[文書名] 内閣総辞職に当たっての村山内閣総理大臣の記者会見
○総理 どうも皆さん御苦労様です。
私は、本日、内閣総理大臣を辞任することを決意いたしました。
振り返ってみますと、私が思いがけなくも総理という重責を担うことになりまして、一年半が経過をいたしました。この一年半というのは、最初の半年は主として税制改革やら、年金改革やら、あるいは政治改革といったような問題について決着をつけるべく努力をしてまいりました。
年が明けてから、昨年になりましてから、これまた思いがけなく一月十七日には阪神・淡路の大震災がございました。六千人を超える方々が亡くなられた。このことは私の脳裏から離れません。厳しく当時は危機管理の問題等について追及を受けました。
しかし、その教訓に学びながら災害に対する緊急管理の体制というものは、その後しっかりと確立したつもりでございます。
また、三月には地下鉄サリン事件等、一連のオウム事件がございました。こうした凶悪事件に対する再発の防止というものについては、今、徹底捜査が続けられて全容が解明されつつありますが、そうしたものに対する対応につきましても、万全を期する体制を整えるために努力をしてまいりました。
また、ちょうど昨年の春ごろから急激な円高が襲ってまいりまして、我が国の経済の先行きに立ちふさがってまいりました。このことはまた、相次ぐ金融機関の破綻、あるいは不良債権問題等々が浮上してまいりました。
更に秋には、沖縄の二人の少女が非道な事件に遭うといったような問題もございまして、沖縄における基地の問題や、日米安保体制、安保条約の在り方等について問われる事態となってまいりました。
その他、年末には「もんじゅ」の事件等もございまして、この一年間は全く想定出来ないような事件や事故が相次いでまいりましたけれども、私は私なりに与えられた課題について全力を挙げて取り組んできたつもりでございます。
ある意味では、事件や事故に追いまくられてきた一年でもあったというふうに言っても過言でないような年であったと私は思います。
そうした事件や事故を解決する一方では、国民に一番、暮らしに関係の深い景気対策についても、全力を投入してきたつもりでございます。
為替の反転への努力、あるいは十四兆円を超える大型の経済対策も講じてまいりましたし、金融の秩序を回復をして、内外ともに日本の金融に対する信頼を高めるという意味では、まさにこれから取り掛かる課題ではありますけれども、一応、一番大きな問題であった住専の問題についても、処理の方針を決めてきたところでございます。
また、昨年は戦後五十年の節目の年でもございましたので、八月十五日には総理談話を発表させていただきまして、日本の過去の歴史に対する認識と、これからの外交の基本方針について内外に明らかにさせていただきました。
そして、この三党連立政権でなければ成し得ないと思われてまいりました被爆者援護法の問題、あるいは従軍慰安婦の問題、あるいはまた公害の原点とも言われる水俣病の問題等についても一応の決着をつけることが出来たと私は思っております。
言うならば、私は冒頭に思いがけなくも、この重責を担うことになったというふうに申し上げましたのは、私はその任に就いたときに、自分なりに五十年の節目に遭遇をして、世界が大きく転換をする、こういう時代における歴史的な役割が担わされたと。その役割は何かということを自分なりに考えて、もし、その歴史的役割があるとするならばその役割に全力を尽くしていかなくてはならぬと、こういう決意で取り組んできたつもりでありますが、お話を申し上げましたような事柄の処理に全力を挙げて努力をしてきたつもりでございます。ある意味では、私の力の限界を脱出してやってきたというふうに思います。
幸いに景気の方もいろんな指標を見ますと、個人消費も民間設備投資も、あるいは在庫調整等も明るい兆しが見えてまいりましたし、しかし、中小企業や雇用問題等については、依然厳しいものがございますが、こうした状況を克服をして、新しい年に人心を一新をして、更に日本の景気の足取りを確実なものにしていただく。当面する内外の諸問題についても積極的に取り組んでいただきたいという思いで私は新たな年に、新たな出発をしてもらうという意味で、人心一新を図りたいというふうに決意をしたところでございます。
