[文書名] 第9回太平洋・島サミットに向けた中間閣僚会合議長総括
概観
1.第8回太平洋・島サミット(PALM8)の成果のフォローアップ及びPALM9に向けた準備のため、太平洋・島サミット中間閣僚会合がオンライン会議で2020年10月20日に開催された。
2.この会合には、日本及び太平洋諸島フォーラム(PIF)メンバーの代表が出席した。茂木敏充日本国外務大臣及び現在のPIF議長であるサイモン・ロバート・コフェ・ツバル法務・通信・外務大臣が会合の共同議長を務めた。PIFの閣僚は、次回のPALM中間閣僚会合を太平洋島嶼国地域において開催することに関心を有していることを再確認するとともに、同地域における開催を提案した。
3.閣僚は、第8回太平洋・島サミット首脳宣言(「PALM8首脳宣言」)を想起し、日本とPIF加盟国・地域との間の歴史的な絆と相互信頼に裏打ちされた強固なパートナーシップに対する力強いコミットメントを確認した。閣僚は、パートナーシップの強化において20年以上にわたってPALMプロセスが果たしてきた重要な役割と、地域の進化する機会と課題によりよく対応するためにパートナーシップを更に強化する決意を再確認した。
4.閣僚は、新型コロナウイルス感染症の流行による健康、社会及び経済への壊滅的な影響及びその対応と復興に向けた地域における及び多国間の協力の重要性を認識した。PIFの閣僚は、PIF加盟国・地域が採用した国内の拡大防止措置及び「新型コロナウイルスに関する太平洋人道パスウェイ」を通じた地域協力は、太平洋島嶼国地域での新型コロナウイルス感染症数が比較的少なく、概ね成果を挙げていることを強調した。しかし、社会経済的影響は引き続き重大で、今後数年にわたるものである。閣僚は、太平洋地域への新型コロナウイルス感染症ワクチンの公正かつ公平なアクセス、保健インフラへの投資の増加、新型コロナウイルス感染症からの太平洋地域の復興を支援するための安価で柔軟な開発資金へのアクセスの重要性を再確認した。
5.茂木大臣は、PIF島嶼国のニーズに応え、40億円相当の医療機材及びUNICEF、IFRC及びUNDPを通じた5.8億円相当の技術支援及び保健医療物資の供与を含め、短期的な支援のみならず、新型コロナウイルス感染症の世界的流行下で保健医療システムを強化するための中長期的な支援を通じ、国際機関及び地域機関と協力しつつ、太平洋島嶼国地域を支えていくとの日本の決意を強調した。また、茂木大臣は、新型コロナウイルスへの対応に必要な資金を迅速に供給し、また、より長期的な持続可能かつ包摂的な経済成長を達成するため、「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援円借款」等を通じて、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により太平洋島嶼国地域が直面する経済的課題への対応を支援する日本の意図を表明した。茂木大臣は、保健医療システム、経済回復、またインフラのニーズ支援を含め、PIF島嶼国による新型コロナウイルス感染症の課題への対応を支援するために、日本は、豪州、ニュージーランドやその他のパートナーと緊密に連携していることを強調した。閣僚は、ポスト・コロナ時代において、安定した、強靭かつ繁栄した太平洋地域を共に構築していくことへのコミットメントを表明した。
6.茂木大臣は、日本の「今後の対太平洋島嶼国政策に関する方向性」を含め、日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づくオールジャパンでの取組を通じた太平洋島嶼国地域への日本の新たなコミットメントを強調した。この新たなコミットメントは、日本とPIF島嶼国との間の活発なハイレベル交流や、2019年に設立された関係省庁から構成される太平洋島嶼国協力推進会議の設立からも明らかである。PIFの閣僚は、このような日本のコミットメント及びオールジャパンでの取組を通じてPIF加盟国・地域との協力を更に強化するための具体的な行動を歓迎した。
7.PIFの閣僚は、「太平洋地域主義のための枠組み」及び「ブルーパシフィック大陸の2050戦略」の策定の下で太平洋を共に守り、1つの「ブルーパシフィック大陸」として共同行動をとるという力強い地域主義に対するコミットメントを再確認した。PIFの閣僚は、PIFの「対話と関与のためのブルーパシフィック原則」の下で長年の対話国パートナーである日本と協働することの重要性を強調した。
PALM8のフォローアップ
