[文書名] 村山内閣総理大臣就任に当たっての記者会見
○総理 どうも皆さん、御苦労さんです。
総理に就任して二日目であります。正確に言いますと、まだ二十四時間経っていないんです。毎日、仕事をいろいろ片をつけていく過程に、ああ、やっぱり総理というのは大変なもんだなという責任の重さを今ひしひしと感じています。
今日は就任して第一回目の記者会見でありますから、どうぞよろしくお願いいたします。
昨日、総理に就任してからの談話も発表いたしておりますけれども、これからまた皆さんの御質問にもお答えしたいと思いますが、何よりも、これまで私ども連立政権に参加をしてまいりました経験を十分踏まえて、それに学びながら、反省すべき点は反省し、これから連立政権を維持していく訳ですから、直すべき点は直して、本当の意味で国民の皆さんの期待に応え得る、出来るだけ透明度の高い、民主的な思想というものを大事にしながら、この連立政権を安定したものに作り上げていくと。そして、国内外の課題に対応していくということが何よりも大事だというふうに思っております。
突然と言っては語弊がありますけれども、社会党を首班とする内閣が出来たものですから、内外ともに不安が多く渦巻いているのではないかというふうな気もいたしますので、そういう不安を解消して、信頼され、安心してもらえる、そういう内閣を作っていくためにこれからも一層努力をしていきたいと思っておりますから、どうぞよろしくお願いいたします。
−−それでは、総理大臣御就任おめでとうございます。
さっそく内閣記者会との就任記者会見を行いたいと思いますが、まず幹事社の共同通信と中日新聞が概括的な質問をして、その後各社から随時質問すると。
時間は一時間と非常に限られておりますので、お答えは、非常に恐縮でありますが、端的にお願いいたしたいと思います。
さて、内閣記者会は、この一年間に村山総理を含めて既に三人目の就任記者会見をやると、大変異常な事態が続いていると。新政権に対しては、早くも野合批判、あるいは自民党と連立を組んだのはおかしいのではないかという批判がありますが、この野合批判にどうお答えになるのか。
また、国民に安心してもらえる内閣と、総理御自身も今おっしゃられましたが、具体的にこの政権の目標、使命、これをどこに置いておられるのか、この点からまずお伺いしたいと思います。
○総理 まあ、羽田前内閣が総辞職をされて、どういう枠組みで新しい連立政権を作っていくかということで、それぞれ各党思惑の中に動きがあった訳です。いろんな経過がございましたけれども、国会の会期末二十九日を控えて、こういう事態で会期延長をやって、いたずらに空白が続くことは好ましいことではないと。したがって、何としても、会期内に首班指名選挙を終えて、新しい内閣が発足出来るようにするのが、各党の責任ではないか。こういうことについては、それで一致をしておった訳ですから、したがって、余り決定的な話のつかないままに首班指名選挙に望んだという経過もあったと思います。
しかし、社会党と新党さきがけとは、それ以前から政策的な詰め合わせもして合意をいたしておりました。したがって、新党さきがけと社会党と共同の合意案というものを各党に提示をしておった訳です。
それに対して自民党の方からは、おおむねこの覚え書きで結構ですと、こういう回答もいただいておりましたが、取り分け社会党の場合には、何としても連立政権を更に新しいものを作っていきたいと、こういう気持ちがございまして、連立与党との話し合いも進めてまいりましたけれども、ついに時間切れで話しがまとまらないままに終わったと。こういう経過がある訳です。
したがって、私は今、御指摘のありましたように、今度新しく出来た自民党と社会党と新党さきがけが連立を組んでおる。これを決して野合だとは思っていません。これは飽くまでも政策を前提にして作られた政権だというふうに思っています。
連立政権というのは皆さん御案内のように、もともと理念や政策の違う者が寄り集まって作っている訳ですから、理念が違うから一緒になれないというのであれば、昨年来やってまいりました連立政権も成立出来なかったはずなんです。
したがって、理念や政策は違うけれども、当面の課題について、虚心に話し合って合意を求めていくと。その合意の上にこの政権が支えられておると。これを私は連立政権だと思うんです。
そんな意味から申し上げますと、国民の多様な意見が反映されて、そして合意点を生み出していくという意味では、やり方によってはむしろ連立政権の方が好ましいと、こういう評価さえある訳ですから、そういう実が上がるような連立政権を作っていくためには、出来るだけ虚心に信頼を持って話し合うということが大事ですしね。
しかも、その話し合いの経過というものも、国民の皆様方の目の前にさらけ出して、そして、場合によれば透明度を高めて、国民の皆さんとともに物を考えながら結論を出していくということも必要だと思うんです。そういうことを虚心に話し合う中から、お互いの信頼と緊密度も高まっていくと。
信頼と緊密度が高まっていけば、一層連立政権の基盤というものが強化されて安定されていくと。こういう心掛けでやっていく必要があるのではないかというふうに考えています。
−−野合批判にまた関連する訳でありますが、社会党は憲法擁護を掲げて、自民党は憲法改正を党是とすると。この基本的な違いがあると思います。
更に、日米安全保障条約を軸にした防衛、安保に関連して自衛隊の問題、こういう問題が具体的な政策の中で食い違いが生じてくるのではないかという懸念が指摘されてる訳でありますが、この自民党との調整を今後どうされていくのかというところをお伺いしたいと思います。
○総理 先ほど申しましたように、新しい連立政権樹立に関する合意事項というものの中には、憲法の理念を尊重するということもちゃんと入っている訳ですから、そのことも前提に踏まえて連立政権は作られておる。その限りにおいては、私はそごを来さないというふうに思っております。
それから、自衛隊等についての見解というのは、これは自民党と社会党とは違う点があると思います。しかし、現実の自衛隊に対してどう対応していくかということについては、話し合って合意を求めていけば、必ずしも合意出来ないものではないかというふうに私は思うんです。
