[文書名] 日米文化教育交流会議(カルコン)第31回合同会議沖縄(日本) 共同声明
前文
日米文化教育交流会議(カルコン)は、日米の国民が互いについて学び、両国の戦略的な協力を維持する政府外のパートナーシップを構築するために1961年に設立された。設立以来、日米関係は様々な課題に直面し、専門家のリーダーシップと社会のあらゆるレベルにおける分野を越えた細やかな連携によりこの課題を克服してきた。
過去60年間の歩みが実を結び、高市早苗首相とドナルド・J・トランプ大統領は、「日米同盟の新たな黄金時代」を掲げて、両国による経済安全保障を強化し、経済成長を推進。これにより世界を持続的に繁栄に導く後押しをすると発表した。
カルコンは、分野を越えた人と人の関係を基盤とする二国間パートナーシップにとって今もなお重要な存在である。日米のパートナーシップは、学生、専門家、地域社会の代表、研究者、政府関係者の交流を通して更新・強化され、有意義なエンゲージメントの土台を形作っている。カルコンは、こうした官民部門のリーダーや専門家から成る会合の主催者として、重要な役割を果たしている。カルコン委員は、安全保障と繁栄を追求する日米同盟を継続的に維持し発展させ続けるために、共通の価値観と理想に基づき幅広い見地から政策提言を策定している。
日米両国はこれまでにも、民主主義的な価値観へのコミットメントの上に築かれたパートナーシップを称える重要な機
会を度々迎え、インド太平洋地域の平和と安定の推進によってさらに密接につながり合った繁栄する世界を形作るためリーダーシップを発揮している。おそらくその最大のものは、2025年の大阪・関西万博であり、日本の観光業界の発展に寄与した。まもなく迎える独立宣言250周年を記念した米国パビリオンを、記録的な数の来場者が訪れた。
2023年のカルコン合同会議以来、カルコンは、敬意と連携を軸に据えた日米間の人と人の結びつきを強化するため、多様な取り組みを主導してきた。取り組みのひとつとして、スミソニアン国立アジア美術館(NMAA)と共催でカルコン・シンポジウムが開催され、日本のクリエイティブ産業が世界に与える影響、サブナショナル外交、日米間のデジタル資源へのアクセス拡大に関する専門家によるパネルディスカッションが行われた。この2025年のシンポジウムは、日米政府の代表団を迎えただけでなく、ワシントンの幅広い日米コミュニティにも開かれたものであった。
カルコンは、日米各地でのリーダーシップ会合の開催や、企業、市民社会、教育界、政府のステークホルダーへの働きかけを通じて、地域的なつながりを模索し推進し続けた。日本と米国は、互いに相手国から見て最大の投資国となっている。日本企業は米国で大きな存在感を確立し、自動車、電気・電子機械、貿易、小売などの分野で雇用を創出し地元経済に貢献している。米国企業は、日本市場においてテクノロジー、医療、消費財、金融、保険などの業界に投資してきた。こうした投資が知識、技術、経営慣行の移転につながり、経済成長、イノベーション、安全保障を促している。
日本でカルコン会議に参加した人は、二国間の青少年交流や地域活性化のための米国の科学産業との農業連携の意義について学び、米国での参加者は、日本企業が米国の地域社会に深く関わっており、安定と発展に寄与していることを学んだ。また日米いずれにおいても、カルコン会議の参加者は、分野を横断して日米の経済的な結びつきが強い地域では、大学が、ビジネス連携だけでなく日米の次世代の人的資本の教育に大きな役割を果たしていることを学んだ。
こうした気づきと機運に基づき、カルコンは日米パートナーシップの強化という使命を継続するために、2026年2月に日米の委員に加えて、産学官および他の部門のパートナーを集めて沖縄(日本)で第31回カルコン合同会議を開催した。日米の二国間パートナーシップの強化という取り組みを続けるために参加者が一堂に会した。
沖縄という開催地は、日米間のサブナショナル外交を体現する場に相応しかった。パネリストは、貿易と交流の拠点としての沖縄の豊かな文化と歴史について地元の代表およびリーダーから学んだ。またパネリストは、国際協力と人的交流を促進するパートナーシップを含め、日米の安全保障同盟、高等教育、先進的な研究に関連する地域社会の現在の取り組みについても学んだ。
元駐米大使の佐々江賢一郎氏、アフラック生命保険株式会社の代表取締役会長兼アフラック・インターナショナル社長のチャールズ・D・レイク氏が、第31回合同会議の共同議長を務めた。