8.茂木大臣は、従来同様のしっかりとした開発協力の実施を継続し、3年間で5000人の人材育成及び人的交流を行うPALM8における日本のコミットメントの実施状況について報告した。今日に至るまで、日本は、約610億円の開発支援を供与するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序及び地域における海洋資源の持続可能性を確保するための500人を超える人を含む約6500人の人材育成・人的交流を実施した。
9.PIFの閣僚は、日本による円滑かつ着実な支援の実施に対し謝意を表すとともに、そのコミットメントを一貫して実施する、日本の長年の実績を歓迎した。
法の支配に基づく海洋秩序及び海洋資源の持続可能性
10.閣僚は、地域の平和、安定、強靱性及び繁栄に貢献する、太平洋における法の支配に基づく自由で開かれた持続可能な海洋秩序の重要性を再確認した。
11.茂木大臣は、PALM8における日本のコミットメントの一部として、日本は海上保安庁モバイルコーポレーションチームを含む短期と長期の専門家の派遣、海上保安関連機材の供与、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策研修、南太平洋大学での海上法執行に関するワークショップ等を通じて海上安全及び保安における能力構築を提供した旨説明した。また、日本は海洋資源管理と環境保全に協力し、また、沈没船からの油漏れへの対応を支援した。閣僚は、漁業の持続可能な管理を確保するために、国連海洋法条約を含む国際法に従い、自国の排他的経済水域において水域に基づく管理を実施することへのPIF加盟国・地域のコミットメントに留意し、互恵的な漁業協定等を通じた、太平洋における水産資源の持続可能な利用に係る継続的な協力を歓迎した。
12.PIFの閣僚は、海洋とその資源の持続可能な開発、管理、保全に対するPALM8のコミットメントを改めて表明した。その観点から、閣僚は、既存の海域が保たれ、海面上昇と気候変動の結果として海域について異議を申し立てたり海域を減少させることがないよう協働すること、有害なプラスチック並びに核廃棄物、放射性物質及びその他の汚染物質の存在による脅威から海洋を保護すること、地域の漁業資源の長期的な持続可能性と経済的な有益性を確保すること、国連海洋法条約の下に策定される国家管轄権外区域の生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する確固として実効的で野心的な法的拘束力を有する国際合意が完成し、採択されることを確保すること等の地域の優先事項の進展を強調した。
強靱かつ持続可能な発展の基盤強化
13.閣僚は、気候変動が太平洋地域の、特に島嶼国の将来に与える存亡に法の支配に基づく海洋秩序及び海洋資源の持続可能性関わる脅威を認識しつつ、強靭かつ持続可能な発展を達成するための取組には、気候変動に対する切迫感を持った取組が必要であるとの共通の認識を再確認した。この観点から、閣僚は、新型コロナウイルス感染症の拡大により気候変動に係る国際的なモメンタムと野心を先送りにすべきでないことに留意し、パリ協定の実施のためのPALM8のコミットメントを再確認した。むしろ、新型コロナウイルス感染症からの復興に向けた取組は、パリ協定及び持続可能な開発のための2030アジェンダの目標に向けた取組を前進させ、低排出で気候変動に対して強靱性のある発展を促すべきである。
14.PALM8首脳宣言で気候変動対策に資金的支援を動員する必要性が認識されたことを踏まえ、日本は、2019年に緑の気候基金への最大15億米ドルの追加拠出を発表し、総額で最大30億米ドルの拠出となる。閣僚は、2019年のサモアの太平洋気候変動センター(PCCC)の設立と、太平洋地域環境計画事務局(SPREP)及びニュージーランドとの連携によるPCCCにおける気候変動分野の人材育成支援の開始を歓迎した。また、閣僚は、ディーゼル発電所を通じた電力と再生可能エネルギーを適切に組み合わせることにより、再生可能エネルギーの安定使用を促進する「ハイブリッド・アイランド構想」の進展を歓迎した。
15.PIFの閣僚は、気候変動と防災の考慮を強靭な開発に統合するための地域的な取組を再確認した。「今なすべき喫緊の気候変動行動のためのカイナキ宣言」及び「地域安全保障に関するボエ宣言」を通じて、PIF加盟国・地域は、地域の唯一かつ最大の安全保障上の脅威である気候変動への対応をより重点的に取り扱っている。PIF加盟国・地域は、「太平洋における強靱な発展に向けた枠組み(FRDP)」とその包括的な「太平洋強靱性連携」(PRP)を引き続き実施する。PIF首脳により承認されたとおり、PIF加盟国・地域は、気候変動に起因する災害及びその他の災害の高まるリスクを既存及び新規の地域プロジェクトが考慮し、そのリスクに備えることを確保するための資金へのアクセスをコミュニティに提供する、太平洋島嶼国地域自身で初めて策定、主導した「太平洋強靱性ファシリティ(PRF)」の最終調整を実施している。