それは何故かと申しますと、今、自衛隊の問題については、防衛の懇談会が持たれておりまして、そこで議論をされています。その結論も勿論尊重しなきゃならぬと思いますけれども、全体の国際情勢の動向というものをにらみながら、日本の自衛隊、防衛力というものはどうあるべきかということを虚心に話し合えば、政策的には私は合意は出来ると思うんです。今、こういう時代になってまいりまして、自民党と社会党と話し合えば、それほど大きな政策の食い違いは出ないと、こう私は思っていますし、これまでも、先ほど申しましたように、昨年来八か月間、新生党等も含めて連立政権を組んできたんですから、やれてきたんですから、ですから、私はそれほど心配はいたしておりません。
−−ところで、内政面の重要課題としては、前政権からの積み残しとして、新選挙制度の区割り法案の処理の問題があると思いますが、この区割り法案の提出時期、及び成立の目途、更に周知期間をどうされるのか、そして、現行中選挙区制度での解散総選挙を村山政権はねらっているのではないかといううがった見方もある訳ですが、この中選挙区制度での解散について御見解をお伺いしたいと思います。
○総理 いろいろ誤解もあったと思いますけれども、私はこういう言い方をしていたんです、まだ総理になる前ですね。羽田政権が極めて少数の不安定政権である。この不安定政権では、当面する内外の重要な課題に対応し切れないのではないかと。そこで、安定政権を作る必要があるから、やはり自ら総辞職をすることの方がいいのではないかと、こういうような必要性もありました。
羽田政権が、これは内閣が解散権を持っている訳ですから、したがって、今、小選挙区制度が法案化されて、区割りさえ出来れば、あとは小選挙区で選挙することになる訳です。しかし、想定してみて、やはり秋ごろまで掛かるのではないかということになりますと、相当な期間がある訳です。その期間の中で、仮に羽田内閣が行き詰まって、解散で信を問うて出直す以外にないと言って、内閣が解散権を行使されれば、まだ区割りが出来ておらないから、選挙は出来ないんだという筋合いのものではないかもしれない。そのときには、今の中選挙区で総選挙をせざるを得ないだろうと。こういうような意見を申し上げていたんです。
だから、何もこっちが中選挙区制の方がいいから、中選挙区でやりたいという気持ちを表明したものではないんです。その点はひとつ誤解のないように御理解を願っておきたいと思うんです。
私たちはもともと小選挙区制度というものに賛成をしてきた訳ですから、法案を適している訳ですから、ですから、今、区割りの審議会で区割り案を作るために議論をしてもらっている訳ですが、この審議会というのは、飽くまでも中立であって、これを政治的に対応して急がしたり、あるいは遅らせたりしてはならぬものである。この審議会に可能な限り、公平、公正な案を作っていただいて、それが法案化されて国会に提出されれば、国会の方では速やかに慎重な審議をしていただいて、そして一日も早く成立を図っていくというのは当然のことだと考えています。
−−税制改革について少しお聞きしたいんですが、前内閣では、今年中の法案成立ということを公約にしてやってこれられましたけれども、村山総理も、その方針を踏襲されるおつもりかどうか。また、税制改革に至る道筋ですね。新閣僚の方の中には、増税よりも前に行政改革をしなければいけないとか、いろんな話も出ているようですが、その道筋をどう考えておられるのか。
また、消費税率の引き上げということは念頭におありになるのか。その辺のことをお伺いしたいと思います。
○総理 減税は、本年度六千億やった訳ですね。これは今のような景気の低迷の中では、景気浮揚策としても減税はやる必要があると思いますし、これはある意味では国際的な約束になっている面もある訳ですから、減税は引き続いてやるべきだということについては変わりはありません。
ただ、それ減税を求めた財源を直ちに消費税率の引き上げに結び付けていくということについては、国民の皆様も納得しないのではないかと思いますから、その間の慎重な手立てはする必要はあると思います。
そこで、一方で減税をして、一方で増税をするということについてはいろんな意見もある訳ですけれども、しかし、今の日本の財政やら、あるいはその前提財源やら、あるいは高齢化が進んでいく、この財源というものをどう賄っていくのかといったような課題も抱えているときでありますから、税制の改革というものが当面の大きな政治課題になっていることは言うまでもない訳です。
そこで、私はやっぱり税というのは納税者がある程度理解と納得をして、これはやむを得ないなと、こういう気持になっていただけるような手立てが必要ではないかと思うんです。そこで、政府も出来るだけ歳出を削減するために、思い切った行政改革もやっておると。そういう姿を国民の皆さんに理解をしてもらうと。
同時に、可能な限り公平な負担を求めていくという意味から申し上げますと、今度の減税でもやはり、所得税を中心とした、中堅サラリーマン層に一番負担が掛かっているという傾向を是正をしたいという面もある訳ですから、そういう税制の改革をやった、その範囲内で可能な限り多くの国民の皆さんに、公平な負担をしていただくということで、所得と資産と消費というものをバランスの取れた形で税体系を作り上げていこうと、こういう検討はされていると思うんです。
したがって、仮に間接税にその負担を求めていくということになれば、逆進性の解消とか、あるいは今の消費税の持っている欠陥というものも見直しをして、そして国民の皆さんが理解と納得の出来るような体系というものをしっかりと作っていくと。こういう手立てはやはり十分講じる必要はあるのではないかというふうに考えています。
そういう手立てを講ずることによって、それが年内に出来れば結構だし、若干時間が経てば、そんなに私は検討も加えて、先ほど申し上げましたように、これは負担をされる皆さんが、本当の意味で納得をし、了解をし、これはやむを得ないなと、こういう気持になって税を納めていただくということが何よりも大事ではないかというふうに思っています。
−−それでは、村山政権は一応ハト派政権という位置づけがされておりますけれども、PKO活動を今後どのように進めていかれるのか。また、凍結になっていますPKFの解除の問題ですね。これに対してはどうお考えなのか。
更に、羽田政権ではかなり積極姿勢を示されておりました国連の安全保障理事会、常任理事国入りに対するお考えについてお聞かせいただきたいと思います。
○総理 PKOにつきましては、これは先般カンボジアにも派遣されたり、アンゴラやモザンビークにも派遣された実績がある訳です。私は飽くまでもPKO法の前提というものをしっかり踏まえた上で、飽くまでも武力にわたらない、その憲法の許容する範囲というものをしっかり守った上で、大いに国際貢献に努めていくというのは当然でありますから、そうした経験に照らして、大いに国際貢献は推進をしていきたいというふうに思っています。
