データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第7回太平洋・島サミット(PALM7)「福島・いわき宣言-共に創る豊かな未来-」

[場所] 福島県いわき市
[年月日] 2015年5月23日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1 冒頭

1 日本並びに太平洋諸島フォーラム(PIF)の加盟国であるオーストラリア,クック諸島,ミクロネシア連邦、フィジー,キリバス,マーシャル諸島共和国,ナウル,ニュージーランド,ニウエ,パラオ,パプアニューギニア,サモア,ソロモン諸島,トンガ,ツバル及びバヌアツの首脳及び代表(以下,「首脳」という。)は,2015年5月22日及び23日に第7回太平洋・島サミットのため福島県いわき市で会合した。首脳は,第7回太平洋・島サミットを成功に導いた,共同議長である安倍晋三日本国内閣総理大臣及びトミー・E・レメンゲサウ・Jr.パラオ共和国大統領に謝意を表明した。

2 首脳は,日本政府による第7回太平洋・島サミットの開催及び滞在中の日本国民による温かい歓迎に謝意を表明した。首脳は,内堀雅雄福島県知事及び福島県民並びに清水敏男いわき市長及びいわき市民による温かく寛大なもてなしに謝意を表明した。

3 安倍総理は,第7回太平洋・島サミットに出席するため,首脳が福島県いわき市を訪問したことに謝意を表明するとともに,福島県いわき市において同サミットを開催することの意義を強調した。安倍総理は,東日本大震災後,太平洋地域を始めとする世界中から頂いた多くの支援に深い謝意を表明した。また,安倍総理は,東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故からの復興のため,日本の政府及び国民が総力を挙げて取り組んでいることを強調した。首脳は,福島県いわき市を訪問する貴重な機会を得られたことを感謝し,着実な復興を認識するとともに,いわき市及び福島県の人々の不屈の精神及びたゆまぬ努力を賞賛した。

4 首脳は,フィジーが,2014年9月に総選挙を平和裡かつ成功裡に実施したことを評価し,フィジーにおける民主化の着実な定着に高い期待を表明した。首脳は,太平洋地域におけるフィジーの役割を十分に認識し,第7回太平洋・島サミットへのジョサイア・ヴォレンゲ・バイニマラマ・フィジー首相の参加を歓迎した。

2 島サミット・プロセス

5 首脳は,日本とPIF加盟国との相互信頼関係を強化し,PIFに加盟する島嶼国(以下「PIF島嶼国」という。)において着実かつ実質的な開発を促進するために重要であるとして,島サミット・プロセス及びその現在の体制へのコミットメントを再確認した。首脳は,PIF島嶼国が引き続き直面する課題を認識し,島サミット・プロセスに基づき,連携及び協力への力強いコミットメントを新たにした。

6 首脳は,2015年5月23日に安倍総理が表明した日本の対太平洋島嶼国外交の新たなビジョン(太平洋市民の社会確立を目指して)を歓迎するとともに,同ビジョンへの支持を表明した。首脳は,国際社会においてPIF島嶼国が果たす重要な役割を考慮し,太平洋地域の平和と繁栄を確保するため,双方向のパートナーシップを通じ,共通の価値観や法の支配に基づき日本と緊密に協力することを約束した。

7 首脳は,PIF議長国が太平洋・島サミットの共同議長を務めることを再確認するとともに,オーストラリア及びニュージーランドが,同サミットでの日本との対話におけるPIF島嶼国の中心性を認識していることを歓迎した。

8 太平洋諸国の首脳は,太平洋地域における持続可能な開発を進めるための日本の継続的な取組を認識し,歓迎した。安倍総理は,太平洋地域主義枠組みや開発協力強化のためのフォーラム・コンパクト(ケアンズ・コンパクト)において言及されている効果的な開発協力の強化に向けた太平洋地域の取組を日本として支援する意図を表明した。太平洋諸国の首脳は,このコミットメントに謝意を表明し,そのような取組が,PIF島嶼国の優先順位とニーズを踏まえて実施されることへの期待を表明した。

9 首脳は,2013年のPIF総会において歓迎され,さらに,2013年10月に東京で開催された太平洋・島サミット第2回中間閣僚会合において再確認されたとおり,太平洋地域のために更に協力を強化すべく,島サミット・プロセスとPIFとの協調を促進する重要性を想起し,日本のPIFへの関与の拡大及び強化のための可能な方法について協議を継続していく決意を表明した。

