[文書名] 宇野内閣総理大臣による就任後の記者会見
問 それでは、宇野総理と内閣記者会の初めての会見を行いたいと思います。
質問の柱は、主に基本施政と政治改革、それから外交、内政、主にこの四つの柱でお聞きしたいことはかなり沢山あると思いますが、時間の制約もありますので、誠に恐縮ですが、一つひとつの質問に出来るだけ簡潔・明瞭にお答えを願いたいと思います。
それでは基本施政からまいります。
言うまでもなく、宇野内閣というのは、リクルート事件の政治責任をとって退陣された竹下内閣のリリーフの形で登壇されたわけですけれど、今、国民の政府に対する、あるいは政治に対する目というのは非常に厳しいものがあります。そこで、そういった今、政権を担当される宇野総理の抱負、それから基本的な理念というものを明確にしていただきたいと思います。
総理 今、おっしゃったとおり、竹下内閣のあとを受け継ぎまして成立した内閣でございますが、その端は、リクルート事件であったと。それについての国民の大変な不信。これに対しまして、私たちは、その不信を回復しなければいけない。政治に対する信頼を取り戻さなくちゃいけない。こういう気持で、私たちの内閣は発足したわけでございます。
そこで、一言にして言いますと、政治改革、更には行政改革、更には財政再建、あらゆる改革をやろうと。改革をやりながら力強く前進もしなくちゃいけない。こういうことで私は、今日の初閣議で、我々のキャッチフレーズは、「改革前進内閣」であると、こういうふうに性格付けいたしました。
その心を申し上げると、我々政府はスリム、しかしながら国民は豊かに。この気持でやりましょう、ということが初閣議における皆の申し合せとなったわけですね。
問 今、宇野総理がおっしゃったように、政治改革を最重点課題に取り上げられておると、こういうことですが、にもかかわらず、誠に失礼ではありますが、なぜ、こういう時期に宇野さんなのか、ということが党内ではいろいろ議論されておりますが、この辺を総理ご自身は、どういうことで登壇、まあ選ばれたのか。あるいは誰が一番推してくれたのか、といった辺りを明らかにしていただきたいと思います。
総理 まあ、いつのまにか、後継総裁の候補者になっておりました。そして、いくつかの、皆さんが考えられた条件があったわけです。その中には、まず、リクルートに全然関係がないということが第一点。第二番目には、やはり今日、日本の立場を考えますと、日本のいない国際会議はないと言われるような日本になっていますから、すぐにでも、外交、そうした舞台に飛び出して、世界の方々と語り合う人が必要ではなかろうかと。三番目位にですね、やはり、あんまり年寄りでもいかんだろうと。と言って若い人もいいだろうけど、そんなところで、中年、中年というのは、もう私、言いませんけれども、そこら辺の者が良かろうと、いうふうなことで、私がだんだんと、こう絞り上げられていったんではないかなあと、私は思います。
それで、やはり、一番熱心にやられたお方、という今のお尋ねでございますが、勿論、竹下総理並びにその当時の四役、この方々が、全党員と言うよりも、全衆参両院議員のご意見を一人ずつ聞かれて、それを集約して、そして最後に、一任を取り付けて、今、申したような基準でしょうか、あるいはそうしたことでお決めになったと。非常に竹下総理としては、自分の内閣をここで残念ながら手離さなくちゃならん。しかし、そのためには、やはり新しい倫理の確立をし、なおかつ政治改革をしなくちゃいかんと必死でした。正にそうした思いで、竹下総理及び党の四役方が、必死の思いで、私に対しまして、パリまで、特に橋本龍太郎さんが代表になられて電話をかけてこられたと、こういうふうに、その経緯が、おっしゃるがごとく、その方々のご努力によるものだと私は思います。
問 日本の大臣として初めて中東の指導者達に会いました。今度、総理になってから日本の代表として、その中心の問題に対して総理の何か、特に、例えばパレスチナ人の国家ですとか、そういう問題とか、いろいろ、それを解決するには日本のリーダーとしては非常に良く動くことが出来る先生でありますから、それをちょっと一言。
総理 世界の紛争でカンボディアとそしてアフガニスタンと、そしてイラン・イラクと、今おっしゃる中東と、更にはアフリカのナミビア、アンゴラ等がございます。だいたい、こう収まりつつあるんですが、私はやはり中東は、世界の安定のためにその戦火が一日も早く止むことを心から願っております。だから外務大臣の時に、外務大臣として初めて中東を訪問して、シリア、イスラエル、ジョルダン、そしてエジプト、この四か国を訪問しました。四か国に同じことを言って回ったのが日本です。早く戦争を止めましょう。そのためには、イスラエルの民族自決権、生存権を認めましょう。さらには、アラブはぜひとも、国家樹立を含むところの民族自決権を得なさい。そのために国際会議をやりましょう。こういうふうに言ってまいりまして、これ私、非常に大きく役立ったと思います。
したがいまして、今後も、世界の紛争終結のために日本の我々は最大の力を振り絞って、その貢献、その平和のための貢献をしたいと、これが私の考えであります。
問 それに引き続き、今度、来月先進国首脳会議に総理は出席されますが、そこも、ヨーロッパの意見もちゃんとあるらしいんですけれども、そこで、日本の意見等の話をちゃんとしていらっしゃいますか。
