[文書名] 第10回太平洋・島サミット(PALM10)共同行動計画
この共同行動計画は、首脳によって承認され、「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略(2050年戦略)」に沿った7つの優先協力分野に基づき、日本とPIFメンバー(PALMパートナー)が今後3年間に共同で実施する具体的な行動をまとめている。全ての共同行動計画イニシアティブは、プロジェクトが実施される各国の状況を考慮し、その国でとられている手続、制度及び構造を尊重する。
1 政治的リーダーシップと地域主義
政策レベルの対話の強化:PALMパートナーは、太平洋諸島フォーラム域外国対話やPALM関連会合のような地域アーキテクチャー内の会合に積極的に参加し、PIFや太平洋地域機関評議会(CROP)諸機関の政策やイニシアティブを尊重・支持し、建設的な対話を促進し、地域の優先課題に対処するために共に取り組む。
PALMパートナーは、常に地域の一体性を尊重しつつ、地域の優先事項に基づく目標を共有する全てのパートナーと協力する。また、PALMパートナーは、PALMプロセスやハイレベル訪問を通じて、互いに学び合い、相互理解を深め、更なる連帯を育んでいく。PALMパートナーは、あらゆるレベル及び相互に合意された分野における、リーダーシップについての地域的に策定された能力構築イニシアティブを支援する。
人の健康を含め、太平洋の海洋生態系の健全性と状況を評価するための地域の科学的能力とモニタリング能力を構築することへの太平洋島嶼国の希望に留意し、PIF首脳は更に、日本が先般決定し、IAEAを通じ提供され、太平洋のために充てられる支援は、適切な場合には、太平洋の関連地域機関による関与を含め、IAEAによる同地域での関与を通じて提供されるよう要請した。
2 人を中心に据えた開発
「ヘルシー・アイランド・ビジョン」に向けた協力:PALMパートナーは、医療施設の建設、遠隔医療を含む質の高い医療機器の提供、保健・医療従事者のための「KAIZEN」ノウハウを取り入れることによる能力構築を通じて、感染性疾患、非感染性疾患、生活習慣病への取組及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた強靱な保健医療システムの開発における協力を強化する。PALMパートナーはまた、太平洋保健大臣会合(PHMM)での議論に参加し、政策レベルで協力する。
教育の質の改善:太平洋地域教育枠組み(PacREF)の実施の支援において、PALMパートナーは、特に算数教育におけるJICA海外協力隊(JOCVs)を通じた質の高い基礎教育サービスの提供、初等教育のための教材を用いた教育達成度の向上、算数及び理科における初等教員の事前研修の強化、教育政策アドバイザーによる日本の教育分野における経験に関する知識の共有などを通じた能力構築に協力する。PALMパートナーはまた、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じた教育施設の開発を通じ、教育へのアクセス及び質を向上させるために協力する。
PALMパートナーの次世代リーダーの育成:PALMパートナーは、太平洋島嶼国への割当てを拡大した文部科学省国費外国人留学生制度、また、国際協力機構(JICA)の研修プログラム、SDGsグローバルリーダー・プログラム及び国際交流基金の事業を通じて、次世代のリーダーを育成する。また、PALMパートナーは、大学院の学位取得を目指す太平洋島嶼国の若手公務員を対象とした新たな無償資金協力プログラムである人材育成奨学計画(JDS)を通じて便益を享受する。
将来のための青少年と学術交流の促進:PALMパートナーは、JENESYS、ミクロネシア諸島自然体験交流事業、さくらサイエンスプログラム、日本で開発された青少年のための海洋教育プログラムを通じて、青少年交流を更に促進する。PALMパートナーはまた、太平洋科学アカデミーや外国人研究者招へい事業を通じて、学術交流を促進するために共に取り組む。
