データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 兒玉アジア大洋州局参事官による開会式挨拶

[場所] 三田共用会議所、東京
[年月日] 2003年3月6日
[出典] 外務省
[備考] 第3回日本・PIF首脳会議準備会合,和文仮訳
[全文]

ザキオス・マーシャル外務大臣閣下、

各在京大使閣下、

マイアヴァ・PIF事務局次長、

各国代表団の皆様、

御列席の皆様、

 第3回日本・PIF首脳会議(太平洋・島サミット)準備会合に際し、日本政府を代表致しまして御挨拶申し上げます。本日はシュムル大臣、ザキオス大臣の両大臣を始め、各国代表の御出席を賜り、心から歓迎いたします。第3回サミットは沖縄で開催されます。既に多くの国より首脳が出席されるとの返事をいただいておりますが、改めて、PIF全加盟国の首脳の第3回サミットへの御出席が実現するよう御尽力をお願いします。我が国としても、皆様の期待に応えるべく、フィジーと共に共同議長国として、太平洋・島サミットの成功に全力を尽くす所存でございます。

 3年前に宮崎で開催された第2回太平洋・島サミットで議長を務められた森前総理は「若者」、「海」、「未来」をキーワードとした「太平洋フロンティア外交」により積極的な太平洋島嶼国外交を進めていくことを表明し、また、これを実現するための「宮崎イニシアティブ」を発表致しました。同時に首脳会議で採択された「太平洋・島サミット宮崎宣言」と「太平洋環境声明」は、2000年という節目の年にふさわしく、政治安全保障、経済、社会分野と各分野を俯瞰し、21世紀における日本と太平洋島嶼国の協力関係の包括的な方向性を打ち出すものとなりました。

 以来3年間で我々のパートナーシップは着実に進展してきております。「太平洋知的対話ミッション」の派遣による知的対話の促進や、若人交流計画の実施、産業振興のための経済専門家派遣等、多くの事業や交流が行われて参りました。どのような事業が行われてきたかについてとりまとめた資料が配付されておりますので、一度ご覧いただければと思います。

 一方で、前回のサミット以来、国際社会の情勢は大きく変化してきています。2001年9月11日の米国同時多発テロ事件、そしてより近くで発生した昨年10月12日のバリでの爆弾テロ事件は、最も劇的な形で起きた変化です。これら事件は国際社会への脅威に各国が強い決意をもって、一層協力して対処することの重要性を改めて認識させた、グローバル化時代の象徴的な出来事と言えます。経済面においても、自由貿易の進展や人や資本の国境を越えた移動の増加、情報通信技術の発展などによりグローバル化はますます進んでおります。その一方、国際社会全体として、グローバリゼーションの不可避な進展を前提とした貧困削減と持続可能な開発に取り組むべき必要性が、今日ほど痛感されている時代はありません。2002年に南アで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)は、持続的開発を可能にするための地球規模の課題に取り組むために、国際社会が英知を結集した場でありました。「人間」を中心におき、教育の重要性を指摘するとともに、成長の過程で深刻な公害を経験した日本として、環境保護と経済成長の両立を訴えた小泉総理のメッセージの意義は、太平洋島嶼国にとっても極めて大きいものがあります。

 第3回の太平洋・島サミットは、国際社会の情勢変化を背景として、第2回サミット以来の成果の上に、今後の日本とPIF諸国の協力の方向性を議論することを目的としております。日本政府としては、今回小泉総理との共に共同議長を務められるガラセPIF議長(フィジー首相)から頂いた御示唆を踏まえて、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)における成果を太平洋地域でどのように具体化していくかを探るために、環境、教育に焦点を絞って議論を行ってはどうかと考えております。

 環境、教育は息の長い、大変長期的な取り組みを必要とする分野です。これらの分野で実際の成果を上げていくためには、明確な政策目標を掲げ、首脳レベルの断固たる政治コミットメントを行い、可能な資源を動員して、具体的かつ着実な協力を推進していくことが不可欠です。我が国は、今次サミットの共同議長国として、その成功に向け全力を尽くすつもりです。

 本日及び明日両日の準備会合における議論は、5月のサミットにおいてこのような成果をだすために土台となる非常に重要なものであります。私はこの会議において議長を務めさせていただきますが、明日の環境における議論では、NGOも方々にも御参加いただく予定です。2日間に渡る議論が積極的で実り多いものとなることを大変楽しみにすると共に、今次会合の成功に向けた皆様の御協力をもう一度お願いいたしまして、挨拶の言葉とさせていただきます。