総理 七月十四日からパリ・サミットが始まりますが、いつも参加七か国の首脳は、世界の紛争に対しまして大変な関心を持っており、その紛争解決のための議論を行っております。当然、中東問題は大切な紛争でございますから、大切な紛争というとおかしいが、それの解決をしなければいけない。したがいまして、首脳は、それぞれこの問題に関しましても話し合います。だから日本は、あらゆる面で、国連監視団を出すんだったら出しますよと。資金も出しますよと。そうしたことを各紛争国に言っておるのが今日であると、このようにお考えください。
問 次に、政治改革についてお聞きしたいと思います。先程の閣議で総理は政治改革が最大の使命であるとこう言われましたが、既に、前内閣の段階で有識者会議、それから政治改革委員会などでいろいろな具体案が出ております。で、資産公開やら、定数是正、それから選挙制度の改革、これらも含めた広い案なんですが、これにどう具体的に取り組むのか。特に、その段取り、優先順位などがあったらお聞かせ願いたいと思います。特に、大綱の実現をめどとしては、中・長期を含めて、国会開設百年の来年の十一月をめどとしていると思うんですが、これらについては、今の体制だととても実現できないんではないか、というような危惧する声もあるんですが、その推進体制を含めて総理のお考えをお願いいたします。
総理 本日の閣議で、今おっしゃったようなことを私から申し上げまして、全閣僚のご理解を得ることが出来ました。だから、竹下前総理がお作りになった有識者会議は、もうこれで解散したんですが、残された問題に関しまして、大きく分けますと、公職選挙法の改正、また政治資金規正法の改正、更に新しく資産公開法、これは全議員にわたると、こういうものも一つ考えなくちゃならないという段階でございまして、特に、公選法に関しましては、既に自由民主党の案が国会に提出されております。
その内容については、国民の方々にもご努力いただかなくちゃならないと思いますが、選挙あるいは平素において、入りと出るを制すると申しましょうか、今まで国会議員が自由に寄附をしておった、あるいは冠婚葬祭で自由にお祝いを持っていった、そういうものに関しましても、本人が行くとか配偶者が行くのならば別だが、秘書が行ってさながらお金を撒くがごとくに、どんどんとご祝儀を弾むということは駄目ですよと、こういうふうに書いてありますし、あるいは、そうしたことを、強要する人はいないと思いますが、強要された場合もだめですよと、いろいろと内容が書かれております。
私は、これは、まあ、そうした意味合いの公選法として、一つ国会で、我が党の案でございますが、速やかに審議が開始されて各党もご賛同賜りたいものだなと、私はこういうふうに思っておりますが、これが、具体的に今、実施している一つでございます。
なおかつ、長期で眺めました場合に、今日の、選挙区制度でいいのかと。思い切って小選挙区にした方がどうなんだと、こういうようなご意見もございますから、そうしたことも、やはり勉強をしなくちゃならないということは当然のことでございましょう。
そこで、公職選挙法に関するところの制度の調査会もございますから、今日も私、閣議の終りました直後に、自治大臣に指示をいたしました。こうした国民の声にお応えするためにも、直ちにその制度の委員の方々を任命をし、動くようにしていただきたいということを申し上げました。
これも先程、官房長官から発表なさったと思っております。そういうふうにいたしまして、やはり政治改革の中の大きな柱をどんどんと私たちは改めていきまして、要はお金のかからない政治体制というものを作っていくことが必要だと。そういう意味で、私は、まず政府も、いろいろ考えるためにはスリムにならなくちゃいけないと。そういうことを併せて申し上げているわけです。
そういうことでございますから、私は、次々と指示を発しましてやっていきたいと思いますが、特に、推進をする本部を党に設けたいと、かように考えております。それには、専任の副総裁が一番よいと思うんです。で、私も、今、昨日、にわかに帰ってきて、すぐに組閣というような、慌しいことでございましたから、いろいろとその専任の本部長に関しましても、今、人選中でございまして、そうしたことも今後併せて考えていきたいと。もし、そういう適当な人がいない時には、総裁自らが本部長になって、幹事長を事務局長にして推進すると、それ位の決意でございます。
問 制度の問題を聞きたいと思います。政治資金規正法とか、公職選挙法、まあ、野党はいろいろありますが、その中でも、国会の会期も非常に少なくなっているわけですけれども、どの程度出来るのかということと、今、リクルート問題にも関連して、政治家の金に対する意識が問われていると思うんですけれども、そういうものの基本認識を伺いたいんですが。
総理 永田町と一般の国民との間には大きなギャップがあるということは常に言われております。したがいまして、やはり、私達は、額に汗をして、頑張って得た収入、所得というものを常に国民的サイドから眺めていかなければならないと、こういうふうに考えております。だから、我々は、所得税一つにいたしましても、そうしたものが極力軽くてすむようにと考えておりますが、そうした庶民の方々から考えると、政治はあまりにもけた外れの金が動くので、だからけしからんと、こういうふうになると私は思いますから、そうした金銭感覚につきましても、我々は身を引き締めて、今後のあらゆる改革に乗り出さなければならないと。その金銭感覚の差というものを持ったままでは致底改革は出来ないと、かように思います。
したがいまして、自ら、パーティ券に対しましても、規制をするとか、あるいは政治資金規正法におきましても、収入に規制をするとか、あるいは、そうした支出に対してはガラス張りにするとか、そうしたことにおいて、私達は庶民あるいは国民の方々とのギャップを縮めることに努力しなくちゃいかんと思っております。
