[文書名] 宮澤内閣発足に当たって(宮澤内閣総理大臣)
記者 それでは会見を始めさせていただきます。まず、ご就任おめでとうございます。今日は、内閣記者会と初めての会見ということで、まず、内政、外交、それぞれの課題につきまして、幹事社の方から基本的な課題について一通りご質問し、それにお答えいただいた後で、自由に質問していくと、そういう手順でいきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
総理 昨日、首班指名を受けまして、重責を担うことになりました。どうぞ皆さん、よろしくお願いをいたします。お馴染のお顔が大変多いんで、心強く思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
記者 それでは、宮澤内閣の政治姿勢ということからお伺いしたいと思います。
宮澤政治というものをどのような形で進めていこうとされているのか、その点からお伺いいたします。
総理 第一に政治の目標、方向というのをはっきり明確に設定したいと思っています。
それは、大変に世界が内外ともに激変しているということは分かるんですが、ただ冷戦後の時代と言われたんでは、なにかが終わったんだな。なにが始まるのかと、いうことを言っていないわけですから。私は今の時代というのは、新しい世界平和秩序の構築が始まった。そういう時代だというふうに、政治としては認識をしたいと思うんです。
そういう中で、湾岸危機でも、またやがてカンボディアの問題もそうかもしれません。国連の役割が大きくなっていますが、我々はそれに対していかに貢献すべきか、ということをそういういわば時代の展望の中で捉えるべきだと思うので、湾岸危機の時の我々の貢献も、あるいは問題になっています。PKO法案も、そういうものとして展望の中で捉える。場合によっては対ソ支援というものも、そういう新しい平和秩序の構築への努力であると考えるべきであろう。
いちいち我々が一つ一つやっていることが、一体なにに向かってなにをしているのかということを国民と一緒に考え、理解をし、進むということが第一だと思うんです。
それから第二に、政治に対する信頼をやはり高めなければならないということの一つは、当然のことながら海部さんが非常に心血を注がれた政治改革というのをやり抜くということであります。
第二は、このいわゆるバブル現象というようなものに見られるように、一生懸命働いている人が後へ置いていかれているというふうに、もし、そういう感じが社会に起こりますと、これは社会の連帯感、安定感というのが非常に損なわれる。それはやはり政治が公正を求めなければならない。そうでないと政治への信頼が高まってこない、ということだというふうに思います。
第三には、私がいくつか政策として掲げてきています。いわゆる社会資本の充実、生活大国といったようないくつかの個々の問題がありますが、全体として政策目標とその方向を国民に明確にお示しして、一緒に進んでいくというふうにいたしたいと思っています。
記者 昨日組閣が終わりまして、宮澤新体制の党・内閣人事というのが決まったわけなんですが、自民党総裁に選ばれるという経過において、竹下派支配というようなことも言われました。メンバーとして、新体制は挙党体制という形になっていますが、本当の挙党体制というのがこれから作れるのかどうか。その点について、お考えをお聞きしたいと思います。
総理 確かに総裁選挙において、三人の候補者が非常にフェアーに開かれた選挙を行いました。
これは党のために良かったことだと思いますが、私もあちこちからご支援を受けました。しかし、選挙がフェアーに行われ、開かれた形で行われましたので、私は幸いにして総裁に選ばれましたが、選挙の時に申したように、やはり皆さんが一致して党の総力が最大になるように心掛けるのが、総裁としての私の務めである。あるいは、総理として人事をやります時の私の務めであると、そういう心構えで努力をいたさなければならないと思っています。
記者 その点、多少関連するんですが、総理は総裁選に出られる時に、一番最初におっしゃられた、非常に政治に強い指導力が必要ではないかという形を主張されておられましたが、今後、内閣総理大臣としてどのような形で指導力というのを発揮されていくのか、その指導力についての基本的な概念をお伺いしたいと思います。
総理 国会で明後日、所信表明をいたしますが、今朝の閣議で各閣僚に所信表明についていろいろご意見をいただいたわけでありますが、その中で私は、冒頭に申しましたような時代の展望とそして政策のあるべき方向、目標というのをいくつか具体的に述べております。そういうことについて各閣僚のご同意を得、またひとつリーダーシッブを発揮していただきたい。それは、基本線でやはりそういう合意がございますと、有能な方々ばかりですから、一体になってそういう政治目標をその方向で達成するために努力をしていただくことができる。リーダーシップといえば、そういうふうにさせていただきたいと思っています。
記者 これは新聞報道等にも出ているんですが、今回の人事で、いわゆるリクルート関係議員、またロッキード関係議員という方が、党内そして内閣の方にも入っており、これからの国政に携わる形となるわけですけれども、その辺についていわゆる政治不信の問題ということも絡みますし、また、政治改革とも絡むというふうに言われておりますが、基本的な考え方をもう一度お願いします。
総理 この点は、皆様にこういう新しい仕事に就いてお目に掛かるのは初めてでありますので、自分のことについてまずお詫びを申し上げたいと思います。私は、この問題について長い政治生活で随分気をつけてきたつもりではありましたが、大変な不行き届きをいたしました。国民の皆様にご迷惑をかけたことを今でも申し訳なく思っています。同じ過ちを繰り返さないように、一生を通じて戒心をしていかなければならないと思っております。
恐らくこの点は、私は、他の入閣をされた方々も同じ気持ちでおられるというふうに考えておりますが、政治的には選挙によって信任を得た。私はその信任はやはり有権者が、もう一度過ちを繰り返してはならない、心を新たにしてもう一辺努力をせよと、こういう信任であろうと、自分としては思っています。そういう気持ちでやらせていただこうとしておるわけですが、恐らく他の閣僚の方々も私と同じ思いでおられるであろうと、そういうふうに思っています。
