データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファクトシート:岸田総理大臣の国賓待遇での米国公式訪問

[場所] 
[年月日] 2024年4月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 本日、バイデン大統領は、日米両国の深く歴史的な絆を祝福するため、岸田日本国内閣総理大臣を公式訪問及び公式晩餐会に迎えた。今回の訪問はまた、日米同盟が将来の進歩と繁栄という共通のビジョンを促進するグローバルなパートナーシップへと進化していくに当たり、その上昇軌道を反映している。両首脳の野心的な取組は、同盟の深さと広さに及んでおり、防衛・安全保障、宇宙、先端技術及び経済協力、外交及び開発並びに人と人とのつながりにおける協力を含むものである。

 この二国間で調整されたファクトシートは、公式晩餐会を含む公式訪問において確認又は再確認された政治的見解及び日米間の更なる協力活動の計画の概観を提示するものである。

防衛・安全保障協力

 日米防衛・安全保障関係は、日米同盟の中核をなし、地域の平和と安全の礎である。同盟が新たな高みに達したことを認識しつつ、我々は、更なる調整及び統合を可能にするため、防衛・安全保障協力を一層強化していく計画である。

同盟の指揮・統制の向上:日米両国は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる意図を有する。より効果的な日米同盟の指揮・統制は、喫緊の地域の安全保障上の課題に直面するに当たり、強化された抑止力を提供し、自由で開かれたインド太平洋を促進する。このイニシアティブを支持するため、日米両国は、日米共同情報分析組織(BIAC)を通じたものを含め、情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)活動における協力並びに同盟の情報共有能力を深化させることを改めて確認する。

AUKUS 第2の柱の下での先進能力分野における協力の模索:日本の強み及びAUKUS諸国との間の緊密な二国間防衛パートナーシップを認識し、AUKUS諸国 ― 豪州、英国及び米国 ― はAUKUS第2の柱における先進能力プロジェクトに関する日本との協力を検討している。

ネットワーク化された地域安全保障の強化:日米両国が同盟における協力と連携を深化させると同時に、我々はまた、地域の安全保障を強化するための取組の拡大を視野に入れている。日米両国は、豪州との将来的な能力を取り入れつつ、ネットワーク化された防空面におけるアーキテクチャーに関して協力するとの我々のビジョンに向けて協働する意図を有する。我々は、増大する経空脅威に対抗するため、ミサイル防衛に係る情報共有を含む協力の強化を模索していく。日米両国は、安全で平和な地域の確保に向け、日本周辺におけるエスカレートする、又は挑発的な活動に対応するため、抑止のための活動を実施することを計画している。

日米防衛産業間協力の深化:日米両国は、長期的に重要な能力の需要を満たすために、同盟の防衛生産能力を確立することを目的とし、それぞれの産業基盤を活用する計画である。我々は、共同開発、共同生産及び共同維持整備に関するものを含む、日米の防衛産業が連携する優先分野を特定するため、防衛省と米国防省が共に主導する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)を開催する。この互恵的な取組の一環として、我々は、同盟の抑止態勢を更に強化するため、防空及びその他の目的のための高度で相互運用可能なミサイルの共同生産を模索する意図を発表する。日米両国はまた、AI及び先進的なシミュレーターを含む将来の戦闘機パイロットの教育及び即応性、そして即応態勢の整った次世代戦闘機の航空防衛力を維持するための日米共通のジェット練習機といった最先端技術の共同開発・生産の機会を追求する作業部会を設置することにコミットする。

地域の整備・補修能力の活用:米国防省は、グアムを含む米国を母港としてインド太平洋に展開する米海軍艦船の 90 日以内の整備及び補修を民間造船所で行う権限を米海軍に与えるため、米国議会と協働する計画である。さらに、米海軍は、前方に展開された米海軍艦船の整備及び補修を日本の民間造船所で実施する機会を引き続き検討する。日米両国は、第4世代戦闘機を含む日本に所在する米空軍航空機のエンジンの整備及び補修を実施する可能性を模索する計画である。日米両国は、新たなDICASによる共同維持整備の監督を支持しつつ、将来の整備及び補修の機会を調整するため、本年6月までに日本における艦船補修に関する第一回作業部会を開催する。

日本のスタンド・オフ防衛及び極超音速への対抗能力の実現:米国は、日本による米国のトマホーク獲得のための引合受諾書への署名並びに運用能力獲得のための訓練計画及び艦艇改修の開始を強調し、日本の能力開発を引き続き支援する。日米両国はまた、地域の抑止力を強化し、長期に及ぶ日米間のミサイル防衛協力を基礎とすることを目的とした、極超音速の脅威に対抗するための滑空段階迎撃用誘導弾プログラムの協力開発を引き続き追求することを計画する。

三か国協力の推進:日米豪三か国は、演習や訓練に統合するための主要能力の特定によるものを含め、日米豪の情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)活動に関する運用に係る調整の推進を追求する意図を有する。2023年10月の豪州の米国公式訪問時における、無人航空システム(UAS)に関する日本との三か国間協力を追求するとの発表に基づき、日米豪三か国は、急速に台頭しつつある連携無人機及び自律性の分野における協力の機会を追求している。キャンプ・デービッド日米韓首脳会合からのモメンタムを維持し、我々は、日米韓の間の毎年の複数領域における共同訓練の実施に向けた進展を歓迎する。米英間の大西洋宣言及び日英間の広島アコードにおけるコミットメントを認識し、また、インド太平洋地域及び欧州・大西洋地域がかつてないほど相互に関連している中で、日米両国は、日米英三か国共通かつ揺るぎない安全保障を強化するに当たり、2025年から開始される定期的な日米英三か国共同訓練の発表を歓迎する。

情報保全及びサイバーセキュリティに関する協力の深化:日米両国は、同盟が情報・コミュニケーション技術(ICT)分野において増大する脅威に先んじ、強じん性を構築することを確保するため、情報保全及びサイバーセキュリティに関する協力を引き続き深化させていくことを誓約する。日米両国はまた、重要インフラの防護に関する協力を強化していく計画である。日米両国は、IoT(Internet of Things)のサイバーセキュリティ・ラベリング制度の相互承認を達成するための行動計画を策定するため、関連する専門家による作業部会を設置する予定である。