米国大統領と日本国内閣総理大臣から、カルコンの持続的な取り組みへの支援を表明する祝辞が寄せられた。両国首脳は、日米は深いつながりを共有しており、両国はこれまで互いから学び、信頼を構築し、日米同盟を強化する継続的な関係性を形成してきたと述べた。両国首脳は、教育の機会を推進し、文化的理解を深め、両国間の人と人のつながりを育むことによって、カルコンがこの絆を強める上で重要な役割を果たしていることを認めた。
議論の概要
日本と米国のカルコン委員が中間報告書を発表した第30回カルコン合同会議以降、(1)デジタル時代の情報アクセスと共有に関するワーキンググループ、(2)サブナショナル外交と地域間交流の促進ワーキンググループと言うふたつの二国間のワーキンググループが、それぞれの大きな使命の下で多様な課題に取り組んできた。両WGは、取り組みの成果をまとめた提言を策定した。
この最終報告書は日米政府の指導陣に提出され、関連部門のリーダーにも配布される予定である。
1. デジタル化時代の情報アクセスと共有に関するワーキンググループ(IASWG)
カルコンは日米両国からITの専門家を集め、日米の市民が互いの文化、社会、課題を学ぶために、事実に基づくバランスのとれた手頃な価格の資源へのアクセスを向上させる最善の方法を学べるように戦略を検討した。IASワーキンググループのメンバーは、デジタル研究資源へのアクセスと共有を深化させる上で、日本研究と米国研究の拡大がもたらすメリットとインパクトを訴えた。
ワーキンググループのメンバーは、カ
ルコンを代表して次のテーマと課題を明
らかにし、これに対処する提言を作成し
た。
A. 日本および米国のコレクションへのアクセス拡大を目的としたデジタル化の支援
カルコンは、歴史および文化的資源へのアクセスの改善によって、日米に関する教育と研究を支援することの重要性を認識している。信頼できる豊かなデジタル情報へのアクセスによって、日米への個人的な関心を維持し、日本研究と米国研究という分野の発展に向けて新たな世代の学生を誘致できる。
資料をデジタル化することは、施設で個別に保管されていたり、遠隔地のコレクションに保管されている物理的資料へのアクセスの課題に対応する一つの方法である。こうした資料は、米国の日本研究者と日本における米国研究者の基盤となっている。
カルコンは、デジタル化は労力とコストを伴うことを認識しており、これに対処するための提言を策定した。また、資料へのアクセス拡大がデジタル化だけでは終わらないことも理解している。
カルコンは、デジタル化に伴い人間が行う作業を支援することを提言する。この作業には、スキャン作業やメタデータの作成が含まれる。こうした作業は、デジタル・コレクションへの官民による投資に加えて、支援技術の推進と適切な利用によって継続されねばならない。またライセンス契約をめぐる障壁も認識し、意識啓発と資料を見つけやすくするための画期的な手法の導入を提言する。最後にカルコンは、デジタル・コレクションをさらに豊かにするために、テキスト資料と非テキスト資料のデジタル化を同じように優先することを提言する。
米国と日本に関する専門的なデジタル資料へのアクセス改善に向けすでに講じられている措置として、国立国会図書館(NDL)の資料のデジタル化に関する取り組みを称賛し、「デジタル化資料送信サービス」に登録する米国をはじめとする海外の図書館を増やすため現在続けている連携を支援する。また、NDLのデジタル化資料を海外の研究者に直接提供する方法のさらなる検討も推奨する。
図書館員、研究者、北米日本研究資料調整協議会(NCC)外務省、文部科学省の代表、カルコン日本側事務局、NDL幹部の代表からの生産的なフィードバックを受けて、進展は見られる。
だが海外の研究者は今も、NDLのみが所蔵する絶版資料やその他の入手が困難な資料にアクセスする上で様々な課題に直面している。カルコンは、ステークホルダーとの協議を通じて様々な課題に対処するため、2026年に向けてこの取り組みの進展を促している。
B. 資源共有、コンソーシアム、オープンなデジタル・コレクションの拡充にむけた持続可能なモデルとネットワークの推進
デジタル化されたコンテンツは、しばしばアクセスの拡大手段として推進されている。しかし、デジタル化された後も、資料の発見と活用を阻む、ライセンス契約や著作権といった課題に対処しなければならない。そのため、限られた人的資源と資金を最大限に活用できる資源共有ネットワークを強化する必要がある。また、資源を共有する機関が集団的な行動を取るための代表の役目やリーダーシップの強化も求められる。「デジタル・コレクション推進団体」が代表として声をあげることで、より効率的にニーズを明らかにして伝達し、情報のアクセス拡大と共有推進に向けた措置を調整できる。
