[文書名] 辞意表明に当たっての細川内閣総理大臣の記者会見
私は,ただ今、連立与党各党党首、代表者会議その後の引き続き開かれた臨時閣議におきまして、総理の職を辞する旨申し上げ、御了承を頂いてまいりました。
昨年の八月の就任以来、過去の問題に対する気持ちの表明、政治改革、UR、幾度かの経済対策と規制緩和、日米協議など多くの課題と取組んでまいりました。
自民党政権下で成し得なかった幾つかの改革を成し遂げ、また我が国の将来に向けて、懸案の税制改革や年金改革、地方分権や情報公開なども年内に取りまとめ、あるいは成果を得るということで、その道筋をつけることができたということは私にとって望外の喜びであり、ここに改めて、国民の皆様方の御理解と御助力に感謝申し上げる次第であります。
ただ、私にとって残念なことは、新しい時代に向けての思い切った教育改革や行政改革に向けての本格的な取組み、あるいは軍縮に向けての我が国の積極的きな{前5文字ママ}役割、例えば通常兵器に関する国連の軍備登録制度の充実に向けての我が国としての努力、環境問題のいまや象徴として残されている水俣病問題の解決など、まさにこれから手をつけようとしていた課題に手がつけられなかったことは、誠に残念なことだと思っております。
この八ヶ月間休む間もなく、日夜内外の課題に追われ続けてきましたが、私は冒頭に申し上げたように私の進退について、その決意をつい先刻表明させて頂きました。
なぜそのようにここで決意するに至ったのか、国民生活に深い関わりのある予算委員会の審議がこう着状態に陥っているという事態は、誠に由々しき事態でありますし、私個人の問題が、たとえそれが政争の具であろうとなかろうと、現実に審議の障害になっていることも事実でございます。
私としては、真実について現時点で解明できたことすべて率直に申し上げなければなりません。
まず、私の佐川からの借入の問題でありますが、この点につきましては、国会に提出した資料のとおり、一億円を借入し、これを間違いなく完済いたしております。
その利息については、事務所と佐川側の合意により、旧佐川各社からの政治献金として処理していたことが昨日事務所の報告により判明いたしました。その分は、政治資金規正法にのっとって適正に処理していたということであり、限度額を超えるものは、収支報告書で報告いたしておるとのことであります。またNTT株の問題については、既に申し上げてきたとおり、義父が自ら購入し、その投資に深山元秘書が関与していたことであって、売却代金が事務所の口座を通って義父の方に入ったということもあったようでありますが、基本的に問題があるということではないとそう受け止めております。
ただ、これら一連の問題について、私なりに疑いを解いて頂くべく事実の解明に努めてきた中で、それとは違う新たな問題が判明いたしました。それは、昭和五十六年頃から数年間にわたり、私の事務所が、私個人の資金五百万〜三千万をある人に任せて運用し、利益を得ていた疑いが出てきたということであります。ある人というのは私の古くからの友人で、確実で有利な運用なので任せてほしいとのことでしたが、その運用に法的に問題があったことも判明いたしました。調査がまだ完全にできておりませんし、現段階でこれ以上申し上げることは出来ないのですが、自ら襟を正さなければならない政治の最高指導者が、随分前の話とはいえ、又細部については事務所に任せていたこととはいえ、やはりこれは私自身がその道義的責任を負うべきものであると判断したところであります。こうした事実と国会が空転している政治的責任を考えて本日ここに総理の職を辞する決心をいたしました。
予算の一刻も早い成立をはじめ、内外に我が国の命運を左右する重大問題が山積し、いささかも政治の停滞が許されない現下の状況において、このような形で進退を決することは、国民の皆様方にただただ申し訳ないかぎりでありますが、願わくば、私のこの行動が国民の政治に対する信頼をなにがしかでも回復することにつながるならばと心からそう希っております。
私は、以上申し上げたようなわけで、総理の職を辞することにいたしましたが、諸々の改革はまだ全て途上であります。私自身立場は変わりますが、引き続き改革の灯を燃やし続けていこうとそう固く心に誓っております。改革を支援して頂いた国民の皆様方に、このような形で辞任することになりましたことを重ねてお詫びを申し上げますとともに、この上とも格段の御理解を賜りますよう心よりお願い申し上げます。