草の根・スポーツ交流を通じた「キズナ」の強化:PALMパートナーは、太平洋島嶼国・日本地方自治体ネットワーク(PALM&G)と協力し、また、JICAや太平洋諸島センター(PIC)と連携して、地方自治体の強みや独自の特色を活かした草の根レベルの交流や人材育成を積極的に推進する。
PALMパートナーはまた、様々な分野でのJICA海外協力隊や日本人国連ボランティア、JETプログラム、ラグビーのようなスポーツ協力を通じて、人と人との交流を更に強化する。
文化交流と言語教育を通じた相互理解の促進:PALMパートナーは、日本の芸術・文化展示会、日本映画上映会、デジタル技術を活用した太平洋地域の文化財・文化遺産及び文学の保存を通じた文化交流において協力する。PALMパートナーは、日本において太平洋島嶼国を広める方法を模索することに共に取り組む。PALMパートナーはまた、様々なプログラムを通じて、PIF加盟国・地域の日本語教育の機会を増やすための協力強化に努める。
3 平和と安全保障
社会的、経済的発展の基盤としての平和と安定の促進:既存の太平洋地域アーキテクチャーを通じ、PALMパートナーは、太平洋国際組織犯罪防止戦略2024-2028に示された行動を実行し、新たに創設された戦略的司法対話、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)、及びアジア・太平洋薬物取締会議(ADEC)を通じて、法務・司法、治安、及び麻薬取締の分野における能力を構築するために共に取り組む。PALMパートナーはまた、アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)を通じて、太平洋島嶼国地域におけるマネーロンダリング、テロ資金供与、及び拡散金融対策の強化における協力を推進する。PALMパートナーはまた、地域のアーキテクチャーを通じて、安全で、安心でき、安定的なコミュニティを形成する機会を模索する。
地域の安全保障ネットワークの強化:PALMパートナーは、各国の要請、国家主権並びに政策及び手続の尊重に基づき、太平洋における自衛隊の航空機及び艦船による寄港を通じて、防衛交流を強化する。また、PALMパートナーは、太平洋諸島フォーラムを通じて、相互理解と信頼醸成のための協力を継続する。
グローバルな平和及び安全保障に対するPIFの貢献に対する認識の向上:PALMパートナーは、各国の要請、国家主権並びに政策及び手続の尊重に基づき、太平洋島嶼国の国連PKO隊員派遣のための能力構築に協力し、PALMパートナー国の安全保障と相互に関連するグローバルな平和と安全に貢献する意思を提唱する。
海洋安全保障及び海上安全に関する能力の強化:PALMパートナーは、各国の要請、国家主権並びに政策及び手続の尊重に基づき、モバイルコーポレーションチーム(MCT)の派遣、海図作成能力の向上支援、日本及び国連薬物・犯罪事務所(UNODC)による海洋状況把握(MDA)のための技術協力、並びに漁業・海事訓練学校に対する支援を通じ、海上保安当局の能力向上支援のための協力を継続する。PALMパートナーはまた、各国の要請、国家主権並びに政策及び手続の尊重に基づき、JICAの技術協力及び日本の新しい協力枠組みである政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じて、海洋安全保障と海上安全を強化する。
海上保安当局間のネットワークの強化:PALMパートナーは、各国の要請、国家主権並びに政策及び手続の尊重に基づき、海上保安当局間の相互理解と信頼醸成を深めるため、太平洋における海上保安機関の船舶による寄港を通じて、海上保安交流を強化する。更に、PALMパートナーは、世界海上保安機関長官級会合を通じて、相互理解と信頼醸成のための協力を継続する。
4 資源と経済開発
金融インフラ及び一体性のためのイニシアティブの推進:PALMパートナーは、中央銀行デジタル通貨や貯蓄国債システムなどの金融インフラ分野での協力を強化する。中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関しては、PALMパートナーは、昨年公表されたCBDCハンドブックによる国際通貨基金(IMF)との協力を通じたものを含め、潜在的な影響に関する理解を促進する。