問 今の質問と関連するんですけれども、政治倫理に関して、国民と永田町の意識のギャップと言うか、認識のギャップというのは、現状としてどのようにお考えですか。
総理 非常に具体的にどういうことが有るかということになりますと、これは、難しい問題でございましょうけれども、やはり、一般的に言われるところの政治倫理というものは、常に国家というものは、その支出は国民の福祉につながるんだから、そのことは考えなければならないけれども、そのために、中に無駄があってはいけない。その無駄というものを極力押さえ込むことにおいて、いわば政府は小さな政府でいいんじゃないかと、こういうような気持をですね、政府自らやらないとですよ、補助金一つにいたしましても、それぞれの地域で国民が非常に努力をして納められた税金を使うわけですから、それを意味の有る補助金と意味の無い補助金というものが、あるいは有るかも知れん。そういうことも整理しないとですね、補助金さえ取ってきてくれたならば大先生だと、取れなかったら小先生だと、いうような意識も変えて、やはり、お互いに、国を起こすためには、地方の責任は地方の責任でやっていただくと、そういうふうなものを、私は一つ行政の上においても、もう一度、二度も三度も整理をしなくちゃいけないとかように思ってます。かつて、行政管理庁長官をやった時に、そういうものをずいぶん整理したつもりですが、まだまだ残っておりますから、今後は、国民生活が大いにもっとスムーズにいくように、また、円満にいくように、例えば、あんまり政府だけの取締まりばかりだとか、規制だとか、その規制をすることにおいて、一つの課があるとか、そういうことは、お互いにもっとクリーンにしてやっていくことにおいて、我々の感覚と地方の人達の感覚がマッチするようになるんではないだろうかと思ってます。
問 選挙制度の問題ですが、先程、小選挙区制度についても勉強した方がいいということですが、自民党の中には、中選挙区制がいいという考えもあると思うんです。総理は基本認識として、やはり、理想的には小選挙区制への移行の方がいいというお考えでしょうか。
総理 いいえ、私、これはこうした立場に立ちました時に断定的に申し上げるということは非常に難しいんではないだろうかと。例えば、小選挙区を実施したということになりますと、一つの椅子を巡っての争いになる。その時にいくつもの政党があるであろうと。そうした場合の政党というものは、きちっとした規模と性格と、あるいはまた使命と、そうしたものを定めた政党でなければならないのか、一地方に限られた政党でいいのか、全国的な政党でなければならないのか、いろいろございます。
また、現職が東京で一生懸命頑張っているのに、次の人が一生懸命選挙に回って、それだとかえって危ないという人もおられます。だから、次の候補者も政党法に従って、いろいろと行動を拘束されるのかと、こういうふうに考えていきますと、中には政党法がいいんだという方もいますが、さて、政党法というと、今申し上げましたようになかなか難しい問題があるんだろうと思います。現に、政治資金規正法には政治団体ということで、数多くのものが出てるわけですが、それと、政党とどう考えるんだろうかという問題もございましょうね。だから、私はそうやっていくつもの問題がいろいろまだ議論されておる最中でございますから、総理といたしまして、これがいい、あれがいいと、今、断定してお話することはちょっと差し控えたい。大いに党で議論をしてもらって詰めていけばよい。更には、先程申し上げました公職選挙制度調査会等々において、国会議員を交えずに、第三者の有識者において議論をしてもらうということが必要ではなかろうかと思ってます。
問 それと関連ですが、定数是正もやはり一体として検討してもらいたいという考えですか。
総理 私は、定数是正はやった方がいいと、かように考えております。そして、国会の方も、行政も改革するならば、国会も改革しなければならない。相当改革しなければならないところもあります。まあ、日本は経済的には世界第二位の実質、立派な国になりましたが、ややもいたしますと、政治だけは遅れてるねと、こう言われるものが沢山ございますから、私達も大いにその面は認識し、反省すべきは反省し、直すべきは直す。これは、与党だけではなくて、与野党通じての国会の運営等にも、私は改革をしなければならん点が沢山あると、かように考えます。これも重要な政治改革の一つの柱でございます。
問 今、政治改革の、国会改革の問題が出ましたけれども、具体的に何かこうした方がいいとかいう案は、今、考えておられるのかどうか。
総理 これに関しても、国会は国会でいろいろと委員会等を通じて議論をなさっておられるわけでございますが、私達も一つ、具体的にあるならばこうした面について、推進していきたいと思います。先程申し上げましたように、まず私達の母体である我々を生み出してくれる、その言うならば、母体である公職選挙法に関しましても、こういうようなことを改正しようというのは、これは、一つの国会の改正につながっていく問題ではなかろうかと。だからもう自民党は既にその法案を提出したということでございます。
問 今度は対野党に対する基本認識なんですけど、対話を重視されるのか、あるいは強行採決、多数決といった手段をおとりになっていかれるのか、その辺についてのご認識はいかがですか。
