重要な志を同じくするパートナーとの間に強固な絆を築き続ける。キャンプ・デービッドでの日米韓首脳会合の歴史的な成功を基礎として、日米韓は、地域の安全保障の推進、抑止力の強化、開発・人道支援の調整、北朝鮮の不正なサイバー活動への対抗並びに経済、クリーン・エネルギー及び技術に関する課題を含む協力の深化において引き続き連携していく。日米両国はまた、平和で安定した地域を確保するため、豪州との三国間の協力の推進に引き続きコミットしている。

 我々は、関連する国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に対するコミットメントを改めて確認する。我々は、朝鮮半島及びそれを超える地域の平和及び安全に対する重大な脅威を及ぼす、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射及び弾道ミサイル技術を用いた衛星打ち上げ用ロケットを含む北朝鮮による弾道ミサイル計画の継続的な推進を強く非難する。我々は、北朝鮮に対し、外交に戻るための、前提条件のない継続的かつ真摯な申出に応じるよう求める。我々は、全ての国連加盟国に対し、とりわけロシアによる最近の拒否権行使に照らし、全ての関連する国連安保理決議を完全に履行するよう求める。我々は北朝鮮に対し、悪意のあるサイバー活動を含め、不法な弾道ミサイル及び大量破壊兵器計画のための収益を生み出す不正な活動を停止するよう強く求める。バイデン大統領はまた、拉致問題の即時解決に対する米国のコミットメントを改めて確認し、双方は、北朝鮮における人権の尊重を促進するための共同の取組を継続することにコミットする。

 我々は、ロシアのウクライナに対する残酷な侵略戦争、ウクライナのインフラに対するロシアの攻撃及びロシアによる占領という暴力への断固とした反対において引き続き結束する。我々は引き続き、ロシアに対する厳しい制裁を実施し、ウクライナに対する揺るぎない支援を提供していくことにコミットしている。我々は共に、ロシアに対し、国際的に認められたウクライナの国境内から、即時、完全かつ無条件に軍を撤退させるよう改めて求める。ウクライナに対する侵略戦争の文脈における、ロシアによる核兵器のいかなる威嚇又は使用も受け入れられない。我々はまた、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を支援し、北東アジアの平和及び安定並びに国際的な不拡散体制を脅かす、北朝鮮とロシアとの間の軍事協力の拡大について、深刻な懸念を表明する。

 欧州・大西洋地域とインド太平洋地域の結びつきがかつてなく強くなる中、日米両国は日・北大西洋条約機構(NATO)及びNATO・IP4との間のパートナーシップを強化するために引き続き協力していくことを期待する。

 我々は、昨年10月7日のハマス等によるテロ攻撃を改めて断固として非難し、国際法に従って自国及び自国民を守るイスラエルの権利を改めて確認する。同時に、我々はガザ地区の危機的な人道状況に深い懸念を表明する。我々は、ハマスが拘束している全ての人質の解放を確保することが不可欠であることを確認し、人質解放の取引がガザにおける即時かつ持続的な停戦をもたらすことを強調する。我々は、ハマスが拘束している人質を解放し、支援を必要としているパレスチナ人に不可欠な人道支援を届けることを可能にする取引の一環として、少なくとも6週間にわたり、ガザにおける即時かつ持続的な停戦を実現することが不可欠であることを確認する。我々は、ガザ全域で命を救う人道支援の提供を大幅に増やす緊急の必要性と、地域的なエスカレーションを防ぐ極めて重要な必要性を強調する。我々は、文民の保護に関するものを含む、適用される国際人道法等の国際法を遵守することの重要性を改めて確認する。我々は、イスラエル人とパレスチナ人が公正で、永続的で、安全な平和の下で暮らすことを可能にする二国家解決の一環として、イスラエルの安全が保障された、独立したパレスチナ国家に引き続きコミットしている。

 我々は、中南米における包摂的な成長と持続可能な開発を支援することの重要性を改めて確認する。我々は、特にハイチ及びベネズエラについて、地域における政策調整を引き続き強化する。我々はまた、ハイチの安定と安全の促進が西半球における最も喫緊の課題のひとつであることを認識し、ハイチが民主的秩序を回復するに当たり同国への支援を継続する。

 我々はまた、法の支配に基づく平和、安定及び繁栄に対するアフリカの願望を支持する。我々は、アフリカ諸国、地域経済共同体、アフリカ連合及び多国間機関との協力を含め、それぞれの取組を通じて民主的プロセスと経済成長を支援するために引き続き協力する。

 日米両国は、現実的かつ実践的なアプローチを通じて、「核兵器のない世界」を実現することを決意している。冷戦終結以後に達成された世界の核兵器数の全体的な減少が継続し、これを逆行させないことが極めて重要であり、中国による透明性や有意義な対話を欠いた、加速している核戦力の増強は、世界及び地域の安定にとっての懸念となっている。我々は、核兵器不拡散条約(NPT)を、国際的な核軍縮・不拡散体制の、また、原子力の平和的利用を追求するための礎石として堅持することの重要性を改めて確認する。「核兵器のない世界」の実現という普遍的な目標を推進する上で、日本の「ヒロシマ・アクション・プラン」、及び「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は歓迎すべき貢献である。両首脳はまた、日本が主導する「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ」イニシアティブへの米国の参加表明を歓迎した。我々は、原子力技術の平和的利用の不可欠な役割を改めて確認し、技術革新を促進すること並びに最高水準の原子力安全、核セキュリティ及び保障措置を堅持するための国際原子力機関(IAEA)の取組を支援することにコミットする。バイデン大統領は、日本による東京電力福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)処理水の、科学的根拠に基づく、安全かつ責任ある海洋放出を称賛した。日米両国は、燃料デブリ取出しのための研究協力に焦点を当てた福島第一廃炉パートナーシップの立ち上げを計画している。

