[文書名] 第10回太平洋・島サミットに向けた中間閣僚会合議長総括
概観
1. 第9回太平洋・島サミット(PALM9)の成果のフォローアップ及びPALM10に向けた準備のため、太平洋・島サミット中間閣僚会合が2024年2月12日にフィジー・スバで開催された。太平洋・島サミット中間閣僚会合は今回初めて太平洋島嶼地域で開催された。
2. この会合には、日本及び太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国・地域の代表が出席した。上川陽子日本国外務大臣と、現在のPIF議長であるティンギカ・エリカナ・クック諸島外務・移民大臣兼海洋資源大臣兼議会サービス担当大臣が会合の共同議長を務めた。
3. この会合は、各国が新型コロナウイルス感染症の流行による社会経済的影響からの回復を続け、気候変動による存亡の危機への対処を続けている、極めて重要な時に開催された。国際連合憲章を含む国際法と、国際社会の基本的な規範、ルール及び原則が尊重される、ルールに基づく国際秩序を堅持することは、グローバルな平和と安定のためにかつてなく重要になっており、グローバルな関心事項に関する団結と連帯の重要性を再確認した。
4. 閣僚は、PALMプロセスが四半世紀以上にわたり、真のパートナーシップを強化する上で果たしてきた重要な役割を再確認するとともに、地域の変化する機会と課題によりよく対処するため、パートナーシップを更に強化する決意を確認した。閣僚は、第9回太平洋・島サミット首脳宣言(「PALM9首脳宣言」)を想起し、相互の信頼と尊重及び「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略(2050年戦略)」に支えられた重要なパートナーシップである日本とPIF加盟国・地域との間の友好協力関係への強いコミットメントを確認した。
5. ルールに基づく国際秩序に従い、閣僚は、国の大小や力にかかわらず、全ての国の権利、自由及び主権が国際法、ルール及び規範によって守られることを認識しつつ、国連憲章の原則と整合的な形で、相互尊重に根ざし、透明性と説明責任の精神に基づき、真のパートナーシップの下で協働することにコミットした。これには、自由、民主主義、持続可能な開発、法の支配、人権、人間の尊厳、紛争の平和的解決、環境十全性の尊重といった共有された普遍的価値が含まれる。上川大臣は、これらの共有された普遍的価値は、国際法及び国連憲章に従って、地域において自由で開かれた国際秩序を実現するための日本の取組の基盤を成すものであることを説明した。
6. 上川大臣は、「2050年戦略」と「2050年戦略」実施計画に従った、太平洋地域のビジョン、優先事項及び地域主義を支持するとの日本の長年のコミットメントを強調した。PIFの閣僚は、太平洋の全ての人々が自由で健康的かつ生産的な生活を送ることができるような、平和で、調和が保たれ、安全で、社会的な包摂性及び繁栄が保たれる強靭な太平洋地域を日本が支持し続けることに謝意を表明した。
7. 閣僚は、PIFが、太平洋地域のアーキテクチャの頂点であり、地域の優先順位の設定と資源配分の原動力であることを認識し、「対話と関与のためのブルーパシフィック原則」と地域の一体性を全面的に支持した。閣僚は、太平洋地域のアーキテクチャ内に確立されたメカニズムを通じて引き続き取り組む意図を有する。
8. 上川大臣は、透明性が高く包摂的なパートナーシップを優先し、PALM9で発表された日本の「太平洋のキズナ」政策の下、「オールジャパン」の取組を通じた、太平洋地域に対する日本の新たなコミットメントを強調した。PIFの閣僚は、国際法及び国連憲章に合致した、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の重要性を共有し、PIF加盟国・地域との協力を更に強化するための日本のコミットメント及び具体的行動を歓迎した。
9. ALPS処理水の太平洋への放出に関し、上川大臣は、放出は関連する国際的な安全基準及び慣行に従って実施されているという日本政府の立場を説明し、引き続き国際原子力機関(IAEA)と緊密に連携していくことにコミットした。また、上川大臣は、太平洋島嶼国が日本及びIAEAと実施してきている科学に基づく議論に謝意を表明した。閣僚は、IAEAを原子力安全に関する権威として認識し、2023年7月4日に公表されたIAEA包括報告書に留意し、本件に関して科学的根拠に基づくことの重要性で一致した。PIFの閣僚は、日本との集中的な対話を歓迎し、第52回太平洋諸島フォーラムの首脳コミュニケ、特に南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)の重要性を想起した。閣僚は、現行の対話プロセスに支えられた形で、ALPS処理水をPALMの常設議題とすることで一致した。