ただ、さっき言いましたように、平和憲法を持っている日本の国というものは、おのずから制約がある訳でありますから、飽くまでも憲法が許容する範囲内という枠はしっかり守っていく必要があるというふうに思います。
あとの質問は何だったですか。
−−PKFと安全保障理事会の常任理事国入りです。
○総理 PKFは、これはまだまだ私どもは許容する範囲には入っていないというふうに思います。
それから、安全保障理事国入りの問題につきましては、これはもう国連が創設された当時から見れば、加盟国も相当増えている訳ですから、出来るだけ各加盟国の声が反映されるような民主的運営が出来るような改革を進めていく必要があるのではないかというふうにも思いますし、同時に、人権問題やら、環境問題やら、国際的に果たさなきゃならぬ課題というものも出来てくる訳でありますから、そういうことも含めて、十分国連が機能的な役割が果たせるようなものに改革していくということも大事なことではないかと。
そういう場面を積極的に推進をしながら、アジアの国々の皆さんからも理解をされて、そして理事国入りが出来ると、こういう努力をやはり私はやるべきであるというふうに思っています。
ですから、ある意味では自然な形で、もう日本の国が安全保障理事国になることは当然だというような状況を作りながら、私はその役割を果たしていく必要があると思っていますから、積極的に日本の国が安全保障理事国に入るために工作をするとか、そんなことはしない方がいいのではないかと思います。
−−それでは、幹事社から最後の質問になりますが、来年、戦後五十年ということでもありまして、村山総理に改めて先の大戦への認識をお聞きしたいと思います。
○総理 これは細川総理も、あるいは羽田総理も語っておりましたけれども、あれだけ大きな惨禍をもたらした日本の責任というものは十分謙虚に反省する必要があると。当然だと思います。その反省を踏まえた上で、日本の国がどうすればそうした国々からもっと信頼される国になり得るかということも真剣に考えて取り組んでいく必要があるのではないかというふうに思います。
−−それでは、幹事社からの質問は終わりますので、質問をどうぞ。
−−区割り法案と関係ないんですが、総理御自身としては、区割り法の成立の目途をいつごろというふうに御認識されていらっしゃいますか。
○総理 先ほど申しましたように、区割りを確定する審議会で今、検討してもらっていますからね。そこで一応案が出来ればそれを法律にして国会に提出するという段取りになる訳ですね。まあ、秋口にもし臨時国会が想定されるとすれば、その時期ぐらいに法案の提出はなっていくんではないかというふうに思っています。
−−自民、社会、さきがけの三党首会談では、政治改革の完結ということを目指すということを確認されていると思うんですが、この区割り法の成立というのは村山内閣の公約と位置づけられていると理解してよろしいんでしょうか。
○総理 いや、これは三党の合意事項の中にも明記されておりますから。ですから、私どもは政治改革に消極的ではないんですよ。これはもう積極的に政治改革は進める必要がある。ただ、区割り法案を策定する審議会に政治的な配慮で急がしたり遅らせたりするようなことはしてはならない。飽くまでも中立性を保障して、そして公平、公正な案を出していく。案が出来たらそれを速やかに政府は法律化して、法案化して、国会に提出する運びにしたいと。そして一日も早く審議をやっていただいて、成立を図ってもらいたいというのはこれは当然ですからね。
同時に、まだまだ腐敗防止等についても中途半端に終わっているところがありますから、更にお互いの審議を深めて、そしてもっと腐敗防止を徹底させて、政治に対する信頼を回復していくと。あるいはまた、国会改革も進めていくというふうなことについて積極的に取り組んで推進をしていきたいというふうに思いますから、決して政治改革に今の連立政権が消極的であるというふうに御理解があるとするならば、それはこの際改めていただきたいというふうに思います。
−−総理は指名された直後だと思いますが、常識的には次の選挙は新制度でと、常識的にはとおっしゃいましたけれども、それは次の総選挙を新しい制度でやるということを確約していない訳ですけれども、そこは首長の解散権とかという絡みの部分であって、もうほとんど考えは確約と言っていいぐらい新制度でやるというおつもりなんですか。
○総理 そういうことですね。今のこの状況から考えた場合に、もうそういう事態というのは想定されませんから、当然新しい小選挙区制度の下で選挙はやられるものだというふうに思います。
−−常任理事国入りの問題で、総理は常任理事国の機能を見直したり、アジアの国々の理解を得てというふうに、結構今までの人に比べて慎重な見方をされていると思うんですが、これまでこの一年間の間でいろいろな形でどんどん進んだ発言が、柿沢外務大臣の日独がなるべきだという発言をしちゃったり、国連大使とかそういう外務官僚の方がどんどん進めたような言い方をされている訳で、それをそうじゃないよ、目指すところはそういうんじゃないような変更、変わった姿勢をどういうふうに諸外国に見せていくかと。
○総理 決して常任理事国になることに消極的になっているというふうに思われると困りますけれどもね。そんなことじゃないんですよ。そうでなくて、これだけ経済的に力を持った国になった訳ですし、国際的にも影響の大きい存在になった訳ですから、そういう意味で、その力量に見合った形で国際的な役割を果たせるようなポストに就くということも当然私は想定されたと思いますね。
しかし、それは何も積極的に日本が買って出るというようものではなくて、本当の意味で客観的な条件も出来て、そしてどこの国からも日本の国が常任理事国になるのは当然だというような姿を作っていくことが必要ではないかというふうに思っていますから、そんな意味では、何も腰を引いたとか、後ろ向きになっているとかというんではなくて、誤解のないように御理解を願っておきたいと思うんですね。日本の国に見合った国際貢献が果たせるようなことは積極的にやらせていただきますということについては変わりはない訳ですからね。
−−常任理事国になることに伴う軍事的な負担ということはお気にかけられない訳ですか。