カルコンは、日米の教育研究機関および広く情報コミュニティ全体に対して、オープンアクセス(OA)およびそれに伴う取り組みを検討するよう提言する。サブスクリプション型のペイウォール(有料の閲覧制限)の背後に置かれるのではなく、OA資料は誰でも閲覧・ダウンロード・共有・再利用することができ、多くの場合、クリエイティブ・コモンズなどの寛容なライセンスの下で提供される。これは、グローバルな学術の発展、イノベーションの加速、そして「公的資金によって行われた研究は公共財としてすべての人がアクセスできるべき」という理念を支えるものである。OAは、研究の認知度とインパクトを高め、許認可に関わる事務負荷を軽減し、新たな付加価値サービスとビジネスモデルを実現することによって、データ保有者や著作権者に有益な価値ももたらす。
カルコンは、各種のコンソーシアム(共同体)モデルの導入も真剣に検討するよう提言する。コンソーシアム契約によって機関は、協力購入などの資源共有のための制度を正式に整備できる。また図書館、公文書館、美術館などの資源を共有している機関同士が、ニーズに応じて共同で交渉・主張することが可能になる。
C. 日本研究とアメリカ研究における新技術の活用と導入に関する教育・研修の促進
新しい技術の普及と発展に伴い、その技術の適用可能性に関する個々の理解を深めるため、教育プログラムの必要性が高まっている。カルコンは、日本研究および米国研究の分野において、多くの人が翻訳技術や大規模言語モデル(LLMs)、AIによる支援の活用へと向かう中で、倫理的かつ適切な技術利用に関する専門的な調整と指針が強く求められていることを認識するものである。教育者や学生もまた、教室で始まり、実際的な応用へと広がる実践的なトレーニングを必要としている。
政府機関、専門団体、教育機関、教育者を含むステークホルダーに対し、デジタル・リテラシー教育・研修の推進を提案し、学術機関に対しては、デジタルイノベーションとプライバシーのデリケートなバランスを学びデジタル・リテラシーに関して連携するために、日米専門家や研究者間の交流を開始するよう提言する。また、カルコンは前述のステークホルダーに対し、共同の教育研修ニーズやそのニーズへの望ましい対処法についてフィードバックを得るため、日米でデータ収集のための調査の導入を本格的に検討するよう提言する。
カルコンは、技術の利用において、人文科学および社会科学の研究者との分野横断的な対話に基づくボトムアップ型のアプローチを推進している。
デジタル技術とAI技術の適切で倫理的な利用を通じた日本研究および米国研究に関わる教育者、支援スタッフ、学生のエンパワーメントを提案する。これには、ニーズの検討を分野横断的に続け、技術導入の枠組みと研修プログラムを開発することなどが含まれる。
2. サブナショナル外交と地域間交流の促進ワーキンググループ(SNDWG)
日本と米国のカルコン委員は、人的交流におけるサブナショナル外交が果たす役割を強調した。これは、日米パートナーシップの主な柱のひとつである。。こうした草の根の交流が、両国を結ぶ大切な絆を生み、二国関係のあらゆる側面の基盤を強化する。そのためには、日米両国の関係者による継続的な取り組みが求められる。
SND WGは次のテーマと課題を明らかにし、優先的なアクション項目と行動を呼びかける項目を作成した。優先的なアクション項目は、即座に実行可能なものに焦点を当てており、実施主体も提案している。行動を呼びかける項目は、想定されるステークホルダーに戦略の策定と実行を求めるものである。
A. サブナショナル外交を推進するエコシステムを強化する
サブナショナル外交の取り組みを強化するためには、地域・地方レベルで長年にわたり築かれてきた日米間の関係を維持し、それを推進する組織的エコシステムを支援することが不可欠である。カルコンは、エコシステムの強化という使命には克服すべき様々な課題があることを認識し、組織として、活力を維持し新たな取り組みを促すために関連団体との連携に力を入れている。
カルコンは、日米関連の組織への民間と公的部門による投資に加えて、地方・地域レベルの取り組みのための資金源の確立を検討するよう提案する。
関連する活動に関する協働を促し情報交換を強化して、連携とインパクトをさらに拡大するために、日米の関連団体によるリーダーシップ・サミットの開催を提言する。
B. 戦略的な協働による人材の活用
