[文書名] 細川内閣総理大臣と河野自民党総裁の共同記者会見
− それでは、共同記者会見を始めさせていただきます。
最初に、お二方の方から今日の会談経過などの報告をしていただきまして、その後フリーで質問ということにさせていただきます。それでは、よろしくお願いします。
○河野総裁 大変遅い時間にお集まりをいただきまして恐縮でございます。日付けも変わってしまいましたので、話の中で少し日にちが前後、間違いがあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
一月二十九日を臨時国会の会期末として極めて残り少ない時間という、その時期に昨日一月の二十八日の午後になりまして、土井衆議院議長から私ども二人それぞれお話をいただきまして、その土井議長からのお話を基にして二人が話し合うということになりました。詳細は後ほど皆様に御報告を申し上げますが、昨日夜七時から相当長時間にわたって二人で話し合いました。途中、土井議長、原参議院議長をお訪ねをして御報告を申し上げ、あるいは御了解をいただくという一時期がございましたけれども、その時間を除いて、その議長への御報告、御了解をいただいた後、二人の話し合いは更に進みまして、政治改革関連四法案について合意を見ることになりました。
お集まりの皆様の前で、二人で合意書に署名をさせていただきたいと思います。
総理からどうぞ。
前文と十項目にわたります合意でございます。
○細川総理 ペンは借物で今サインをさせていただきましたが、中身は大幅に自民党案に譲らせていただきました。
今、河野総裁からお話がございましたように、今日およそ六時間余りにわたって、途中何回かそれぞれ持ち帰ったりしながら協議を続けさせていただいてまいりました。その中身につきましては、今お手元にお配りをしておりますその合意事項のとおりでございます。今、河野総裁からお話がございましたように、昨日七時前に土井議長からお呼び掛けがございまして、議長からの提案が行われました。その御提案というものをきっかけとして、私どもは話し合いに入った訳でございますが、この議長の御提案というものがまさに触媒の役割を果たしたと申しますか、このような話が実っていく大きなきっかけになったと、このような果実をつくり出していくための大きな一つのきっかけになったというふうに思っております。
その議長の御提案の趣旨を全部そのまま生かすということにはなりませんでしたが、その基本的な考え方というものを踏まえて、いろいろ河野総裁と御議論をしている中で、今お手元にお配りをしたような形で個々の項目についても合意が成立をしたということでございます。河野総裁とお話をするに当たりまして、今のこの日本の政治の置かれている、あるいは今の時局の認識についてお互いにお話をいたしました。この六年越しの政治改革というものが決着をしない限り、国民がこれだけ期待をされているこの問題が決着をしない限り、経済の問題もうまくいかないし、国民の政治に対する信頼も回復することが出来ないし、また国際社会における我が国に対する信用というものも、これはますます低下をしていってしまうであろう。そういう状況の中で、何としてもここで大局的な立場に立ってこの政治改革の法案というものを区切りをつけなければならない。そういう同じ認識をもって胸襟を開いてお話をしてきたところでございます。
その結果、最終的にそれぞれに苦しい立場というものを乗り越えて、私どもは連立の中で、また河野総裁は河野総裁の党のお立場の中で苦しい立場を乗り越えて、今申し上げましたように国家国益の観点からこういうことで決着をつけようということで最終的に合意を見たところでございます。
今後どういう、明日が最終日でございますから、具体的にどのような形で本会議が持たれ、あるいはまた協議会が開かれるか、その辺のところは議会の方でお進めになることでございますから今、申し上げませんが、この法案にこのような形で決着をつけることが出来た。本当にこれは感無量の思いがいたしますし、また河野総裁ともこの時局の中で当面する経済の問題、あるいはまた日米の包括協議の問題、こうしたものにつきましても週明け早々にでも河野総裁のお時間をいただいて忌憚のないお話をさせていただきたい。このように考えているところでございます。
また、あとは質問でお答えをいたします。
○河野総裁 細川総理からお話がございましたけれども、この合意を見る前提として総理からお話がございましたように、国際的な問題、国内的な問題それぞれ大変今、政治が解決しなければならない、政治が責任を持たなければならない多くの問題があるという認識で一致をいたしました。