○総理 ですからそういうこともですね、常任理事国になったことによって日本国の憲法が全然無視をされて、そして何もかもやらなきゃならぬという責任だけの負担が大きくなると。こんなことであってやはりそれはいかぬ訳です。そこらの点も十分お互いに踏まえた上で、国民が納得出来るような道筋というものをしっかり明らかにして対応していく必要があるというふうには思いますよ。
−−北朝鮮の対応の関連なんですが、社会党と言えばやはり朝鮮労働党といろんな密接な友好な関係にある。これが、核開発問題の支障にならないかどうかという懸念も一方にある訳ですね。特に事態が進展すれば国連で科学技術協力の停止とか、文化・技術の交流の停止とか、事態については早急に停止、あるいは海外阻止行動という事態が想定されるんですが、このときに本当に足並みがそろうのかどうか、国際社会の中で。
更に、国連との関係ですが、アメリカ、韓国、それから北朝鮮とのスンタス{前4文字ママ}をどうバランスを取っていかれるおつもりか。
○総理 北朝鮮の核問題については、話し合いで飽くまでも解決すべきものだという方針というのは変わりありません。これはどこの国も同じだと思うんです。幸いに米朝会談も再開される運びになりましたし、それから北と韓国との首脳会談も持たれるということになっておりますから、そういう話し合いの場というものを十分活用して、そして話し合いで解決出来る道筋をお互いに求めて解決していくということは大事なことだと思いますから、それは見守っていきたいと思うんです。
今朝、韓国の大統領と電話でお話をいたしました。これは日本と韓国との関係というものは大変緊密な関係にある訳ですし、この緊密な関係というものを維持しながらお互いに協調し合って、そして北朝鮮の核問題に対応していこうということについてはお互いに合意をされておりますから、これからもそういう協調関係というものを維持してやっていきましょうということについては、電話で話し合いをしたところなんです。
北朝鮮の朝鮮労働党と日本社会党との関係はございましたが、これは飽くまでも党と党との関係ですから、それはそれなりに私は果たす役割があるんなら果たしてほしいというふうに思っています。
ただ、政府としては、これまでもやってきた経過がある訳ですから、これまでやった経過も十分尊重しながら北朝鮮に対しても、韓国に対しても対応していきたいと。その方針については変わりはないというふうに申し上げておきたいと思います。
−−PKOの問題ですが、法案の採決に対しまして総理はじめ社会党議員の方が反対されたり、もしくは議員を辞職されたという過去の経緯があった訳ですが、その総理が今度自衛隊の最高指揮官になる。
○総理 最高指揮官じゃないです。
−−なるということですが、そのことについてどう考えられていますか。過去のことと。
○総理 いや、それは法案を作るときにはやはりこれはそういう法律は出来ない方がいいと思って社会党は反対していた訳ですよ。だけど、もう法律が出来た訳ですから、しかももう、さっき申し上げましたように、実績はそれぞれ積んできている訳ですから、その実績に照らして、憲法の許容する範囲内で国際貢献が成し得る範囲のことは大いにやらなきゃならぬというふうに思っています。あのときに反対したから今でも反対かという立場ではないということは御理解願っておきたいと思います。
−−税制についてですけれども、先ほどのお話を伺っていますと、何かもう年内の成案というのは何か半ば諦めたような印象さえ受ける訳ですけれども、今後、具体的にどういう段取りで改革を進めていこうとされているのか。羽田政権のときは六月末に税制改革案を作るということで進んできた訳ですけれども、これからどういう形で、いつごろを目途に物事を進めていくのか。年内の作業の日程、段取りというふうなことをどうお考えなのか。それを伺いたいんです。
○総理 政府税調の答申も出ておりますから、その答申も勿論尊重しなければなりません。したがって、これから鋭意税制改革の問題について与党内部で議論もしていただくと。政府も取り組んでいくと。こういう体制の中で、年内に可能な限り成立を求めて努力していくということについては変わりはありません。
−−総理大臣、ロシアとの関係について答えていただきたいんですが、日本が短い期間に三度の政権交替を迎えましたが、こういう政権不安定はロシアとの関係に悪影響を与えるとお考えになりませんか。
それとも、先にロシアと日本の政府の間に、総理大臣のロシアへの訪問について今年の間に訪問も実現するという合意がされていますが、羽田と細川両首相は、首相在任中に実現することが出来なくなりましたけれども、村山首相はロシアへ訪問される御予定、あるいは御意向がございますか。
○総理 これは対ロシアだけの問題でなくて、やはり日本の政府が不安定な状況にあるということは、ある意味では世界の国々に不安を与えるということもございますから、決していいことではないと。可能な限り一日も早く安定した政権にしていく必要があるというのは当然なことだと思います。
それからロシアに対する訪問については今のところまだ日程はございませんけれども、それもまた検討していただいて、効果的に必要な時期が来れば検討したいというふうに思います。
−−戦後補償の問題なんですが、社会党は個人補償すべきだという立場である。これに対して政府、それから自民党もそうですけれども、個人補償は要するに法律で片がついているんですからそれはすべきでないという立場。総理大臣になられたんですが、これについてはどういうふうに対応していこうと思ってますか。
○総理 国と国との戦後補償というのは、これはもう全部片がついている訳です。ですけれども、個人的なこの問題についてはまだ訴訟もされておる段階がありますから、したがってそれは裁判で判決が出れば、その判決は尊重しなきゃならぬというふうに思います。
それから、そういう意味の戦後補償で、当然していかなきゃならない必要なものはやはり検討しなきゃならぬと思いますけれども、しかし、それが個人個人に対する補償になるのか、あるいは、全体としてこれまでのやった償いをどういう形でしていくかということについては大いにやはり検討しなきゃならぬ課題だと思います。
ですから、将来に向けて何らかの償いが出来るんなら、それも一つの方法ではないかというふうに思いますから、その償いの仕方については更に慎重な検討は必要ではないかと、私はそう思います。しかし、償いしなくてもいいものだというようなことは全然考えていません。
−−社会党から入閣された浜本労働大臣が、自衛隊の海外派遺には賛成しかねるという見解を述べられましたけれども、この発言について総理としてはどう思われるのか。特に社会党の中で自衛隊についての違憲、合憲問題ですね。違憲かどうかという見解については今どのようにお考えですか。