記者 もうひとつ非常に基本的な問題ですが、昨年来、いわゆる国際貢献という問題と絡めて、平和憲法そして憲法擁護、それと、いわゆる憲法を改正するかという議論がだんだん進展しているわけですが、その点についての基本的な考え方はどうでしょうか。
総理 新しい平和秩序の構築に当たって、国連の役割が大きくなっている。それに対して我々が最大限の貢献をするということは、我々の憲法の国際協調の精神に私は合っている。正に憲法制定された時に望ましい姿であると考えたことが、四十何年で現実になりつつあると思いますので、私は、我々のそういう国際貢献は憲法の精神に沿うものだというふうに考えています。
記者 内政の第一の課題として、政治改革ということをお挙げになられましたが、総裁選の過程で一年をメドに結論を出すということへの期待を表明されておられますが、結論と言ってもどのような形かというのはいろんな経過があります。その辺で総理としてどのようなことを描いておられるのかということを、お伺いしたいんですが。
総理 前にも申し上げましたけれども、各党協議に臨む我々の党としては、やはり前国会に出されました三つの問題を含む法案をたたき台、出発点にして、各党ご協議をお願いしたいと私は考えているわけです。なによりも各党の協議ですから、その間の信頼感が生まれることが大切でありますが、そういう信頼感を育みながら、前国会のあの案を出発点にしてご議論をお願いしたいというのが私の念願です。一年云々と申しましたのは、いつまで待っていてもいいという種類の問題ではなくて、事柄そのものが緊急性を本来要しますけれども、同時にまた、高等裁判所あるいは最高裁等々で、従来いろいろなお考えが見えてきておって、いつまでもこの問題は放っておくわけにはいかないということは、私どもは皆、知っておる訳でありますから、そういう意味でも自ずから一年位のところでという時間の限定がこれにはあるんではないかと、そういう思いで協議をお願いしたいとこう考えています。
記者 今、三法案をたたき台にされるとこういうことでしたが、我々が聞いているところでは、総理大臣が小選挙区制ということに対しては、多少慎重な態度であったかと思うんですが、その辺、かなり選択肢を広げられて考えておられるということでしょうか。
総理 党内にも確かにそれについてはいろんな議論がありました。が、とにかくこれを国会に出すということは、党議によってなされたことであります。野党にもご議論があると思うんですね。
ですから、今度協議を始める時に、なんにもベースが無ければ、協議の始めようがありません。やはり、これを出発点にして党議をしていただき、協議をしていただくということがいいのではないかというのが私の考えなんです。
記者 それから、今、総理も触れられましたが、いつまでも放置しておけないという理由に、正に最高裁の判決というのがあるわけですが、それを踏まえると、逆に言えば結論が出ないことも結論だという形で定数是正という方に早く入った方がいいんじゃないかという意見も党内にあるように聞きます。また、それが、いわゆる内閣総理大臣の大権である解散権をも制約するんではないかという議論もございますが、その辺についてはどうお考えですか。
総理 その定数是正ということも、容易なことではないので、いざそれに直面してみると、これはなかなか容易なことではない。他の案というものはないものだろうかというふうに、行ったり来たり試行錯誤がそこで行われるだろうと、実は思っているのです。それで、いきなり定数是正の問題にしてしまわずに、やはり政府案をたたき台にして、そこから出発してもらう方が私はいいんではないかと、こう思っている訳です。
それから、解散権が制約されるかどうかということは、私はそういうことはない。法律的にもそういうことはないと思います。
記者 それから、国会も招集されまして、まず、当面の課題として、これから国会での野党との折衝、対応ということになるんですが、国会運営の基本方針ということについてはどうお考えですか。
総理 私は野党というのは、民主主義の運営の上あるいは国会運営の上で極めて大事なものであって、あそこで決定がなされるのは、与党によってなされるというよりは、与党、野党の討議の中で決定がなされている。私はそういうふうに思うもんですから、野党の方々のご所見というものは、大変大事に考えなければならないと思っています。
最近、見ておりますと、野党の方々もそういうことには十分世論の動きというものを見ておられて、十分気をつけておられるようであって、昨年の湾岸危機の時の九十億ドルの問題の時も、あるいは最近の消費税の手直しの時も、いろいろ賛否はありますけれども、一緒に議論をしようという、そういうふうに野党の多くの方が考えてきておられる。これは、与党としても十分大切にしなきゃならないことだと、私は基本的にはそう思っています。
記者 その話の延長線上にあるかと思いますが、参院選後に政界再編というような考え方、つまり、今の金丸さんのように言わせれば、ガラガラ・ボンと言って、一旦、政界再編をしたらいいじゃないかと、いう意見がひとつに出ておりますが、その点についてはどうですか。
総理 これは、古くて新しい問題なんですが、金丸さんは非常に大きな構図を将来に向かって、私は描いておられると思うんです。そのことは非常に大事なことで、常に忘れてはならないことでありますが、現実の日程にそれがどれだけ早く上ってくるかということになりますと、今のところ、例えば、社会党の委員長が言っておられるように、それにはやはりそれなりのお考えもあり難しい問題もあるようでありますから、絶えず構図としては頭に置いておかなければならない問題ではあろうと、こういうふうな見方です。
記者 続いて経済問題について伺います。
バブル経済の崩壊で、大幅な税収減が予想されるわけですけれども、来年度予算の財源確保の具体的な方策についてどう考えられているのか。それから、特に、増税、消費税率のアップは選択肢として検討課題の中に入っておられるのか、その辺について伺いたいと思います。
総理 経済の動きがここへきて、遅くなっていますし、ここ何年か増収の原因であった経済の流れというものが、確かに変わってきておりますから、おっしゃいますように税収についてなかなか楽観ができないと思います。まだまだ予測するのに早いのですけれども、今年度もあるいはそういうことがあるかもしれない。そうしますと、来年度の見積りはさらに厳しくなるということはあり得ることだと私も思っています。そうなりますと、やはりありふれたことであるが、もう優先度の低い歳出は思い切って切っていくという努力をしなければならないと思います。それでも、いわゆる対米公約であるとか、災害であるとか、建設国債を活用しなければならない部分は、やはり相当あるであろう。
