データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 税制改革に関する細川内閣総理大臣の記者会見

[場所] 
[年月日] 1994年2月3日
[出典] 細川内閣総理大臣演説集,242−255頁.
[備考] 
[全文]

 −では、これから総理の会見を始めさせていただきます。

 今日、減税及びその財源を巡って協議を続けていらっしゃった訳ですが、総理の方から、その結論と、それに至る簡単な説明をいただきたいと思います。

○細川総理 大変夜分遅く恐縮でございます。税制改革について、本日政府与党から対応を一任されたことを踏まえまして、私の案として、お手元に配布をしております税制改革草案を作りまして、提示させていただきました。

 そのポイントを申し上げますと、第一に、所得税、住民税の減税、総額六兆円でございます。うち所得税、住民税減税は総額で五兆三,〇〇〇億円、実施日は平成六年一月一日ということでございます。

 第二に、仮称でございますが、国民福祉税を創設をいたしまして、消費税を廃止をいたします。実施日は平成九年の四月一日。税率は七%ということでございます。

 いましがた代表者会議、経済問題協議会、政府与党首脳会議におきまして、これを政府案として国会に提出させていただくことで御了承を得たところでございます。

 この結果、国家財政は三年間で十八兆円の減収。言い換えますと、三年間で十八兆円の家計の所得の増加に伴う景気浮揚効果を持つ訳でございます。

 現在、我が国はアメリカ、ヨーロッパ諸国の何倍というスピードで高齢化社会に入りつつある訳で、高齢化社会になっても活力を失わない、豊かな社会を築いていくということが我々の責務でございますし、元旦に発表させていただきました二十一世紀のビジョンを推進をして、活力のある豊かな社会を築いていく。そして、その中で社会保障の充実を図り、生活環境、社会資本の整備を推進をしてまいりますためには、多額のコストが掛かることは改めて申すまでもございません。

 今の税制、つまりその負担の仕組みを見ますと、個人に対する所得課税に偏重していて、働き盛りの負担が重くなり過ぎている。これはよく指摘をされているところでございます。このまま放っておきますと、ますます働き盛りの人たちに負担が集中して、社会の活力が失われていく。これは間違いなくそういう状況になっていくということは必定であるということを申し上げてきたところでございます。

 高齢化社会を支えていくためには、どうしても働き盛りの人たちの負担の軽減、つまり所得課税を軽減して、消費課税のウエートを上げて、みんなで高齢化社会に必要な費用というものを支えていく負担の仕組みというものがどうしても必要であるというふうに考えております。

 我々将来に対して、責任を取らなければならぬ者として、今の税制を、今申し上げたような観点からも放置していく訳にはいかない。そのように考えてまいりました。

 私はこれまでの国会でも、所信表明以来一貫して、税調答申を踏まえ、所得、資産、消費のバランスの取れた税制を作っていくための税制改革を一体として推進していかなければならないということを申し上げてきたところでございます。返す当てのない赤字国債につきましても、慎重の上にも慎重にということを言ってまいりましたのも、高齢化社会を支える後の世代に、負担をつけ回しをしてはいけないという趣旨から、そういうことを申し上げてまいりました。

 同時に、経済の先行き不透明感を払拭をして、平成六年度における景気の回復を確実なものにしていくことが、内閣の最優先の課題であることは改めて申すまでもございません。

 そういう点を踏まえまして、代表者会議、経済問題協議会、政府与党首脳会議におきまして、このお手元に配布をいたしましたような案で、政府として成文として国会に提出することを御了承していただいたところでございまして、是非国民各位の御理解をいただきたいと考えているところでございます。

 私からは以上でございます。

 − 各社自由に御質問ください。

 − 今、この案で了承いただいたという発言でしたけれども、社会党も了承したと、こういう認識でよろしいんですか。

○細川総理 社会党からは、正確にはまた社会党の方からお聞きを直接にいただきたいと思いますが、税率、実施時期も明示をして、明示をした増減税一体の税制改革には賛成しかねると。国民福祉税の創設というのは理解出来る点もあるけれども、消費税と変わらぬ面があると。減税は短期の特例公債によって実施をすることとして、財源については協議機関を設置をして、同意が得れれる{前4文字ママ}ようにやってもらいたいと、希望すると、こういったような趣旨のお話がございました。