私は特に昨今の景気に対する一日も早い対応ということが必要だという認識を持っておりますし、更にもう一つ、政治改革という言葉が中身を特定せずに政治改革という言葉だけが動き回る。そのことが、国際的な誤解を生みはしないかという心配もありましたし、国内的に見ても政治改革をやらなきゃいけない、政治改革をやらなきゃいけない。しかし、その中身はどういう中身になるのかということが決まっていかないというこれまでの状況に大変不安を持っておられた方が多いと思います。
いずれにせよ、国民が注視する中で総理と共にこの問題の最終的なと申しますか、この時点における合意をすることが出来たことは、我々の先輩、私どもの党でいえば伊東正義先生を始めとしてこの問題にずっとかかわってこられた多くの先輩、またこの問題のために政治的に苦労をなさった多くの先輩の方々、そうした方々の顔を思い浮かべながら、先輩の御苦労に感謝しながら、最後の決断をさせていただいたところでございます。この決断のために御協力をいただいた、御支援をいただいた同志の皆さんに心から御礼を申し上げて御報告といたします。
あとはどうぞ、御質問をお願いしたいと思います。
− それでは、御質問をさせていただきます。
まず、合意書を見ますと取り分け政治資金の問題なんですが、五年に限り年間五十万円を限度に認めると、こういうふうになっておりますけれども、総理は連立与党、取り分け社会党がこういう仕方についてどういうような反応をしているのか。事前に了解を取っているのかどうか。そういう不透明要素はないのか。
それから、河野総裁にも同じように慎重派ですが、この問題だけではなくて容認したこと全般に対して慎重派を説得出来るのかどうか。その辺のことを含めてお願いします。
○細川総理 それでは、私からお答えいたしますが、社会党の方々のみならず、この問題については出来る限り厳しく抑制をしていくべきであるという声が確かに強かったと思います。そのことは十分私も認識をいたしておりますし、また直接に社会党の村山委員長からもそういう社会党の中の声というものも強く伺っておりました。
しかし、この最後の土壇場に来て、大きな観点から是非私に判断はお任せをいただきたい。それは一任は出来ないというお話でございましたが、私の最終的な決断でそこのところは踏み越えさせていただいた、判断をさせていただいたということでございます。大変苦しい判断でございましたが、しかし五年後の廃止、少なくとも現行よりも透明度などの点でも増しておりますし、また廃止ということがはっきりとうたわれている訳でございますから、現行の制度よりも大きく前進をしたものである。当初の案よりは、おっしゃるように確かに後退をしたものになりましたけれども、この点については御理解を是非いただきたいと、このように思っております。
○河野総裁 政治改革を実現させようという気持ちは、我が党議員だれしもが持っている気持ちでございます。ただ、その内容になりますとさまざまな意見があって、議論が随分と続いてきた訳でございます。
しかし、この臨時国会の最後の場面、ここでどうしてもこの問題には決着をつけて、我々は取り組まなければならない問題がたくさんある。その次の問題に進みたいという気持ちを持って、政治改革に対して慎重な態度をとられる方々の御意見も十分伺いながら、私は昨日来からの会談に臨みました。今、御指摘の部分について言えば、総理は大変この問題の決断には悩まれた、あるいはこの決断には大変苦労をなさったというふうに思いますが、私どものかねてからの主張でもございました、ここは是非理解をしてほしいということをお願いをした訳でございます。今回のこの合意は、お互いに互譲の精神がなければ合意は出来ない訳でございまして、党内同志の皆さんの理解を求めるために、これまでも随分多くの方々の意見を聞き、やってきた訳でございまして、私は必ず御理解はいただけると確信をいたしております。
− 今回のトップ会談は、土井衆議院議長の要請あるいはあっせんに基づくものという理解が生じますけれども、その辺で議長からどのような要請に基づいて今日の会談に至ったのか。
それと、この合意書の中で法律の施行については具体的な記述はございませんけれども、お二人の間でこの点についての合意があったのかという二点をお伺いします。
○河野総裁 土井議長からは、今日の国会の状況を考えると大変心配だ。この会期末に、これで国民の期待にこたえられるかということについて大変御心配でありました。二人は別々に呼ばれましたので、私は土井議長から、何としてもこの問題をまとめる必要がある。幾つかの知恵を授かって、こういうことで話をまとめてはとうかというようなお知恵をいただきました。細川総理も土井議長からいろいろ御指示があったようでございました。いずれも、私ども二人、そうした議長からのサゼスチョンを受けて、それならば二人で会って話をしてみようということになった訳でございます。