○総理 これはいろいろ意見もあると思いますけれども、これまで取った政府の統一見解は明らかでありますし、私はその問題について自衛隊を今後どういうふうに位置づけていくかということについては大いに議論しなきゃならぬと思いますよ。その限りにおいては、お互いに議論していけば、現実にどう対応するかということについての意見一致は、自民党、社会党、新党さきがけの間で十分可能だというふうに思っていますから、そういう視点で考えていく必要があるというふうに思っています。
それから、労働大臣がPKOの派遣に反対と言ったのは、自衛隊の軍事行動にわたるような、そういう内容のものについての派遣は反対だというふうに申し上げたんだというふうに受け止めています。
−−憲法と自衛隊との関係についてはたな上げするということですか。
○総理 現実に法律に基づいて自衛隊というのは存在しているんですよ。この自衛隊という存在を無視して政治は出来ませんよ。ですから、合法的に存在しておると思われるこの自衛隊に対してどう対応していくかというのが政策の問題ですし、政治の問題ですから、それは大いに議論もし、検討もし、やっていかなきゃならぬというふうに私は思っていますから。そういう理解をしてほしいと思います。
−−総理は先ほど、つまり内外に不安感が芽生えていると。それを解消していきたいというふうにおっしゃいましたけれども、現実にすさまじい不安感が生じていると思うんです。
例えば米国のクリストファー国務長官などは、異常な政権であると。つまり考え方の違う者が一緒になって作った政権は異常だということまで発言している訳です。総理自身は一体社会党の首相のどういうところが不安感を内外に与えることになっているのか、率直に実感をお尋ねしたいんです。その上でどうやって内外の不安感を解消されようとしているのか。率直に総理の実感をお尋ねしたいんですが。
○総理 これは単に諸外国にそういう不安を与えているという訳ではなくて、率直に申し上げまして、国民の中にもそういう不安が強いんだろうと思いますよ。ですから、最近の内閣発足したときの支持率を見ますと、これまでの水準から見ると大変低いですよね。低い原因は、今まであれだけ敵対してきた自民党と社会党が一緒にやってうまくいくんであろうかと。こういう意味の不安はやはりあるんじゃないかと思うんです。ですから、それはこれからの実績によってその不安は解消出来るものだし、しなきゃならぬというふうに思っています。
それから、今朝、韓国の大統領とアメリ力のクリントン大統領との電話で二十分近く話をいたしました。やはりこれまでずっと自民党の政権が続き、言うならば保守党が主導権を握った連立政権できた。今度こういう状況の中でいきなり社会党の首班内閣が出来たと。この社会党の首班内閣は対外政策、外交路線はどう変わっていくんであろうかと。これまでのようにうまくいくんだろうかと。こういう意味の不安を抱かれることは、ある意味ではやむを得ないんじゃないかというふうに思いますから、今日は電話ではありましたけれども、これまで取ってきた日本政府の外交上の考え方、路線についてはいささかも変更はございませんと。飽くまでも国際的な協調を深める、取り分け日米関係というのはやはり国際的にも与える影響は大きい訳です。したがって、その協調路線を大事にしていきたいと思いますという話をしました。
−−内閣の一般の認識というのは、社会党がつまり冷戦構造の中で、東側ですね、社会主義、共産主義陣営に軸足を置いていたということがやはり誤解の大きな、しかも社会主義経済を指向されていたということが大きな不安感の、端的に言って大きな原因だろうと思うんです。
そうしますと、今後その辺を国民に分かりやすく、一体社会主義といいますか、共産主義といいますか、そういうものとの尾っぽをどうやって切っていくのか。言わば西側の自由主義の流れの中にどういうふうに入ろうとされているのかお答えいただきたいと思います。
○総理 そういう質問をいただくのは意外だなと思いましたけれどもね。もう社会党は随分変わっていますよ。そういう社会主義という言葉は、もう社会党の綱領の中にも、運動方針の中にもないんですから。ですから、社会党は逸早く世界の情勢の変化に対応して、新しく脱皮をして、新しい時代に対応出来るスタイルにせにゃいかぬというんで、随分変わってきておりますから。もし、そういう御理解があるとするのならば、この際改めていただきたいというふうに思います。
−−自民党と社会党の協力による政権ですけれども、いずれ選挙ということになりますと、例えば次の衆議院選挙、あるいは来年夏の参議院選挙ということになると、各選挙区で自民党、社会党がぶつかり合っていますね。そうしますと、この連立政権も選挙を闘うと破綻していくんじゃないかといった見方もあるんですよね。今後の自民党と社会党の問で例えば選挙協力、侯補者調整といった問題まで踏み込むような決意がおありかどうか、まずこの点をお伺いします。
○総理 これは、私はこれまでずっと言い続けてきましたけれども、自民党と社会党という三十八年間続いてきた、この姿勢というもの、この姿というものを前提に想定してこれから先のものを考えていきますと、そういう議論も起きると思います。
しかし、そうでなくて、今は変革の時期ですから、自民党も変わるんですよ。第一、三十八年間続いてきた自民党が二百六の議席を持っておって、七十四しか持っていない社会党の委員長を首班指名にするなんていうことは、これはよほどのことがなきゃ出来ないと思います。それはやはり、自民党も変わろうと、変えなきゃいかぬということの表れだと思うんです。そういうふうにして自民党も同様に変わっていくと。社会党も変わっていくと。そして、変わっていく姿の中で、協力出来るところはお互いに協力し合っていくという姿が生まれてくるのはこれは当然です。
ですから、これはこれから先の政局の展望にも絡んでまいりますから、各党がそうして変わっていく中で、新しい連立の枠組みは作らなきゃいかぬというふうに思いますから、そういう事態を想定しながら、多様な選挙協力は行うべきであるというふうに思いますから、これからはそういうことを前提にして、弾力的な多様な選挙協力を考えていいのではないかというように思います。
ですから、自民党と社会党はこれまで対立関係にあったと。これからも永遠に対立するものだというふうに考えていくことは誤りではないか。
−−村山内閣で連立の枠組みが変わることもあり得るということですか。