 各党とも、大変厳しいお話がそれぞれございましたが、最終的には政府の責任者の判断に基づくものでございますから、やってはいけないということは言えないし、これは政府が提案することについては、とやかく言わないと。これが各党の大方の御意見であるというふうにお受け止めをいただきたいと思います。

 − 総理御自身が国民福祉税という構想をお持ちになったのはいつごろなのかという点が第一点と。

 もう一つは、ぱっと読んだ限りですけれども、消費税とどこが違うのか。国民にとってみると、単に名称を衣替えしただけではないかという批判が出てくるとも思えますが、消費税との大きな違いについてはどうでしょう。

○細川総理 国民福祉税については、このペーパーの大きな一、その(1)のところに、国民福祉税については云々と、高齢化社会においても活力のある豊かな生活を享受出来る社会を構築するための経費に充てることを目的とする旨、法定し云々と書いてございますが、まさにそのような趣旨でございまして、目的税という言葉の定義ははっきりいたしませんが、今までの消費税とは明らかにその目的が異なっておりますし、広い意味で目的税と申し上げてもいいのではないかと思っております。

 − 消費税導入のころから福祉のために使うという議論はございまして、宇野総理が参議院選挙のさなかに、消費税はすべて福祉のために使いますと言明しておりました。宇野総理はその意味は余り明確にはおっしゃらなかったんですけれども、この宇野総理の趣旨は、目的税として使うという意味ではなくて、福祉予算は年々膨張する。そこに消費税を作ったので、言わばそこに見合う部分が当てられるとみなすことが出来るという趣旨でした。それと今回は同じではございませんか。

○細川総理 今回の場合には、もっと明確にそこのところは書いてある訳でございます。今申し上げましたように、消費税とは明らかにその目的が、今までの消費税とは明らかにその目的が違っているということは、今ここに書いてあるこの文言を見ていただいても明らかだというふうに思います。

 もっと明確に目的税的に出来ないかという御議論も随分ございましたが、しかし、一口でこの福祉社会を作っていくということを申しましても、例えば道路の歩道をスロープにするとか、あるいはまた高齢者用の住宅を造っていくとか、例えば年金だけに限って、基礎年金だけに限って、年金税なものにもっと絞るといった考え方もあるかもしれませんが、なかなかやはり、今、福祉の目的というものもいろんな観点からのものがございますから、やはりこのような形で国民福祉税といったような広い意味で目的税と言えるような形のものを考えていくということが、その趣旨に沿うのではないかというふうに思っているところでございます。

 − 平成九年四月一日、今から三年後、何ゆえに七%なんですか。その根拠を示してください。

○細川総理 当面の二十一世紀のビジョンというものを既にお示しをしておりますが、その財源等々を考えてまいりますと、今からまた年金の改正も始まりますし、やっていかなければならないし、さまざまな高齢化社会の需要に応えていかなければならない。そういう中で、さまざまな観点から総合的に判断をいたしまして、七%という税率が適当であろうということでございますが、その辺の細部につきましては、大蔵大臣の方からまたお話をさせていただきますが、後でここでされますか。

 − それは総理きちんと言ってもらわないと、3年後に何ゆえ七%というのは、一体幾ら、高齢化社会、福祉ビジョンを考えた場合には、どれだけの財源が必要で、そのためにはこれだけの負担が必要なんだと。その明確な数字を示してもらわないと、根拠付けの数字がはっきりしませんから、それはきちんと言って欲しいです。

○細川総理 その辺の福祉ビジョンの細かいデータというものは、まだ正確にはじいておりません。正確にはじいておりませんが、腰だめのまだ数字でございますが、福祉ビジョンは三月にしか出来てきませんから、腰だめの数字ではございますが、しかし、大体この程度の財政の需要がどうしても必要であろうと。そういう観点からこのような七%という率をはじいたものでございます。

 − ということは、腰だめの数字ということは、九年の四月一日の時点では、この数字が変わるかもしれないということはあるんですか。

○細川総理 いつの。

 − 腰だめの数字だということは、今の時点で腰だめならば、平成九年四月一日時点では、この七%という数字は十分変わり得るということですか。

○細川総理 いや、変わりません。変わることはございません。腰だめと申しましたけれども、大体はそれは詰めてきている訳ですから、腰だめという表現はちょっと適当ではないかもしれませんが、大体大筋のところにおいては、詰めてきているということです。