日米関係は、言語能力と文化的専門性を備えた個人による相互交流の長い歴史を有している。こうした人材に対して、実践的な研修への投資を継続することが必要である。積極的に関与する優秀な人材によって、地方レベル・地域レベルに根差す、相互利益に基づく成長と発展を支える複数分野のパートナーシップが確保されるだろう。
カルコンは、即戦力となる人材の育成と活用を提言する。これには、実践的な研修のための専用基金を設立する官民パートナーシップの推進、専門的な機会を創出するための高等教育機関と企業間の地域的・広域的ネットワークの維持、人材ニーズや雇用戦略について情報交換を行うための企業間の連携手法の確立などが含まれる。特に地元企業に対して、日米交流プログラムに参加した学生やアルムナイを対象とする、インターンシップや研修プログラムの実施を推奨する。
C. 相互理解への関心を活かした将来のリーダーの育成
教育機関、地域社会、文化交流団体など、さまざまな分野と協力することで、日米双方の相互関心を基盤に、将来のリーダーの育成を目指すことができる。若いうちに相手国への関心を育むことは特に重要であり、それが若者の将来の進路やグローバルな視野を形成する。
これは知的好奇心の喚起にとどまらない。学生と教師を対象とした教育交流や独自の学習取り組みの拡充を進めて、幅広い日米ネットワークにおいて「現場で活躍する人材」を育てる必要がある。
カルコンは、日本のステークホルダーに対して、高校生・大学生向けの現在のプログラムに加えて、中学校レベルで日米交流の拡大に取り組むよう提言する。中学生レベルでの交流は、人生を変える経験を作り出し、早いうちから国際情勢への関心を高めるのにとりわけ効果的である。
カルコンは、若者が互いの国の言語、歴史、社会への理解を深め、その知識を未来のキャリアやコミュニティへの参加に結びつけられるようにするための取り組みへの投資、およびこうした取り組みの強化を提言する。これには、K-12教育機関における言語教育および文化的なイマージョンプログラムの支援や、米国の大学で日本研究の学者・研究者を雇用・定着させるためのエンダウメント(基金)の設立が含まれる。後者は、若手育成の長期的かつ持続可能な支援に向けてとりわけ重要である。
次のステップ
カルコン委員は、日米パートナーシップの重要性と持続性について議論した。両国の揺るぎない友情と確かな同盟、およびインド太平洋地域の平和、安全保障、経済的繁栄、地政学的な安定を確保する上で、両国が果たす重要な役割を検討した。
続いて、新たな関心事項と資源について検討し、本合同会議で議論した基盤を継続的に発展させるため2つの新たな二国間タスクフォースの設置に合意した。
日本研究と米国研究のためのデジタル化およびデジタル資源の共有のモニタリングに関するタスクフォース
・デジタル・コレクションへの日本と米国のアクセス拡大に重点を置く
・北米日本研究資料調整協議会(NCC)の資源共有委員会などの組織と連携して、国立国会図書館(NDL)の「図書館向けデジタル化資料送信サービス」(DCTL)および「個人向けデジタル化資料送信サービス」(DCTI)をモニタリングする。
地域・地方レベルの外交の次のステップの推進に関するタスクフォース
・日米間の定評ある画期的な教育文化交流モデルを土台として共通の関心事項を推進する
○ 長年の日米パートナーシップを強化する優れたモデルの例として、大学/官民の研究開発機関/自治体による連携的取り組み、日米協会などの市民社会団体、姉妹都市・姉妹州のパートナーシップ、JETプログラム同窓生コミュニティなどの同窓生ネットワーク、地域サミットやシンポジウムなどがあげられる。
•高い成長の可能性を秘めた地域拠点のステークホルダーに働きかけるための戦略を策定し、多分野横断的な日米間のつながりを強化する。
○ 卓越性とイノベーションをもたらすエンゲージメントの例として、主要分野の日米プログラム同窓生を活用して、現在の交流プログラムを強化し専門的な機会を創出する、日米パートナーシップにとって戦略的に重要な分野を発展させるために、互いの言語(英語、日本語)や文化、STEMの知識を教えることを含め、関連分野の学生/研究者の経験と知識を活かすなどがあげられる。
両タスクフォースは、正式な提言報告書を策定することを目標として、日本と米国のカルコン委員に中間的な進捗状況を提出することとなった。日本と米国のカルコン委員は、2028年に米国で次の第32回カルコン合同会議を開催することに合意した。
急速に変化する国際秩序や両国の人口動態的な変化を踏まえて、日本と米国は、揺るぎない関係に今後も投資し、ともに新たな現実に対峙し続けねばならない。そのために、日米パートナーシップを強化し、同盟の担い手を育て支えるためのカルコンの活動が引き続き何よりも重要となる。