そこで、私の思いますことは、いわゆる、その歳入補○公債{○は不明}というものは、折角やめたのですから、これをもう一度やるということは、私は考えてはならぬことだと思います。増税というのは、やはり国民の理解がなければ安易に考えるべきことではない、というのが私の考えです。
記者 今の質問にちょっと関連するんですけれども、日米構造協議では、公共投資について四百三十兆円の公約をしているわけですけれども、こういう状況下でこの公約をどう実施していくのかと具体的なお考えをお聞きしたいんですが。
総理 四百三十兆円というのは、やはり誠実に履行をしていかなければならないと思いますし、また、私のように社会資本の充実というのを大事に考える人間にとっては、公約であろうと、なかろうと、是非、最小限のことはやっていかなければならない。実は考えている課題です。
ですから、今、いわゆる生活関連の二千億の枠の外に公共投資の充実についての、もう一つ二千億の枠を考えることを議論されておりますけれども、これはやはり優先度の高い歳出として考えていかなければならない。この約束したことを、いわば不履行になるようなことはあってはならんと思います。
記者 総理は、積極財政論者と言われておりますけれども、景気対策や金融政策についてはどういう方針を持って臨まれるのか。
総理 基本的には私は、さっき申しました社会資本の充実、あるいは対米公約と仮りに言い換えてもいいですが、国内的にはそういう問題がまだまだしなければならないことがたくさんあります。もう一つ、最近生まれた問題に日本の国際的な貢献ですね、日本に期待されているもの。世界で財政的に貢献できる国はもう数少ないということを考えますと、日本の経済というのはインフレを起こしちゃいけない。インフレを起こさない限りで、できるだけ内需を中心に成長をしていく努力をしなければ私はいけないんだと思うんです。それが、自分が基本的に思うことでありますけれども、それは経済ですから非常に成長の潜在率が高い時と低い時とありますから、一本調子のことは思いませんが、基本的には私はそういう考えの人間です。
それから、お尋ねの今の経済情勢ということであれば、経済の成長の足取りが少し重くなってきていることは確かであって、いわば拡大のテンポが減速してると、そういう見方は金融当局を含めてだいたい見方に大きな違いはないと思っています。ですから、金融当局も長期短期の金利の低め誘導をずっとしてきたし、貸出し金利も下がってきてるしということで見られるように、基本的な認識の差は私はないんだと思っております。従って、そういう金融政策については、しばらく金融当局のお考えに任せておいていいという考えを持っております。
記者 公定歩合の早期引下げという声もありますけども、その点についてはいかがですか。
総理 たぶん、そのことだと思って先にお答えをいたしましたが、基本的な認識に大きな違いはないと思うもんですから、金融当局のご判断にしばらく任せておいていいことではないかと思っています。
記者 総理が繰り返し言っておられる「生活大国」ということですけども、予算編成の中で「生活大国」というものを実現する上でどういう具体策を考えておられますか。
総理 既に行われてます二千億の生活関連の別枠ですね。今度は、公共事業の緊急充実もありますが、そういう中で、やはり一つは公共事業の各事業のいわゆるシェアーですね。それをやっぱり大事なものの方に替えていくという非常に苦しい努力なんですが、やはり必要だし、それからいわゆる「ふるさと創生」のようなものもこれに役立ちますし、また、NTTの売上げ代金の活用による第三セクター等々の地方の事業もそういうことに役立つ。その他、地方資金の貸出しの問題もありますが、いくつかの政策手段をやっぱり予算も財投も持ってると思うんです。
記者 次に、外交課題についてお伺いしたいと思います。
まず、日米関係なんですが、ブッシュ大統領の訪日が中止というか延期になったんですけれども、内政上の事情ということで、アジア外交を中断せざるを得ないという、ブッシュ大統領としては、非常に厳しい選択を迫られたというふうに思えるんですが、これをどのようにご覧になっていらっしゃいますか。
総理 今日、こちらの昼過ぎですけれども、ブッシュさんから、私宛に電報がきまして、その趣旨とされるところは、議会の日程というものが非常に不安定で、自分の当初考えていた旅行の日程とそれがぶつかるので、どうも延期を決定せざるを得なくなったと。あまり遅くなってから申し上げれば、なお、ご迷惑だと思うので、今、その決心をいたしましたと。で、ひとつ誠に残念なことですけれども了解をしてほしいと。それから、いつの時点かは今、分からないが可能な限り早く、お互いの都合の良い時に訪問ができるようにあらゆる努力をしたいと。いろいろご迷惑、不都合をおかけして、お詫びをすると、こういう趣旨でした。
でありますから、その他、報道等を総合してみますと、議会の指導者との懇談の中で、議会の日程、それは、私は想像で言うんで正確でないかもしれませんけれど、今、問題になっているのは、例えば、失業給付の問題があるわけですね。これは、一番有権者が関心の高い問題ですが、それであるとか、減税が可能か可能でないかといったような問題と思いますが、そういうことで、自分がちょっと国を空けられない国会の方の情勢であると、そういうことだったように推察しますので、残念ですけれどもやむを得ないことで、できるだけ早くお出になることを希望しておるわけです。
記者 その日米関係なんですが、ブッシュ大統領の経済運営に国内の不満が高まっていると言われる一方で、日米関係を特に経済面などから見ましても、今後、例えばスーパー三〇一条の再提出のようなこともありますので、さらに緊張の度合いが高まるという予想もされるんですが、この日米関係の現状についてどのように分析なり、ご判断されていますか。
総理 分析は、我が国のまず対米黒字というのは、決して今、増えてはいない。あまり顕著に減ってもいませんが、増えてる状況ではないのですが、アメリ力の対外赤字というのは、かなり改善されていますので、その中に占める我が国の比率が大きくなってきている。そういうのが現状だと思うんです。