3 日本の支援パッケージ

10 首脳は,日本とPIF島嶼国の間の長きにわたる緊密な協力関係を認識し,この協力関係をより高い次元に引き上げる決意を確認した。

11 首脳は,国家,準地域及び地域の優先課題に対応するためには一貫した取組が必要であることを認識し,島サミット・プロセスの成果を踏まえ,(1)防災,(2)気候変動,(3)環境,(4)人的交流,(5)持続可能な開発(人材育成を含む。),(6)大洋・海洋問題・漁業,(7)貿易・投資・観光の7つの分野に特に焦点を当てつつ,協力を進めることを決定した。

12 安倍総理は,開発におけるPIF島嶼国のリーダーシップとオーナーシップの重要性を強調し,対話を促進するとともに,日本の経験と知見を生かして,自立的発展を促すために更なる協力を行う意図を表明した。安倍総理は,日本は,過去3年間で5億米ドル以上を提供し,第6回太平洋・島サミットの公約を達成した旨述べるとともに,今後3年間でPIF島嶼国に対し,550億円以上の援助を提供することを表明した。また,安倍総理は,今後3年間で,PIF島嶼国から4,000名の人材育成及び人的交流を行う意図を表明した。PIF島嶼国の首脳は,日本の寛大な支援に深謝するとともに,継続的な支援に高い期待を示した。

4 防災

13 首脳は,自然災害に対する太平洋地域の脆弱性を認識し,防災,特に,強靱性の構築のための協力を強化する重要性を強調した。首脳は,また,持続可能な開発を妨げる自然災害の悪影響を認識し,開発計画において防災を主流化する必要性を強調した。

14 首脳は,太平洋においてサイクロン・パムや台風メイサックによりもたらされた悲劇的な最近の出来事に立ち向かうために結束している。首脳は,死傷者や貴重な財産を失った人々への悲しみや祈りだけでなく,被災地の人々を支援するために協力する決意によってつながっている。

15 首脳は,気候変動と災害リスク管理に関する共同国家行動計画の国家レベルでの作成,並びに,国家及びセクターの開発計画及び予算において気候や災害リスクへの考慮を共同で主流化する地域レベルでの取組を支持する日本のコミットメントを認識した。首脳は,現在策定中の太平洋における気候と災害に強靱な開発のための戦略への日本の支持を歓迎した。

16 首脳は,2015年3月14日から18日に宮城県仙台市で開催された第3回国連防災世界会議において採択された「仙台防災枠組2015-2030」へのコミットメントを再確認した。首脳は,本年後半に国連総会に提出される仙台枠組に従い,同枠組の実施に向け,各国政府が緊密に協力するコミットメントを再確認した。首脳は,今後15年間で仙台枠組の7つのグローバル・ターゲットを達成するため,全てのステークホルダーを含む,あらゆるレベルにおける行動が求められていることに留意した。

17 首脳は,安倍総理が,太平洋地域において気候変動と災害に強靱な開発を行うため,国家や地域の既存の方針を踏まえつつ,自然災害に強靱な経済社会インフラの整備及び能力構築並びに太平洋災害早期警報システムなどを組み合わせた包括的な,切れ目のない,かつ,調整された支援を行う意図を表明したことを歓迎した。

18 首脳は,太平洋自然災害リスク保険試行プログラムによるトンガ及びバヌアツへの支援を想起し,日本と世界銀行が拠出して設置された試行プログラムが,災害後の対応のために財政支援を行っていることを認識した。試行プログラムの成果は,初動対応や復興への投資のための財政能力の向上に,保険メカニズムがいかに効果的に太平洋島嶼国を支援しているかについて,理解を促進し,及び評価を継続するために重要である。この関連で,首脳は,試行プログラムが,クック諸島,マーシャル諸島共和国,サモア,トンガ及びバヌアツの参加を得て,2014年11月1日から2015年10月31日まで更新されたことを歓迎した。また,首脳は、安倍総理が、同プログラムの拡充のため,世界銀行と協力して引き続き財政支援を行う意図を表明したことを評価した。

19 首脳は,太平洋地域が,地震,津波,洪水,台風,サイクロンなどの自然災害に遭いやすいことを認識し,過去のこういった災害経験から得た教訓を共有する重要性に改めて言及するとともに,この分野における継続的な協力の必要性について一致した。

