[文書名] 訪中の際の内外記者会見における細川内閣総理大臣の冒頭発言
一、今般、李鵬総理のお招きにより中国を訪問し、同総理及び江沢民国家主席をはじめとする中国側指導者と率直かつ有意義な意見交換を行うことができました。私は総理就任以来、可能な限り早期に訪中したいとの希望を有しておりましたが、この度実現の運びとなったことを嬉しく思います。暖かくお迎えいただいた李鵬総理をはじめとする中国側関係者の皆様にまずもって御礼を申し上げたいと思います。
二、私は、日中関係を我が国外交の最も重要な柱の一つとして重視しております。日中関係は、国交正常化二十周年、平和友好条約締結十五周年を経て、新たな階段に入り良好に発展を続けております。この間、天皇皇后両陛下の御訪中も実現したことは御承知のとおりです。私は、新たな階段に入った日中関係を二十一世紀に向けて、未来志向の関係、世界に貢献する関係へと更に発展させるために、中国側指導者と率直な意見交換を行い、両国間の協力関係を強化していくことを確認し合ったところです。
三、日中両国関係については多くの側面に触れましたが、中国の改革・開放政策は、中国のみならず、この地域の平和と繁栄にも寄与するものであり、我が国としては中国の努力に対し可能な限りの支援を行っていきたいと思います。第四次円借款供与や中国のガット参加についても同様の観点から引き続き協力していきたいと考えています。
れとして意義深いと思います。{前14文字ママ}
四、また、経済関係については、近年、貿易・投資ともに大幅な拡大を見ていることは大変喜ばしく、前途洋々たるものがあります。今後とも経済関係が更に発展するよう、日中双方ともに努力をすることを確認し合いました。
五、文化・青年交流の分野で日中の協力を促進していく必要性が確認されました。この関係で、日中交流史の重要な舞台となった唐の都長安の含元殿{前3文字ガンゲンデンとルビ}保存のため日中が協力することになりましたが、本件協力は、日中文化協力の象徴として共同で実施する保存事業に相応しいものであると思います。
六、今回の会談を通じ、世界の平和と繁栄のために、日中両国が協力し積極的に貢献していくことを確認しました。具体的には、北朝鮮の核兵器開発問題、アジア・太平洋地域協力、軍備管理・軍縮更に軍事動向等の問題、人権問題についても率直な意見交換を行うことができました。
北朝鮮の核兵器開発問題については、私より、最近実施されたIAEAによる査察が不十分であったことや、南北実務者接触が不調に終わったことなどに関し強い懸念を有している旨申し上げました。本問題は、北東アジアの安全保障に関わる重大な問題であることにつき日中間の認識は一致しておりますし、今後とも両国がこの問題の解決のために緊密に連絡していくことの重要性を改めて確認できたと思います。
七、最後になりますが、私は、昨年八月、就任直後の所信表明演説において、過去を直視するとの立場に立って私の気持ちを申し上げましたが、今次会談においても江沢民主席、李鵬総理にこうした過去への反省の上に立って未来志向の中国との関係を一層育んでいきたいとの考えを伝えました。このような考えをもって今後とも日中関係の発展のために努力していきたいと思います。
八、今回は短い滞在でしたが、中国の大きな変化、国民の自信に溢れる姿に接し大変印象深い訪問となりました。明日は上海に立ち寄り、中国の改革・開放を象徴する浦東地区を視察できることを楽しみにしております。
{出典第七項には「志向の中国との関係を一層育んでいきたいとの考えを伝えました。このような考えをもって今後とも日中関係の発」まで重複して印刷されているが誤植とみられるので削除した。}