データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・SPF共同記者会見記録

[場所] 宮崎
[年月日] 2000年4月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.森総理冒頭発言

 本日、自分は、同席のナカムラ議長を含む南太平洋フォーラム(SPF)の16の加盟国及び地域の首脳と閣僚の方々をお迎えして、3時間近くにわたって意見交換を行った。今回の首脳会議を踏まえて、冒頭以下の3点について述べたい。

 先ず第一に、今回の首脳会議では、自分から、我が国がSPF諸国と同じ太平洋の島国として、グローバル化時代のこの地域の諸課題に一層積極的に取り組んでいく方針を示した「太平洋フロンティア外交」を提唱し、ナカムラ議長を含む参加者の方々のご賛同をいただいた。

 「太平洋フロンティア外交」の下では、「若者」、「海」、そして「未来」の3つをキーワードとして、人造りや情報通信分野、更には環境や文化の多様性といった問題に、我が国とSPF諸国とが、その持てる力を持ち寄って取り組んでいきたいと考える。日本とSPF諸国とはこれまでも、様々な問題への取り組みに協力してきた。しかし、21世紀を迎えるに当たって、我々は、未来のヴィジョンを共有し、中長期的な政策目標を掲げ、取り組んでいく必要があることで認識が一致した。

 今回採択された「太平洋・島サミット宮崎宣言」は、こうした面での我々の決意を明確に表したものである。

 第二に、SPF諸国の我が国に対する強い期待感である。SPF諸国からは、我が国が今回太平洋・島サミットを主催したことへの謝意が累次の機会に表明された。我が国は、引き続きSPF諸国に対する種々の協力を惜しまない所存であり、今回の会議の機会を捉えて、我が国の具体的な取り組みにつき「宮崎イニシアティヴ」として取りまとめた次第である。自分の基調演説の中でも述べたが、心のかよい合う未来志向のパートナーシップを太平洋の島々との間で構築することができたことは、何ものにも代え難いものである。なお、SPF諸国から「太平洋・島サミット」の継続的な開催について強い要請があり、また、我が国としても首脳レベルでの対話は大変有益であると評価していることも踏まえて、今後2〜3年後を目途に次回の首脳会合を開催したいと考え、首脳会議の場で自分よりその旨を表明した。

 第三に、本年7月には九州・沖縄サミットが予定されている。この宮崎でもG8の外相会議が開催されることとなっている。21世紀にグローバル化や情報化の流れが一層進む中で、グローバル化の「影」ともいうべき問題、即ち、各国の経済格差をいかに縮小していくか、経済構造改革をいかに進めていくか、紛争をいかに予防していくかなど、世界は多くの課題に直面している。

 今回の首脳会議では、SPF諸国より、開発の問題、情報格差(デジタル・デバイド)の問題や環境の悪化などにつき率直なご意見が出された。自分としては、こうしたSPF諸国の意見、更には、小渕前総理が一連の訪問で聴取されたアジア諸国の声にも耳を傾けて、7月のサミットの準備に全力を傾注していきたい。自分は今月末からの連休を利用してG8各国を訪問し、九州・沖縄サミットを始めとする一連の課題につき意見交換する予定であるが、その際にも、今回のSPF諸国の率直なご意見を十分念頭に置いて取り組みたいと考えている。

 なお、首脳会議の中で各国の方々より、急病のためにこの場にいることが出来ない小渕前総理の太平洋諸国に対する特別な思いとこれまでの貢献に対する深甚な謝意の表明とともに、一日も早い回復をお祈りするとの真摯なお見舞いの発言があった。この場を借りてご紹介させて頂く。また、自分から、御家族にもその旨必ずお伝え申し上げると、御返事を申し上げた。

 最後になるが、今回我々を温かく迎えて下さった宮崎県の関係の方々に改めて御礼を申し上げる。風光明媚なこの土地での開催は、首脳会議の成功に大いに貢献したものと考える。

2.ナカムラ・パラオ大統領冒頭発言

 まず最初に、南太平洋フォーラム加盟諸国を代表して、ここで再度、私どもの深甚なる謝意を日本国政府及び国民の方々の暖かいおもてなしに対して申し上げたい。今回のPALM2000においては、様々な問題が効果的に前進をし、より多くの人々の間の交流を促し、そして日本についてより多くを知ることができた。第一回SPF首脳会合が1997年10月に開催されたが、今回のPALM2000の会議においては、この美しい宮崎県においてより広範な議論を行うことができた。この2つのサミットは大きな成功を収め、日本と南太平洋フォーラム加盟国と間の関係に大変有益であった。そして我々は第3回のサミットを開催するということを考えており、また、森総理によって表明された通り、定期的なものにすることを考えている。南太平洋フォーラム加盟諸国は、日本の指導者に南太平洋諸国を訪問していただきたいとの希望を表明し、右訪問について南太平洋フォーラム事務局を通じて調整したいと考えている。さらに、フォーラム島嶼諸国は、日本国政府に対し、南太平洋地域への新たな在外公館の設置・格上げを検討するよう要請した。加えて、我々は、人と人との関係を文化的な交流を通じて促進していくことについて合意した。我々は、森総理が、日本の長期にわたってのフォーラム島嶼諸国の発展のための支援を、将来に向かって継続してくださることを再確認して下さり大変うれしく、感謝している。PALM2000の最大の成果は、我々がこのPALM2000で扱った問題のいくつかについて、この夏開催される九州・沖縄サミットにおいてとりあげることを約束してくださったことである。我々はPALM2000の成果を通じて、更に南太平洋島嶼国と日本との理解を深化させ、促進させ、今後とも手を携えて、相互に関心のある問題を扱い、お互いの共通の関心事項、そして共通のチャレンジに直面していくことを楽しみにしている。