ですから、改善はされたが、もっと改善しようと思うと、一番大きいのは日本だなぁと。まあ、単純なそういう指向というのは、とかくありやすいものですから、スーパー三〇一条のようなお話になるんだと思いますけれども、実は、分析をしてみますと、この何年間かで我が国の消費財輸出というのは、例えば、自動車で見るように、あるいはテレビで見るように、向こうで生産をされるようになってきましたから、それは減ってきておって、やはり生産財、資本財、機械等々が非常に大きくって、それは実はアメリカの産業にとってはコメなんですね。アメリ力の産業自身がそれがないとやっていけないという部分が多くなってきているもんですから、なかなか、減らすに減らせないものが残ったというのが、今の現状だと思うんです。
で、我々もSII等で随分努力もいたしました。アメリカも全体の貿易収支は一千億ドルというところから恐らく今年はどうでしょうね。六百億とか七、八百億とかかなり改善され、この努力も見るべきものがある。ただ、お互いのそういう日本からの輸出がアメリ力の生産に組み込まれているところに、難しさがあるんだと思うんです。ですから、それはそのことをよくお互いに理解をしておかなければならないということと、もう一つ、今一番アメリ力で問題になりそうなのは、自動車とその部品で、これが対日赤字の六割とか七割とかよく言われる。そこになにか工夫がないのか。例えば、日本がアメリ力で車を作っている。アメリ力の工場、企業だと思うんですけど、そこで本当に、パーツを買うんだったらありきたりの物は買えないんで、やっぱり何年かかけて最初のデザインのところから、こういう物を作ってほしい。ちょうどチップスがそうであったように、始めからこういう物を作ってください。いわゆるデザイン・インという、そういうやり方をして、初めてアメリカのパーツという物が買えるし、また作ってもらえるんだと。そういう工夫というのを、やっぱり我々もすべきだし、また、そういう声はかなり高いんですから、そういう形で、いわば現地調達と言うんですか、それを高めていく、こういう努力が私はきっといるんだろうと思います。
記者 次に、コメの市場開放問題に関連しますが、年末にウルグァイ・ラウンドもありますけれども、日本に対するコメの関税化を求める動きが、さらに強まるものと予想されますが、このコメの自由化問題についてなにか具体的な解決策というのを念頭に置いておられるのかどうか。
総理 ウルグァイ・ラウンドの問題ですけれども、一応、最終段階を迎えていると考えられますから、我が国は他の主要国と共に、年内にこれが成功裏に終結するようにそういう努力をしなくてはならないと思います。
その場合、農業については、例えば、アメリカの場合には、本当にウェーバーを止めるのかという大変大きな問題があります。ECについては可変課徴金のような問題がある。我が国もそうですが、農業というのは、大変困難な問題を抱えております。その場合、我が国のコメについては、これまでの基本的方針の下に相互の協力による解決を探して、最大限の努力を私は傾注しなければならないと思うんです。
いわゆる、この関税化という考え方は、ガットの専門家の中には、前からありまして、それはいろいろな貿易障壁を、いわば数値化してしまえば、関税という形に変えてしまえばその大きさも分かるし、漸減する方法も出てくるのではないかという思うし{前5文字ママ}、理論としては、なかなかすっきりしているわけですけれども、それならば可変課徴金をどのように数値化するのか。あるいは、ウェーバーというものをどういう風に数値化するんですかということは、実は簡単に答えは出ないし、一番問題の輸出補助金というのもどうするんだと、いうことの答えにはならないわけですから、私は、この問題が、関税化という問題が大いに議論されていくことは大変良いことだと思うんですけれども、恐らくそこをドンケルさんも苦労しておられるように、なかなか各国の実情にそれをうまく合わせるのにきっと苦労しておられるんだろうと、そういう風に私はお見かけしているんです。
記者 それで、今、おっしゃられました、その日本側の最大の努力というものの中には、これまで日本がとってきました基本的な原理原則についても、ある程度の譲歩はやむを得ないという、そういった柔軟性も念頭に置いておられるかどうか。
総理 これは読み名のごとく多角的交渉なもんですから、アメリカがどれだけの譲許をするつもりなのか、ヨーロッパが、ECがどれだけの譲許をするつもりなのか、それによって我々は、それに見合った譲許をするということになっていくわけで、今、その最後のところにかかっているし、交渉の中身にも関係しますから、具体的に申し上げることを避けますけれども、やはり我々としては、これが失敗しないように最大限の努力はしなければならないと思っています。
記者 次に日ソ関係についてお伺いしますが、まず、北方領土の問題ですが、これについては一定の進展の兆しも見えつつ、なお流動的な要素もあるような感じもします。この北方領土の問題について、今、どのような展望をお持ちでいらっしゃいますか。
総理 冒頭にお答えをしたところですけれども、今、世界が新しい平和秩序を構築しようとしている時に、その中の二つの大国である我が国とソ連、ロシアですか、ソ連との間に平和条約がないというのは、大変に自然でない状況だと思うんです。このことは誰が見てもそうでありますから、やはりそういう平和条約を作るという努力をお互いにすることが、この新しい平和秩序の構築にとって大切なことであり、領土問題というのは、その平和条約締結のための不可欠な部分である。で、このことはソ連の新思考外交でも新しい平和秩序を求めておられるわけですから、ソ連当局にも理解をしてもらえることではないかと、いうふうに私は思っています。
それで、そういういわゆる領土交渉、あるいは、領土問題の解決というものが、現にそこに住んでおられる方々にとって、非常に不愉快なものであるとか、暗いものであるとか、不安なものであるとかということであってはならないわけです。そこはよく分かっていただきたいと思いつつ、このことは外交でやるのには非常に微妙な問題ですので、大事なことは、現地の人々にとって明るい話題であるというような努力を我々自身がやっていくことが大事だろうと思います。