なお、これまで一年半、今まで申し上げましたような難題を処理出来たのは、何と言っても三党連立政権ががっちりとスクラムを組んで、お互いに主張すべきは主張し合い、忌憚のない議論を深めながら合意点を見出して政権を支えてきた、その基盤が大きな力になったということは申し上げるまでもございません。
ですから、私は退陣を決意をした、その表明をする際に、自民党の総裁と新党さきがけの代表と、三党の幹事長、書記長にそのことを申し上げまして、今後とも三党連立の強化を図って、政策の合意を目指しながら国民の期待に応えて、当面する諸問題の解決に努力をしていただきたいということを強く要請をいたしました。三党とも、重く受け止めて慎重に検討させてもらいますと。恐らく明日からでも三党の話し合いが始まると思いますが、そのことを私は強く三党に要請をし、お願いをしたところでございます。
これまで温かく御支援をいただきました国民の皆さんや、あるいは厳しい叱咤と御批判をいただきました皆さん方に、心から感謝を申し上げたいと思います。
以上であります。
−−総理、御苦労様でした。
では、冒頭幹事社から、記者会を代表して二、三質問をさせていただきます。その後、各社自由に質問をいたします。
まず、最初の質問ですけれども、今、総理は退陣を決意するに至る背景、経緯を説明されましたけれども、何故、今日というこのタイミングを選んで退陣を決意されたのか、その辺について説明いただきたいと思います。
○総理 私は、元旦の休みに、幸いに今年は三が日非常にうららかないい日が続きました。青空を見ながら、自分のやってきた来し方を振り返ってみて、先ほど来申し上げておりますように、与えられた歴史的な役割というものについては、ある程度五十年の節目に成すべきことは成してきたのではないかと、勿論、満足のいかない点もたくさんあろうかと思いますけれども、私なりに努力をしてきた。
そして、先ほど申し上げましたように、厳しい状況は反面にありますけれども、ようやく明るい日ざしも正月の天気のように見えてきたのではないかと、是非今年はそういう年にしたいものだと、またしなければならぬと。そのためには、この機会に人心を一新をして、新たな体制で新たな陣容で、そして当面する課題について取り組んでいただくことが、より清新な力をつくり出していくことになるのではないかと、是非そうなってほしいと、こういう考えをいたしまして、決意をいたしました。
ちょうど、これは二十二日から恐らく通常国会が始まると思うんですけれども、今日という日を私が選びましたのは、やはり前段の準備段階というものも必要だし、通常国会の会期というのは決まっている訳ですから、したがって、出来るだけその前に、言うならば今が一番政治的にはお休みの時期ですから、この時期に私はそのことを申し上げて、そして、臨時国会も開いていただいて、通常国会前に首班を決め、新しい組閣も終えた上で、通常国会に対する準備も整えて、何とか望んでいただくことがいいのではないかというふうに考えて、今日という日を選んだ訳であります。
−−今日この日に、辞任表明をしようと決意なされたのはいつ頃のことなんでしょうか。
○総理 今申し上げましたように、元旦の休みの日に、自分なりにいろいろなことに思いをめぐらして、そして、当面する内外の諸問題に取り組んで、国民のためにどういう役割を果たすことが一番いいのかということを自分なりに考えて、その道を選択をしたということであります。
−−非常に突然という印象もあるんですけれども、新しい年が明けて、さまざまな問題が依然として山積したままということなんですけれども、その中での今回の辞意表明ということなんですが、そうなりますと、後継総理をどう考えていらっしゃるかということを伺いたいと思います。
村山政権は、自民党、社会党、そして新党さきがけ、この三党の連立の枠組みでやってきた訳ですけれども、先ほど総理おっしゃいましたけれども、この三党の枠組みというのは今後も維持すべきだというふうにお考えなのか、そして、その上で、自民党の橋本総裁に禅譲する考えはあるのかどうか、そして、仮に橋本さんが後継だとしたら、それで社会党はまとまるのでしょうか。