コルレス銀行関係(CBR)の課題に取り組む太平洋地域の支援:太平洋地域のためのCBRロードマップが策定され、PIFの開発パートナーと協力して現在履行中である。このロードマップは、太平洋地域におけるCBRのリスク回避に取り組むための8つの勧告及び37の優先的措置を含む複数年の計画である。PIF加盟国・地域と開発パートナーによる持続的かつ協調的な努力の必要性を強調すべく、これらには、標準化されたCBRデータの収集と報告、マネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策(AML/CFT/CPF)に関する行動についての情報を提供するリスク評価手法の開発、現在の情報共有枠組みの強み及びギャップの評価、送金回廊リスク評価の実施、CBRレジリエンス・フレームワークの開発などが含まれる。PALMパートナーは、2024年7月8-9日にオーストラリアのブリスベンで開催された太平洋銀行フォーラムの関連成果の実施を含め、CBRロードマップの実施を支援するために共に取り組む。
多次元脆弱性指標(MVI)の開発に関するSIDSと国連の協力への支援:世界的な賛同を得たMVIは、より多くのデータを提供し、太平洋地域が直面する気候変動の課題に対する理解を深める。長年にわたり、小島嶼開発途上国は、生態学的及び経済的脆弱性を真に測定及び考慮したMVIの開発を求めてきた。
財務管理のための能力構築の強化:PALMパートナーは、世界税関機構(WCO)、オセアニア税関機構(OCO)等の組織とも連携して、税関当局に対する徴税及び貿易円滑化のための能力構築に係る協力を強化する。PALMパートナーは、学習者同士が協力しながら学び合う方式や、日本がフィジーに所在する地域技術支援センターである太平洋金融技術支援センター(PFTAC)への追加拠出を行った、IMFなどの国際金融機関との協調を通じたものを含め、プロジェクト評価・モニタリング、予算計画、予算執行、債務管理、及び公共投資を含む公共財政管理の分野における能力構築の協力を二国間及び多国間で継続する。
経済・貿易パートナーシップの強化:2024年10月にフィジーのスバにあるPIF事務局で開催される日・太平洋投資セミナーを皮切りに、貿易、投資及び観光の拡大に向けた政策、イニシアティブ、課題及び展望を議論するビジネスインキュベーターの設立を視野に入れながら、PALMパートナーは、スタートアップ企業を含む経済セミナー、ビジネスフォーラム及びビジネスマッチングイベントを通じて更に協力し、イノベーション、デジタル経済、付加価値、テクノロジーなどの分野における日本と太平洋の企業間が協力しながら学び合う機会を得るための官民パートナーシップやビジネス関連の覚書の可能性を模索する。更に、PALMパートナーは、大阪・関西万博において、それぞれの文化及び観光を世界にアピールする機会を最大限に活用することを模索する。PALMパートナーは、日本の査証免除措置の拡大の検討を含む査証発給要件の更なる緩和に協力する。
太平洋諸島センター(PIC)東京の互恵的取決め:PALMパートナーは、フォーラム島嶼国が意思決定及び優先事項の決定に適切に関与し続けることを含め、日本とPIFとの緊密な協議を継続し、PIC東京事務所に関する友好的な長期的取決めに達するため、漸進的な議論を継続する。
地場産業の発展の促進:PALMパートナーは、海外漁業協力財団(OFCF)及びJICAのプロジェクトを通じて、漁船の供給、漁業施設の復旧・維持管理、地元漁業、観光等の関連セクターへの支援を含む、太平洋における持続可能な水産業の発展における協力をそのニーズに基づき更に強化する。PALMパートナーは、マグロ漁業資源からの利益を高めるための集団的かつ包括的な投資の道筋を特定する東ニューブリテンイニシアティブの実施を歓迎する。PALMパートナーはまた、既存の施設の利用や専門家の派遣を含め、農業開発における協力を継続する。
PALMパートナーは、漁業分野における長年の協力の実績を踏まえ、日本とPIF加盟国・地域との間の互恵的な漁業取り決めを通じたものを含め、持続可能な漁業の発展を目指す長期間にわたる協力関係を継続する。