記者 もう一方、対ソ支援の問題、特に金融支援のことですが、ヨーロッパ、アメリカとそれぞれ立場が違うように、今、まだ時期尚早とする見方と、それから金融支援を始めるべきだという双方の意見があると思います。
日本として、この対ソ支援、金融面での対ソ支援については、どのようなスタンスで臨まれますか。
総理 ソ連に対する我が国の援助関係は、人道的な緊急援助、それからさらに一部踏み込んで技術援助。それは石油とか、場合によっては木材とか、水産なども含むでしょうが、それがこの間の二十五億ドルのパッケージの中身ですから、次の課題は、おっしゃるように金融支援ということになるわけで、この間、バンコックでいろいろご議論になったことを、橋本前大蔵大臣から詳しく伺いました。それは、G7の専門家やIMFや世銀の専門家がモスクワへ行って、シラーエフ委員会の専門家と、あの四つのポイントを挙げていたわけですが、議論をし、解明をして、そして、どの段階でどういう金がいるのかお互いにやっぱり確認をして、しかも、誰が借りるとか、そういう問題まであるわけですから、それが先決だなということで、この会議が先般行われた。
ですから、恐らく、金融支援というのは、将来のことを考えてみますと、ルーブルの安定基金であるとか、あるいは本当に市場経済に移行する時の、かなり膨大な商品援助であるとか、あるいはもっともっと基本的な交通とか、通信とか、環境とかいう一種のインフラ資金の入り用であるとか、相当大きな長期なものになるであろうと思うだけに、最初の出発点のところでG7が言っているようなことを、ソ連当局ですか、ロシア当局ですか、両方でしょうか、それとの合意をしなければ出発ができない、スタートができない。これは延ばせばいいと言っているのではなくて、そうでないと、誰になにを、いつ、なんのために貸していいのかお互いに分からないという状況ではいけないと思うのです。
記者 次に、来週から審議が始まります、PKO法案についてお伺いしたいんですが、前の国会から引き続き継続で審議されることになりました。で、PKO法案がこの国会での成立の見通しをお持ちでいらっしゃいますか。
総理 これは冒頭に申し上げましたような意味合いからも、是非、この国会で成立をさせていただきたい。これは、日本の将来の展望の中で、果たすべき人的な国際貢献の基本になるものでありますので、是非成立をさせていただきたいと切願をしております。
記者 この間の国会で、焦点になりました、いわゆる国会承認問題については、どのようなお考えですか。
総理 この点についても、他の党の間にいくつか異なるご意見のあることを承知しております。政府としては、いざそういう事態がありましたら、政府として計画を立て、国会に報告をし、国会のご意見も承って、これを改善していくというようなことをお約束をしている訳で、そういう意味でのシビリアンコントロールっていうんですか、それには十分配意をしつつあるし、また、そのように運営するということを申し上げておるわけですが、新たにこれから会期が出発いたしますので、また、関係者の間でいろいろお話し合いが深まることを期待をしているわけです。
記者 このPKO法案の関連で、国際貢献について、総理は、党の小沢調査会の方針というのを尊重されるという意向を表明されていらっしゃるんですが、特にその憲法の枠内でという総理が予てからおっしゃっている立場と、それから、積極的に多国籍軍への参加おも{前2文字ママ}含めて検討していかなければならないという、一つの方向性との間に、足並みのみだれというのは生じないんでしょうか。
総理 それは、冒頭にお尋ねがあったことと関連するんですが、政府が国会に出していますPKOの法案は、これこそ国連に対する人的協力の基本になるものであって、日本の憲法が世界協調ということを言ってることの、私は基本に合っているというふうに申し上げました。そこで、ただ昨年湾岸危機が起こりました時に、こういうことはあまり広く議論されていなかったことでしたが、今の日本の憲法でなにができるのか、できないのか、という議論があって、これは、確かに私は十分に詰めておいた方が良いと思う。
このことには、タブーもなにもないわけですから、今の憲法で、どうすべきなのかということは、これは、タブーでないのだから、十分に調査会で議論をしてもらうことが大事であるという意見なんです。
記者 それから、日本の外交体制についての総理の概念をお伺いしたいんですが、行革審が日本の外交体制を強化すべきという方針を出されました。総理自身、日本の外交体制について今後、どのようにこれを改善していくべきなのか、あるいはどうあるべきなのかお考えをお聞かせください。
総理 在外公館に行ってみますと、その国と日本とのこれからの外交関係をどうしようかなんてことを考える暇がないほど、みんな日常業務に追われちゃってるんですね。これでは良くないと思います。で、私は二つの解決策があります。その日の業務の中で、必要性の少ないもの、あるいは役人がしなくてもいいものは、肩から下ろしたらいいと思うんです。それが一つですね。
それでも、人が足りないでしょうね。ですから、ただ人が足りない、足りないという話だけではやっぱりいけなくて、事務を整理しないといけませんね。一つの公館に三人ほど人を増やしたってですね、また、それだけみんなが荷物を担いでいるような話になっちゃうんですから、そこを整理しなければ、私、いけないだろうと、よく現実を見るたびにつくづくそう思ってます。
記者 では、当面の外遊日程について、お伺いしたいんですが、なにか既に具体的なことを念頭に置かれていらっしゃるのか。特に、アメリ力と年末にウルグァイ・ラウンドもありますので、緊急に意見調整を図る上でもなにか訪米されるということをお考えなのか。あるいは、一方で、ソビエトへの訪問というものも念頭に置かれているのか。その辺も含めまして、外遊日程についてお聞かせください。
総理 実は、先ほどまで、アメリカとの関連は、ブッシュさんがおいでになるから、そこで、お話ができると思っていたのですが、それが難しくなったということなんで、なんにも私は外遊日程のことは考えておりません。それからウルグァイ・ラウンドのことは、これは基本的には多国間交渉であると。日米の間の問題という風には、私は実は捉えておりませんから、その点は、大統領がおいでになろうと、なるまいと別段の関係はないだろうと思っています。