20 首脳は,津波への理解を深め,津波への警戒措置の重要性について関心を高めることを目的として,11月5日を「世界津波の日」と定める安倍総理の提案を支持した。

21 首脳は,海洋及び海洋環境への影響を含め、福島第一原子力発電所における事故に関連する全ての情報及び同事故から得られた教訓を国際社会に提供する必要性を改めて表明した。

5 気候変動

22 首脳は,気候変動が太平洋の人々にとって,継続的で差し迫った脅威であり,持続可能な開発の実現に向けた取組に悪影響を与えていることを再確認するとともに,緊急かつ具体的な行動が必要であることを認識した。首脳は,2013年の第44回PIF総会において採択された「気候へのリーダーシップに関するマジュロ宣言」を想起し,国家,地域及び世界的なレベルにおいて,気候変動に対処するために指導力を発揮する重要性を強調した。首脳は,マジュロ宣言への日本の参加を歓迎し,気候変動問題に立ち向かうためには,国際社会の連帯と行動が必要であることに改めて言及した。

23 首脳は,2014年12月にペルーのリマで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第20回締約国会議での成果に留意し,2015年末にパリで開催される第21回締約国会議において,UNFCCCの下で全ての締約国に適用される野心的な議定書,法的文書又は法的効力を有する合意成果の採択に向けて緊密に協力するコミットメントを再確認した。

24 首脳は,ワルシャワ国際メカニズムに留意した。

25 首脳は,太平洋地域が,特に,気候変動の悪影響や増大した自然災害の影響に脆弱であるとの懸念を表明し,緊急を要する事案として,気候変動への適応に取り組むべきであると強調した。この関連で,安倍総理は,日本の「適応イニシアチブ」へのコミットメントを再確認し,適応への取組を引き続き支援する意図を表明した。

26 首脳は,緩和の重要性を強調し,日本が排出削減に更に取り組む意図を表明したことを歓迎した。首脳は,UNFCCCの究極的な目的を追求するに当たり,二国間クレジット制度(JCM)が,地域において低炭素かつ持続的成長に貢献する潜在的な手段であると認識した。首脳は,地域の排出削減に向けた市場メカニズムの将来的な活用を検討するため,環境十全性を守りつつ,JCMについての知見を身につける必要性に留意した。

27 首脳は,気候変動の悪影響に対処するための太平洋の開発途上国による緩和や適応への取組を支援するため,日本その他の開発パートナーが,代替的な財源を含む,官民並びに二国間及び多国間などの様々な財源から,引き続き財政支援を供与し,かつ,動員する緊急の必要性を認識した。

28 首脳は,緑の気候基金(GCF)の初期資金として33か国がコミットした102億米ドルのうち,15億米ドルを拠出する日本のコミットメントを歓迎した。首脳は,小島嶼開発途上国(SIDS)が基金にアクセスしやすくなるように,基金が特別な配慮を進め,また,その際,太平洋地域における気候行動のために実用的かつ効果的な支援を行う必要性を強調した。首脳は,資金の50パーセントを適応に割り当てるGCF理事会の決定を歓迎し,SIDSを含む脆弱国へのレディネス支援の利用可能性に留意した。首脳は,太平洋島嶼国によるGCFへのアクセスを容易にするための重要な措置として,太平洋地域環境計画事務局(SPREP)がGCFの地域実施機関として認定されたことを歓迎した。PIF島嶼国の首脳は,2015年5月21日,東京において,GCF事務局その他国際機関の協力を得て,気候変動・開発フォーラムを開催した日本のイニシアティブを評価した。

29 首脳は,気候変動に対処する際の包括的かつ長期的なアプローチの必要性を強調した。そのため,安倍総理は,SPREPと協働し,太平洋気候変動センターの整備や太平洋地域全体として気候変動に取り組む努力を支援する能力構築を含む,包括的な支援を実施する意図を表明した。PIF島嶼国の首脳は,日本のコミットメントと具体的な支援に謝意を表明した。

30 首脳は,エネルギー需要を満たすための化石燃料への依存が,太平洋地域の持続可能な開発に大きな制約となっていることを認識し,持続可能なエネルギーの将来への移行の重要性を強調した。この関連で,首脳は,昨年の国連気候サミットにおいて打ち出された「SIDSライトハウス・イニシアティブ」へのコミットメントを再確認した。安倍総理は,エネルギー安全保障の向上及び温室効果ガスの削減に寄与することを目的として,PIF島嶼国における化石燃料の消費を削減するために太平洋諸国と協力する意図を表明した。