人道支援能力の向上:頻発かつ深刻な気候変動に関連した自然災害及びその他の自然災害に迅速に対応することの重要性を認識し、我々は、日本における人道支援・災害救援のためのハブの設置に関する協力を模索する計画である。

日米防衛科学技術協力の深化:日米両国は、防衛装備庁・米国防省(研究・工学担当)定期協議(DSTCG)を通じて、二国間の科学技術協力を引き続き進展させる。防衛装備庁(ATLA)長官及び米国防次官(研究・工学担当)が共同議長を務めるDSTCGは、日米の防衛科学技術エコシステムをより統合し整合させることを目的としている。

地元への影響の軽減:日米両国は、抑止力を維持し、及び地元への影響を軽減するため、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である辺野古における普天間飛行場代替施設の建設を含め、沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施に強くコミットしている。

環境問題に関する協力:日米両国は、環境に係る協力を含め、在日米軍の安定した駐留に関する二国間の継続的な連携の重要性を確認する。

宇宙協力

 日米同盟の基盤を更に強化するとともに、我々は将来にも目を向けている。日米両国は、月面を含む宇宙探査を先駆けるとともに、主導し続ける。

歴史的な与圧ローバによる月面探査の実施取決めの署名:日米両国は、月面での有人宇宙飛行協力に関する歴史的な実施取決めに署名した。日本が月面で生活及び活動する宇宙飛行士を支援するための与圧ローバを提供し、維持する一方で、米国はアルテミス計画の将来のミッションで日本人宇宙飛行士による2回の月面着陸の機会を割り当てる。日米共通の目標は、アルテミス計画の将来のミッションで日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸することである。この与圧ローバは、宇宙飛行士が月面でより遠くまで移動し、より長い時間活動できるようにすることを目指している。

宇宙技術のための保障措置に関する協定の交渉:日米両国は、日本からの米国の商業宇宙打上げのための法的及び技術的枠組みを提供することを目的とする宇宙技術のための保障措置に関する協定の交渉を開始した。この協定は、宇宙関連の幅広い先端技術に関する新たな商機をもたらす可能性がある。

宇宙科学協力の拡大:2023年の日・米宇宙協力に関する枠組協定に基づき、日本は、ドラゴンフライ計画及びナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡計画を含むNASAのミッションに参加する。ドラゴンフライ計画は、土星の衛星タイタンにおける生命の可能性と生命前駆物質を調査する NASA のロボット計画であり、日本はドラゴンフライ着陸機の一連の科学機器に地震計を提供する。ローマン宇宙望遠鏡は NASA を代表する次世代天文台であり、日本はコロナグラフ装置をサポートするハードウェアと地上局の支援を提供する。また、日米両国は、太陽からの紫外線の分光観測を行い、太陽大気の謎に迫ることを目的としたJAXAの次世代太陽観測衛星SOLAR-Cでも協力する計画である。

地球低軌道(LEO)コンステレーションにおける協力の深化:日米両国は、将来的な地球低軌道(LEO)の極超音速滑空体(HGV)探知・追尾のコンステレーションに関する協力の意図を発表した。この協力には、実証協力、二国間分析、情報共有及び米国の産業基盤との協力の可能性が含まれる。日米のLEO衛星コンステレーション間の統合は、コミュニケーションを改善し、両国の宇宙能力の強じん性を増大させる機会を提供する。

衛星協力の強化:日米両国は、日本の準天頂衛星システム(QZSS)のための3か所の新たな地上運用局をアラスカ、カリフォルニア及びグアムに完成させたことを発表した。新たな地上運用局は、QZSS の精度を監視及び維持する日本の能力を強化する。さらに、日本は、2026 年3月までに米国防省からのペイロードを搭載したQZSS衛星を2基打ち上げる。

経済、技術及び気候変動に関する協力

 技術革新が21世紀の同盟を牽引する。日米両国は、AI、量子、半導体、クリーン・エネルギー等の重要・新興技術について、引き続き緊密に協力していくことを誓う。これらの技術における我々の協力及び投資の強化は、我々の経済及び技術の将来を確保するに当たり、両国のより良い結束及び繁栄のための機会を与える。

経済協力

主要な商業取引:日米両国の民間部門は、特に重要・新興技術等の分野において、日米の商業関係の強化がもたらす非常に重要な機会及び将来性を認識する。我々は、シリコンバレーにおいて日本のスタートアップ企業を支援するジャパン・イノベーション・キャンパス及び、東京における「グローバル・スタートアップ・キャンパス」の設立を歓迎し、イノベーションを促進するため日米両国への投資を加速させることを後押しする。我々はまた、我々の力強く活気ある経済関係を示し、数多くあるうちの一部をなす、以下の主要な新規及び最近の商業取引を歓迎する。


民間部門投資

・ マイクロソフト社は、AI、クラウドコンピューティング及びデータセンター、300万人を超える人材を育成する拡大デジタル・スキリング・プログラム、日本におけるマイクロソフト・リサーチ・ラボの設立、並びに日本のサイバーセキュリティの強じん性の向上を目的とした日本政府とのサイバーセキュリティ協力のために、今後2年間で29億ドルを日本に投資することを発表している。

・ グーグル社はノース・パシフィック・コネクトのデジタル連結性のために10億ドルを投資することを計画しており、これはNECと共に、日本、米国及び太平洋島嶼国間のデジタル通信インフラを改善するパシフィック・コネクト・イニシアティブを拡大することとなる。

・ 第一三共は、オハイオ州ニューアルバニーの同社施設に、新しい製造施設、研究所及び倉庫を建設するために、3億5,000万ドルを投資する意図を有する。同社は、米国において3年間で900人の雇用創出を見込んでいる。

・ アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社は、日本におけるAIその他のデジタルサービスの基幹となる既存のクラウドインフラを拡大するため、2027年までに、日本に約150億ドルを投資すると発表した。同社は、この投資計画が日本のGDPに最大370億ドル貢献し、日本の地元経済において毎年平均30,500人分を超えるフルタイム相当の雇用を支えると見込んでいる。

