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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 太平洋・島サミット第2回中間閣僚会合議長総括

[場所] 東京
[年月日] 2013年10月26日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1. 第6回太平洋・島サミット(PALM6)の結果をフォローアップし,また第7回太平洋・島サミット

(PALM7)を準備するため,太平洋・島サミット第2回中間閣僚会合が,日本の東京及び仙台で,2013年10月26日に開催された。

2. 会合には,日本と太平洋諸島フォーラム(PIF)の16の加盟国の代表,及びPIF事務局が参加した。会合は,岸田文雄日本国外務大臣と,太平洋諸島フォーラム議長国たるマーシャル諸島共和国のフィリップ・H・ムラー外務大臣が共同で議長を務めた。

3. 閣僚は,東北地方におけるプログラムの準備の際に得た協力について,仙台市及び松島町に謝意を表明した。また,閣僚は,会合に対する寄与及び貢献について,太平洋諸島センター

(PIC)とPIF事務局への称賛を表明した。

4. 閣僚は,日本と太平洋島嶼国が自然かつ重要なパートナーであり,太平洋に抱かれた島嶼国であるとの地理的特性のみならず,自然災害,気候変動及び持続可能な開発を含む類似した課題を共有していることを再確認した。また,閣僚は,彼らの関係が,歴史的絆と幅広い分野における緊密な協力によって深く支えられていることを認知した。

5. 閣僚は,マーシャル諸島共和国議長国の強い指導力の下で2013年9月3日から5日にかけて開催された第44回太平洋諸島フォーラムの成功を歓迎し,パラオ共和国議長国の下での2014年の次回PIF会合への協力を確認した。

6. 閣僚は,2013年9月3日から5日までの第44回太平洋諸島フォーラムを受けたフォーラム声明第55段落に明記されているとおり,太平洋地域のために更に協力を強化すべく,太平洋諸島フォーラムとPALMプロセスとの協調の重要性を再確認した。閣僚は,太平洋を共有する島国として日本のフォーラムへの著しく一層深く一層広い関与を再確認し,日本のPIF加盟の可能性のためのあり得べき選択肢の検討を含め,この事案が更に検討されることを勧告した。域内の協力と統合を一層強化する努力に沿う形で,閣僚は,PIFと地域のその他の枠組みやプロセスとの効果的な調整の重要性を強調した。

7. 閣僚は,別添されたとおり,PALM6でなされた約束の実施に関し,主に(1)自然災害への対応,(2)環境・気候変動,(3)持続可能な開発と保健・教育を含む人間の安全保障の分野について,PALM6の「沖縄キズナ宣言」で約束した5億米ドルのうち,約4.45億米ドルの額の支援を供与した旨の日本の報告を歓迎した。閣僚は,共に働く仲間の精神により,自律的で継続する開発に向け尽力する太平洋島嶼国の取組を支援していくとの日本の継続的な関与を歓迎した。太平洋島嶼国は,更なる国の持続可能な開発に向けた自国の重要な取組みを支えた,日本による支援の関与の着実な実施を評価した。また,閣僚は,発展への熱意を引き付けるうえで,地域レベルでの行動を必要とし,地域統合と協力のための優先分野を設定するパシフィック・プランが果たした重要な役割を認識した。閣僚は,かかる熱意に沿って行われている日本の取組を評価した。

8.閣僚は,特に若い人々の間での,中等課程及び大学のためのキズナ・プロジェクト及びJENESYS2.0といった施策を含む,この地域における人的交流の促進の重要性を再確認した。

9. 人的交流及び商業上の交易を促進するための査証緩和に関し,日本は,先駆的なモデル事例として,並びに,相互主義に基づいて,パプアニューギニアの一般旅券所持者に対する短期滞在数次査証を2013年11月25日に発給すること,並びに,相互主義に基づいて,外交及び公用旅券所持者に対する査証免除措置を導入するための準備過程を一層前進させるとの日本とパプアニューギニアとの意図を表明した。