 − しかし、総理、この消費税の現行の三%から、国民福祉税の七%になりますと、四%上がる訳ですから、大体現在の消費税収を考えれば、約九兆円程度の増収になると思います。これに対して減税が六兆円、また国債の償還の金額などを考えましても、実質的にはおそらく一兆円か二兆円程度の増税というものが、平成九年の四月に行われるのではないか。こういうふうに考えるんですけれども。総理が最初におっしゃっていた所得、消費、資産のバランスというものが、いわゆる歳入中立ですね。減税する分と増税する分が等しくてもいい、成り立つ議論だと思うんですけれども、いつの間にそれがこういう実質的な増税につながるようなことになったのか。その辺りを御説明願えませんか。

○細川総理 確かにおっしゃるように、ネットで負担増ではないかというお尋ねですが、確かに単年度で見れば、平成九年度以降に増税になるということはおっしゃるとうりでございます。しかし、勤労世代に大きな負担が掛からないようにするとともに、高齢化社会を、何と言うか、安定的に支える税制を構築をしていこうということでございますから、単純にネット負担増ということで判断をすべきではないというふうに考えております。

 − 総理、確認ですが、これは一般財源だと思うんですが、福祉のために使うというのは、何らかの工夫をされるんですか。重油税でしたか、法案に書いてあるものもございますけれども、何らかの工夫を、福祉に優先的に使わなくちゃならぬ工夫があるんでしょうか。

○細川総理 福祉に優先的に使うというのは、先ほどから申し上げているとおりで、そのことを法定化するということをここに書いている訳ですが、先ほども申し上げましたように、それは福祉と一口に言いましても、年金だけとは限らないし、様々な需要があるということです。

 − 基礎年金に充てるとか、基礎年金の財源に充てるとか、そういった特定のものではございませんね。

○細川総理 ございません。そうです。

 − そうすると、この文言を読みますと、理念は分かるんですけれども、何か何にでも使えそうな感じがするんです。そうすると、福祉というのが、やはり消費税という名前を変える、抵抗を少なくするためだけのネーミングではないのかという感じは国民は受けると思うんです。そこを何とか説明してくれませんか。違うんだという。

○細川総理 しかし、これだけ明確にここに書いてある訳ですから、高齢化社会においても、活力のある生活を、社会を構築をするための経費に充てることを目的として法定化をすると、こう書いている訳ですから、それはそのことをもって御理解をいただけるのではないかと。また、是非御理解をいただきたいと、このように思っております。

 − そうすると、法文化しないけれども、時の政権がそういう使い方をするということは約束すると、そういう程度の意味ですか。

○細川総理 これは法定化する訳ですからね。

 − 用途は特定しないんでしょう。

○細川総理 用途は、そうです。はい。

 − こういう改革案を出されることは結構なんですが、これはやはり国会の議決を経てしか実施出来ないということは論を待たないところです。先ほども出ましたが、社会党が反対をされているということを聞いておりますし、今後の国会運営でこれを社会党も賛成して通していけるのか。その辺の考え方と。例えば社会党が反対した場合、今の連立内閣がどうなるのか。更には自民党とこの問題について協力を求めていくのか。そういう基本的な考え方についてどういうふうにお考えですか。

○細川総理 社会党だけではなくて、これは私の足下の日本新党の中にも、非常に強い、この点については慎重な方々がたくさんいらっしゃいます。どの党も、今日、御論議をしておりまして、大変に厳しい党内論議を経て、代表者の方々は出てこられました。

 したがいまして、今、たまたま社会党のお話がございましたが、社会党に限らず、この法案を通すために、今後、政府としてもこのようにぎりぎりのところでこうした判断をさせていただきましたからには、最大限の努力をして、是非この件についての御理解が得られるように努力をしてまいりたいと思っております。

 − その点ですが、今後各党と協議する中で、今日発表された草案が変わる要素があるのかどうかという点。

 それから、昨日の河野総裁との会談で、今日の草案については、総理のお口から説明されたのかどうか。この点。

○細川総理 昨日はこの点についてお話しておりません。今日代表者会議、あるいは協議会で、あるいは政府与党で御論議をいただいた訳ですから、時間的にそれは前後しておりますから、そのことはお話をしておりません。