・ トヨタ自動車は、電気自動車及びプラグインハイブリッド車のバッテリー生産能力を強化するため、ノースカロライナ州グリーンズボロにて約 80 億ドルを追加投資し、3,000 人超の追加雇用を見込んでいることを発表している。この工場はトヨタにとって、北米初の自動車用バッテリー工場であり、現在までの投資総額は約 139億ドルに上り、5,100人の雇用を創出することが見込まれる。

・ ホンダ・エアクラフト・カンパニーは、ノースカロライナ州における新型モデル「ホンダジェット2600」の生産に、5,570万ドルを追加投資することを発表している。これにより、ノースカロライナ州におけるホンダジェット事業への投資総額は5億7,340 万ドルとなる。

・ UBE株式会社は、Justice40コミュニティであるルイジアナ州ワガマンの電池用電解液溶媒設備プロジェクトに、5億ドルを投資すると発表し、これにより60人の新規雇用の創出を見込んでいる。

・ 株式会社安川電機は、ウィスコンシン州及びオハイオ州にあるロボティクス及び半導体のモーション・ソリューションのための新たな製造施設に、約2億ドルの投資を行い、この投資により約1,750人を雇用し、同社の米国における拠点が約25%拡大することになるとしている。

・ 三井E&Sとその米国拠点子会社パセコ社及びブルックフィールド社は、カリフォルニア州における港湾クレーンの最終組立を行うことを検討している。米国でこのような港湾クレーンの最終組立てを行うのは、1989年以来のことであり、米国の港湾インフラの安全確保に貢献することが期待される。

・ 富士フイルム株式会社は、世界的な細胞治療薬の医薬品製造開発受託機関(CDMO)の能力を強化するため、米国の子会社2社に2億ドルを投資することを発表した。この投資はウィスコンシン州マディソン及びカリフォルニア州サウザンドオークスで予定されており、同社は、この投資により、最大160人の新規雇用の創出を推定している。

官民協働の取組

・ ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社は、高性能かつ監視能力の高いMQ-9Bシーガーディアン無人航空機(UAV)2機を、海上保安庁に提供することを計画している。同事業は、1億5,200万ドルの米国による輸出をもたらし、同国における700人の雇用を支援すると見込まれている。

・ 日本の科学技術振興機構(JST)の量子コンピュータに関するムーンショット・プログラムにおいて、信頼されるパートナーとして参加する初の外国企業として、インフレクション社は、同社の量子技術を用いた強力な量子コンピュータを開発するに当たり、日本の分子科学研究所(IMS)と協力する。

・ 米国の量子コンピュータメーカーであるクオンティニュアム社は、日本政府の国立研究開発機関である理化学研究所に対し、5年間にわたり量子コンピュータへの排他的なアクセスと使用を提供することを計画しており、これは量子サービス輸出5,000 万ドルに相当する。

金融セクターにおける協力の強化:日米両国は、国境を越えた投資の促進及び金融安定の支援のために、パートナーシップを強化することにコミットしている。そのために、我々は、資本市場の統合について議論し、重要となり得る改革を特定し、また、両国それぞれの金融セクターや規制当局から知見を持ち寄るべく、官民の関係者の参加を得て、本年中にラウンドテーブルを開催する意図を有する。

持続可能な投資における連携:日米両国は、引き続き協力し、成功している官民部門の連携の基盤をさらに積み重ねていくことを誓う。このイニシアティブによっては、持続可能な投資、リスク管理及び企業価値創造の分野において、ベストプラクティスを共有し、日米の企業にとって相互に有益な機会を促進するための対話及びフォーラムが可能となる。来年末までに、我々は、持続可能な価値創造(SX)を促進しながら日米の民間企業と投資機会を結びつけるための円卓会議を共同で1回以上開催する意図を有する。

透明、強じんかつ持続可能なサプライチェーンの構築:日米両国は、必要に応じて同志国とも協働しつつ、現世代及び成熟ノード(「レガシー」)半導体等の、相互に特定された戦略部門におけるサプライチェーンの課題及び機会に対応するための共同の取組を加速するため、日米経済政策協議委員会(日米経済版「2+2」)の枠組みの下で、経済産業省と米商務省との間で議論が開始されたことを歓迎する。日米双方は、例えば非市場的政策及び慣行によってもたらされるような、サプライチェーンの脆弱性に対応するために、戦略部門におけるそうした脆弱性についてより深い理解を得ることを含め、協力することを模索する。

重要・新興技術及びイノベーション

AI 研究協力の強化:G7 広島サミットの際に立ち上げられた、量子コンピューティング及び半導体工学における画期的な産学戦略的パートナーシップに基づき、日米両国は、エヌビディア社、アーム社、アマゾン社及びマイクロソフト社並びに日本の企業連合からの資金提供を通じ、ワシントン大学及び筑波大学間並びにカーネギーメロン大学及び慶應義塾大学間で、1億1,000 万ドルの新たな AI 共同パートナーシップを歓迎する。この革新的なパートナーシップは、AIの研究開発を前進させ、最先端技術における日米のグローバルなリーダーシップを強化することが期待される。我々は、コンピューティング及び開発分野における協力可能性を模索する、日本の産業技術総合研究所(AIST)とエヌビディア社との間のAI及び量子技術協力の開始を歓迎する。我々は、文部科学省と米エネルギー省との間の高性能コンピューティング及び AI に関する新たな事業取決め、並びに理化学研究所とアルゴンヌ国立研究所との間の協力促進に向けた、AI for Science に関する新たな覚書を歓迎する。我々は、さくらインターネット及びソフトバンク等の日本の計算資源企業へのエヌビディア社のGPUの提供や、グーグル社やマイクロソフト社による日本の AI 基盤モデル開発企業へのその他の計算資源の提供を含む、生成AIの基盤モデル開発に向けた、日米企業間の協力を歓迎する。

量子技術パートナーシップの立ち上げ:量子コンピューティングにおける日米二国間産業協力の促進に向けて、米国国立標準技術研究所(NIST)は、量子技術の強固なサプライチェーン構築及び関連する標準化のために、日本の産業技術総合研究所(AIST)と提携する意図を有する。シカゴ大学、東京大学及びソウル大学は、国際的な産業構造において量子に携わる人材を育成し、共通の競争力を強化するためのパートナーシップを設立した。