10. 閣僚は,太平洋の人々の生活,生存,安全及び福利にとって,気候変動が最大の脅威の一つであることを再確認した。閣僚は,第44回太平洋諸島フォーラム会合で採択された「気候へのリーダーシップに関するマジュロ宣言」についての日本の真剣かつ熱心な検討を歓迎し,2014年9月の国連事務総長主催の気候変動に関する首脳会合の成功,及び,2015年のパリにおける国連気候変動枠組条約(UNFCCC)会議の下で十分に野心的で法的拘束力を有する全ての国に適用される合意の作成に向けて緊密に連携することに同意した。この関係で,閣僚は,2014年にサモアで開催される小島嶼開発途上国(SIDS)に関する第3回国際会議の成功が,太平洋地域にとって戦略的な機会となることを強調した。

11. 閣僚は,彼らの生活,食糧安全保障,持続可能な開発及び安全他に対する太平洋の価値を再確認した。彼らは,リオ+20の成果文書「我々の求める未来」の海洋に関する成果を想起し,持続可能で,生存可能であり,安全な太平洋を確保するために共に協働していくことを承認し,パシフィック・オーシャンスケープ計画その他の太平洋地域海洋政策の下での施策を通じたその持続可能な管理と保全への関与を強調した。更に,彼らは,PIF加盟島嶼国(FICs)の産業への一層の参加を通じた地域の漁業資源からの長期的な利益の流れを最大化し,確保する重要性を強調し,これらの努力に対する日本の支援を歓迎した。

12. 閣僚は,フィジーの民主制復帰の重要な段階として,フィジー共和国政府による新憲法の公布を歓迎し,成功し,自由で公正な2014年の総選挙を期待した。閣僚は,フィジーの総選挙の成功,及び,地域の連帯のための地域の枠組みへの同国の再参加の重要性を再確認した。

13. 閣僚は,太平洋環境共同体(PEC)基金の実施の進捗を検討し,太平洋島嶼地域で再生可能エネルギーと清浄な水を促進するため,全ての参加国における事業の迅速な完了を約束した。太平洋側の閣僚は,日本が基金を補充し,第1期間と,社会・経済的な発展と能力上の課題の上に,FICsの需要に沿った様々な分野に対象を拡大することへの真摯な要望を表明した。

14. 閣僚は,津波防止及び早期警戒システムを始めとする津波リスクの低減を含む,地域における気候変動及び防災能力の強化に取り組む太平洋島嶼国を更に支援することの必要性を確認した。この観点から,閣僚は,日本とニュージーランドとの津波リスク管理の強化に関する

最近の取組から得られた教訓を共有する施策,及び,日本が,太平洋地域環境計画事務局

(SPREP)を含む関係地域機関の斡旋の下,2014年にサモアでの開催を計画している,津波警報に関する専門家会合を高く評価した。閣僚は,2015年3月に日本で開催される国連防災世界会議に向けて,防災に関する国際協力の強化の重要性を認識した。

15. 閣僚は,太平洋島嶼国の経済成長と活力の不可欠な基盤として,地域における貿易と投資の促進の決定的な重要性を再確認し,日本との貿易・投資の増加のため,東京のPICを最大限活用しつつ,地域的な枠組みの構築へのコミットメントを再強化した。閣僚は,2013年12月上旬に東京で予定されている,若手行政官訓練計画の下で,地域の貿易円滑化と投資促進のための実務行政官によるワークショップを含む,かかる熱意に対する日本の積極的な支援を評価した。

16. 閣僚は,島嶼の課題に取組み,政策上の手引きを描き出すことの必要性を含む,小規模な離島の経済建設と地域の産業化のための研究と事業政策を前進させることの重要性について,見解を共有した。この観点から,閣僚は,別添された,東京のPICの多大な支援を受けつつ太平洋協会の専門家チームが作成した小島嶼諸国における経済発展の展望の研究,及び,PIF事務局による地域における貿易円滑化と投資促進に関する研究に,格別の評価を表明した。また,閣僚は,2014年の前半に,有益な事例として農業及び漁業の商業化に焦点を当ててトンガで開催することが計画されている,島嶼コミュニティーのための物産促進を含む,島嶼国における貿易促進についてのシンポジウムを歓迎した。