質の高いインフラ及び調整的なインフラ:PALMパートナーは、デジタル(電子商取引)及び物理的(航空、海上)な連結性、貿易、投資及び観光の促進、地場産業の成長、並びに財政的強靱性の強化を含む、質の高いインフラの開発における協力継続の意向を表明した。さらに、PALMパートナーは、質の高い商品・サービスの提供を確保するため、国際基準にのっとった質の高いインフラ・エコシステム(標準、計量及び試験)を開発することの重要性を強調した。
労働の流動性の向上:PALMパートナーは、太平洋島嶼国それぞれの労働の流動性に係る要望を踏まえて、既存のプログラムを通じて、国際的な労働力のための日本における労働機会を追求する。
5 気候変動と災害
PALMパートナーは、パリ協定の目標を達成するため、国が決定する貢献(NDC)に積極的に取り組み、海面上昇や気候・災害リスクの影響を最も受けるPIF加盟国のニーズを考慮し、緑の気候基金や損失及び損害(ロス&ダメージ)に対応するための基金などの国際的な気候基金を通じたものを含め、太平洋地域への優先的、迅速かつ効率的な支援に対する期待を認識しつつ、気候資金及び災害リスク軽減に関連する国際的な議論において協力する。PRFがロス&ダメージに係る資金のために太平洋地域の首脳によって承認されたメカニズムであることに留意しつつ、PALMパートナーは、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国を支援するため、ロス&ダメージに対応するための基金ができるだけ早く運用開始されるよう共に取り組む。
PALMパートナーは、仙台防災枠組み2015-2030の実施を全面的に支持し、「防災能力の強化」、「クリーンエネルギーの推進」、「島嶼国自身の取組の後押し」という3つの柱に基づく日本の新しいイニシアティブである「太平洋気候強靱化イニシアティブ」の下での協力を強化する。
[防災能力の強化]
衛星技術を活用した防災対策を強化する:PALMパートナーは、「ひまわりクラウド」、「ひまわりキャスト」、国家気象水文機関(NMHSs)が熱帯低気圧や火山の目標領域の観測データを要望できる「ひまわりリクエスト」を通じて、日本の気象衛星「ひまわり」の気象観測データを活用して地域の気象業務の提供能力を強化し、「ウェザー・レディ・パシフィック10年投資計画(WRP)」の実施を支援することを含め、WRPとの協力を強化することを継続する。また、PALMパートナーは、防災対策に取り組むため、「衛星全球降水マップ(GSMaP)」や「センチネル・アジア」などの地球観測衛星データや国際的なイニシアティブを引き続き活用する。PALMパートナーは、災害対応能力を強化すべく、日本の準天頂衛星システム「みちびき」を活用した災害リスク軽減情報システムを確立するためのフィジーにおける実証事業を実施し、太平洋島嶼国・地域での将来の実用化を更に模索する。
防災対策のためのインフラ開発:PALMパートナーは、災害復旧のための重機、救助艇及びその他の防災対策関連機材の提供に加え、洪水調節施設、橋、貯水池、緊急通信施設等の災害に強いインフラを更に整備するための協力を強化する。PALMパートナーはまた、国際移住機関(IOM)と協力し、移住リスク監視・管理スキルの向上、機材・資材の提供、多目的シェルターの開発、太平洋自然災害リスク評価及び資金援助イニシアティブ(PCRAFI)、災害復旧スタンドバイ借款、PIF加盟国・地域への公的融資における気候変動に対する強靭性を取り入れた債務条項(CRDC)のパイロットプログラムなどの災害リス クファイナンス(DRF)の活用を通じて、防災能力を強化する。
防災対策における能力構築:PALMパートナーは、気候変動資金にアクセスするためのオンラインツールであるアジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)を活用し、気候変動適応のためのレジリエンスと適応の計画を策定し、火山災害の防災に関する知識を活用した共同研究に協力することを継続する。また、PALMパートナーは、アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム、アジア防災センター(ADRC)及び防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(JIPAD)を通じて、知識共有における協力を継続する。