半導体分野における協力の強化:我々の半導体技術における協力の長い歴史に基づき、我々は、研究開発ロードマップ及び人材育成を含む、日米協力アジェンダの策定に向けた、日本の最先端半導体技術センター(LSTC)と米国の国立半導体技術センター(NSTC)や米国の国家先端パッケージング製造プログラム(NAPMP)等の米国の研究イニシアティブとの間における議論の開始を歓迎する。我々は、特に次世代半導体や先端パッケージングに関する、日米の民間部門の強固な協力を歓迎する。日米企業は、アイオン(IOWN)グローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している。

 米労働省は、先端半導体研究及び製造における次世代の設計者、製造者及び専門家を育成する最適な方法を議論するための、米国の民間部門及び教育機関との技術ワークショップへの参加に向け、半導体分野における日本のカウンターパートを招待する計画である。

安全、安心で信頼できるAIのための協力強化:日米両国は、パートナー政府及びAI関係者からの賛同を拡大することにより、広島 AI プロセスを更に前進させることにコミットしている。日米両国は、両国の AI セーフティ・インスティテュートの設立を認識し、相互に支援する意向であり、また、AIの安全性に係る相互運用可能な基準、手法及び評価等に関する将来的な協力にコミットした。日本のAI事業者ガイドラインとNISTによる AI のリスクマネジメントフレームワークとのクロスウォークが現在進行中であり、AIのための政策枠組みの相互運用性を促進することを目的としている。

合成コンテンツによるAIのリスク及び危害の低減:日米両国は、AIが生成するコンテンツのリスク及び危害の低減に関して協力することを誓う。両国は、政府制作の公式コンテンツを認証及びラベリングするとともに、AIが生成するコンテンツや、AIによって改変又は改ざんされたコンテンツを検出及び特定することにより、可能かつ適切な範囲で、国民に透明性を提供することにコミットする。両政府は、技術研究及び規格開発に関し、独自に、また協力して措置を講じる計画である。

新たな科学技術パートナーシップの立ち上げ:日米両国は、米国務省の「科学技術を通じたグローバル・イノベーション(GIST)」プログラムを通じ、イノベーションを促進し、知識交換を円滑にし、また、科学技術に貢献する起業家の取組を推進するパートナーシップを発表する。日米両国はまた、日米デジタルイノベーションハブ・先端技術ワークショップのイニシアティブの下での、デジタル及び新興技術の管理能力向上を目的とした人的資本育成に向けた大学及び企業間の共同の取組を支持する。

国立科学財団の協力拡大:日米両国は、イノベーション・コープス(I-Corps)プログラムに関する協力を目的とした、科学技術振興機構(JST)と米国国立科学財団(NSF)との間の協力覚書の署名を歓迎する。この起業家育成プログラムは、研究者がより効果的に顧客ニーズに合った発見を行えるよう支援することで、科学技術の商業化を加速させることを目的としている。グローバル・センター・プログラムを通じて、NSF はバイオエコノミー研究に対する2,500万ドルの助成にコミットしており、JSTは少なくとも3つの助成を支援する。両機関はまた、我々の工学の未来に革新をもたらす材料の設計に関する研究について協力する計画である。

科学技術分野における国際共同研究の強化:日米両国は、科学、技術及びイノベーションに関する、両国の研究機関及び大学間の連携強化に加え、AI・情報、バイオ、エネルギー、マテリアル、量子、半導体、通信、健康・医療の8分野における先端国際共同研究推進事業/プログラム(ASPIRE)のような、日米の人材の移動及び循環の促進を目的とする共同研究を通じた研究者の交流を歓迎した。我々は、全球海洋観測及び北極域研究に関する更なる二国間協力を歓迎する。パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)及び福島国際研究教育機構(F-REI)は、エネルギー、ロボット、放射線科学、原子力災害に関する取組及び農業等の選ばれた分野における共同研究の機会を拡大するため、協力関係を構築する協力覚書の締結に向け取り組んでいる。

通信ネットワークへのオープンで相互運用可能なアプローチの促進:世界がより相互に接続される中、日米両国は、相互運用性、安全性及びマルチベンダー性を備えた通信ネットワークへの、オープンで標準に基づくアプローチを引き続き推進することを誓う。日米両国は、インド太平洋諸国を含む第三国において、Open RANの商用化を促進する機会を模索する意図を有する。日米両国は、二国間及び日米豪印(クアッド)等の場を通じて志を同じくするパートナー国との間で、継続的に関与することにコミットする。

気候変動及びクリーン・エネルギー

クリーン・エネルギー及び気候変動対策における日米協力の拡大:日米両国は、それぞれの国内措置の実施に関する新たなハイレベル対話を立ち上げ、この 10 年間のエネルギー移行の進展を加速させ、補完的かつ革新的なクリーン・エネルギー・サプライチェーンを促進し、産業競争力を向上させるため、グリーントランスフォーメーション(GX)推進戦略及び米国のインフレ削減法を含む、それぞれの国内措置の実施並びにそれぞれの相乗効果及び影響を最大化する。日米気候パートナーシップの前進のため、我々は、関連するパリ協定締約国会合(CMA)の決定を想起しつつ、2030 年の国が決定する貢献(NDC)を積極的に実施し、気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標に沿った、野心的な2035年NDCを策定することを計画している。我々は、全ての主要経済国が、全ての温室効果ガス、セクター及び分類を含む経済全体の総量削減目標を反映した、大胆かつ1.5℃の道筋に整合的な 2035年NDCを提出し、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速させるという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行うことにコミットすることを奨励する。日米両国はまた、現実的な増額及び拡大された拠出国ベースを反映した新規合同気候資金数値目標に関する国連気候変動枠組条約第29回締約国会議の成功を確保するために共に取り組む意図を有する。

質の高いインフラ投資の拡大:日米両国は、グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)IPEF 投資アクセラレーターを通じたインド太平洋における協力を含め、PGIIの下、投資を促進するための戦略的経済回廊において協働するとともにパートナー諸国と共に取り組むことを計画している。日米両国は、PGIIのロビト回廊に沿ったものを含め、重要鉱物等に関するプロジェクトにおける協力を引き続き模索する。日米両国は、質の高いインフラ事業を認証するため、OECDにおけるブルー・ドット・ネットワーク事務局の設置に取り組んできた。

