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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 太平洋・島サミット第三回中間閣僚会合議長総括

[場所] 東京
[年月日] 2017年1月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

総論

1.第7回太平洋・島サミット(PALM7)の成果のフォローアップ及びPALM8に向けた準備のため,2017年1月17日,日本の東京において,太平洋・島サミット第3回中間閣僚会合が開催された。

2.この会合には,日本,太平洋諸島フォーラム(PIF)の16のメンバー国の代表及びPIF事務局が出席した。岸田文雄日本国外務大臣及びPIF議長としてローリン・ロバート・ミクロネシア連邦外務大臣が会合の共同議長を務めた。

3.閣僚は,幅広い共通課題に取り組む上での,日本とPIFの間の強固なパートナーシップの重要性を強調するとともに,歴史的な結束,国際法の尊重及び相互信頼に裏打ちされたPALMパートナーシップにおけるPIF島嶼国の中心性を再確認した。閣僚は,PALM8における拡大されたPIFメンバーについて更に議論する意図を共有した。

4.閣僚は,地域における自由で開かれたルールに基づく秩序の維持及び自立的かつ持続可能な発展の実現という目標を共有した。第7回太平洋・島サミット「福島・いわき宣言」を想起し,閣僚は,PALMプロセスに基づく対話と協力を通じてパートナーシップを一層強化する固い決意を再確認した。

5.閣僚は,発展に関するPIF島嶼国のリーダーシップ及びオーナーシップの重要性を強調した。岸田大臣は,PIF島嶼国の最もニーズを最も反映した分野において,日本の強みを活かす手段を活用し,引き続き太平洋島嶼国を支援していく決意を表明した。

6.閣僚は,2016年9月7日から11日のミクロネシア連邦のポンペイにおける第47回太平洋諸島フォーラムの成功を歓迎するとともに,フォーラム・コミュニケを考慮し,共通の関心を有する主要な課題に関し協働することを楽しみにしている。

7.閣僚はまた,各サブ・リージョンの共通課題に対処するサブ・リージョナルな取組の重要な役割に留意し,こうした取組とのより緊密な協調を追求する意図を表明した。岸田大臣は,「太平洋地域主義枠組み」における小島嶼国(SIS)の地域優先課題及び目標を明らかにするための基盤としてPIFによって採択された「小島嶼国地域戦略2016‐2020」に留意した。

PALM7のフォローアップ

8.岸田大臣は,3年間で550億円以上の援助及び4000人の人材育成・交流を行うとするPALM7におけるコミットメントに関する最新の情報を提供した。今日に至るまで,日本は約610億円の開発援助及び約32

00人の人材育成・交流を実施した。

9.PIF島嶼国の閣僚は,日本による円滑かつ迅速な支援の実施に対し謝意を表するとともに,コミットメントを一貫して実施する日本の長年の実績を歓迎した。

10.閣僚は,「Pacific - LEADS」及び「JENESYS事業」といった人的交流プログラムを通じた進展を歓迎した。閣僚は,人的交流が日本とPIF島嶼国との間の長きにわたるパートナーシップの基盤となっているとの認識を共有した。岸田大臣は,防災,気候変動,環境,貿易,投資,観光及び海洋資源を含む様々な分野において太平洋島嶼国の人材育成に一層貢献してい

く意向を表明した。

11.岸田大臣は,第二次世界大戦時の遺骨の収容に関するPIF島嶼国の寛大な支援に対し深い謝意を表明し,日本との緊密な協力の継続を要請した。閣僚は,政府建立の慰霊碑の維持も含めた慰霊事業に関して適切に協力するとの認識で一致した。

12.閣僚は,地域における不発弾処理の取組を歓迎するとともに,継続的な支援を要請した。

自立的かつ持続可能な開発

13.閣僚は,持続可能な開発のための2030アジェンダ及び開発資金に関するアディスアベバ行動目標の世界的な実施に向けて協力を継続するコミットメントを再確認した。閣僚は,また,太平洋における持続可能な開発目標への効果的な資金調達に関し,2016年11月にフィジーにおいて開催されたワークショップ等のイベントを共催したPIF事務局の重要な働きを認識した。閣僚は,「S.A.M.O.A Pathway」におけるコミットメントを,その効果的な実施及びレビューを含め再確認した。