17. 閣僚は,経験と成功事例を共有することで観光促進のための方途と手段を模索しつつ,地域における経済促進と人的交流にとっての観光の重要性を再確認した。この観点から,特に地域で観光を促進するための交通網の確保を含む,高い品質の社会基盤の発展に向けた長期に亘る支援を歓迎した。また,閣僚は,閣僚は,世界観光機関(UNWTO)とともに,またPIC及び南太平洋観光機関(SPTO)を通じてPIF事務局とも協力しつつ取り組み,太平洋諸島観光大臣会合を日本で2014年にも開催し,地域の観光を促進するとの日本の提案を歓迎した。また,この観点から,閣僚は,ミクロネシア連邦のナン・マドール遺跡のような,地域の島嶼を基盤とする顕著な自然及び文化的史跡が国際連合教育科学文化機関(UNESCO)世界遺産の史跡として認定されることへの支持と協力を確認した。

18. 閣僚は,平和と安定を強化するために,地域の共通の懸念に取り組む意向を改めて表明し,特に太平洋地域の不発弾がもたらす現在進行形の脅威を再確認した。

19. 閣僚は,民主主義,人権及び法の支配といった共通の価値と,透明性,予見可能性及び説明責任をこの地域を通じて強化していくことに関与することを再確認した。同じ考え方を持つ海洋国家として,閣僚は,海上安全保障,海洋の安全,持続可能な漁業管理及び国連海洋法条約(UNCLOS)を含む確立された国際法に基づく紛争及び問題の平和的解決を含む海洋秩序を確保するため共に取り組むことへのコミットメントを再確認した。

20. 閣僚は,北朝鮮によるウラン濃縮活動を含む核及びミサイル開発の継続について深い懸念を表明した。閣僚は,北朝鮮に対し,すべての核兵器及び既存の核並びにその他のすべての

既存の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ不可逆的な方法で放棄し,関連する国連安保理決議と六者会合共同声明の完全な履行のため具体的な行動を取るとともに,拉致問題を含む,人道及び人権上の懸念に対応することを強く求めた。

21. 閣僚は,あらゆる形態の汚染から太平洋の安全を確保していくことへの関与を再確認し,これに関連するいかなる潜在的な脅威をもモニターする情報を共有することに同意した。

22. 閣僚は,軍縮,軍備管理及び不拡散についての共通の見解とコミットメントを再確認し,武器貿易条約(ATT)のニューヨークにおける署名開放を歓迎した。閣僚は,全てのPIFと国連加盟国がATTに実務上可能な限り早期に署名することを検討するよう働きかけるとのPIF首脳による呼びかけを再確認した。

23. 閣僚は,より一層の実効性と21世紀の代表性を実現するための国際連合安全保障理事会

(UNSC)改革に対する共有されたコミットメントを再確認した。安全保障理事会の早期改革の必要性を認識しつつ,PIFの閣僚は,日本が安全保障理事会常任理事国となることへの支持を強調した。

24. 閣僚は,2014年にサモアで開催される小島嶼開発途上国に関する第3回国際会議で表明されることとなる小島嶼開発途上国(SIDS)の優先課題を考慮しつつ,人間の安全保障,海洋,グリーンエコノミー,非感染性疾病その他の優先課題の推進をアジェンダの中に含む,ポスト2015年開発アジェンダの策定に向けて協力することで一致した。

25. 閣僚は,第32回オリンピック大会及び第16回パラリンピック大会の開催都市に東京が選出されたことを祝福した。

26.日本は,次回のPALM(PALM7)がいわき市で,2015年5月22日に,「いわき太平洋・島サミット2015」の名称で開催されると表明し,閣僚はこの場所及び日時に合意した。

別添:

1第6回太平洋・島サミットで日本が約束した支援の実施状況

2太平洋諸島の挑戦:小島嶼諸国における経済発展の見通し(中間報告)

(了)