 上記のような無数の課題に効果的に対処するため、我々のグローバルなパートナーシップは、外交と開発の取組を世界的に整合させるべく、それぞれの援助機関を巻き込んだ外務事務次官/国務副長官級の対話を立ち上げる。

人と人とのつながりの強化

 人的交流は、将来の日米関係を担う人材を育成する最も効果的な方法である。この観点から、我々は語学指導等を行う外国青年招致(JET)事業、カケハシ・プロジェクト、国際交流基金の各種事業、米日カウンシルのトモダチ・イニシアティブを含む日米間の交流プログラムの成果を認識し、気候やエネルギー等の重要な課題に関する地方間の交流強化を通じたものを含め、今日のニーズに応えるためにより多くの機会を提供することにコミットする。我々はまた、米国全土の38の日米協会、アジア・ソサエティ、日本全国の29の日米協会を含む市民社会が過去170年にわたり日米関係の強化に果たしてきた重要な役割を認識する。

 広島で開催されたG7首脳会合の際に両国間で署名された教育分野における協力覚書に基づき、我々は本日、アップル社、ブラックロック財団、渡邉利三財団、その他の設立資金提供者からの支援を受けて、日米関係の未来を「描く(map)」日米の高校生及び大学生のため、米日カウンシルが運営する新しい1,200万ドルの「ミネタ・アンバサダー・プログラム(MAP)」教育交流基金を通じて、学生の流動性を高めることにコミットすることを発表する。この観点から、我々はまた、日本学生支援機構を通じて日本人学生への奨学金を拡充する日本の新たなイニシアティブを歓迎する。

 我々は、過去72年間にわたる二国間の日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)による多大な貢献を認識する。我々は、科学・技術・工学・数学(STEM)分野への奨学金支給を50年ぶりに再開し、最初の同分野の学生が2025-26学年度に留学予定であること及び極めて質の高い学生や研究者を惹きつけるための日本人奨学生に対する授業料上限を撤廃したことによる、プログラムを格上げするための最近の変更を歓迎する。

 マンスフィールド研修計画設立30周年を祝い、我々は、モンタナ大学マンスフィールド・センターとマンスフィールド財団を通じたマンスフィールド大使の貢献のレガシーに敬意を表する。両首脳はまた、モンタナ大学に日本政府の拠出により、マンスフィールド記念日本・インド太平洋研究教授職が創設されたことを歓迎する。

 日米関係に極めて重要な貢献をなした故ダニエル・K・イノウエ上院議員の生誕100周年に当たり、我々は、米日カウンシルが新たに立ち上げた「TOMODACHIKibouforMaui」プロジェクトへの支援等を通じ、日米間の架け橋となり、共通の地域問題に取り組もうとする日系米国人リーダーの努力を称賛する。我々はまた、日米両国の議会間の交流の重要性についても認識を共有している。我々は、長期的な関係を発展させる上での、特に対面による語学学習の重要性を認識し、日本からの交流訪問者が米国で日本語及び日本文化の専門知識を共有する機会を増やすための新たな協力覚書を発表するとともに、米国若手日本語教員(J-LEAP)派遣事業拡大のための取組を歓迎する。

 両首脳はまた、女性が指導的立場にあることが引き続き重要事項であることを確認し、ジェンダー平等とあらゆる多様性を有する全ての女性及び女児のエンパワーメントに対する我々の誓いを改めて確認する。我々は、女性・平和・安全保障(WPS)及び女性の経済的エンパワーメントのイニシアティブに関する緊密な協力並びに女性及び女児の公的活動における完全かつ平等で意義のある参画及びリーダーシップを促進するための取組を歓迎する。

 我々は最後に、日米同盟を理解し、支持する将来の日米の専門家の多様なパイプラインを構築する必要性を強調する。日米の両国民は、我々の同盟の中核を形成し、我々は、今後何世代にもわたり、ますます緊密な絆を築いていくとのコミットメントを改めて確認する。

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 我々の共通かつ確固たるコミットメントを通じて、我々は日米同盟をかつてない高みへと導くための大胆かつ勇気ある措置を講じてきた。その際、全ての人が恩恵を受けることができるよう、我々は、インド太平洋及び世界全体の平和、安全、繁栄及び法の支配を守り、前進させるためのパートナーシップを整えてきた。我々は本日、両国の国民の間、そして我々二人の間の揺るぎない友好関係を称賛するとともに、我々のグローバルなパートナーシップが次世代のために将来の平和と繁栄の推進力となるよう、絶え間ない努力を続けることを誓う。