○総理 そうじゃないです。そんなことは言っていないです。先々の問題でね、将来の問題でね。
−−自衛隊に関して、自衛隊は現実に存在すると、私の聞き違いでなければ、違憲合法的に存在するということをおっしゃったと思うんですが、それは飽くまで総理としての御見解ですか。
○総理 違憲合法的存在という言葉も私は使っていないんですけれども、政治をつかさどる者として、今、存在する自衛隊を国際情勢の中でどのように位置づけて、どういうふうに改変、改組していく必要があるかといったような問題を議論するとすれば、それは当然政治の問題だし、政策の問題ですから、大いにやろうじゃありませんかと。現に、今懇談会で審議もしてもらっている訳ですから、そういう審議の経過も踏まえて、私はやはり慎重に、与党内部でも議論してほしいと思いますね。政府部内でも議論して、そしてやっていかなければならない課題ではないかというふうに受け止めております、ということを申し上げた訳です。
−−総理、今までのお話を伺っていますと、社会党の今までと過去と今とは必ずしも同じではなくて変わってきていると、PKO法に対する考え方もかつて反対であったが今は反対という訳ではないと、そういうふうにおっしゃっていきますと、今おっしゃっていることもこれから先また変わっていってしまうのではないかという不安を覚えてしまうんですけれども、そのときに村山内閣として軸として考えていらっしゃる点はどういうことなのでしょうか。
○総理 PKOは当時反対したけれども、今は賛成だというふうに短絡的に取られると困るんですよ。PKOに反対したというのは、武装された自衛隊が、自衛隊として海外に派遺されるということについては我々は了解出来ませんと、だから反対ですと。非軍事、文民民政という言葉を使っていましたけれども、そういう役割を担って国際貢献をすることは大いに結構だと、だから、出来れば自衛隊とは別にしたところで使っていくと、こういう意見を申し上げてきた訳です。
多数でもってPKO法案が通って成立して、今はPKO法というのが存在している訳ですから、そのPKO法の中で、これから国際貢献をしていくときに、やはり社会党が主張した分野というものは、一つの歯止めとして十分考えてほしいし、考えていかなきゃならぬ問題だと、その憲法の許す許容の範囲内で国際貢献をしていくことについては、むしろ積極的にやるべきであるという受け止め方をしていますから、そういうふうに御理解をしてほしいと思うんです。
だから、これからまた変わっていくのかと言われると、これからどういうふうに世の中が変わっていくのか分かりませんけれども、今、ここでこうなった場合にはこうなるんですか、ああなるんですかということを想定して言っても仕方がありませんから、現時点ではそういう判断をしております。
というのは、PKFに踏み込んでいくことについては、政府としては考えていませんということを申し上げた訳です。
−−総理、衆議院の解散の時期なんですけれども、区割り法案が通ってから速かに行った方がいいと思っておられるのか、それとも、任期満了まで勤め上げた方がいいと思っておられるのか。
社会党は、ゼネコン汚職などの政界の疑惑解明に積極的にやっていくということなんですけれども、法務大臣と国家公安委員長を自民党から起用した理由というのを教えていただきたいんです。
○総理 法務大臣と国家公安委員長、自民党から出したからどうなるこうなるというものではないと思うんですね。やはり内閣の方針に基づいて法務大臣も仕事をしてもらう訳ですから、それは私は余り関係ないと思いますね。
それから、まあこれだけ緊急に解決しなければならない内外に課題を抱えているときでありますから、出来るだけ安定政権を長期的に持続をさせて、そして国民の期待に応えるのが政府の責任だというふうに思っていますから、今は解散のことなんかは考えていません、勿論。
−−今、ハト派政権といって、ハト派的な政権を打ち出そう的なお考えを出されましたけれども、自民党の中にはタカ派で大変力を持っている人たちがいる訳で、そういう方々の中でどういう形で、今後ハト派政権を目指していくのか、この辺の具体的な考えをお願いします。
○総理 先ほど申し上げましたように、新しい政権を樹立するに当たっての合意事項というのがありますね、この合意事項の路線というものは、やはりハト派的な路線だと私は受け止めています。これは社会党と新党さきがけと共同で作った案です。これをほぼ自民党の皆さんも了解していただいているというように思いますから、この合意事項を踏まえて、政府は仕事をさせてもらうということになる訳です。
自民党の中には、そういう区分けをしていいかどうか分かりませんけれども、どこにハト派と言われる人やら、またはタカ派と言われる人がいるかもしれませんよ。いるかもしれないけれども、それは社会党の中でも、俗に言われる右とか左とかあって絶えずやり合っているというようなことは言われる訳ですから、党内のそれぞれ意見のある方は、それはある意味ではやむを得ないことだと思うんです。ただ、この政権に対して、この政府に対して社会党としてどう協力が出来るのか、自民党としてどう協力をされていくのかということについては、変わりがなければ、私はその点の心配は要らないのではないかと思っています。
ですから、その違いとしてあるにしても、やはり連立政権というのは冒頭にも申し上げましたけれども、その違いを乗り越えて、お互いに合意を求めていくというところに連立政権の特色がある訳です。その特色をやはり生かしていくところに、国民の多様な意見に応えていける政権になるのではないか、というふうに思っていますから、その点はひとつも心配はいたしておりません。
−−連立政権の意思決定についてなんですけれども、昨日も閣僚の配分を見ても、ある種、民主主義を取りますと、どうしても自民党の力が大きくなってしまうんですが、過去の連立の反省というものにも通ずるんですけれども、今の連立与党の中で、どのような意思決定の機関というものを具体的に考えていらっしゃるのか。
また、国民の間で社会党政権に対する不安というのは、やはりこれまでの社会党のブレというものがあると思うんですけれども、その総理のリーダーシップというものをどのように考えていらっしゃるか聞かせてください。
○総理 連立政権を運営していく仕組み、意思決定機関とか、それは政府の場合には閣議がありますし、ちゃんと決めるところがある訳ですから、ただ、この連立政権を支えていく党の仕組みをどういうふうに作っていくかという問題については、まだ党の間で話し合いをしてもらっていると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、出来るだけ民主的に運営の出来る、透明度の高いものにしていこうと、こういう考え方については一致しておりますからね。