 − これは与党内の中でも十分論議されておらぬと。なおかつ、国民の方も突然に総理から示されて、非常に戸惑いと言いますか、納得されないまま、これが政府提案という形になるとすれば、非常に短兵急というような印象を持つのではないかと思うんですけれども、その辺についてはいかがお考えですか。

○細川総理 党内の論議というお話もございましたけれども、昨年の十二月に入ってからでしたか。経済協議会を各党で設置をしていただいて、また、それと並行して代表者会議でも御論議をいただいてきました。そういう場におきまして、議論をすれば幾らでも議論のあるところだろうと思いますが、それなりに連立与党としての手続というものは踏んで今日まで進めてきたつもりでございます。

 − 国民福祉税ということを提案なさった議論というのは今までなかったように思いますが。

○細川総理 国民福祉税ということを踏まえて。

 − この形を与党内に示して議論するという場は今までなかったように思いますけれども。

○細川総理 そうですね、それは大詰めを迎えて、この論議が浮上してきたということでしょうか。いろんな観点からこの議論というものは、この議論というか、この議論はなされてきた訳で、こうしたことも、こうしたことの前提には、先ほども申し上げましたように、元旦にお示しをした福祉ビジョンというものもその底にある訳であって、ベースにある訳であって、そうしたことは当然踏まえて御論議をいただいてきた訳ですから、唐突にということではないと思っております。

 − ただ、実態としては、経済問題協議会で総理は多角的な議論をするというふうにお約束をされましたけれども、しかしながら、参院の政治改革法案の審議中というのは、事実上中断していたと思いますし、協議会の中の内容を見ても、更に大蔵省の説明に時間を費す場面が、我々が聞いたブリーフではそういうふうになっています。非常に大蔵省主導型と言いましょうか。大蔵省の考え方がそのままこの案になっているような印象も受けるんですが。

○細川総理 全くそういうことではございません。それは財政当局としては、財政当局の意見が、これはしっかりあることは確かでございますが、党の方では、連立与党の方では、与党の立場として、また、政府は政府の立場として、例えばこの国民福祉税という名称にいたしまして、あるいはまた実施の時期にいたしましても、連立与党の主導で最終的に判断をしたということでございます。

 − これまでの消費税を廃止して、国民福祉税にして、福祉のために使うということをうたうのであれば、論旨を一貫させるためには、福祉目的税にすることがはっきりすることだと思うんですけれども、何故一般財源になるんでしょうか。

○細川総理 先ほどから何回も申し上げているとおりです。繰り返しになって恐縮ですが、年金なら年金というものに絞ってしまうことが果たしていいのかどうか。福祉と言っても、いろんな観点から、今福祉に対するニーズというものはあるんじゃないかということを考えると、高齢化社会に備えて、福祉のニーズを充実していくためには、一般財源としてそれを充当するということを考えた方が、むしろ高齢化社会に的確に対応出来るのではないかと。そういう観点からそのような判断をしたいということです。

 − 特に社会党の了承を得られないままということだったと思いますが、そのことが政権に及ぼすリスクというのは、ある程度覚悟されていた上でのということでよろしいんですか。

○細川総理 社会党のみならず、どの党の中にもそのように非常にこの点について慎重な方々がいらっしゃることはおっしゃるとおりです。

 − 閣僚の引揚げというような、強硬な意見も社会党内に出ているようですが、そういったことはやむを得ないと。

○細川総理 内閣一体で対処しなければならないということは、これは当然のことでありまして、そのことについては、是非御協力をいただきたいということを今日も申し上げました。そのことについて、社会党の閣僚の中からは、閣僚ではあるけれども、自分も党員であるし、党の方とも相談をさせてもらいたいというお話はございましたが、それ以上のお話はございませんでした。また、それ以下のお話もございませんでした。

 − 総理は税の問題については、これまで直間比率の見直しとか、いろいろおっしゃいましたが、もう一つ大きな意味として、国民の理解ということもおっしゃっていたと思うんですが、これまで、例えば代表者会議とか、羽田さんが座長をやられている経済問題協議会ですか、この辺で七%という数字とか、一切公式な場でのブリーフなどでは出てきたこともないし、今日、唐突にこの数字が出てきたという感じはやはりぬぐえないと思うんですが、この辺、国民の理解というのは、こういう数字を出されて得られると思われていっらしゃいますか{前9文字ママ}。