3.質疑応答

(問)

 今回の太平洋・島サミットで、SPF諸国側から、7月の九州・沖縄サミットに向けて、具体的にどのような要望、意見が出されたのか、それに対して総理はそれを具体的にどうサミットに反映させていくつもりなのか。さらに、サミットで、どういう問題、課題を重視し、どういう姿勢で望むのか、お伺いしたい。

(森総理)

 今回のサミットでは、情報通信やデジタル・ディバイドの問題、さらに、気候変動に伴って生じている様々な環境問題、さらに、文化の多様性といったグローバル化の急速な進展の中で顕在化しつつある問題に対して、日本とSPF諸国とが何をなすべきかということを一つのテーマとして、首脳間で率直な意見交換が行われた。これを通じて、自分としては、SPF諸国がグローバル化の陰の影響で種々の問題に直面していることを改めて強く印象づけられた。

 7月の九州・沖縄サミットでは、21世紀が一層繁栄をして、心の安寧をもたらし、より安定した世界となるように、力強いメッセージを発出したいと考えている。グローバル化への対応は重要な課題の一つとなるであろうという見通しを持っている。

 今回のサミットにおいて表明された太平洋島嶼国のもつ問題意識に十分に耳を傾けて、7月のサミットの準備に全力を傾注していきたいと考えている。

(問)

 日本のODAが全世界的に減少していく中で、この状況が太平洋島嶼国にどのような影響があるとお考えか。日本国政府は、資金的支援という観点から、すでに表明されている300万ドルの情報技術分野に関する支援に加えて、何らかの資金的援助のコミットメントをしたのか。

(ナカムラ大統領)

 日本のSPF諸国に対する資金援助は、SPF事務局の運営、また、SPF加盟国にとっても大変重要なものであり、この日本からの資金援助が今後とも継続することが必要である。また、我々は、短時間ではあるが、今回の首脳会議では新たな支援、特にSPF内に存在しているSPREP、FFAその他諸機関に対しての新たな資金支援について議論を行った。現時点では日本側からSPFに対する資金支援の政策についての意見を得ていないが、我々は今後の継続的な調整及び協議を通じて、日本は、SPF諸国に対し資金支援を継続してくださるであろうと期待し、確信を持っている。

(問)

 南太平洋諸国というのは、WTOにおいて小さな組織であるが同じレベルでゲームをやっていかなければならない。SPF諸国のいくつかの国は、たとえば台風に襲われる非常に小さな国々である。この様な要素は右諸国の貿易や輸出に影響を与えるものである。日本は南太平洋諸国のWTOとの関わりについて、G8サミットにおいてどういう立場でお臨みになるのか。どのようにその関心を取り上げていくのか。

(森総理)

 多角的貿易体制の強化は、21世紀の世界が一層平和と繁栄を享受するためには、ぜひとも必要なシステムであろうと思う。新ラウンドにおいては、我が国を含む先進諸国が太平洋諸国等の途上国の関心にも適切に応えて、途上国の積極的な参加を確保することが極めて重要であると考えている。この観点から、我が国としては、市場アクセスのみならず、WTOルールの強化を含む幅広い交渉対象の新ラウンドを早期に立ち上げられるよう努力をしていきたいと考えている。G8サミットでの新ラウンドへの対応ぶりは、未だ決まっているわけではないが、これらの点も十分今後の検討の参考とさせていただきたいと考えている。

(問)

 地元の宮崎県政記者会を代表して、お聞きしたい。宮崎は今回初めて首脳をお迎えする国際会議を受け入れたわけだが、これまでに受けられた宮崎の印象、そして、この会議をきっかけに地元でも今後の交流を期待する声があるが、どのように受け止められるかお聞きしたい。

(ナカムラ大統領)

 宮崎は大変美しい町だが、そういった物理的な姿以上に、すべてのSPF諸国の指導者たちは、宮崎県・市の方々の暖かいもてなしに心を打たれたと思う。宮崎は、太平洋の島々を思い出させる。なぜなら、宮崎は緑豊かで、非常に秩序だっており、そして太平洋に面しているからである。気候は、今日はまさに完璧である。冬の間は寒くなるのかもしれないが、年中このような気候だと伺った。宮崎は大変すばらしい気候を持っている。また、大変優れた空港を持っている。今朝空港に到着したわけだが、非常に優れた観光地であると思う。それと同時に、宮崎は日本のいろいろな街の中で、日本の観光客が太平洋島嶼国を訪問するフライトに乗るための出発点として使うこともできると思う。自分の国パラオに非常に近いところにあるからである。北の地方にある日本の街へいくよりも(パラオの方が)近い。SPFの首脳に成り代わって申し上げれば、宮崎に対し非常に良い印象を得ており、先ほども申し上げたとおり、滞在を大いに満喫している。

 今回のPALM2000会合の成功を通じ、他の首脳の方々も会議の場として、宮崎を選ぶことになるのではないかと思う。非常に美しいこの街をぜひ訪問することになるのではないか。