強じんな重要鉱物サプライチェーンの構築:日米両国は、重要鉱物の主たるサプライチェーンを多角化するものを含め、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)及び強靱で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)に向けたパートナーシップを通じたものを含め、共同プロジェクトを模索し、日本、米国及びインド太平洋地域の他の志を同じくするパートナーにおける電気・電子機器廃棄物のリサイクルに関する取組を支援することを決意する。そのために、米国は、PGIIのロビト回廊の開発に対する我々の共通のコミットメントと整合する、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とコンゴ民主共和国のジェカミン社(GECAMINES)との間の覚書を歓迎する。

 日米両国は、回収事業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する OECD 理事会決定の下、環境上適正なリサイクルのため、年間1億7,000万ドルの米国から日本への電子スクラップ輸出を引き続き促進する意図を有し、脱炭素化及び環境への負の影響の削減に不可欠な重要鉱物及び原材料の循環性の増加に関する政策対話の促進を通じて協力を強化する。

エネルギー協力の深化:日米両国は、気候変動の影響と闘い、今世紀にクリーンで強じん性のある経済成長のための土台を築く上で、クリーン・エネルギーの重要性を認識する。日米両国は、フュージョンエネルギーの実証及び商業化を加速するための日米戦略的パートナーシップを発表した。日米両国は、ゼロ・エミッション・エネルギーへの世界的な移行を加速させ、他の化石燃料輸入国及び生産国と協力し、化石燃料バリュー・チェーン全体でメタン排出を実行可能な限り最小化することへのコミットメントを再確認した。両国はまた、国際海運部門の脱炭素化に向けた世界的な取組を支援するため、新たな穀物回廊を含むグリーン海運回廊の開設を支援する意図を有する。

 本日、我々は、日本が米国のFloating Offshore Wind Shotの最初の国際的な協力者として加わることを発表する。日本は、2035年までに深海における浮体式洋上風力発電のコストを70パーセント以上削減し米国内導入で15GWの浮体式洋上風力発電の導入を目指すという、米国のFloating Offshore Wind Shotの野心を認識する。このパートナーシップを通じて、日米両国は、2035年までに大深海における浮体式洋上風力発電コストを劇的に削減するエンジニアリング、製造及びその他技術革新分野におけるブレークスルーを加速させるため、各国の事情を考慮しつつ、米国の Floating Offshore Wind Shot に沿った世界的な野心に向けて前進するために協力する。日米両国は、クリーンエネルギー・エネルギーセキュリティ・イニシアティブ(CEESI)を通じて毎年、進捗状況を公表すると発表した。世界的な野心に向けて、日本は「洋上風力産業ビジョン」の取組に加え、約1,200億円のグリーンイノベーション基金での取組で貢献していく。米国はまた、アカデミアとの連携を通じた浮体式洋上風力のコスト削減及び量産化達成を目指し、日本が新たに立ち上げた産業プラットフォーム「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」を歓迎する。米国は、バイデン・ハリス政権下において、エネルギー省の洋上風力エネルギー推進戦略の下、累計 58 億ドルを超える官民部門のサプライチェーン投資を活用する取組を継続する。我々はまた、グリーンイノベーション基金及びサンディア国立研究所が主導する Perovskite PV Accelerator for Commercializing Technologies (PACT) Center を通じ、ペロブスカイト太陽電池技術の研究開発を進展させる意図を有する。

クリーン・エネルギーを支えるインフラの拡大:日米両国は、再生可能エネルギー導入に関する野心的な目標に歩調を合わせるため、送電網及びエネルギー・インフラを拡大し、近代化する必要性を認識する。我々は、送電網への投資を促進する方法を模索し、送電網の近代化のためのベストプラクティスを共有することを計画している。我々はまた、企業や産業界が、自らの脱炭素化目標を達成し、人工知能、量子コンピューティング、データセンター等の電力集約型産業におけるイノベーションを推進するために、大型原子炉、革新炉及び小型モジュール炉(A/SMR)を含む、クリーン・エネルギーへのアクセスを支援するためのマーケットベースの電力購入契約の利用を拡大することを検討する。

安全かつ安心な原子力エネルギーの導入のための協力:日米両国は、2050年までに世界全体の原子力発電容量を3倍にするというCOP28の誓約への我々の参加で確認されたように、我々の包括的な気候変動目標を達成するために、民生用原子力の極めて重要な役割を認識する。このビジョンを追求するに当たり、米国は、2030年の脱炭素化目標を達成するための岸田総理大臣による原子炉再稼働計画を称賛する。日米両国は、A/SMR に関する我々の継続的な協力を通じてもたらされる変革の機会を認識し、この 10 年の間にA/SMRを導入するための二国間及び多数国間の共同取組に関する、両国の継続的なパートナーシップを確認する。

 我々はまた、福島第一原子力発電所の廃炉、特に燃料デブリ取出しの着実な実施のための研究協力を深化させるため、東京電力及び米国の研究所と共に、福島第一廃炉パートナーシップを立ち上げることを計画している。エネルギー移行とエネルギー安全保障の拡大のための原子力エネルギーの重要な役割を認識し、日米両国はまた、ロシア産原料を使用しない濃縮ウラン生産能力への官民投資を促進することを決意する。

メタン排出データの改善:日米両国は、他の国際的なパートナーとの協力も含め、気候変動緩和策の策定を支援するために、低・中所得国の政府に温室効果ガス情報を提供することを含め、温室効果ガスの排出に関する衛星観測データを共有し、誰もがそれを自由に利用できるようにするために連携する。日米両国はまた、メタン削減対策を世界的に支援するため、正確で透明性のあるメタン排出データを整備及び普及させることを目的として、国際メタン排出観測機関等既存の取組を活用する意図を有する。