PALM9のフォローアップ
10. 上川大臣は、日本のPALM9でのコミットメントの実施状況や、関連する開発協力及び協力プロジェクトについて最新情報を提供した。PALM9以降、日本はしっかりとした持続可能な開発協力の実施を継続し、PALM9のコミットメント(5500人)を超える約6500人の人材育成・人的交流を支援した。この協力は、PIF首脳の2050年に向けたビジョンの達成に向けた前進を支え続けている。
11. 閣僚は、友好的な絆を維持し、未来志向の関係を構築するために、第二次世界大戦の戦没者遺骨の送還、不発弾の早急な除去及び政府が建設した戦没者慰霊碑の維持管理を含む、両国が共有する過去に関連する事項に適切な形で取組むための協力を継続することで一致した。
12. 上川大臣は、PIF加盟国・地域に対し、議長総括付録に記載されている、PALM9で合意した協力分野における日本の協力事業を説明した。閣僚は、以下の取組を認識した:
a)重点分野1:新型コロナウイルスへの対応と回復
より良い復興及び現在進行中の健康問題や緩和されつつある社会的・経済的影響に対処するため、地域的及び多国間の協力の重要性を再確認
b)重点分野2:法の支配に基づく持続可能な海洋
法の支配に基づき、国際法及び国連憲章に合致した、自由で開かれた、持続可能な海洋秩序に対する首脳のコミットメントを支えるための地域協力
c)重点分野3:気候変動・防災
「太平洋強靱性ファシリティ」のような関連する太平洋地域の重要なイニシアティブを含め、気候変動に緊急性と責任感を持って対処する必要性を認識
d)重点分野4:持続可能で強靱な経済発展の基盤強化
「太平洋の質の高いインフラ原則」を含む国際スタンダードに沿った質の高いインフラの開発における継続的な協力を再確認
e)重点分野5:人的交流・人材育成
特に若者の間の活発な人的交流を通じた個人間の強い絆の重要性を再確認
13. PIFの閣僚は、日本のコミットメントの円滑かつ着実な実施に謝意を表明し、その長年にわたる一貫した実施に係る実績を歓迎した。PIFの閣僚は、「2050年戦略」及び「2050年戦略」実施計画との整合性を保つ形で日本の開発協力及び協力事業・イニシアティブを強化し、よりよいものとしていくために、二国間及びPIFとのパートナーシップの下で取り組むとの日本のコミットメントを歓迎した。閣僚は、PALM10における協力の重点分野は、「2050年戦略」及び「2050年戦略」実施計画との整合性を保つ形で、太平洋地域とのパートナーシップに関する日本のビジョンに従って、形作られることで一致した。
国際場裏での協力
14. 閣僚は、多国間レベル及び国際場裏におけるイニシアティブ及び取組における日本とPIF加盟国・地域との継続的な協力に対する謝意を再確認した。
15. 閣僚は、PALM9以降の、地域に影響を与える広範な地域の安全保障課題について議論し、世界の平和と安定の維持及び強化に当たっての協力の強化の重要性について一致した。
16. 閣僚は、いかなる侵略戦争にも反対し、国際連合憲章を含む国際法の目的及び原則に整合的な形で恒久的かつ持続可能な平和を追求することにコミットした。閣僚は、世界のいかなる場所におけるものであれ、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対することを表明した。
17. 閣僚は、包括的、遠大かつ人間中心の、普遍的かつ変革的な持続可能な開発目標とターゲットを採択した、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題された2015年9月25日の国連総会決議70/1を想起し、ジェンダー平等、社会的包摂及び女性・平和・安全(WPS)アジェンダについて「活性化された太平洋リーダーズ・ジェンダー平等宣言(PLEGD)」との整合性を保つことを含め、これを促進していくことへのコミットメントを再確認した。
18. 閣僚は、「核兵器のない世界」の実現に向けたコミットメントを表明した。閣僚は、より安定し、より安全な世界を作るための核軍縮・不拡散の取組の重要性、またこの目的に貢献する広範な条約や軍備管理協定並びに国際的な核不拡散・軍縮体制及び原子力の平和的利用を追求することの礎石としての核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の重要性を再確認した。