総理 やはり、国会は話し合いの場でございます。だからあなたの意見には反対だが、私はあなたの意見を聞きます、これが民主制度であり、議会制度だと思います。
そういうふうな本当の国会の運営、このことを私は期待したいと思いますね。ややもすれば、ストップというようなことでは、これは国民の負託に応えるわけにはまいりません。
だから私はよく言うんですよ。私達ここに並んでいる政府の者は三食一緒に食べておるねと、また与党は与党で三度ご飯を一緒に顔を見ながらいろんな話をして食べておると。
しかし、野党の方々もそうやって野党同士は食べていらっしゃるかしらんが、与党と野党では、まあ月に一回とか、あるいは二か月に一回ぐらいしか話し合いができないんじゃないかと。それならば、やはり国会という場において我々の意見を聴き、そして、また私達も野党の意見を聴きたい。そういうふうなことにおいて対応を続けていきましょうと。
それが言うならば、仲間同士で一日三回飯を食っていろんな話をする。そういう関係をやはり作り上げていくのが、これからの対話の国会ではないかと思います。
ところが残念ながら、そういう機会もないものですから、つい対決の場になってしまう、非常にこれが情けない形だと思いますから、私はやはり国会というものは対話の場として、与野党が本当に、侃侃諤諤{けんけんがくがくとルビ}の議論をしてもらいたいと思っております。
問 関連するようですけど、仲間内の飯を今度は個別に一緒にお食べになるというような、まあ、いわゆる・・・。
総理 今も例えばの話で、ほんとに飯食う話をしているわけじゃありませんが。
問 党首会談を特別におやりになる計画はありませんか。
総理 今のところ党首会談をやるか、やらないかということは、国会の動きもございますし、また、選挙も近づいておりますし、また、政治改革は与野党通じての大きな課題でございます。まあ、そういうようなものを見極めながら、党首会談というものもやることは必要ではないかと、私はそういうふうに考えています。
問 自民党けしからんという声がある中で、選挙が七月にもあるわけですね。しかも比例代表制では自民党と書かなければいけないわけです。一部の世論調査では、社会党の方が自民党を上回っているという調査結果も出ているんですけど、何か参院選対策にこれという対応は考えておりますか。
総理 やはり、予算も成立したことでございますから、一日も早くこの予算を各地方、国民の手元にお届けいたしまして、どんどんと仕事をしていかなければならない。それがまあ一か月以上遅れたということも大変な、これは、平成元年として、一つの情けない話であったと、私は思います。
したがいまして、与野党が、今日、一応国会延長はなされておるわけですから、そうした中において予算を使うにも、今度は法案等々、やはり審議をしてですね、大いにこの予算を使うこと、あるいは、それに関連する問題、法案をもって国民にお応えしなくちゃならないという問題もありますから、私はやはり選挙というもので国民がお考えなって下さるときには、本年度の予算にどれだけ自分達の思いが込められて、それが、政府によって編成され、また、自分の手元に戻ってきたか、このことを我々といたしましては、更に充実せしめなければならないと、これが第一点です。
第二番目は、やはり何と申し上げましても政治不信、これを払拭しなくちゃなりませんから、そのための対策、あるいは実施、これを内閣も党もどんどん進めていくということが、私は必要ではなかろうかと思っております。
問 公約として、幸いのことに税収もあるし、消費税で税金も大部入ってくるようですけど、大幅減税なんか考えていらっしゃいませんか。
総理 いいえ、まだ、私もすぐに、そういう問題にはお答えし難いと、やはり国民の良識というものもございます。これはなんかしらんが、自民党が考えてやっとるなあということではやってはいけない。やはり政治はまじめなもんである。国民も政治をまじめなもんとして考えていただきたい。特に私の言いたいのは、戦後四十三年ここまで日本が大きくなったんです。これは、やはり自由経済という大きな柱があったということを考えていただいて、我が国野党にはいろんな主義主張がございます。これは当然、言論の自由、思想の自由、集会の自由、いろんな自由で当然でございますが、今日世界を眺めるとですね、一応社会主義と名乗っていらっしゃる国が、内部的にはやはり、一ついろんな経済の制度とか、あるいは国民の意思反映の制度等を考え直さなくちゃならないと、これはもう具体的にはグラスノスチあるいはペレストロイカ、ソ連も頑張っておられるし、あるいは中国においても、解放あるいは改革だと、こういうふうにやっており、もう指導者は今一生懸命になって、そういうような時代を迎えております。
その時に日本が、やはり今日というものが、よって選ばれたものを失いたくはない、これが私の考えです。だから、国民は常識において、何がいいかと、どの制度がいいかということは、十二分にお考えなさるのではなかろうかと、そのために私達が汗水かいて全国を行脚したいと思っております。そうして国民のご理解を得たいと考えております。
問 一方で、野党側は衆議院の解散を求めております。自民党の方もリクルート、消費税で解散に対する恐怖感がある半面、リクルートに関係された方などは、この際、総選挙で禊{みそぎとルビ}という思惑もあるかもしれません。解散、総選挙について、あるいは年内だという観測とか、最終的には任期満了までいくんじゃないかと。これについていかがお考えでしょうか。
総理 現在は任期がきました参議院の選挙があるのみでありまして、私は解散に関しましてはまったく考えておりません。