カーボンマネジメント:日米両国は、パリ協定の目標達成を支援するカーボンマネジメント技術の開発を追求すべく、カーボンマネジメントチャレンジ、クリーン・エネルギー大臣会合(CEM)炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)イニシアティブ及びミッション・イノベーションCDRローンチパッドへのコミットメントを改めて確認する。加えて、米国は、アラスカと日本との間の国境を越えた二酸化炭素輸送・貯留ハブの可能性を評価するため、日本の関係者との協力を支援することにコミットする。例えば、米国は、二酸化炭素輸送の実現可能性調査、並びにライフサイクル評価及び技術経済分析等の当該目標を支援するツールを追求している。我々は、日米企業間で進行中の CCUS/カーボンリサイクル・プロジェクトの進展を歓迎する。合成メタン(e-methane)については、二酸化炭素の二重計上を回避するため、日本企業は米国企業と基本合意書(LOI)を締結している。

持続可能な航空燃料:日米両国は、2050年までに温室効果ガス排出量をネット・ゼロとする目標を含め、航空産業の脱炭素化という共通目標を改めて確認する。我々は、石油由来のジェット燃料と比較して、ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量の大幅な削減をもたらす30億ガロンのSAFの実現という米国の持続可能な航空燃料(SAF)グランド・チャレンジの2030 年目標、及び日本の航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという日本の 2030 年目標の重要性を認識する。これらの目標の達成を支援するため、米国は、エタノール由来のものを含む、世界的に利用可能なSAFや原料の供給の増加の支援を模索することを誓うとともに、ICAOにおいて、世界のSAF原料及び製品の炭素集約度を正確に測定し、積極的に削減するための解決策を特定するために取り組むことをコミットする。同時に、日本は、経済産業省による支援措置を通じて、Alcohol-to-Jet(ATJ)技術を含む SAF 技術の開発及び商業化のための研究開発の取組を推進することにコミットする。

水素及びその派生物並びに地熱に関する協力:我々は、水素ハブ構築に関する日米企業間の協力の進展を歓迎し、炭素集約度に基づく大規模かつ強じんなグローバル・サプライチェーンの構築及び水素の利活用拡大に向けた更なる協力への期待を共有した。2023年4月のG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合において、経済産業省と米国エネルギー省との間で、地熱エネルギーに関する協力覚書(MOC)が署名された。このMOCを通じて、日米両国は協力のための次の段階を模索してきた。

米国インフラへの投資:国土交通省及び米運輸省は、アムトラックによるテキサス・セントラル高速鉄道プロジェクトの主導を歓迎した。このプロジェクトは、新幹線技術を活用するものであり、最近、米連邦鉄道局(FRA)の回廊選定開発補助金プログラムとして選定された。プロジェクトの開発取組及びその他の要件が成功裏に完了すれば、本プロジェクトは、資金調達及び融資の将来的な機会を得る可能性がある。

バイオテクノロジー、バイオ医薬品及び保健に関する協力

がんに対する共闘:我々の知るがん撲滅のためのバイデン・キャンサー・ムーンショットに整合する形で、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)及び米国の食品医薬品局(FDA)が協働し、がんの治療薬に関する情報交換を行う意図を有する。特に、プロジェクト・ノゾミ及びプロジェクト・オービスのイニシアティブの下、PMDA及びFDAは、患者が早期にがん治療薬を入手できるよう取り組み、国際共同治験及び治療薬不足を防ぐ方法を含め、将来の治療薬開発について議論する意図を有する。

医薬品イノベーションの推進:日米両国は、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)がワシントン D.C.都市圏に事務所を設置する意図を有することを歓迎する。同事務所は、PMDA と米国の食品医薬品局(FDA)との協力を強化し、民間企業との情報共有を促進する機会を提供する。

CDC 地域事務所の開設:米疾病予防管理センター(CDC)は、2月に東京に東アジア・太平洋地域事務所を開設した。この新たな地域事務所は、世界健康安全保障の中核となる能力に加え、疾病の脅威の発見及び迅速な対応並びに知識及び情報の交換を向上させるための協力を強化するべく、同地域の26の国及び地域に支援を提供する。

国際保健協力:外務省及び米国際開発庁(USAID)は、共通の国際保健の優先課題を推進する方法について引き続き議論していく。

バイオテクノロジー及びヘルスケア協力の拡大:日米両国は、責任ある開発の促進、重要技術の保護及び信頼できる安全なサプライチェーンの確立に焦点を当てた、新たな日米バイオテクノロジー・ヘルスケア協議の立ち上げを歓迎する。この交流は、日米の関係省庁に加え、アカデミア及び民間部門のパートナーとの緊密な連携による共同イベントを含む、産業競争力を高めるための取組を優先する。また、緊密な政策調整を通じて、新興バイオテクノロジーの安全、安心かつ責任ある開発及び利用を優先するための取組を強化する。

外交、開発及び人道支援

 世界のリーダーとして、日米両国は、欧州・大西洋地域とインド太平洋地域の安全保障は相互に関連しているとの確信の下、平和で安定したインド太平洋地域の確保に引き続きコミットしている。これらの地域を超えて、日米両国は、我々が共同で直面する世界的な課題を認識し、全ての国、特に脆弱な国を守る法の支配を堅持するというG7広島サミットでのコミットメント及び G7 を超えたパートナーとの協力の継続を改めて確認する。そのために、我々は、グローバルな外交及び開発の取組を調整するための、外務事務次官/国務副長官級で開催する新たな戦略的対話を立ち上げる意図を有する。日米両国は、ウクライナの自衛権並びに長期的な安全保障及び経済復興を支援することに引き続きコミットしている。米国は、ウクライナに対して、人道、開発、軍事、経済支援として746億ドルを拠出してきた。日本は、ウクライナに継続的な支援を提供してきており、そのコミットメントは合計で121億ドルに上る。我々はまた、ガザにおける人道危機への対処にコミットしている。日本は、2023年10月7日以降、パレスチナの人々に対し約1億700万ドルの支援を提供しており、米国は2023年10月7日以降、ガザの民間人に対して1億8000万ドルの人道支援を拠出してきた。日米両国はさらに、ハイチ情勢の重要性及び緊急性を強調し、国連において承認されたハイチ多国籍治安支援(Multinational Security Support: MSS)ミッションの任務に対する支持を改めて表明する。