したがって、例えば、各党から最高の決議機関として書記長を中心に国対委員長なら国対委員長が付いて、複数でもって運営するとか、あるいは自民党が派閥を代表して総務会というのを持っていましたね。あれと同じように、公平に各党の意見が反映出来るような総務会のようなものを何とか考えて、そして、出来るだけ各党にそごが起こらないような形で運営出来るようにやる必要があるのでないかというので、今、各党間で話し合いをしてもらっています。
−−社会党の委員長としてお伺いしたいんですが、今回の総理の指名選挙に当たって社会党からも相当な数の造反者が出た訳ですけれども、この方々にどういうような対応をされるのか。中には離党をする決意を固められている方々もいらっしゃるやに聞いておりますけれども、どうされるのかということ。
今回こういう自体になった、社会党側からすれば、旧与党側が一定の激しい行動に出たためにということだろうと思うんですけれども、ああいうことをやった今の野党に対してどう思っておられて、これから政府与党としてどのような関係を築いていこうとされるのか。その二点についてお伺いします。
○総理 社会党の中に首班指名選挙で村山富市と書かなかった人が何人かおったと、これは党の決定に批判をしている訳ですから、したがって、これは党の中で慎重な議論をして、それなりの対応をしていただけるものだというふうに思っています。
それから、こういう時期ですから、出来るだけ話し合いをして、そして、党の結束を図れるような筋道はきちっと立ててほしいものだというふうに私は期待しています。
それから、これは一番の課題は、いかにして安定した、国民の皆さんから、あるいは諸外国の皆さんからも安心してもらえるような政権にしていくかということが私は大事だと思いますから、したがって、可能な限りその基盤が強化されるような方向で更に努力をしていく必要があるということが一つです。
それから、与党から野党に回った皆さん方、これは国会の運営のルールに基づいて十分話し合いを尽くしていかなければならぬものだというふうに思っていますし、日本の国のために何をするのが一番いいのかと、国民のためにどうすることが一番その期待に応えることになるのかということに向けて話し合いをすれば、私は理解と協力は得られるものだというふうに思っていますから、誠心誠意真心込めてこの政権を遂行していきたいというふうに思っています。
○司会 総理、北朝鮮との問題についてもう一回お伺いしたいんですが、話し合いで解決すべきというのは当然だとは思うんですけれども、仮に話し合いが不調に終わって、国際連合、あるいは国際社会が経済あるいはそれを超えた制裁に出ると決めた場合、日本政府としてはこれを受け入れ、その行動を取られるお考えなのでしょうか。
○総理 私はこれまで一貫して申し上げてきたのは、せっかく今米朝会談も再開をされる、南北の首脳会談も持たれるということになって、話し合いがずっと進められていく可能性が含まれてきているという状況のときに、もしこれが出来なくて、こうした場合にはこうするんだというようなことをここで議論することは、決して私は得策ではないというふうに思っていますから、飽くまでも話し合い路線というものが成功するように、あらゆる角度から協力していくということの方がむしろ今は大事なときではないかというふうに思っておりますから、そのことに深入りした話は申し上げない方がいいというふうに思っています。
−−基本政策について伺いたいんですが、日本の総理になられまして、ずっと社会党が抱えてきた問題ではあるんですけれども、国旗、国家というお話があるんですが、総理執務室には大きな日の丸が置かれている訳ですけれども、村山さんの今の率直な感想と、いわゆる国旗・国家問題についての御見解を教えてほしいんですが。
○総理 私は国旗については戦後五十年近くにもなって、そして日本の国民全体が国旗というものに対する愛着というものが非常に変わってきておる。まして、オリンピックで勝てば国旗が揚がる。そうすれば、みんな感激して拍手をする。こういう状況にある訳ですから、国旗というものはもうそういうものになっておるのではないかというふうに思いますから、今からこれを反対だ、反対だと言ってみても仕方がないのではないかという受け止め方をしています。
それから、国家についても、これは国旗ほどではないと思いますけれども、それなりにだんだん位置づけられてきております。したがって、これは別に法律で国旗・国家というものが決められている訳じゃありませんから、権力でもって強制するというようなことはよろしくない。国民感情の自然なままに扱っていけばいいのではないかと、私はそういうふうに思っています。
−−戦後保障と、それから自民党との政策合意について関連して伺いたいんですが、戦後五十年経ちまして、羽田政権あるいはその合意事項の中にも戦後五十年に関する事項というのがありまして、その中に被爆者援護法の設定に努力するという項目が入っていると思いますが、自民党はこれまで被爆者援護法には一貫して反対してきているんですけれども、どのようにして成立を図っていかれようとされているのか。その辺りを伺いたいと思います。
○総理 これは、やはり法律として制定しなきゃならぬものですから、社会党は被爆者援護法を制定すべきだという要求をしてこれまで来た訳です。それで自民党は若干消極的な態度でやってこられました。これは考え方は若干違う訳ですから、そういう問題は無理に反対を押し切って通せるものでもありませんし、ですからやはり与党間の内部で十分意見調整もしながら、それなりに実現に向けて努力をしていただくということは大事なことではないかと思いますけれども、しかし、今、申し上げましたように意見調整が出来ないままに法律の成立が図れるものでもありませんから、したがって十分政府部内においても、あるいは与党間においても議論を尽くしていただきたいというふうに思っています。
−−国会の方は、秋口の臨時国会前にも一度開いて国民に村山政権の考え方、方針というのを明かすお考えはございますか。
○総理 臨時国会がいつごろ開けるのか。これからの日程等々も見合いながら、その必要があるか、ないかというようなことについても慎重に検討させていただきたいというふうに思います。
−−秋口まで待つということはないですね。
