データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第5回日・PIF首脳会議「北海道アイランダーズ宣言」第1付属文書「太平洋環境共同体」

[場所] 
[年月日] 2009年5月23日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.原則

・日本とPIFの首脳は、第2回日・PIF首脳会議で発出された「太平洋環境声明」を想起し、環境にやさしい太平洋という共通のビジョンを探求するとの新たなコミットメントを表明した。日本とPIFの首脳は、気候変動を含む環境問題への取組・対応並びに太平洋島嶼国の持続的発展に向けて協働することの重要性を強調し、太平洋環境共同体の下、対等なパートナーシップに基づき協力関係を強化・深化させることをコミットした。

・日本とPIFの首脳は、気候変動は、世界全体、特に小島嶼開発途上国としての太平洋島嶼国の経済的、社会的、文化的、環境的福利・安全に影響を与える多面的・分野横断的な課題であるとの見解を共有し、気候変動問題への取組においては確固とした、協調した国際的努力が不可欠であるとの理解を共有した。

・PIFの首脳は、クールアースパートナーシップの一環として、PIFに対し、68億円相当の貢献を行う日本の計画を歓迎した。右は、日本の環境技術等を活用し、気候変動問題を含む環境問題への対応のため使用されるものであり、国・地域レベルの優先課題や枠組み、大洋州の地域機関のプログラムを支援するものである。また、PIFの首脳は、気候変動を含む環境分野における日本の知見を共有するために、向こう3年間で1,500人規模の人材育成支援を提供する日本の計画を歓迎した。

・日本の首脳は、近年のPIF 首脳の努力により、「気候変動に関する太平洋諸島行動枠組み2006-15」、「自然災害リスクの軽減・災害管理に関する太平洋行動枠組み2006-15」、2008年のニウエでのPIF首脳会議で採択された「気候変動に関する宣言」などの、気候変動を含む環境問題に関する国・地域レベルの政策形成が進められていることを歓迎し、太平洋島嶼国と援助国との対話の促進において地域機関が果たす意義及び気候変動を含む環境問題への取組に対する主要援助国からの援助の調整において太平洋地域環境計画事務局(SPREP)が果たす重要な役割を認識した。

・日本とPIFの首脳は、太平洋島嶼国の持続的発展を支援するため、また太平洋島嶼国、就中小島嶼国への気候変動の影響を一層緩和するため、既存の政策や上述のSPREPの役割を考慮し、太平洋環境共同体の下で太平洋島嶼国の気候変動を含む環境問題に取り組むための協力関係及び建設的なパートナーシップを強化することをコミットした。

・日本とPIFの首脳は、気候変動枠組み条約が気候変動に関する国際的な行動のための主要なフォーラムであることに留意し、太平洋環境共同体の下での協力は開発協力のみならず、気候変動を含む環境問題に関する国際交渉における互恵的協力関係も含むとの見解を共有した。

2.協力分野

(1)気候変動

・日本とPIFの首脳は、すべての主要経済国が責任ある形で参加する2013年以降の公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けて、適切な国際的フォーラム、特に気候変動枠組条約及び京都議定書において協力することの重要性を強調した。日本とPIFの首脳は、この条約の究極的な目的を達成するためには世界全体の排出量を大幅に削減することが必要であることを認識し、また、気候変動に対処することの緊急性を強調し、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を含む気候変動枠組条約の規定や原則に従い、また経済・社会的条件や他の関連する要因を考慮して、排出削減と経済成長の両立を達成する必要性を強調した。

・日本とPIFの首脳は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に応じ、国際的な連帯の精神の下、すべての国が排出削減に取り組むべきであることを強調した。日本とPIFの首脳は、先進国が排出削減に向けた世界全体としての取り組みを主導すべきであるが、主要途上国も国全体の及びセクター別目標等を通じ、排出削減に取り組むべきことを強調した。日本とPIFの首脳は、気候変動枠組条約の下での交渉プロセスは、コペンハーゲンでのCOP15における包括的合意の採択に向け、一貫性及び整合性をもった形で進められるべきであるとの見解を共有した。

・PIFの首脳は、日本のクールアース推進構想を支持し、太平洋島嶼国、就中国土の低い小島嶼国における気候変動の影響への取組・対応のための措置を実際的に支えるための貢献として、その資金的・技術的支援を歓迎した。