インド太平洋地域への投資:国際協力銀行(JBIC)及び米国際開発金融公社(DFC)は、インド太平洋地域及びその他地域でのプロジェクトに対する資金供給において、更なる協調を可能にするよう覚書を更新した。

 日米両国は、マーシャル諸島共和国の経済の持続性を支援するため、同国のアマタ・カブア国際空港の改善の重要性を認識する。

 昨年10月の海底ケーブルへの米豪の共同資金拠出コミットメントに続き、日米両国は、信頼でき、より強じんなネットワークを構築するために、志を同じくするパートナーと連携しつつ、史上初めて接続することとなるツバルのための海底ケーブルシステム及びミクロネシア連邦のための海底ケーブルシステムへの1,600万ドルを含む、太平洋地域における海底ケーブル整備のための資金を拠出する意図を有する。加えて、台湾もまた、ツバルの連結性を実現するための資金の提供を計画している。

 東南アジアでは、米国は日米メコン電力パートナーシップ(JUMPP)に約500万ドルを新たに提供することを発表し、これにより2019年のJUMPP 立ち上げ以来、米国のコミットメントは3,500万ドルに達した。この500万ドルの提供は、最大2,000万ドルの新たなJUMPP資金を活用するため、米国議会と協力する計画であるというハリス副大統領の発表実現の一助となる。メコン地域における日米両国の取組は、カンボジア、ラオス、タイ及びベトナムにおいて、国境を越えた電力取引とクリーン・エネルギーの統合を拡大するための100以上の技術協力プロジェクトを支援してきた。

国際金融アーキテクチャーの強化:日米両国は、我々の共通の価値を促進するために、国際金融アーキテクチャーの強化と、開発途上国への支援における我々の協働を継続する意図を有する。その中には、MDB 改革アジェンダの推進、地球規模の課題に取り組む低・中所得国を支援するための世界銀行による300億ドルを越える新たな融資余力を可能にする既に予定している貢献の計画、野心的な国際開発協会及びアジア開発基金の増資の確保、G20 共通枠組を通じた債務措置の推進及び債務の透明性の向上等を通じた、低・中所得国の成長の潜在性や気候変動・開発といった重要な分野への投資能力を妨げている債務の脆弱性への対処、並びに世界的な金融セーフティネットの中心となるクォータを基礎とする機関である国際通貨基金(IMF)の強化を含む。

核軍縮・不拡散及び原子力の平和的利用へのコミットメントの深化:バイデン大統領は、日本による多核種除去設備(ALPS)処理水の科学的根拠に基づく、安全かつ責任ある海洋放出を称賛した。両首脳は、文部科学省と米エネルギー省が、京都大学の臨界集合体実験装置と日本原子力研究開発機構の材料試験炉臨界実験装置から全ての余剰の高濃縮ウラン(HEU)を米国に返還したことと、近畿大学教育研究炉で使用する燃料を高濃縮ウラン燃料から低濃縮ウラン燃料に転換し、所有する高濃縮ウランを米国に返還するという新たな共同のコミットメントを歓迎した。米国はまた、軍縮に向けた共通のコミットメントを示すため、日本が主導する「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ」の取組に参加した。

ジェンダーに基づくオンライン上のハラスメント及び虐待との闘い:ジェンダーに基づくオンライン上のハラスメント及び虐待に関する行動のためのグローバル・パートナーシップを含む、技術によって助長されるジェンダーに基づく暴力と闘うためのパートナーシップの重要性を認識し、日米両国は、ジェンダー平等とデジタル技術との連関における我々の取組を強化することに同意する。これらの取組は、ますます技術への依存が進む世界において、人権及びジェンダー平等を含む我々が共有する価値観を推進し、女性・平和・安全保障(WPS)の目標を前進させるというコミットメントを強調するものである。

外国による情報操作への対処:日米両国は、協力することにコミットしており、昨年、外国からの情報操作に係る日米間の協力文書にコミットした。日米両国は、外国による情報操作はインド太平洋地域及びそれを超えた地域にとっての挑戦であり、二国間及び多国間の協力の強化が必要であることを認識する。

商用スパイウェアと闘うためのパートナーシップ:日本は、「商用スパイウェアの拡散及び悪用に対抗するための取組に関する共同声明」に参加した。日米両国は、相互の国家安全保障上の利益を脅かし、人権侵害を可能にする監視ツールの濫用と闘うため、国内規制を実施し、国際的な連合を構築することにコミットしている。

拡大する国境を越えた抑圧の脅威への対抗:日米両国は、国境を越えた抑圧に対抗するためのパートナーシップを強化することにコミットしている。国境を越えた抑圧の高まりに効果的に対処するためには、多国間での協調した対応が必要である。

社会全体の強じん性の強化:日米両国は、日本の防災科学技術研究所、文部科学省及びエヌビディア社による国家規模の強じん性に関する共同研究開発の取組を歓迎する。

強じんで責任ある水産物サプライチェーンの構築:日米両国は、経済産業省及び米通商代表部が主導する「サプライチェーンにおける人権尊重及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォース」の下での取組の一環として、水産物のサプライチェーンにおける強制労働を撲滅し、同サプライチェーンにおける責任ある労働慣行を推進する方法を模索することについて協力することを誓う。我々はまた、強化された貿易チャネル及びビジネス機会の拡大を通じて、強じんな水産物サプライチェーンを構築する意図を有する。

食料安全保障及び持続可能な農業の強化:既存の食料安全保障の取組を強化するため、日米両国は最近「持続可能な農業に関する日米対話」を立ち上げ、農業生産から排出される温室効果ガスの削減に関する共同研究を継続することを計画している。我々は共に、天然資源を保護し気候変動を緩和しつつ、増加する世界人口に食料を供給できる持続可能で強じんな農業・食料システムを構築するため、新たな技術と気候スマートな生産の実施を推進する意図を有する。その一例として、日米両国は「適応作物と土壌のためのビジョン(VACS)」の種子・土壌の健全性に関する研究の創設に貢献する意図を有する。この研究は、開発途上のパートナー国における多様な食料生産の強化に貢献する。