31 首脳は,太平洋島嶼国における持続可能なエネルギー政策の策定及び実施のための能力構築の必要性を認識した。首脳は,太平洋島嶼国において再生可能エネルギーを推進するため,国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と協力し,本年実施される多くのプログラムを擁する様々なイベントを開催する日本のイニシアティブを歓迎した。

6 環境

32 首脳は,太平洋地域の天然資源が地域の人々の生活にとって重要な財産であることを認識し,そのような天然資源の持続可能な開発,管理及び保全の重要性を再確認した。首脳は,廃棄物管理,生物多様性の損失への取組並びに陸海の生物多様性の保全及び持続的利用を含む環境問題に対応するために引き続き協力することを約束し,地域の天然資源を持続的に開発し,管理するための協力の必要性を強調した。

33 首脳は,環境問題に対処するための包括的かつ統合されたアプローチをとる重要性を強調した。この関連で,首脳は,2013年に沖縄で開催された地球温暖化防止とサンゴ礁の保全に関する国際会議において日本が発表した「島まるごと支援」イニシアティブの展開を歓迎した。首脳は,このイニシアティブを通じた適応,緩和,生態系の保全,廃棄物管理及びエネルギーの分野における協力を再確認した。

34 首脳は,第5回太平洋・島サミットにおいて日本により設置された太平洋環境共同体(PEC)基金が,再生可能エネルギーや安全な水へのアクセスを向上するための開発支援を提供する意義を認識した。首脳は,事業の進展に満足の意を表明し,脆弱なコミュニティを裨益する事業の重要な成果に留意した。首脳は,PEC基金の調整と管理を行うPIF事務局の役割に留意した。首脳は,第1段階から得られた教訓並びに社会・経済開発上及び能力開発上のそれぞれの必要性を基に,PEC基金に追加拠出すること,また,太平洋島嶼国のニーズを踏まえ,基金の対象を様々な分野に拡大することを第6回太平洋・島サミットにおいて日本に要請したことを想起した。

7 人的交流

35 首脳は,国家間の相互信頼関係を強化するためには,人と人とのきずなが重要であることを強調し,人的交流,特に,太平洋地域の将来を担う若い世代の相互訪問を促進する意図を表明した。この関連で,日本とPIF島嶼国の首脳は,第6回太平洋・島サミットのコミットメントに基づき,相互に,かつ,二国間ベースで査証の要件を緩和することを引き続き検討する意図を再確認した。

36 首脳は, 「JENESYS2.0」などの枠組みの下,太平洋地域から1,000名を超える若者が訪日したことを想起し,これらのイニシアティブについて日本に謝意を表明するとともに,「JENESYS2015」などの枠組みによる人的交流を継続することの重要性を強調した。安倍総理は,PIF島嶼国の首脳による日本の大学と南太平洋大学との学生の交流事業に関する提案に留意した。

37 首脳は,2019年のラグビー・ワールドカップ及び2020年のオリンピック・パラリンピックの日本開催を歓迎し,2020年に向け,スポーツの分野における人的交流と協力を強化する決意を確認した。この関連で,首脳は,日本のイニシアティブ「Sport for Tomorrow」を通じた取組を評価した。

38  首脳は,青年海外協力隊及びシニア海外ボランティアが日本と太平洋島嶼国の懸け橋として重要な役割を果たしていることを評価した。首脳は,このような交流を通じ,草の根レベルでの幅広い相互理解を促進することの重要性を再確認した。

8 持続可能な開発

39 首脳は,2014年9月にサモアのアピアで開催された第3回小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議において採択された「SAMOA Pathway」のコミットメントを再確認した。首脳は,ポスト2015年開発アジェンダの策定に貢献する決意を再確認し,SIDSの特殊性及び人間中心のアプローチを考慮する必要性を強調した。

40 首脳は,国際経済の変動や環境の変化への脆弱性など太平洋SIDSの特殊性に配慮することにより持続可能な開発を促進する重要性を再確認し,強靱性,信頼性及び耐久性のある運輸交通、通信網及びエネルギーへのアクセス並びに持続可能な農業,漁業及び観光業を確保するためには,「質の高いインフラ」が不可欠であることを改めて述べた。また,首脳は,女性の能力強化,教育・保健・水と衛生を含む社会サービスの提供及び経済生活への参加に当たっては,人間中心のアプローチが重要であることを強調した。