問 任期満了でもよいというお考えですか。
総理 それも考えておりません。
そのためには、自民党が日日是改革という精神で頑張っていって、そして国民がそれをどう判断していただけるか。私達の気持が通じたか、私達の努力が実ったか、いろんなことを勘定しなくては、やはりそう簡単に何時やるんだ、任期満了まで待っているんだとか、そういうことは私は言いたくございません。だから今日は、まったく考えておらないということでございます。
問 それでは外交問題に入らせていただきます。
個々の案件はまた後で聞きますけれども、端的に宇野政治における外交の基本方針、基本認識をごく端的にお伺いしたいんですけど、それから総理ご自身の首脳外交、これはサミット以外に何か今、頭の中に考えられていませんか。二点お願いします。
総理 今のところ私はサミットには当然出席しなければならない。その為の準備もしなくてはならないと思いますが、私自身が出かけるということは今のところ考えておりません。
しかし、世界七年間、景気が良い状態が続いておるわけです。これはですよ、この間もOECDに出てお話をしてきたんですが、世界がマクロ経済において政策協調をしているとか、あるいは協同作業をしているとか、そういうことが実ってきたんじゃなかろうかなあと思ってます。そうした繁栄の中において、いささか忍び寄る影があるのではなかろうかと、その影はインフレの影であり、あるいは貿易のインバランスの影であり、その為にはどうしても保護主義に走らざるを得ないというような影であり、いくつもの影が付きまとっております。
これは非常に要注意であります。私はさように思いますから、そうしたことをサミットにおいて世界的な指標でお互いに考えようではないか。特に日米はご承知のとおり、安保体制におきましても、大変今日私達はこの安全というものを得て、今日繁栄を得ておるわけでございますが、その為に両国のGNPは合わせまして、三七パーセントとみていいんじゃないかと思います。
特にこの間、OECDに出ました二十四か国です。世界の先進国。このOECDの中において我が国の国民の総生産は二〇パーセントを占める、ここまで国民の方々には頑張ってもらっております。恐らく資源の少ない日本においても、その資源の少なさを補充する技術改良というものもやっただろう、経営改善でやってきたと、こういうふうな思いをいたします。やはりサミットというものは、そうした面で単に日本だけではなくして、アメリカが悪くなれば日本も悪くなる。日本が悪くなりゃアメリカも悪くなる。これぐらいの今、経済関係にありますから、我々といたしましてはそうした意味の外交を展開しなくちゃいけない。だから、極端に言いますと、私は日本外交というのはアメリカを基軸としておるけれども、しかし私達は世界の平和に貢献しましょう。
二番目には、我々も文化国家である。世界にも文化は多い、文化を交流することにおいてお互いの理解認識を深めよう。
三番目として、我々としては一応金持ちの国と見られておるから、今日低開発国に対しましては、政府開発援助ODAで大いに協力いたしましょう。
この三本柱です。今後、私は、我が内閣の外交方針として堅持したい、また推進したいと思っております。
問 そのパリ・サミットですけども、総理にとっては一番の重点課題は何だと、今の時点でお考えですか。
総理 やはり日本の立場に対するいくつもの要請、要求がございます。しかし、これは、いわゆる参加国すべての共通の話題でございますから、その中であえて申し上げますと、我が国としては、世界経済の為にインフレなき持続的生長を遂げることが大切である。幸い、輸出に頼る需要ではなくして、もう国民の購買力が増えるという内需、その内需によって我が国の経済は成り立つようになったと、いわゆる外需に依存しなくてもよい経済になったと。だから、そういう経済の中でお互いに成長を遂げながら更に構造調整をやりながら、世界の物を買ってあげましょうと、これが日本の使命になりつつあると。したがいまして、輸出も盛んになっておりますが、それ以上に、やはり苦労いたしまして輸入が盛んになることが世界の貿易のインバランスを解決する一つの道ではなかろうかと、常にサミットにおいては、私として念頭においてブッシュさんとも、ミッテランさんとも、サッチャーさんともお話をしなくてはならんと思っております。
問 経済摩擦問題というのが大きな問題になると思います。同時にその経済摩擦問題を解決するために、我が国の国内の調整というのが非常に重要になってくると思います。これは、先の竹下内閣で実証されたと思うんですけれども、この点について国内調整という点でどういうふうに進めていかれるのですか。
総理 調整というと、どういう面で。
問 いろんな国内のいわば党内調整を含めてですね。いろんなその国内的に反発その他ございます。それについてどういうふうに強力な指導を。
総理 この間も私、アメリカのヒルズさんとか、モスバッカーさんとか、そうした政府要人とパリでお目にかかりまして、そうして、同時にアメリカのテレビにも出演しました。常にもっとやはり貿易摩擦に関しては、日本の主張というものが、アメリカの国民の耳に入り、更には議会の方々の耳に入るということが必要だと、政府同士がある程度分っても、それが入らない。だから私は、まずそうした面におきまして一つ申し上げたんですが、今のアメリカから日本が買っている輸入量というのは大変なもんですよと。