人と人とのつながり

 我々の人と人とのつながりは、日米同盟の基盤となっている。市民社会は、過去 170年にわたる日米両国の緊密な関係の原動力のひとつとなってきた。日米両国は、最も長く駐日米国大使を務めたマンスフィールド大使の遺産と、マンスフィールドセンター及びマンスフィールド財団を通じた同大使の日米関係へのとてつもない貢献を認識する。

 日米同盟の成功は、両国民の絆によるものであり、日米両政府は、日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)、JETプログラム、国際交流基金、カケハシ・プロジェクト、米日カウンシルのトモダチ・イニシアチブ、アジア高校生架け橋プロジェクト+等の組織やプログラムの成果及びそれらがもたらした日米同盟への貢献を高く評価している。日米両国は、米国全土の38の日米協会及び日本全国の29の日米協会のユニークかつ歴史的な役割を称賛する。

 今年は、2025年の大阪・関西万博開催を控えた「日米観光交流年2024」である。1988年以来初めて、米国は万博の米国パビリオンの設計、建設及び運営を支援する連邦資金を承認した。

 日米両国は、緊密なつながりを育み、現在の変革者と次世代のリーダーとの緊密な結びつきを促進するというコミットメントを堅持する。

教育交流の強化:日米両国は、アップル社、ブラックロック財団、渡邉利三財団、その他の設立資金提供者からの支援を受けて、日米関係の未来を「描く(map)」日米の高校生及び大学生のため、米日カウンシルが運営する新たな1,200万ドルの「ミネタ・アンバサダー・プログラム(MAP)」教育交流基金を発表する。日米関係への長期的な投資として、この基金は双方向の交流の機会を増やすことを計画している。この観点から、我々はまた、日本学生支援機構を通じて日本人学生への奨学金を拡充する日本の新たなイニシアティブを歓迎する。我々はまた、二国間の高校・大学間の教育協力の重要性を認識し、学位取得を目指すものや職業訓練及びインターンシップも含め、中長期的な教育交流を強化する。両政府はまた、我々の旗艦教育交流プログラムが、我々にとって最も重要な経済安全保障上の優先分野を支援することを確保するため、フルブライト・プログラムを通じた日本における科学・技術・工学・数学(STEM)分野への奨学金を50年ぶりに再開するとともに、日本のフルブライト参加者への授業料の上限を撤廃することを発表する。

次世代のリーダーへの関与:バイデン大統領と岸田総理大臣は、グローバルな民主主義を推進し、日米関係を強化するために、全米日系人博物館が新たに創設した渡邉利三デモクラシー・フェローシップを称賛する。この新しいフェローシップは、今夏の8名によるパイロット・プログラムを皮切りに、日本の将来のリーダーたちに米国を体験する機会を提供することを目的とし、民主主義と日米関係の強化を目指す日本のリーダーやその他の人々とネットワークを築き、将来、安定して安全な民主主義国家の提唱者となることを約束する新進気鋭の専門家集団を育成する。

 我々は、米日カウンシルによるマウイ島復興のための地元高校生と指導者・専門家の交流プログラムの取組を称賛する。我々はまた、次世代育成のため、日系米国人リーダーの招聘プログラムの対象を拡大するという日本の意向も歓迎する。

専門家同士の交流促進:我々は、気候変動や防災等インド太平洋地域が直面する共通の課題に取り組む専門家や実務者間の交流を促進する国際交流基金のイニシアティブを歓迎し、今後の更なる発展を期待する。両首脳はまた、マンスフィールド記念日本・インド太平洋研究教授職の創設を歓迎した。

女性・平和・安全保障(WPS): 4月3日から4日にかけて、女性・平和・安全保障(WPS)議会人ネットJAPAN は、WPS の世界的な推進に向けた共通のコミットメントを再確認するための立法府間の交流として、米国WPS議員連盟メンバーであるシドニー・キャマラガー・ドーブ下院議員及びギータ・ラオ・グプタ女性問題担当大使を受け入れた。

米国における日本語専門家の交流機会の拡大:日米両国は、日本語専門家が、米国の教育機関や教育方法を観察し、日本語教育に関する専門的な知識を米国の同僚と共有する交流機会を拡大するための協力覚書に署名した。我々はまた、米国における対面による日本語学習の価値を強調し、米国若手日本語教員(J-LEAP)派遣事業拡大のための取組を歓迎する。

文化・教育交流の強化:日米両国は、日米文化教育交流会議(CULCON)が人と人とのつながりを更に強化する上で果たす役割に対する、日米両国の信頼を改めて確認した。日米両国はまた、第1回日米教育におけるハイレベル政策対話を歓迎し、同対話で提起された問題を検討し、フォローアップするため、第2回対話の準備を加速させるよう、それぞれの関係省庁に指示する。我々はまた、音楽、映画、アニメ、漫画等の、創造的・文化的コンテンツ産業の振興等を通じた文化交流の重要性を認識する。

観光協力の強化:日米観光交流年に合わせ、Airbnb社は日本の観光関係者を米国に招き、地方観光のベストプラクティスを研究するとともに、それぞれの国の地域経済を支援するため、国際ビジター・リーダーシップ・プログラムに100万ドルを拠出すると発表した。

 米国はまた、米国立公園局がタイダル・ベイスンとウェスト・ポトマック・パーク周辺で複数年にわたる修復プロジェクトを開始するに当たり、国立公園局を支援するとの日本の意向を歓迎する。毎年、この桜祭りのために、米国中や世界中から何百万人もの観光客がナショナル・モールを訪れる。1912年に日本の人々から米国に最初に贈られたこれらの桜の木々は、日米の緊密な友好の絆を永続的に思い起こさせるものである。

グローバル・エントリー・プログラムの拡大:米国は、米国の空港に到着した際、事前に承認された低リスクの旅行者に迅速な通関を許可するトラステッド・トラベラー・プログラムである、税関・国境取締局のグローバル・エントリー・プログラムに日本が今年正式加盟する見込みであることを歓迎する。日本がグローバル・エントリーに全面的に参加することは、両国間の旅行と通商を促進しつつ、両国の安全保障を強化する機会を提供する。

民主主義の強じん性の強化:バイデン大統領と岸田総理大臣は、民主主義の強じん性に関する日米戦略対話の立ち上げを歓迎し、2024年3月8日の第2回戦略対話を通じてコミットメントを改めて確認した。