○細川総理 税調の御論議というのは、やはり国民の御意見を集約していく場であると思いますが、そこにおける長い問の御論議というものを踏まえまして、また、期間もこれは三年後、三年間の期間を置いている訳でございますから、しかもこれから世界に例を見ない早さで高齢化が進んでいくという状況の中で、福祉の充実を図っていくということになれば、高齢化社会に対応していくということを考えれば、どうしてもやはり無責任に赤字国債を出して対応していくということは、これはやはり責任のある政府の立場として出来ることではないと。この点については、必ずや国民の皆様方の御理解が得られるであろうと、このように思っております。

 − 総理が政治改革法案のときに、政府案はベストだけれども、国会の論議を尊重したいというスタンスを取られたと思いますが、今後の場合も連立与党内を含めて、税率の問題とか、それから今もいろいろ出ています厳格な目的税にするのかどうかとか、いろいろ反論が出てくることが予想されると思いますが、やはり政府案はベストだけれども、国会の論議を尊重したいというスタンスで望まれる訳ですか。

○細川総理 それは国会の御論議を尊重することは当然のことでございます。

 − そうすると、修正もあり得るという。

○細川総理 これは政治改革の法案と同じように申し上げるしかないと思います。

 − それではあれですか、福祉税の実施時期が何ゆえに平成九年の四月一日なんですか。

○細川総理 これはよく指摘をされておりますように、余り期間が近ければ、効果がないと、景気に対して効果がないと。出来る限りそれは伸ばせるだけその間隔をあけた方がいいだろうと。これは景気の観点から言えば当然の判断だと思います。一方、財政の観点から言えば、その辺に対しておのずから制約があると。これもまた双方のぎりぎりの判断として、最終的に私が決断をさせていただきました。

 − 社会党の中の論議が、一部だけということではなくて、大勢が反対だというふうに聞いているんですけれどもね、そうすると、これを法案化すれば通常国会で成立させるんでしょう。そのときに、自民党の出方次第なんでしょうけれども、どうなんですか、成立させる自信というのはおありですか。

○細川総理 何とか御理解をいただくように、最善の努力をするということに尽きると思います。

 − これは政治改革法案と同じような位置づけになりますか、総理の政治的なその。

○細川総理 同じような位置づけというのは、ちょっと御趣旨がよく分かりませんが、やはり経済改革の一つの一番基本的なベースになるものでございますから、しかもこれは今のままで全く縮小均衡の予算を組むのか、あるいはこれだけ景気が深刻な状況の中で、それなりの景気刺激のための減税策を講ずるのか。そのための財源はどうするのか。いろんな観点から考えたときに、これは政府として取り得るぎりぎりの選択だと思います。そういう観点から、これも政治改革法案同様に厳しい状況になると思いますが、先ほど来申し上げますように、各党ともこの問題については、非常に慎重に考えられる方が多いことも事実でございますが、しかし、今、申し上げましたようなことを踏まえて、是非御理解をいただかなければならないと。そのために政府として最善を尽くしていきたいと思っております。

 − こういう形で税率が上げられれば、また七%から更に十%とか、更に先々引き上げられるのではないかという不安が多くの方にあると思うんですけれども、その点についてはいかがですか。

○細川総理 それは国民負担率というものが、国会の御答弁でも繰り返し申し上げておりますように、ピーク時においても五十%を上回らないようにしていくということが政府の最大の目標でございますから、そういう考え方に沿って、先ほどもちょっと申し上げましたが、現役の世代に過重な負担にならないように、今の働き手の人たちがやる気を失ってしまうということにならないように、どういうふうになだらかにそこのところを持っていくかということが一番重要なポイントだと思っております。そういう観点で判断をさせていただいている訳で、そうした点についても、私は今後御説明をしていく中で、国民の皆様も、その点については、必ずや御理解をしていただけるだろうと、そう思っているところです。

 − 時間も大分経ちましたので、よろしければあと一問ないし二問程度で会見を終わりたいと思いますが。

 − 総理の今の御説明を聞いても、やはり分からないところがたくさんあります。大体必要と思われるというようなことで三年後だの七%だのと、そもそも国民に説明するときに、そういう大体必要だというような説明でよろしいんでしょうか。もっと、本当にお願いしますと。前に出る総理のお気持ちというのはほとんど伝わってこないと思いますが。