これは例えば、英国プラス、ドイツプラス、イタリアプラスぐらいの大きさを持っておるもんですと。昨年百億ドル輸入を増やしましたと。百億ドルというと、フランスがアメリカから買う一年間の輸入に値しますよと。ここまでやっているということをね、もうちょっと認めて下さいとこういうふうに言っておりましてね。したがいまして、そういう面における努力というものを今後貿易摩擦の面で大いに、我々はもっともっと日本を知ってもらうということが必要じゃないだろうかと。恐らくその質問の中には、市場開放とか、自由化というものがどんどんと進んでおりますから、そういう立場において党内にはいろんな議論がある。国内にもいろんな議論があると、それどうされるかという意味でしょうね。
そうしたことに関しまして、やはり現実の問題として、私達はいろんな機関で本当に議論しあっております。そうした議論の中で、貿易摩擦の中の十二品目が竹下内閣当時に解決したとか、公共事業が解決したとか、あるいは科学技術協力協定なんかあったんですが、これも解決したとか。やはり、両国の共同作業によって解決させるものは解決に努力しなけりゃいかん。その為には、やはり党内にも、あるいはいろんな主張をなさる方がおられますが、しばしば会合を開いていただきまして、日本の現在の立場なり、アメリカの立場なり、あるいはECの立場なり、こうしたものの認識を常に共通にするということが必要じゃないだろうかと思います。
問 宇野総理、ソビエト政策についてお伺いしたいんですけれども。基本政策をどのようにお考えになっているのか、具体的に北方領土問題、それからやはりゴルバチョフ書記長の年内訪日問題、これをどうお考えになっておりますか。
総理 まず、平和条約を結ぶということが大切なんです。で、平和条約というのは、もう一般的には戦争をしておったその戦争が終わった。終わった宣言が一つ。その戦後の処理が一つ。あるいは、その中には賠償が入るかもしれん、これがまあ平和条約でございます。
そういう平和条約の概念に日ソ間を当てはめますと、幸い共同宣言によって、これは昭和三十一年でございますが、片山内閣当時の共同宣言によって現在日ソ間には戦争は終わりました。賠償なんという問題はありません。残るは戦後処理である。この処理が四島問題である。だから北方四島問題を解決して平和条約を結びましょう。これが基本線だと、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
そして、日本からはかつて四人の総理大臣がソビエトを訪問しておられます。鳩山一郎先生、田中角栄先生、鈴木善幸先生並びに中曽根康弘先生、この四人の総理大臣が行ってらっしゃる。な〜んだあそこからは誰も来てないじゃないか、おかしいじゃないか。日本とそしてソビエトは世界の大国である。隣り同士である。お互いに理解すればアメリカと同じ様にもっともっと協力する面があるにもかかわらず、何かしら厚い壁が立っていますと、その為にいらっしゃいよと、そして日本を見て下さいよと、日本人の生活を見て下さい。あるいは、働きを見て下さい。そうすることにおいて初めてあなたにも日本というものが分かるでしょうと、こういうふうに申し上げたわけです。
まあ幸いにも、ゴルバチョフ書記長という人は非常に頭脳の回転も速いです。私一時間半しゃべりました。しかしながら、ピンポン球を打つような調子で話さないとだめです。その時私もメモなしで行ったんですが、いろんなお話をしました。もうすばらしいです。恐らく彼も私のピンポン球速かったと思っているかもしれません。
ですから、そういう関係において、私は、やはり膝を接したならばいろんな話ができる。それでゴルバチョフ書記長もいろんなことをメモされてましたよ。メモされたということは、あの人の頭の中にその報告がなかったんじゃないかという面がある。私は、そういうふうに思いますと是非ともそういう面をやはり外相会談、今度九月、シュワルナゼ外相と三塚外相がやってくれますから、そういうものも基盤といたしまして、来年早々の東京における外相会談では、ゴルバチョフ書記長の訪日に関する具体的な話し合いを始めましょうと。
日程について話し合いを始めましょう、まあ、これは書記長から言われた話ですから、まあ十二分にその点も考えながら、本当に隣国ですからお互いが尊敬しあいながら、お互いが協力の道を更に改善をしていくことが必要だと思います。
問 中ソ和解についてお尋ねします。アジアの情勢の変化が出てくると思うんですけれども、アジア外交についての考え方を。
総理 日本はアジア太平洋諸国の一員であるということと、日本は西側陣営に属しておると、この二つの足場というものが、我が国の外交にとりましては、これは非常に大切なことだと思うんです。
今、世界の人口五十億といたしますと、くしくも昨年の八月十五日、この日にアジアの人口は三十億を突破したんですよ。だからもう六割になってます。
私は、パキスタンに行きまして大統領とお会いしたし、あるいはまた、アセアンの各国の領袖ともお会いし、中国の銭其●{王へんに深いのつくり}外相ともお会いしてお話をしたのですが、その中に世界の貧困の八割がある。これをどうするかということを私達は考えていかなかったならば、アジア問題は解決しない。だから、カンボジア問題も無駄なことはよしなさい。若い青年を鉄砲玉のように使うようなことはよしなさいと、私は、これはベトナムにも申し上げなくてはならないと思っておるわけです。
そうしたことを、北方、中東でも申してきたわけですね。だから、その意味でカンボジア紛争一つにつきましても、中ソが和解されて、そして一般の国交回復の状態になられたということは、これはアジアとして歓迎すべきことであると思っております。