記者 お得意の外交で一点お伺いしたいんですが、対ソ関係ですが、先ほど来、新しい世界の枠組みの中に位置づけるというおっしゃり方もされてるんですが、対ソ金融支援との絡みですが、従来の政経不可分の原則、あるいは、拡大均衡の原則あたりを、これまでより多少緩やかにお考えになっているというようなところがあるのかどうか、その辺の基本というのは、全く変わらないのかどうかお伺いしたいと思います。
総理 それは、領土問題との関連で言っていると思いますけれども、本当にこの両大国の間に平和条約がないというのは、大変、今の世界の中で、取り残された姿であるということは、我々は勿論ですが、ソ連当局者も、ロシア当局者も当然思っておられるであろう。そこは、もう間違いないと思うんですね。そして、我々として、我々の善意と友情に基づいて、どういう支援ができるかということを一生懸命考えつつあるということも、多分、分かっておられる。ですから、その二つのことと、領土をつなげることは、私は、したくないので、平和条約の話、領土の話は、それ自身の世界の平和のために、両大国間の関係を正常化する平和条約を結ぶということ、それはそれなりに、お互いに考えて大事なことだというふうに、両方のことを混同しないで考えたいと思います。で、なぜ、ソ連への支援を考えるかと言えば、それは、やはり、ソ連ですか、ロシアですかが、これから平和を推進する国になり、そして願わくば、市場経済に進んでいってくれるならば、これは、日本にとっても、全世界にとっても、非常に望ましいことですから、我々のできる範囲のことは、しかも、それが有効に使われるという前提に立ってすべきであろう。こういうふうに私は考えております。
記者 中国の新聞記者ですけど、来年は、日中国交正常化二十周年になっているんですが、これからの日中関係について、総理の考え方を聞かせてください。
総理 我が国は既にご存知のように、いわゆる中国に対する経済協力を、天安門事件後、各国に先駆けて始めた国であります。また、サミットでも、我が国の立場を各国に説得するような形で、話しかけた立場であることは、中国政府もよくご存知であります。したがって我々は中国の開放体制というものを、中国がおやりになる努力に対しては、できる限りのご協力を惜しまない。ことに、来年は、国交正常化後二十年になります。いよいよ両国間の親善関係を深めていかなければならない。こういう考えであります。
記者 総理の政治姿勢に関連して、お聞きしたんですが、かつて総理は、宏池会の会長になられた時だったと思うんですけれども、総理の世代として、貧乏な時代に育ったものだから、金持ちになった時にどうすればいいのか、というのは教わってこなかったということをおっしゃってましたが、これからの日本を背負う人は、富に対処することを、学ばなければならない、あるいは、富に対処する道徳が必要だということをおっしゃっていたのを非常に鮮明に覚えているわけなんですけれども、そういう発想の上に立てば、総理というこの大任を背負う段階になって、今後、国民に対してどういう政治哲学なり、政治理念を具体的に率先垂範してお示しになるのか、これは正に、今、総理が政治倫理に関連して自分に対する厳しい戒めという言葉をおっしゃってるわけですけれども、任期中に具体的にどういう政治姿勢、政治理念を国民に問い、自分自身も自制されるのか、その辺をこの機会に教えていただければ幸いですけれども。
総理 確かに、貧に処するということは、昔から習ってきましたが、豊かさに処する、富に処するということは、必要がなかったものだから、習わなかったわけですね。それで、この頃、時々、日本人が高慢だというふうに外国から言われることの中に、私は、やはり金の使い方が間違っている。外から見て、不快感を起こすような使い方をしてるんじゃないかと思うんですね。ですから、これはお互いが体験によって直していくしかないことなのでしょう。急に貧乏人が金持ちになって、上手にうまく金を使うなんてことは急にはできないことかもしれないけれども、人に嫌がられないように、本当に人のために金を使うかってことを学ばなければならない。
私が、品格ある国家ということを言いました気持ちの中に、むやみにへりくだることはない。しかし、おごり高ぶっていることは、また、いかんことで、自分に与えられた仕事を高ぶりもせず、へりくだりもせず、正直にやっていくのが品格ある人だと私は思うんで、そういう国にならなければいかんと言いました意味は、ただ今のお尋ねのような意識で申しているわけです。
ですから、やはり、生活を豊かにするために、金を使うということはそれ自身は少しも悪いことではない。豊かさの内容が間違ってなければ、ただ同時に、どうやって人のためにこの頃はそういう考えがでてまいりましたね。企業においても、やはりいろんな意味でのなんて言うんですか、チャリティーと呼んでますね。そういうことが社会的な自分の務めなんだという。そういうことになってこなければ、いけないんだと思うんです。ある意味で、金を持っている人の、いわば、社会に対する自分の務めとこう考え、そういう考え方が出てこなけりゃいけない。
政治でもあんなに金がかかる選挙というのは、やっぱりこれは決して富に、上手に処しているとは言えない姿ですから、政治の方も改めなければなりませんし、これは学校教育でもあるし、家庭教育でもあると思いますけれども、いわば、おごり高ぶる日本人という批判を受けないような、お互い品格のある国民になって行きたいと思ってんです{前4文字ママ}。
記者 外交課題について、一つ質問させていただきたいんですが、朝鮮半島情勢について、南北朝鮮の両国は国連に加盟ということで、新たな段階で朝鮮半島情勢に大きな変化が見られてるわけですけれども、一方で、日朝交渉、正常化交渉がなかなか難航していると、この問題にどう対応していかれるか、基本姿勢をお伺いしたいんです。
それから、PKO法案、この国会で成立を是が非でもという姿勢がよく分かりましたけれども、韓国、中国など、近隣諸国への理解をどうとっていかれるのかについてお伺いします。
総理 朝鮮半島の南北の両方の国が国連へ加盟したというのは、これは大変喜ぶべきことで、両国のために喜ぶべきことだと思っています。で、その間における朝鮮民主主義人民共和国、便宜北鮮と言わせていただきますが、北鮮側の考え方の変化というものを見ることができる。で、それには、むろんいくつかの理由がありますでしょう。ソ連との関係もあったでしょう。それから、やはり、金丸さんがいう、北鮮との接触の道を開かれたということは、これは、それ自身でやはり私は大きな意味を持つと当時から思ってまいりましたし、今もそう思っています。