・日本の首脳は、既存の国別・地域レベルの優先課題やニーズに整合する形で、太平洋島嶼国の適応・緩和努力を支援することを約束し、クールアースパートナーシップ等のメカニズム等を通じて実際的な資金的・技術的協力を行うことをコミットした。

(2)水と衛生

・水と衛生は、生命にとって、また経済活動や生態系の保全にとって不可欠であることを認識し、PIFの首脳は、G8北海道洞爺湖サミットで打ち出された水と衛生問題への取組に向けたイニシアティブにおける日本のリーダーシップの重要性を強調した。

・日本の首脳は、既存の「持続的水管理に関する太平洋パートナーシップ・イニシアティブ」に留意しつつ、衛生サービス、水質管理・水供給関連施設の整備・改善やその管理・監視のためのキャパシティ・ビルディングといった分野における協力を通じて、太平洋島嶼国が水関係のMDGsを達成するための支援を行うことをコミットした。

(3)廃棄物管理・3R

・日本とPIFの首脳は、持続的社会の構築のため、資源や物質の効果的利用の促進や製品のライフサイクル全般における3Rを通じた環境負荷の軽減の重要性、及び電気製品の廃棄物や有害廃棄物といった、小島嶼開発途上国の既存の対応能力を超えた廃棄物処理という課題への実際的な手段・解決策の重要性を認識した。

・日本とPIFの首脳は、大洋州廃棄物地域戦略及びその行動計画に沿って協調した努力を行うことをコミットした。

・日本の首脳は、PALM5後、太平洋島嶼地域における廃棄物管理に関するフォーラムをSPREPと協力して開催する意向を表明した。

(4)生物多様性

・日本とPIFの首脳は、生物多様性の保全とその構成要素の持続的利用の重要性を認識しつつ、生物多様性条約等の国際場裡において、特に日本で開催されるCOP10に向けて協力していくことをコミットした。

・PIFの首脳は、地域の貴重な生物多様性を維持するため、関連の技術機関との協働の下、また各地域の保全がコミュニティに対して持つ重要性を強調する「自然保護のための太平洋島嶼国行動戦略」に沿った形で、環境保全・管理の取組を強化することを引き続き強くコミットした。この観点から、日本とPIFの首脳は、「フェニックス諸島保護区」、「ミクロネシア・チャレンジ」、「コーラル・トライアングル・イニシアティブ」を通じて達成された保全の成果を賞賛した。

・日本の首脳は、SPREPやSPCとの緊密な連携の下、生物多様性の保全、自然保護区の管理、そしてサンゴ礁のモニタリングの分野における太平洋島嶼国のキャパシティ・ビルディングへの支援を提供する用意がある。

(5)環境教育

・日本とPIFの首脳は、この付属文書に示される協力を強化する観点から、環境教育や訓練の重要性を強調し、そのような教育や訓練は、気候変動を含む環境問題に対する太平洋の人々の意識向上やそうした問題に取り組むためのキャパシティ・ビルディングに資する点に留意した。

3.他のステークホルダーとの協力

・日本とPIFの首脳は、効果的かつ持続的な環境の成果を達成するためには民間企業とのパートナーシップが重要であることを認識し、企業の社会貢献活動(CSR)との連携強化の価値を認識した。

・日本とPIFの首脳は、気候変動を含む環境問題への対処において国際開発金融機関や国際機関が果たす重要な役割に留意し、そうした機関との連携を強化する意向を表明した。

・日本とPIFの首脳は、太陽光発電を含む環境・エネルギー技術に関する研究を促進することをコミットし、適切な場合、太平洋島嶼地域のより良い発展や環境成果に資する技術移転を促進・強化する。

4.太平洋環境共同体のフォローアップメカニズム

・日本とPIFの首脳は、2010年のハイレベルの中間会合において上述の協力の進捗状況に関するフォローアップを行うことを決定した。この点、日本とPIFの首脳は、太平洋環境共同体の下でのPIFへの日本の貢献を含む上述の協力の実施をレビュー・議論するため、PALM5後の然るべきタイミングで日本とPIFとの間で実務レベルの準備会合を開催することを決定した。この会合の結果は、2010年のハイレベル会合に報告される。