14.閣僚は,自立的かつ持続可能な開発を達成するとの目標は以下の取組を含むとの認識で一致した。

(a)気候変動,自然災害及び大洋を含む環境問題並びにその他の関連課題への対処。

(b)経済成長を後押しするための貿易と投資の促進及びより高次の自立を達成するためのビジネス発展の奨励。

15.閣僚は,気候変動が太平洋島嶼国の持続可能な発展に対し継続的かつ喫緊の脅威となっているとの認識を共有し,気候変動の原因や悪影響について緩和及び適応するための緊密な協力の重要性を強調した。閣僚は,気候変動に関する国際連合枠組条約締約国によるパリ協定の発効を歓迎するとともにその効果的な実施の重要性を強調した。

16.閣僚は,気候変動に関する地域協力のための共有資産である太平洋気候変動センターの建設に向けた着実な進展を歓迎した。閣僚は更に,気候変動による悪影響及び災害リスクへのPIF島嶼国による適応を確保する上での気候変動対策に関する資金の重要性を強調し,この観点から日本の継続した資金面での支援を歓迎した。PIF島嶼国の閣僚は緑の気候基金(GCF)への日本の貢献に対し謝意を表明した。閣僚は,2016年12月にサモアで開催されたGCF理事会を含め,今日までのGCF理事会による太平洋島嶼国に対する合計1.65億ドルに達するプロジェクトの承認及びGCFが2016年に達成した力強い前進を歓迎した。閣僚は,GCFへのアクセスを改善する努力を継続する意図を共有した。また,閣僚は再生可能エネルギーの導入及び効果的利用に対する日本の継続した支援を歓迎した。

17.閣僚は,太平洋環境共同体基金の終了が迫っていることに留意し,気候変動を軽減する太平洋島嶼国の努力への日本による支援に謝意を表明した。太平洋島嶼国の閣僚は,気候変動を軽減するための資金への直接的なアクセスの価値を強調した。

18.閣僚は,防災,特に強靱性の構築に関し,協力を強化することの重要性を強調し,ポンペイにおける2016年PIF総会での「太平洋における強靱な発展に向けた枠組み(FRDP)」の発表及び同志国がその実施を支援することへの期待に留意した。閣僚は,仙台防災枠組みの実施に向けて緊密に協力することへのコミットメントを再確認した。また,閣僚は,自然災害に対して強靱な経済・社会インフラの開発及び能力構築への日本の継続的な支援を歓迎した。閣僚はまた,2016年11月に日本の黒潮町にて開催された「『世界津波の日』高校生サミット」を含む「世界津波の日」の下での様々なイニシアティブを歓迎した。

19.閣僚は,廃棄物管理を含む環境問題の重要性を再確認し,支援を継続するとの日本の意向を歓迎した。閣僚はまた,持続可能な開発に向けた生態系及び生物多様性の保全の重要性を改めて強調した。

20.閣僚は,より高次の自立を達成する重要な手段として,貿易及び投資を促進し,太平洋島嶼国における地元の産業を発展させるための協力を更に探求する努力を強化するとの意図を共有した。この観点から,閣僚は,日本が大洋州地域に対して派遣した経済ミッションを歓迎するとともに,太平洋諸島センターが果たす役割に謝意を表明した。閣僚は,地域の経済的な可能性を引き出す上で,ビジネス環境の改善及び域内連結性の強化が重要であるとの認識を共有した。閣僚はまた,成長を推進する上で観光産業が果たすことのできる主要な役割を強調した。