ですから、決して事態は悪い方に向かっていない。両国の首相会談があって、初めて共通のコミニケを作ろうと、お互い言い放しでじゃなくて、一つの枠で、ひとつ書いてみようということも、これもやっぱり結果はともあれ、大変な進歩だと思うんです。
そういう中で、我々の北鮮との交渉、あるいはこれから北鮮に我々として望みたいことは、やはり、核拡散防止についての保障措置を北鮮として受け入れて欲しい。これは、朝鮮民主主義人民共和国、アメリカ側が韓国に核兵器を持っている、そのことが続く限り、云々という態度であったわけですが、アメリカ自身が韓国における戦術核を考え直してもいいというふうに私は思っているんじゃないかと思うんです。
そうだとすると、この問題にもその展開がないとは言えないんであって、もうちょっと、もう少しで朝鮮民主主義人民共和国もここまできたわけですから、踏み切られると道が非常に開けるんではないかと、で、朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を、あるいは核拡散をどうこうってことは日本の知ったことじゃないと言われますけれども、そんなことはなく日本はすぐ近くですから、当然に関心を持っています。
ですから、その問題の展開が私はやっぱり是非、是非、朝鮮民主主義人民共和国にも考えてもらいたい問題だとこう思っております。
記者 一つ日米関係でフォローアップしたいんですが、総理の就任前後からですね。特にアメリカの新聞の評判が良い。それは、単なる就任のご祝儀だけじゃなくて、総理が戦後ずっと日米関係に係わってきたということ。それから、しばしば言われているように、アメリ力とは共通の価値観を有してるんだというようなことが言える総理大臣が出てきて、アメリカも安心して共通の言葉で話せるということが一つあると思うんです。しかし、同時に、総理とブッシュさんの間では理念のすり合わせは必要がない、個別問題でどんどんやってくる可能性の方が強いと思うんです。で、その一環として、アメリ力の新聞が書いているように、今度はタフな総理大臣が日本に登場したという表現になると思うんですけども、その辺の認識と決意をお聞かせいただきたいんです。
総理 私は、アメリカの国民は偉大な国民だと思っています。我々との関係は、安保関係も大事だし、これだけ人と物の行き来も大事、資本の取引も大事ですが、一番大事なのは価値観が同じだということ。価値観が同じであるから、我々には自分の思ったことを正直に言い合うことができる。それが、ごくごく簡単な私の考え方です。
したがって、貿易の問題でもそうで、お互いに、お互いの立場というものを言い、違ってるところは違ってると言い、SIIのようなものもですね。相手の国のあり方について注文つけるわけですから、これは、友達同士でなければできないですね。普通なら、そんななんで余計なことを言うんだっていう話になるんですが、敢えてアメリ力も自分の方にやっぱり教育の問題であるとか、あるいは、競争力の問題であるとか、日本の方は日本の方で、こういう系列がいけないとか、閉鎖的であるとか、そこまで自由にものを言い合っているわけです。またその貿易摩擦の問題なら、具体的にやっていくということに尽きると思うんですね。それは、正直に思ったことを言い、正直に自分のデータを比べ合わせて、それで議論をすることがいいことなんです。
それは、これだけ深い関係になりますと、常になにかの摩擦はあります。一つ片付ければ、また次がある。それはもう当然のことでありましょう。しかし、価値観が同じであるからそれが爆発して不仲になることはない。私は、そういう気持ちでありたいと思ってます。
記者 それに関連しますが、そうするとアメリカの求めるものは、国内の政治力、端的に言えば、そういうことになってくると思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
総理 つまり日本国内は、そういうふうに誘導していけるかと、理のあることであったら、しかも、場合によってはかつて例があったように、財政の出動も必要あるケースなんかもあるかもしれません。いろいろあると思うんですけど、それは、やっぱり理のあることはお互いにやっていくということじゃないでしょうか。
記者 次に、政治改革に関連してお聞きしますけれども、宮澤政権になって政治改革が非常に後退したのではないかという評価があります。その一つとして、派閥の問題があると思うんですけれども、党三役の中にはもう派閥の離脱というのは意味がないというふうにお考えの方もいらっしゃいます。昨日の閣議で、派閥離脱を閣僚で申し合わせましたけれども、有力閣僚の中にもそのこと自体に疑問を投げかける方もいらっしゃいます。こういう動きを総理としてどう受け止めていますか。総理自身は派閥との関係を今後どのようにされていくのか。この二つをお聞きしたいと思います。
総理 党の執行部では、恐らく現実に今の状況を見ておられて、形式よりはやはり党を円満に運営していくという心構えの方が大事だということをご議論になったんだと思います。これは政党の中のことですから、政党というのはそういう性格を持っております。しかし、政府ということになりますと、これはやはり公務員ですから政府の中では、私は、派閥というものは離れてもらわなければならない。私は勿論でありますけれども、政党人としての立場と、やはり広く国民に公務員として奉仕する立場というのは同じではないと思うんですね。ですから、私はそういうことで、昨日も閣議で申し合わせをしたようなことでありまして、これは、その通り守っていただけるものと思っています。
記者 政治改革でもう一遍、伺いたいんですけれども、先ほど、与野党協議については、関連三法案ですがこれをたたき台にして進めていかれるというお考えをおっしゃいましたけれども、関連三法案、小選挙区比例代表制の導入を中心にした公職選挙法の改正案と、それから政治資金制度の改正、政党の公的助成の導入というような柱になっておりますが、この三つはあくまでセットとお考えなんでしょうか。それとも、もしそういった選挙区制度の改革というのは困難であるとしても、その他の政治資金制度の改革、あるいは、政党の助成、そういった面の改革は可能だと、そのようにお考えでいらっしゃいますか。