問 総理、先程おっしゃったように、世界情勢は大きく動いて、デタントの方に非常に歓迎されているということなんですけども、一方で日本の防衛力との兼ね合いについてはどう考えますか。
総理 この間もソ連といろいろ太平洋の防衛に関しましても本当に話し合いました。これは、ゴルバチョフ書記長とも、シュワルナゼ外相とも一時間ぐらいしゃべったのです。
そうした中において、私はこう言ったんです。やはりデタントというふうに、緊張緩和だと認識するのには、もう少し、私は情勢は厳しいと思いますと。
しかしながら、中ソじゃない米ソの中距離核兵器、この問題に関しましては、一応グローバルゼロと、世界でゼロにしたということは評価しますが、しかし、アジアに対しても、もっともっとソビエトは不安の材料とならないように努力してほしいと言ったんです。
で、特に五十万兵力削減だという話がありますが、アジアでどれだけ兵力削減してくれるんですかと。アジアと申しましても広いから、我々の言うならば日本海の向うの沿海州、沿海州でどれだけ兵力を縮めてくれるか、私はこれに関心を持って見守りましょうと、こう言っときました。
それがこの間です。ゴルバチョフ書記長が北京で申されました十二万削減というような数字になっておるのか、本当にそうなるのか、これを見守りたいと思います。
したがいまして、我が国の防衛というものは、やはり国民の生命財産を守るということが、政府の一番大きな役目でございます。なんと言っても国民の生命財産を守るように政府は努力しなくちゃいかん。生命の中には、もちろん厚生行政もありましょうし、教育もありましょうし、財産の中には、税法もありましょうし、いろいろございましょう。要約すると生命財産を守る、これが政府の一番の大きな問題で、なかんずく、外交と防衛は、これは政府がやらなければならない問題でございます。
したがいまして、私達は五十一年に三木内閣の時にGNP、その一割未満が防衛費だというような決定がありました。しかし、その後で、中期防衛計画等々によりまして、いろいろと考えてまいりますと、やや窮屈であってはいけませんから、まあ何年か前にその解除がなされました。しかしながら、あくまでも節度ある防衛ということを私は主張しています。
特に、アジアの方々に対しましては、やはり過去の戦争というものに対するまだ生々しい記憶が残っているのですから、私達は、もう四十年たったから大丈夫だと思っちゃいけない。やはり日本の使命は、今日経済大国になりましたが、経済大国日本は、絶対に軍事大国になりません。この主張を、どこに行ってもやらなくちゃいけないと思います。竹下総理もこのことをフィリピンで言われました。すると翌日フィリピンの新聞は、一面にもうデカデカと出たんです。こういう気持で私達はやはり平和外交を進めなくちゃいかん。
だから日本の防衛力がアジアにとって恐怖になってはいけない。私達は節度ある防衛力これを守ります。それは生命財産を守るためでもあります。こうやってひとつ国民の方々にも理解を深めていただきたいと思っています。
問 次に、国内政策についてお尋ねします。自民党の評判がこのところ落ちついているようですね。三点セットというのがありまして、これはリクルートと農産物の自由化とそして消費税というふうにいわれているわけですが、いろいろ国内政策がありますけれども、消費税については今後見直しをされる考えがあるのか、また、消費税率をいじられる考えがおありなのかどうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
総理 まず、消費税でございますが、実施してまだ日が浅いのですが、一応政府としてのいろんな調査によりますと、定着しつつあるというふうな報告も受けております。
しかし、やはり消費者から見れば、物を買う時に、外か内か、三パーセントが内に入っておるか、別に三円、例えば三パーセント、三円なら三円払わなくちゃならないかという問題に関しましては、非常にいろいろと不平不満の声があるということも私達は聞いております。なおかつ中小企業の面におきまして、そういう仕事をしてもらうということが、事務的に過重になっておらないだろうかという問題に関しましても、いろいろ議論がございます。
さらには、私達のせっかく納めた税金三パーセントだけれども、それが本当に政府に入ってますかと、こういうふうな素朴ないろんな意見もございます。だから、私はまあ二か月たった今日といえども、やはり常に国民の声というものを耳にしながら、消費税のあり方というものにつきましては考えていかなくちゃならん。もちろんこれは消費税そのものを廃止するというようなことはまったく考えていません。将来の高齢化社会の為に作ったんですから、これはそういうことはできません。
しかしながら、悪い所は直したらいいと思うんですよ。したがいまして、どういうところが一番問題なのか、まあ、見直しということになりますと、来年の五月頃ということになるでございましょうが、それよりももっと早くできるところはできるんだったら、どういう所があるかということを勉強する必要がある。だから、私は、政府におきましても、すぐにその勉強会を始めてくれと、こういうふうに申している最中です。
問 もう一点お尋ねしたいと思うんですが、行政改革とか土地対策とかいろいろ行われておりますが、教育改革につきましては、制度、例えば、入試なんかについては、この制度をいじくること自体がかえって逆効果になっているんではないかというような意見もありますけれども、そのあたりを踏まえて、教育改革を行うには、どういうふうに取り組まれるのか。