41 首脳は,国の将来を創るために重要な役割を果たす若い世代を育成する重要性を認識した。そのため安倍総理は,太平洋の若手リーダーのための新たな研修プログラム「太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラム(Pacific-LEADs)」を開始することを発表した。太平洋諸国の首脳は,大学及び大学院において学習するための協力を促進することの検討を日本に慫慂した。

42 首脳は,後発開発途上国(LDC)からの太平洋SIDSの卒業を検討する際,経済的,社会的及び環境的な脆弱性に配慮するように要請した。首脳は,LDCからの卒業がこれまで達成した開発の進展を損なうことにならないように確保することの重要性を再確認した。また,首脳は,最近卒業したSIDSについては,譲許的融資を失う可能性を緩和し,深刻な債務に陥る危険性を減らすため,緩やかな移行が必要であることを再確認した。PIF島嶼国の首脳は,適当な場合には,現在のLDC卒業基準の見直しを求めるPIF島嶼国を支持するように日本に要請した。

43 安倍総理は,特別な脆弱性を抱える太平洋SIDSなどの国に対しては,各国の開発ニーズを踏まえ,必要な協力を行っていく日本の意図を表明した。

9 大洋・海洋問題・漁業

44 首脳は,太平洋が太平洋諸国の繁栄の基盤であることを認識し,海洋資源及び海洋環境の持続可能な開発,管理及び保全に対する統合アプローチの重要性を再確認した。この関連で,首脳は,「海洋:命と未来」に関するパラオ宣言(2014年),パシフィック・オーシャンスケープ枠組み(2010年)及び太平洋島嶼地域海洋政策(2005年)に留意した。首脳は,海洋環境,海洋安全保障,海洋の安全,海洋監視,海洋科学調査・観測及び海洋資源の保全並びに経済成長を促進し,及び生活と食料安全保障を改善するための持続可能な漁業管理等の分野において,二国間及び多国間の協力を一層強化する決意を強調した。

45 首脳は,太平洋地域の一部のまぐろ資源の持続可能性が危機にさらされているという最新の漁業資源評価に留意し,公海における協力を含め,中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の枠組みの下で,太平洋諸島フォーラム漁業機関(FFA)及び太平洋共同体事務局(SPC)を含む関係団体の協力を得て,効果的な保存管理措置の策定のために協力を増進することをコミットした。

46 首脳は,PIF島嶼国の主要な収入源を損ない,太平洋地域の漁業資源の持続可能性を脅かす違法・無報告・無規制(IUU)漁業に強い懸念を表明した。太平洋の漁業資源の持続的利用から恩恵を受けている国として,首脳は,IUU漁業を根絶するために必要な措置をとるべく緊密に協力するコミットメントを確認した。

47 PIF島嶼国の首脳は,日本による漁業関連の支援を評価し,長期的な経済発展を目指して太平洋漁業の活力ある持続可能な管理を向上させるためには,地域機関を通じたものを含む継続的な支援が必要であることを強調した。首脳は,漁業資源の持続可能性の向上や,適当な場合には,この地域における日本漁船との間で相互利益となる関係の促進等,日本とPIF島嶼国間の漁業分野における長期的な協力関係の重要性を強調した。

48 首脳は,近代的なマグロ漁船の太平洋島嶼国の船籍船への正当な導入を含め,適当な場合には,自国の海洋資源を適切に開発する太平洋島嶼国の権利を認識した。PIF島嶼国の首脳は,日本と太平洋島嶼国間で漁業分野における協力関係を模索する必要性を強調した。

49 首脳は,太平洋における平和と安全の重要性に改めて言及し,国連海洋法条約及び関連実施協定を含む,普遍的に認められている国際法の原則に従い,海洋秩序が維持されるべきことを再確認した。首脳は,自制的行動をとり,武力による威嚇又は武力の行使に訴えることなく国際紛争を平和的に解決することの重要性を強調し,海洋の安全及び海洋安全保障の分野において協力を促進する意図を再確認した。