○細川総理 おっしゃることはよく私は分かりませんが、二十一世紀のビジョンというもので、これからの高齢化社会に向けて、これだけの、例えば介護の問題でも、あるいはまた社会資本の整備にしても、あるいは医療とかその他年金の問題にしても、整備をしていかなければならない。それだけの需要がある。それに応えていくためには、どうしてもやはり今の現役の世代に負担が過重にならないようにしていかなければならないということを、年頭の国民の皆様方に向けてのお話の中でもさせていただきました。

 そういうことを考えますと、どうしてもやはりこの程度の負担というものはしていただく必要があるであろうというところから判断をさせていただいた訳で、その点については、個々の細かい数字まで挙げてというところまでは、先ほども申し上げたように、まだ最終的に積算が出来ている訳ではございませんが、しかし、大体、大体と言うと、さっき少し荒っぽすぎるのではないかというお話がございましたが、大体と言っても、ほぼ大筋のところは出来ている訳で、計算は出来ている訳でございますから、その点については、私は御理解いただけるものというふうに考えております。

 − 計算出来ているというのは、先ほど示せないと総理はおっしゃいましたが、計算出来るんだったら、示されるんではないんですか、大体この程度になった数字の根拠というのは。

○細川総理 さっきも申し上げましたように、福祉ビジョンというのは三月に厚生省の方で取りまとめていただくということで作業を進めております。ですから、財政当局としては、その作業をにらみながら、大体その数字を押さえて、この税率なり何なりというものを出してきているということでございまして、それは当然、そういう作業は政府の中で行える範囲の作業でありますから、その点についてはしっかりと数字を押さえて、当然のことでありますが、このような上げ幅にさせていただいたということでございます。

 − ほかによろしければ。

 − だから、総理はいいから、この後大蔵大臣に七%の根拠をきちっとお願いします。

○藤井大蔵大臣 財研でやります。

 − 財研ではなく、ここで聞きたいんだから、ここで答えてくださいよ。

○細川総理 私はよろしいですか。

 − 総理の方は結構ですね。

○藤井大蔵大臣 今、総理が言われたように、これから国民福祉税というのはどういうふうに使うのかというのには、生活環境の問題も入りましょう。それから、さっきお話の出た年金等々の問題も入ります。そして、もう一つは、資産、所得、消費のバランスの移し替えというものも入ります。そういうものを含めて、この新しい税制を作り上げたいと、こういうことを総理はいわれたとおりでありまして、これからの、では一体、どこにどういうふうにもっていくかというのは、さっきお話のように、これから福祉ビジョンなどを策定する中で、固めていくものだというふうに申し上げられると思います。

 − だから、そうもっていくために、何ゆえに国民福祉税を平成九年四月一日に実施して、七%なのかという、その数字的な根拠をきちっと示してください。

○藤井大蔵大臣 根拠と言いますか、要するに三年間というのは、これは総理言われたとおりでございます。平成六年度に大体回復の軌道に乗せる。そして、平成七年度に安定成長にもっていくという一つの経済運営、景気対策の目標がある訳でありまして、そこにある程度の余裕を持って、三年間というものをもっているということは、先ほど総理のお話のとおりです。

 また、パーセンテージについては、これもお話がありましたように、所得、資産、そして消費のバランスの移し替えという面が一つあると思います。同時に、これからの高齢社会に対応するための新しい財源、その中には年金もございましょう。あるいはまた生活環境の整備というようなもの、社会資本の整備もございましょう。そういうものを含めて、これに使っていきたいということでございます。

 − ネット増税の話なんですけれども、税調の答申には、ネット増税をするという意見と、もう一つは、歳入処理のレベニュー・ニュートラルという意見の両論併記あったと思うんです。それがこの現在の政府の議論の中で、一つのネット増税の方にシフトしていったと、そういうふうに見えるんですけれども、そこら辺りは何故こういうふうに変わっていったのか、そして、ここのところはどう説明するのか。

○藤井大蔵大臣 変わっていった訳ではない訳でございます。さっき申し上げたように、これからの高齢化社会の中で、福祉の部門というのは増えていく訳でこざいます{前5文字ママ}から、その対応をするというか、負担として所得だ、資産だ、そして消費だというバランスの移し替えとともに、増えていくものに対応していくという分も入っていることは事実でございます。

 − よろしいですか。