総理 西岡文部大臣に再任していただきました。文部大臣がこれまた外交、あるいは財政面でもそうですが、くるくる変わるということは感心したことではございません。もちろん文部大臣の判断だけではなくして、かつてはまあ臨教審もあったわけで、あるいは今も中教審もあるわけですから、そうした機関による審議を経ての勧告というものを尊重することも必要でございましょう。
で、今確かにご指摘のように、制度があまり変わりすぎて大学受験でも大変苦労しているんではないだろうか。我々の時よりも本当に苦労しているんじゃないだろうかと。こういう思いをやはり政府としても持たなくちゃなりません。だから、できるならばそうした面におきましても、いわゆる朝令暮改的な制度はあってはいけないし、猫の目のごとく変わるというような制度であってもいけない。まあ、この辺をひとつ文部大臣にも私から申し上げまして、そうしたいろんな国民の声に対しましては、制度を早くうまく機能するように考えていきたいと思っております。
特に、諸外国から見た場合、日本が今日まで伸びたのは、やっぱり教育が良かったからだと、明治時代古いといわずに、明治時代からですよ、文盲率もゼロであるというこのすばらしい国を作った、その長い伝統そうした内における教育がすばらしかったということは、諸外国の方が、皆、賞賛するわけです。
だから、そういう内において日本はどうなるか、特に私は国際化の今日としていますから、ジエット計画で英国からもずい分英語の先生きてもらっておりますが、我が国からも将来は日本語の先生がどんどん逆ジエット計画で行けるような時代になればいいなと、また、留学生ももっと日本に来てほしいねと。日本にあまりこないんですよ。韓国の人も日本よりもアメリカがいいと、これではいけないと、まだまだ日本の教育制度はそういう意味において国内においてももっといろいろ考えなくちゃならない点があるかもしれんが、まあ対外的にも考えなくちゃならんような面があると、そういうふうに思います。やはり教育は、国の民族の根源なりという立場において、私はしっかりした教育を速やかに確立したいと考えております。
問 内政問題の最後になりますけども、農村部の自民党離れがかなり目立ちますが、農産物の自由化政策、特にコメ自由化、その辺についてのお考えを。
総理 今度、堀之内久男君を農水大臣に就任していただきましたのは、やはり農村部に対してもっともっと理解を深めて、なおかつ農村にこれだけ協力をしてるんだということを味わっていただきたいと私は思うんです。
ところが外交面では、何か十二品目にいたしましても、あるいは牛肉、オレンジにいたしましても、日本が後退りをしてばかりじゃないかと、こういうふうなところから、農村の青年の方々がけしからんというような思いを馳せられたのかもしれません。
しかし、例えば、そのような自由化が一部の農産物に対して行われておりましても、ご承知のように国境措置税関、関税によってしばらくの間は、国内の産業に影響を与えぬように特別の措置をした。また、被害を被る農産物、また、その地方に対してはいろんな国内措置予算等々を通じまして、急激な変化でその生活が苦しくならないようにしたと、やってきているわけです。だからそうした点をもっとPRをしなければならない。
一番よくいわれますのは米でございますが、私はやはりシュルツ国務長官と私の外務大臣との時代において今お話をしましたとおり十二品目があるわ、公共事業があるわ、牛肉、柑橘があるわ、科学技術協力協定があるわ、もう一杯あったのを去年片付けたんです。
そうして片付けまして、ご迷惑をかける面には相当な予算措置をとっております。そういうふうにやっておりますけれども、やはり不平不満は残ります。
その上、なおかつ日米でコメで議論したら終わりだよと。日米は同盟国じゃないかと、その同盟国がけんかしているようなことはけっして世界の安定の為によくない。こういうふうに私は申しまして、二国間の話はやめて、いわゆるマルチの場において、多数国間で話しましょうということで、今これはご承知のウルグアイ・ラウンドのガットの中間レビューでこの問題が議論されまして、幸いにも日本の主張が通りました。
だから、長期の中に、コメは非常に大きい問題だと、我が国にとりましては、安全保障の問題だと。国土は本当に今日狭隘な国土である。それが一雨降れば崩れる恐れがある。しかし、水田というものがあるから国土を保全してくれる。こういうふうないろんな面の安全をですね、私達は並べ立てまして、他の国々が考えるようなものではありませんぞということで、今これは多数国間の問題になっています。
だから九十五か国あるわけですから、それがそれぞれの農業問題をこのテーブルの上に出した時には、コメも出しましょうと。そこで、議論しましょうといっておりますから、日米間においてはこのような問題は今後起こりません。
だから、ガットの場において今後長期の問題として、我々としてはどうするかと、その間において農村問題もどのように我々は今日まで頑張っていただいた農民のどのようなご奉仕をするか、こうしたことも考えなくちゃいけませんね。
まあ、幸い非常にベテランが農水大臣に就いていただきましたから、あの人は辛抱強い方ですから、コツコツと歩いて、そしてとつとつとしゃべって、いろんなそういうPRをしてくれるんじゃなかろうかと、私は期待しております。
問 まだまお聞きしたいことはたくさんあるんですけれども、閣議を遅らせて閣僚達が待っておられるようなんで、一応これで打ち切りたいと思います。ありがとうございました。