21.閣僚は,経済発展促進のため水産資源その他の海洋資源を活用すると同時に,海洋資源及び海洋環境の持続可能な開発,管理及び保全のための統合されたアプローチの決定的な重要性を改めて強調した。閣僚は,日本とPIF島嶼国の間で漁業に関する協力的関係を継続する必要性を再確認した。閣僚は,違法・無報告・無規制漁業の根絶のため必要な措置をとるための協力の重要性を強調した。閣僚は,重要事項に関する共同提案を作成するための可能な機会を特定することを含め,中西部太平洋まぐろ類委員会において協力を継続する意図を表明した。閣僚は,海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)の下での国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関し,関連する既存の法的枠組みを十分に尊重し,十分にバランスの取れた,法的拘束力を有する文書を作成することの重要性を強調した。閣僚は,これらの分野が日本とPIF島嶼国にとって優先分野の一つであり続けることを再確認した。

自由で開かれた海洋秩序の維持

22.閣僚は,地域の平和,安定及び繁栄の重要な基盤として,UNCLOS及び関連する実施協定を含む普遍的に認められた国際法の原則に従い,太平洋における,自由で開かれたルールに基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調し,この分野において協力を推進する意図を再確認した。閣僚は,全ての国が,航行及び上空飛行の自由を含む国際法の下での権利を尊重することの重要性を強調した。閣僚は,全ての国が国際法に基づく主張を行い,及び明確にすること,自国の主張を通すために力や威圧を用いないこと,自制を行使すること,並びに国際法に基づき平和的な手段により紛争を解決することの重要性を強調した。

国際場裡における協力

23.閣僚は,フィジーによる,2017年に開催される持続可能な開発目標

14実施支援のための国連会議の共催及び国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)の議長国並びにパプアニューギニアによる20

18年アジア太平洋経済協力(APEC)会合の主催を含め,太平洋島嶼国が国際会議を主催し,及び議長を務めることを支持するという認識を共有した。岸田大臣は,国際場裡におけるこうした太平洋島嶼国のイニシアティブに歓迎の意を表した。

24.岸田大臣は,国際場裡及び多国間機関における日本のイニシアティブと取組に対する太平洋島嶼国による継続した支持に深い謝意を表明した。PIF島嶼国の閣僚は日本に対し,国際金融機関におけるPIF島嶼国による「脆弱国」の定義に関するイニシアティブや取組への支持を要請した。

25.閣僚は,21世紀の国際社会の現実をよりよく反映させるため,国連安全保障理事会の正統性,実効性及び代表性の更なる向上の必要性を再確認した。閣僚はまた,常任及び非常任議席双方の拡大を通じたものを含め,改革の早期実現に向けた政府間交渉に係る作業に建設的に取り組む決意を表明した。この観点から,PIF島嶼国の閣僚は,日本が常任理事国となることに対する支持を改めて表明した。

26.閣僚は,関連国連安全保障理事会決議に違反した北朝鮮の核及び弾道ミサイル計画を最も強い表現で非難した。閣僚は,北朝鮮に対し,いかなる挑発行動も自制し,関連国連安全保障理事会決議及び六者会合共同声明を完全に遵守し,核兵器及び大量破壊兵器計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で放棄するよう強く求めた。閣僚は,全ての加盟国による関連安全保障理事会決議の持続的かつ包括的な履行を呼びかけた。閣僚はまた,北朝鮮に対し,北朝鮮にいる人々の福祉及び固有の尊厳を尊重し,確保するとともに,拉致問題を解決するよう求めた。

27.閣僚は,本年開始する2020年NPT(核兵器の不拡散に関する条約)運用検討サイクルの成功に向け,核軍縮・不拡散及び原子力の平和的利用を促進するとの強いコミットメントを強調した。

PALM8に向けたビジョン

28.閣僚は,PALM8に向けてパートナーシップに更なる深みを加えるため,2019年ラグビーワールドカップ,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会,そしてその他太平洋島嶼国が主催する主要な国際スポーツ・イベントを考慮し,身体障害及びスポーツ等の新たな協力分野の探求を続けていくことの重要性を強調した。

29.岸田大臣は,次回のPALM(PALM8)は,2018年5月18‐19日に福島県いわき市で開催されると表明し,閣僚は,PALM8の準備において緊密な協議を継続する意図を共有した。