19. 閣僚は、PALM9首脳宣言で表明されたとおり、国連安全保障理事会(国連安保理)決議に従った、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を達成するための取組の重要性を強調し、北朝鮮に対し、この目標に向けた具体的な行動をとるよう求めた。閣僚は、地域の平和と安全を損なう、弾道ミサイル技術を用いた北朝鮮の発射の急増に重大な懸念を表明した。閣僚は、北朝鮮に対し、日本、米国及び韓国からのものを含む度重なる対話の申出を受け入れるよう求めた。閣僚は、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となる、北朝鮮の悪意あるサイバー活動を非難した。閣僚は、「瀬取り」を始めとする北朝鮮による制裁回避手法への対処を含め、国連安保理決議を完全に履行し、執行することに対するコミットメントを再確認した。閣僚は、拉致問題の即時解決を含め、人道上の懸念に対処することの継続的な重要性を強調した。
20. 閣僚は、21世紀の国際社会の現実と課題をよりよく反映するため、国連安保理の正統性、実効性及び代表性の更なる向上の必要性を再確認しつつ、常任及び非常任理事国の議席の拡大を含む国連安保理の早期改革の重要性を強調した。閣僚は、拡大され、民主的で、公平で、透明性があり、かつ説明責任を果たす国連安保理の重要性を再確認した。
PALM10に向けて
21. 閣僚は、「2050年戦略」に従った太平洋島嶼国地域の優先事項のためのPALM10に向けた、日本とPIF加盟国・地域との更なる協力について議論した。上川大臣は、PIF加盟国・地域から表明された優先事項やニーズについての考えに感謝した。閣僚はまた、地域の優先事項に基づく目標を共有する、地域内外の全てのパートナーとの協力を歓迎した。
22. PIFの閣僚は、気候変動・災害、海洋・環境、資源・経済発展、技術・連結性及び人を中心に据えた開発を含む、地域的及び国際的な開発課題への対応に当たり、PALM10が一体的な取組を強化することを確保するため、緊密なパートナーシップの下で連携していくことの重要性を強調した。閣僚は、PALM10に向けたビジョンと優先事項についても共に議論し、PALM10に向けた準備を進めた。
23. 上川大臣は、PALM10が2024年7月に東京で開催されることを説明した。PIFの閣僚は、日本がPALM10を主催することを歓迎した。閣僚は、PALM10の成功に向けて緊密な協議を継続する決意を共有した。
協力分野 | 日本政府による太平洋地域での実施 |
1: 新型コロナウイルスへの対応と回復 | COVAXファシリティを通じたワクチン供与、予防接種のコールドチェーンを支援する「ラストワンマイル支援」イニシアティブ、デジタルヘルスシステムを確立するための「活性化・再接続支援」イニシアティブ、感染性廃棄物管理、国境管理、及びIOM、UNDP、UNICEFなどの国際機関との協力による医療機器の提供など。 |
2: 法の支配に基づく持続可能な海洋 | 海上保安庁モバイルコーポレーションチームを含む短期及び長期の専門家派遣や、違法・無報告・無規制(IUU)漁業、麻薬密売、人身取引及び密入国を含む海上犯罪に対処するための海上法執行機関及び刑事司法機関のインフラ及び能力の向上のための、海上安全・法執行設備をはじめとした、海上保安及び安全に関する二国間の能力構築の提供。沈没船からの油漏れへの対応支援を含む、海洋資源管理と環境保全における日本の協力。 |
3: 気候変動と防災 | サモア、バヌアツ、パプアニューギニアを含む国々の経済の「グリーン・トランスフォーメーション」に関するUNDPとの日本のプロジェクト、トンガ、フィジー、ソロモン諸島の災害リスク軽減システムと設備への支援、マーシャル諸島の太陽光発電システム、サモアの太平洋気候変動センターへの支援。 気候変動による海岸線の後退にもかかわらず、国連海洋法条約(UNCLOS)に従って設定された既存の基線と海域を維持することは許されるという日本の決定された立場を表明し、PIFの閣僚はこれを高く評価した。 |
4: 持続可能で強靭な経済発展の基盤強化 | 空港、港湾、橋、発電所、海底ケーブルといった通信インフラ、廃棄物処分場建建設、農業・農耕業への支援など、PALM9で表明された日本のコミットメントの一環として、太平洋島嶼国を支援するために実施される当該分野での日本の協力。 太平洋の質の高いインフラ原則への日本の支援。 |
5: 人的交流・人材育成 | 新型コロナウイルス感染症による悪影響にもかかわらず実施された、JENESYSプログラム、ミクロネシア諸島との子ども交流プログラム、さくらサイエンスプログラム、「SDGsグローバル・リーダーズ」プログラム、青年海外協力隊、研修プログラム、スポーツ交流など。 |