PALMパートナーはまた、国連訓練調査研究所(UNITAR)を通じて、女性・平和・安全保障(WPS)などの視点を踏まえた災害リスク軽減における女性のリーダーシップに関する研修プログラムを継続する。
人道支援と災害救援のための能力構築の強化:PALMパートナーは、人道支援・災害救援(HA/DR)能力を向上させ、災害に備えるため、日本の知識と経験を引き続き活用する。自然災害又は人為災害が発生した場合、PALMパートナーは、国の要請並びに国家主権、戦略、政策及び手続の尊重に基づき、日本の国際緊急援助隊(救助チーム、医療チーム、感染症対策チーム、専門家チーム、自衛隊部隊)を含む日本からの最適な支援形態を決定するために日本と緊密に調整し協力する。
[クリーンエネルギーの推進]
クリーンエネルギーの推進:PALMパートナーは、太陽光発電、水力発電等の再生可能エネルギーの導入を通じて、ディーゼル依存に伴う資金的負担を軽減するため、クリーンエネルギー移行における協力を強化し、また、次世代の脱炭素化技術である海洋温度差発電(OTEC)の導入を検討する。PALMパートナーはまた、オーストラリアとニュージーランドで現在進行中のグリーン水素製造プロジェクトの実証プロジェクトを実施することを模索する。
クリーンエネルギー移行のための能力構築:PALMパートナーは、JICAの技術協力と民間企業の専門知識・製品を通じて、再生可能エネルギーの有効活用に不可欠な電力系統の安定化と運用の能力構築に協力する。PALMパートナーは、温室効果ガス削減に貢献する森林資源を維持するため、持続可能な森林管理の能力構築における協力を継続する。PALMパートナーは、二国間クレジット制度(JCM)の活用と、先進的な脱炭素技術の導入に向けた地方自治体の協力の可能性を更に検討する。
[島嶼国自身の取組の後押し]
島嶼国自身の気候変動への取組の後押し:PALMパートナーは、サモアにある太平洋気候変動センター(PCCC)において、気候変動の課題に対する革新的な解決策を促進するための能力構築における協力を継続し、また、熱帯低気圧と人材育成のための地域拠点としてフィジー気象局を強化することにより、大規模災害によるリスクと被害を軽減するために連携する。
PALMパートナーは、太平洋強靱化ファシリティ(PRF)を立ち上げるための協力、及び、太平洋地域のリーダーにとって優先事項であると認識されているPRFへ出資するための検討を継続する。加えて、PALMパートナーは、技術協力等日本の協力プログラムによるパイロットプロジェクトを共同で形成することを検討する。
6 海洋と環境
海洋環境の保護:PALMパートナーは、プラスチック汚染を含む化学物質の効果的で安全な管理、廃棄物管理、リサイクルに関する政策、技術、及びノウハウを共有するために、アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラムなどの環境関連フォーラムでの協力を継続し、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」とPIFによる2050年戦略の達成に貢献する。また、PALMパートナーは、オンライン・プログラムを通じた深海、海底環境モニタリングの能力構築、及び廃棄物・海洋プラスチック処理能力の向上における協力を継続する。さらに、PALMパートナーは、パラオでの実証を通じて、高温に耐える熱適応性サンゴの植え付けに関する知識を共有することを通じ、サンゴ礁生態系の健全性と強靱性を向上させるために協力する。