10 産業振興・貿易投資促進

50 首脳は,日本とPIF島嶼国との経済関係の潜在性を認識し,日本と太平洋諸国とのビジネス交流の重要性を改めて述べるとともに,太平洋諸島センター(PIC)及び日本貿易振興機構(JETRO)などの関連機関の協力を得て,情報交換やビジネス・マッチングを行うことを慫慂した。この関連で,首脳は,2015年5月21日,東京において,日本・太平洋諸島経済フォーラムを開催したJETRO及び太平洋協会に謝意を表明した。首脳は,日本と太平洋諸国との貿易投資促進を支えるために,ビジネス環境を改善するための国家政策や立法改革の強化等,必要な措置をとるコミットメントを確認した。

51 PIF島嶼国の首脳は,多くの太平洋島嶼国が数少ない産品の販路を促進するほどの規模の経済を有していないことを認識し,地域の選ばれた産品が日本市場に有利にアクセスできるようになることへの希望を表明した。首脳は,日本と太平洋地域との貿易・投資・観光を促進するためにPICが行っている取組を評価した。この関連で,首脳は,日本政府とトンガ政府が,PICと緊密に協力し,2014年6月18日,トンガのヌクアロファにおいて,日本・トンガ貿易投資シンポジウムを共催したことを評価するとともに,PICやJETROと協力して,他の太平洋島嶼国にもこのイニシアティブを拡大する日本の計画を歓迎した。

52 首脳は,観光地としての太平洋地域の潜在性を十分認識しつつ,持続的な経済成長のための有効な手段としての観光業を発展させる必要性を強調した。首脳は,広報並びに観光資源の持続的開発及び管理のベスト・プラクティスの共有を通じ,観光促進のための協力を一層強化する意図を確認した。首脳は,2015年,日本において太平洋島嶼国観光大臣会合を開催する計画を支持した。

53 PIF島嶼国の首脳は,国家及び地域の優先事項に対する日本の継続的支援を認識し,具体的な民間セクター開発イニシアティブを通じ,持続的な経済成長を実現するためにPIF島嶼国を支援するための日本からの一層のコミットメントを求めた。安倍総理は,民間セクター開発,輸送分野でインフラ及びサービスの整備並びに開発のためのインフラを含む,太平洋島嶼国の生産・輸出能力の開発及び強化を支援することをコミットした。

11 戦没者遺骨の収容

54 安倍総理は,太平洋地域における第二次世界大戦の戦没者遺骨の収容に対する寛容な支援について,太平洋島嶼国の首脳に深い感謝の意を表明するとともに,戦没者遺骨の収容を迅速に進めるため,引き続き協力を要請した。PIF島嶼国の首脳は,日本による戦没者遺骨の収容への取組において,日本にあらゆる可能な支援を行う意思を表明した。

12 不発弾処理

55 首脳は,第二次世界大戦の不発弾が人間の安全保障を脅かし,太平洋島嶼国の持続可能な開発の障害となっている継続的な悪影響に留意し,不発弾処理の取組を歓迎するとともに,継続的な支援を要請した。

13 国連安保理改革

56 首脳は,本年が国連創設70年の節目の年であることを認識し,常任及び非常任の双方の議席拡大を含め,国連安全保障理事会の有効性を更に強化し,信頼性を高める必要性を再確認した。首脳は,国連安保理改革に関する政府間交渉の作業に留意し,そのプロセスに建設的に関与する意図を表明した。

14 平和への誓い

57 首脳は,太平洋地域を含む国際社会の平和と発展を確保するため,第二次世界大戦後,日本が一貫して行ってきた取組を評価し,平和への決意を新たにした。首脳は,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下,太平洋地域の平和,安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与するという安倍総理の決意を支持した。

15 PALM7フォローアップ

58 首脳は,島サミットのモニタリング・プロセスを強化することの重要性を強調し,適切なフォローアップを行い,進展に影響を与える現在の問題に対処し,太平洋地域枠組みを通じて示されたものを含む,地域の優先事項に従って優先順位を再編成するために,中間閣僚会合や他の適当な機会を効果的に活用する意図を表明した。首脳は,第7回太平洋・島サミットの主要な成果の実施状況を精査及び評価するとともに,第8回太平洋・島サミットの準備プロセスを開始するため,2016年に第3回中間閣僚会合を開催することを決定した。首脳は,第8回太平洋・島サミットの日程及び開催地については,第3回中間閣僚会合において提議するという日本の提案を歓迎した。