16.PALM8首脳宣言で確認された、国際スタンダードに則った、開かれ、透明性があり、非排他的かつ持続可能な形での強靭で質の高いインフラ整備を進めていくことの重要性を踏まえ、茂木大臣は、パラオ国際空港、パプアニューギニア・ナザブ空港、及びソロモン・ホニアラ空港の改修、パプアニューギニアの道路整備やツバルのICTネットワークの支援を含め、日本は太平洋島嶼国地域全体でハードとソフト両面でのインフラ開発支援を提供している旨説明した。
17.強靭かつ持続可能な発展を達成するための取組には、保健と貿易、投資等の分野における協力の強化が必要であるとの首脳の認識を再確認し、茂木大臣はPALM8以降の日本の協力を強調した。日本の保健医療分野への支援には、医療船と機材の供与、緊急災害援助隊及び感染症対策チームの派遣、非感染性症及び感染症の両方に係る技術協力が含まれる。貿易、投資、観光を促進するため、PIF島嶼国との二国間協力に加え、日本はいくつかのPIF島嶼国に経済ミッションを派遣したほか、太平洋諸島センターと緊密に協力し、貿易・投資シンポジウムやビジネスセミナーを開催し、これは、バヌアツのチョコレートやミクロネシア連邦の鰹節等の太平洋島嶼国産品の日本への輸出につながった。
人的交流・往来の活性化
18.閣僚は、特に青少年の間の活発な人的交流を通じた強い個人的な絆の決定的な重要性を再確認した。この観点から、閣僚は、対日理解促進交流プログラム(JENESYS)、ミクロネシア諸島自然体験交流事業、さくらサイエンスプラン、PacificLEADs、JICA海外協力隊(JOCV)、JICAの研修プログラム、ラグビーワールドカップ2019を契機としたホストタウン交流を通じたスポーツ交流等の着実な実施を歓迎した。これらの人的交流・往来は数百人規模のものとなった。
国際場裡における協力
19.閣僚は、国際場裡や多数国間機関におけるイニシアティブ及び取組に係る日本とPIF加盟国・地域との間の継続した協力に対し、互いに対する謝意を表明した。
20.閣僚は、21世紀の国際社会の現実をよりよく反映するために、国連安全保障理事会の正統性、実効性及び代表性の更なる向上の必要性を再確認しつつ、国連安全保障理事会の早期改革に関するPALM8首脳宣言における首脳のコミットメントを果たすために国連創設75周年を活用することの重要性を強調した。この関連で、茂木大臣は、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることに対するPIFの閣僚の継続した支持に深い謝意を表明した。
21.閣僚は、国際組織犯罪、サイバーセキュリティ、通常兵器の違法取引、核軍縮、不拡散及び拡散対抗、テロ、暴力的過激主義を含む、国際的な安全保障上の課題に対処するための更なる協力の追求に対するコミットメントを改めて表明した。閣僚は、より一層の防衛及び安全保障面での交流及び協力の可能性を追求する意図を表明した。
22.閣僚は、PALM8首脳宣言で表明されたとおり、国連安全保障理事会決議に従った、北朝鮮の大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を達成するための取組の重要性を強調するとともに、北朝鮮に対し、この目標に向けた具体的な行動をとるよう要請した。閣僚は、米国と北朝鮮との間を含め、協議の再開に対する支持を表明した。閣僚は、「瀬取り」のような北朝鮮による制裁回避戦術への対処を含め、国連安全保障理事会決議を完全に履行し、また執行することに対するコミットメントを再確認した。閣僚は、拉致問題の即時解決を含め、人道上の懸念に対処することの継続的な重要性を強調した。
PALM9に向けて
23.閣僚は、この重要で永続的なパートナーシップをより深化させる観点から、日本とPIF島嶼国が新型コロナウイルスによる様々な課題を克服するために具体的にどのように協力を継続していくかを含め、日本とPIF加盟国・地域間の協力を更に深めるためその他の潜在的な方法及び分野について議論した。PIFの閣僚は、PALM9が新型コロナ対応・復興、気候変動と強靱性、持続可能な海洋管理、利用及び保全、並びに持続的な経済発展を含む、地域的及び国際的な課題に対応するための協働の取組を強化することを確保するために、緊密に連携していくことの重要性を強調した。閣僚は、PALM9のビジョンと優先事項について議論し、PALM9に向けた準備を前進させた。
24.茂木大臣は、次回のPALM(PALM9)が2021年に三重県志摩市で開催される旨を宣言し、PIFの閣僚は、日本がPALM9を主催することに歓迎の意を表した。閣僚はPALM9の成功に向けた準備における緊密な協議を継続する決意を共有した。