あとは総理から、総理も議長と会っておられます。
○細川総理 どちらが先だったか分かりませんで、私もその点は伺いませんでしたが、とにかく別々に議長のところに呼ばれまして、議長から先ほど申し上げたように御提案をいただきました。一つは施行期日の問題、一つはその法案の中身についての協議機関を設けて詰めていくということはどうかという、その二点についての御提案であった訳でありますが、大変事態が切迫をしている中で貴重な知恵を出していただきまして誠にありがたく拝聴をさせていただきますと。ただ、河野総裁の方とも是非、事がここに至っている状況の中でトップ会談というものを持って話し合いをさせていただきたいということで、私は河野総裁にトップ会談を呼び掛けさせていただいてお話を始めた訳ですが、お話をしていく中で、土井議長が呼び掛けられました協議機関というものをどのように考えていくか。そういったことについて相当長い時間を割いてお話をいたしました。
しかし、お話をしていく中で個々の項目についてだんだんと話が詰まってきて、土井議長のお話の中で施行期日の点についてのみ、その議長の御提案を受け入れるというか、それを生かさせていただくということとして、中身につきましては両者で話し合って詰まってまいりましたので、そのことを議長のところに御報告に上がらせていただいたということでございます。
− お二人で並んで会見されているということですが、総理、総裁お二人にお伺いしたいんですけれども、国民の目にもある程度象徴的な今回の会見に見えていると思うんですけれども、こういったことがこれも含めてこれからの連立政権の在り方に影響を与えるでしょうか。
○細川総理 大変それは難しいお尋ねですが、正直申し上げて私にはちょっと予測がつきかねます。
○河野総裁 大変いい質問だと思います。これからどういう経過をたどるか、まだ予測出来ません。しかし、先ほど総理からお話がありましたように、山積する難問題、日米交渉、あるいは景気対策、こういった難問題が国民生活を大変厳しいものにするという状況にあるように私には思えます。私どもは国民生活を守るという観点に立てば、時に総理にそうした政策を自由民主党が長年にわたって培ってきた知見、経験、人材、こういったものから総理に提言をするということはあるだろうと思います。
○細川総理 先ほどもちょっと申し上げましたが、今のこの時局に対する認識ということの中で、この局面の中ではお互いに政治休戦をするぐらいのつもりで現下の経済の問題を始めとして取り組んでいかなければならない問題があるということでそのようなお話をした訳でありまして、これから連立政権がどうなるかというお答えは、私もいい質問だと思いますが、先ほど申し上げたように現時点では私は予測をすることはなかなか難しいということしか申し上げられないと、こういうことでございます。
− 先ほどの質問の確認をさせていただきたいんですが、施行期日のことはどのように取り扱うことになったんでしょうか。
○河野総裁 それは、ここに書いてあります。
− それは、いわゆる存立したというふうに理解してよろしいんでしょうか。
○河野総裁 この合意書の前文の一番最後の二行を・・・。
− そうすると、次の通常国会で修正をするということですが、その時間的な時期はいつごろと想定されておられますか。
○河野総裁 書いてある。よく読んでください。
− その具体的な修正の。
○河野総裁 ですから、これは平成六年度の予算審議の前にやると書いてありますから、そこはよく読んで、いいですか。
− では最後に一問だけ、時間が過ぎてしまいますので。
− 総理にお伺いしたいんですが、政府が今度出された法案とは総理も最初にお触れになったように内容が変わってきています。政府の法案はもともとそれなりの理念と哲学をもって主張されてきた法案だと思いますけれども、このように大幅に修正するということになると、その理念と哲学は一体どうなってしまうのか、どうお考えですか。
○細川総理 それは、そういう御議論も当然ございましょう。しかし、先ほど来申し上げるように、この政治改革の法案というものは六年越しの懸案でありましたし、またこの問題が今の経済の問題や、あるいはその国際関係にこれだけ大きな影を落としているということを考えますと、何としてもやはり大局的な観点に立ってこの基本的な政治のフレームワークというものを新しい姿に変えていかなければならない。そういう観点に立って、最終的な決断をさせていただいたということでございます。
− どうもありがとうございました。