総理 三つの法案が関連をしていることは事実ですから、やはり三つ、一緒にたたき台にして、スタートをしていただきたいと思っています。やはり、努力として、ベストを目指して努力をすべきものであって、ご協議が始まって、お互いの間の信頼感が生まれていろんなお考えが出るかもしれませんけれども、やはり、スタートは私はそうしていただきたいと思います。
記者 政治改革に関連してお伺いしたいんですが、今回の海部内閣が仕事に命運をかけた政治改革の出発点は、定数是正ではこの難局を乗り切れないと。もっと違う小選挙区比例代表制なり、そういう制度に向かわないと日本の政策決定過程が十分でないと。しかも、こういう派閥支配の論理っていうのは、外国から見た場合、極めて非常に見にくい状態になっていると。その権力の二重構造になっていてせっかく政府が仕事をやっていても、派閥に操縦されているんだという見方が主流になって、その政府のやっている政策の評価が非常に低く見られる傾向があるわけです。
この辺を解決するには、どうしたらいいかっていうのは、抜本的な政治改革が必要だというのが、そもそもの出発点で、党議決定にまでなった訳ですね。
ところが最近のその議論を聞いていると、定数是正そのものも難しい、そうすると出発点の前に逆ってしまうんじゃないかと。そういう感じを受けるんですが、総理としては、定数是正で済む問題か否か、ここはいかがお考えでしょうか。
総理 いきなり定数の問題と言っていない理由なんで、定数是正そのものは確かに容易なことじゃないんですけども、せっかくたたき台が三つあるわけですから、それを外しておいて定数是正の問題から入るということは、私は賛成でない。それは将来ある時期にそうしなけりゃならんことはないとは私は言わないけれども、今、それを言う時ではない。やっぱり、さっきの派閥のお話があったように、確かに、そういう今おっしゃったようなことはあるわけだから、これをたたき台にひとつやってください、とこう申している訳です。
記者 それについて総理自身は、こういうのが良いと思う一つの理想型みたいなのはおありですか。
総理 ですから、少なくともあれが協議の出発点になるように考えて、それで国会で成立しなけりゃならない訳ですから、これなら成立するっていうものを協議機関で出していただいて、それを持って言わば、与えられた状況での一番良いものと考えていくんだと思いますね。
記者 それからもう一点お伺いしたいんですが、その憲法問題についておおいに議論することは良いとおっしゃられたんですけれども、これは調査会でやるという場合、どういう調査会でやるのか、なにか具体的な案はおありなんでしようか。
総理 いわゆる小沢調査会に関するものであったと思うんです。そこでやられることは私は想定してお返事しておりました。
記者 特に政府として、なにか公的なその研究会みたいなものを作ってやるとか、そういうあれではない訳ですね。
総理 いや、そうじゃありません。先ほどの小沢さんが委員長になられた調査会のご議論のことで、私もそれを思っております。
記者 お話を元に戻して恐縮なんですが、ブッシュ大統領の来日が、延期というか、見通しが立たなくなった状況の中で、まだ外遊日程は現時点ではお考えではないということだったんですが、アメリ力へ行かれるという必然性は、現時点ではそういう状況の中ではお感じになっておられますか。まだ、そういう時期でもないんですか。
総理 今日のさっきの今なもんですから、それにお答えをするだけの準備がないんですが。これから後のこともよく分かりませんしね。
記者 先ほど、日本が国際社会で品格ある国として見られるようになりたいというお話しでしたけれども、総理は、外務大臣の時代にも、日本の外交の理念につきまして、もし、どんな国とでも仲良くするとすれば、仕切りのない外交だと見られても仕方がない。仕切りのない外交は出たらめ外交であるということをなにかで言ってらっしゃったように感じるんですが、昨日の閣僚会見でも、渡辺外務大臣はビルマの問題につきまして、サンスーチさんの釈放ですとか、政権移譲しなければ国際社会から制裁を受けても仕方がないのではないかと。移譲を求めるとか、というふうな発言をしていらっしゃいました。
これについてもう少し具体的にどのようになさるべきだと考えるのか。また、中国の人権問題でも日本がそれについて厳しいことを言うというのは立楊じゃないかもしれませんが、日本国内にいる中国人の反体制の組織人の雑誌の編集者が、難民受入れ申請をして、それは却下されて、その却下不服訴訟が進行中ですが、外交における人権の問題につきまして、総理はどのような考え方をお持ちですか。
総理 これは具体的な国を頭に置いてお答えをするわけではありません。そこははっきりご了解をいただいておいて外交における人権の問題というのは最近で申しますと、アメリ力の力ーター大統領の時に、非常に議論になりました。それは大変強すぎるという種類の議論であったし、また、今でもブッシュさんについて、そういう批判が議会の中にもあります。
これは、抽象的になかなか言いにくいことですけれども、各々の国にやっぱりその国の発展段階とか、政治の歴史とかいうものがあって、同じ人権と言っても、例えば、ある国にとっては、本当に食うや食わずで、住む家もない。餓死をしているという状況から、餓死する人がなくなった。住む家は、とにかくできた。なにか着てるということは、これはやっぱり、それなりに人権が進んだということをその国としては思うでしょうね。
それは、また無理もないことである。ですから、抽象的に一つの物差しで、全てを律するということはやはり気をつけなければならない。と思いますね。
それは例えば、対外援助というものがありますが、ODAみたいなもの。そのODAの条件として、人権の尊重度といったようなことを一つの物差しで言っていたら、それはなかなかODAというものは、浅いところへ手が届かないような結果になりやすいでしょうしね。
そこんとこは、一つの物差しでやっぱり考えない方がいい。要は少しずつでもその国の人権が重んじられる。そっちの方向へ、その国が行ってもらうような協力を我々がするということではないんでしょうか。
記者 ミャンマーについて、具体的にはなにか。
総理 ミャンマーについて私は具体的に申すことはできません。事実も存知ません。
記者 大分時間も超過しておりますので、もしこれ以上質問なければこの辺で終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。