○総理 ですから、秋口まで待つことの方がいいのか。あるいは、その間に所信表明ぐらいは行って、そして国民の皆さんにも理解を求めていただくということが大事なのか。そういう判断も含めて、慎重に検討させていただきたいというふうに思います。
−−円高ドル安が続いていることもありますし、アメリ力が求めている内需拡大を進めるためには、減税の継続とか、公共投資の上積みとか、こういうものを決める必要があるかと思うんですが、これを日米首脳会談やサミットまでに政府や政府与党としてお決めになる考えがあるのかどうかという点。
財政当局はこういうものを決めようとする場合はやはり財源問題を決着させないと、規模やその時期なども明確に出来ないという立場を取っていると思うんですが、その辺、年内に税制改革の結論を出したいとおっしゃっている。しかし、出せない可能性もあるという中でどう進めていかれるのかという総理のお考えを聞きたいんですけれども。
○総理 減税は、先ほど申し上げましたように内需拡大のためにも、あるいはまた国際的な協調のためにも必要だというふうに思っていますから、減税は継続してやりたい。その財源問題をどうするかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますような議論も踏まえて、可能な限り年内に整理出来るように努力をしていかなければならぬものだというふうに受け止めて今、鋭意努力をしているところです。
−−その点について関連ですが、公共投資計画の新十か年計画を前内閣時代に事務方が詰めてきたんですけれども、これについては将来の増税が担保出来ないと具体的に増税出来ないという声もありますが、これはサミット後に決着させるのか。それが一点。
もう一つは、昨日米国のベンツェン財務長官が、日本に対しては公定歩合の引下げというのをかなりストレートに要求しているという報道がありましたけれども、これについてはどう対応されるのか。その二点をお願いします。
○総理 公共投資については、日米構造協議の中で十年間に四百三十兆円という一応の指標が決められている訳ですね。したがって、これから更にそうした日米経済協調の問題、あるいは景気回復を図っていく問題等々がございまして、四百三十兆円という枠を更に広げる必要があるのか。
それから、公共投資の配分の仕方についても更に検討して、重点的に配分を考えていくというようなことにする必要があるのか。言うならば、質と量の両面から今、検討をしている過程であります。したがって、その検討の結論を踏まえて対応していかなければならぬというふうに思っていますが、サミットに臨むに当たって、これは日米首脳会議も持たれると思いますが、その日米首脳会議の中でもそういう問題については虚心に話し合いをして、そしてお互いの理解を一層深めていきたいというふうには思っています。今朝、クリントン大統領と電話でお話しをしたときも、そうした抱えている問題を、サミットでまたお会いすることを楽しみに虚心な話し合いが出来ることを期待していますというふうに申し上げておきました。
−−秋に批准があるウルグアイ・ラウンド合意の拡大解釈なんですが、総理が社会党委員長として、農協対策本部長として、米側は予算のシーリング枠外で対応するというふうなこと、大分疑問を持っていたと思うんですが、この辺はいかがですか。
○総理 別枠を設けるということは、財政上、予算の編成上可能であるかどうかということについては、これはまたこれから検討してもらわなければなりませんけれども、要するにウルグァイ・ラウンドどおりの調整案を受け入れて、そしてコメの部分自由化を受け入れたということがこれからの日本の農業にどういう影響を与えていくのか。日本の農業をどのような形で守っていくのか。こういう視点から判断をしてみて、そして既存の予算を更に必要なものについては増やしていく。こういう努力は大いにしていかなきゃならぬというふうに思いまず。
しかし、別枠を設けることが可能であるかどうかということについては、ねらいは要するにもっと予算を増やして、日本の農業をしっかり守ってもらえるようなものにしてほしいというところにある訳ですから、したがってその気持ちも十分踏まえた上で予算編成は行われるものだというふうに思います。
−−幹事から申し上げますけれども、時間が来ましたのであと一問ということで。
−−村山ショックのせいかもしれませんけれども、円高がまた更に一段と急速に進んでおりますが、これに対する対応ですね。現実に円高を阻止出来る対応をどういうふうに考えておられるのか、そのことを明確に伺いたいと思います。
○総理 余り為替に介入することは出来ませんし、これは大変影響が大きい訳ですからね。
ただ、どこかの新聞に、自社連立政権ができたら株は八十円ぐらいに下がるんじゃないかなどということがありましたけれども、それは私は直接影響ないと思いますよ。やはり、円高とか円安とかという為替レートの変動というものはいろいろな背景と原因があってなされるものだと思いますから、短絡的になかなか受け止められない問題だというふうに思います。
ただ、どこの国だって、それほど為替相場が変動することは好ましいことではない訳ですから、可能な限り安定されるようにしなきゃならぬというふうに思いますし、さっきも申し上げましたようにサミットもある訳ですから、そういう世界の国々で協調出来るところは協調して、そして可能な限り為替相場が安定出来る努力はしていかなければならぬものだというふうに考えています。
−−一点だけ確認したいんですが、去年来、国民の手の届かないところで政局の混乱がずっと続いてきましたね。そういう意味では、出来るだけ早い時期に、少なくとも国民に信を問う機会を作るべきだと思うんですが。
したがって、政治改革が区割り法案が成立して完結した時点で、遅くともその時点で解散選挙に踏み切るべきだとはお考えになりませんか。
○総理 そういう声のあることも十分承知をしております。
ただ、さっき言いましたように、やはり政府というのは当面する内外の諸問題を解決しなければならぬという重要な課題を抱えている訳ですから、政治的空白を作ることが可能なのかどうかということも考えないといけませんし、それからやはり有権者のそういう意識、気持ち、期待というものに対してどう答えることがいいのかという判断は、そういう状況の中でさせてもらわなければならぬというふうに思っておりますから、今ここでその解散総選挙を求める声に応えるとか、そういうことを申し上げる段階ではないというふうに思います。
−−それでは、会見を終わります。どうもありがとうございました。