海洋資源の持続可能な管理:PALMパートナーは、船舶の監視・統制・サーベイランス及びJAXAの衛星データの利用における協力を深めることにより、太平洋諸島地域における違法・無報告・無規制(IUU)漁業の撲滅に向けたコミットメントを強化する。PALMパートナーはまた、フォーラム漁業機関(FFA)において対話やシンポジウムを開催し、IUU漁業を防止、抑止、及び排除するための食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定や世界貿易機関(WTO)の漁業補助金協定などの関連する国際的枠組みを活用しながら、地域における海洋生物資源の持続可能な管理を強化する。PALMパートナーは、科学的根拠に基づく管理と漁獲戦略に沿った漁獲機会の適切な調整を通じ、回遊性の高い魚種の持続可能な利用を確保することを含め、関連する環境・経済要因を考慮しながら、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)における沿岸国の立場から協力を継続する。PALMパートナーはまた、WCPFC条約に従い、保全管理措置が小島嶼の途上国に不均衡な負担を課さないことを確保する必要性を考慮する。PALMパートナーは、WCPFC及びFFAを通じ日本の資金を活用し、太平洋島嶼国による漁業管理のための能力構築において引き続き協力する。
未来志向の関係の促進:PALMパートナーは、友好関係を維持し、未来志向の関係を構築するために、第二次世界大戦時の日本人戦没者の遺骨送還、不発弾処理、難破した日本の船舶からの油漏れへの対処、政府が建立した日本人戦没者慰霊碑の管理など、共有する過去に関連する問題に取り組むため、協力を継続する。
7 技術と連結性
質の高いインフラの向上:PALMパートナーは、太平洋島嶼国地域内外の連結性を高めるため、「太平洋の質の高いインフラ原則」及び国際スタンダードに沿って、港湾、空港、道路、電力、及び上下水道等の質の高いインフラの整備に協力する。質の高いインフラ投資を更に促進するため、PALMパートナーは、アジア開発銀行と協力する。PALMパートナーは、運用及び維持能力の向上、並びに効果的な運用に向けた能力強化に係る協力を強化する。
太平洋の連結性とサイバーセキュリティ能力の向上:PALMパートナーは、各国の手続、制度、及び政策に沿って、信頼性が高く、より強靱なネットワークを促進するための5G/OpenRAN、海底ケーブル、その他ICTプロジェクトを支援し、太平洋のデジタル変革に関するラガトイ宣言に合わせ、太平洋島嶼国地域におけるデジタル連結性の安全性、信頼性、及び利用可能性を向上させる。
同時に、PALMパートナーは、JICA、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)、及び世界銀行サイバーセキュリティ・マルチドナー信託基金等の専門機関、国際機関及び基金からの支援を得て、海底ケーブルの維持・保守管理、サイバー攻撃への対応、幅広いICTスキルといったデジタル及びサイバーセキュリティ能力の構築における協力を強化する。
国際民間航空機関の要求事項を遵守した航空安全・保安システムの改善の協力:PALMパートナーは、空港建設・運営・保守計画、航空保安対策、航空管制システム技術管理等のJICAの研修コースを通じて、太平洋諸島諸国の航空分野における能力向上のための協力を継続する。また、PALMパートナーは、ICAOの安全基準を遵守した空港のインフラ及び設備の改善を通じて、航空安全に関する協力を継続していく。
PIFメンバーからは以下のイニシアティブについて提起があり、PIFメンバーから更に説明が行われる予定である。PALMパートナーは、日本の既存の協力を考慮しつつ、これらのイニシアティブについて議論する:
・深海科学に関する太平洋地域拠点
・太平洋における大陸棚に関する主張
・気候変動の影響による移動にかかる太平洋地域枠組み
日本からは以下のイニシアティブについて提起があり、日本から更に説明が行われる予定である。PALMパートナーは、日本の既存の協力を考慮しつつ、これらのイニシアティブについて議論する:
・乗艦協力プログラムや軍隊保有国からの防衛大学校への士官候補生の受入れなど、能力開発プログラム
・日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)を通じた相互理解と信頼構築の強化
・多国間開発銀行の調達手続きを踏まえ、PIF加盟国の事業における先端技術を有する日本の民間企業の関与を強化
(了)