○総理 誤解があってはいけませんけれども、三党連立というのは、これまで政権を維持してきた訳です。三党連立で新しい年度の予算編成も行ってきた訳です。したがって、三党にはそれなりの責任があると私は思いますし、今、この三党の連立を組むことによって、この一年半にこれだけの仕事をやってまいりましたと、これが出来たのも、やはり三党ががっちりスクラムを組んで、国民の期待にお応え出来るように一生懸命努力してくれたと、その成果ですというふうに私は思っておりますから、したがって、これは継続してやっていただきたいということをお願いしたことが一つです。
それから、後をどうするかという問題について、私は禅譲なんという言葉はないと思うんです。これは何も私が決めることでもないし、これは個人的に持っている権利でもないんですから、したがって、三党が相談をする中で次の内閣をどうするかという方針を決めていただく、そして、最終的には国会で首班指名が行われて、お決めをいただくことですから、だれがどうするこうするという問題ではないのではないかと、私はそう思っておりますから、後継の問題については一言も触れてはおりません。
−−ただ、総理自身は、これまでも与党第一党の党首なり代表が首相になるのが望ましいという考えを繰り返し述べてきたと思うんですけれども、その辺との兼ね合いはどうですか。
○総理 通常の単独政権の場合の憲政の常道からすれば、それは過半数を持っているものが政権を担当する、そして、その総裁が総理になるというのが通常の考え方ですね。しかし、連立政権の場合には、必ずしもそうならなくてはならぬということはないのではないかと、これはヨーロッパを見ましても、そういう例はたくさんございますし、これは飽くまでも連立政権を組んでいる各党の話し合いの中で決められていく問題であるというふうに私は思っております。
−−次の質問に移らさせていただきます。今日は社会党委員長選挙の立候補受付の日なんですけれども、社会党委員長選挙に対する総理の考え方というのはいかがなものですか。
○総理 私は総理を辞任をする決意と社会党委員長選挙というもののかかわりについても、自分なりに検討してきたつもりなんです。
これはこれまでも私は新しい政権を担うもう一つの党をつくると、そのために全党を挙げて努力をしようということを言い続けてきました。したがって、総理を辞任したからと言って、そうした意味における仕事というものは残っておる訳ですから、その責任を放棄する訳にはいかないと、やはり政党政治の中では、政党の在り方というものも極めて大事な要素になる訳ですから、私はそういう責任を感ずるために、委員長には推される方もございますし、それは皆さんの期待にお応えしなければならぬだろうというふうに思っておりますから、四時が締め切りですから、四時までに立候補の手続を取るように手はずを整えてまいりました。
−−この社会党、今新党に向けての動きがありますが、当然、今日の総理の辞任表明というのは、この新党問題にも大きく影響してくると思うんですが、総理御自身は、この社会党の新党問題をどういうふうにお考えでしょうか。
○総理 今申し上げましたように、十九日に社会党は大会をやる訳です。十九日の社会党の全国大会で、党自らが新しい精鋭、勢力の一翼を担い得る党に改革をしていく、ということを決めるつもりです。
理念から綱領、規約、今、党名も公募いたしておりますから、そこで結論が出れば党名も変えることもあるかもしれません。そして、党自らが新しい時代を乗り切っていける、国民の信頼と期待に応え得る党に改革をしていく。その改革された党が新しい政治勢力の一翼を担う役割を果たしていくために努力をしようと。こういう道筋を取っていくつもりでございます。そのためには私も頑張りたいというふうに思っています。
−−総理御自身は社会党、新党とどういうふうなかかわりということを考えておられますか。
○総理 今申し上げましたように、社会党が新しい政治力の結集の一翼を担う、したがって、当面はそれはさきがけの皆さんとか、志を同じくする皆さんに呼び掛けて、そして、共通する課題があるとするならば、お互いに力を合わせてやっていこうではないかという話し合いを進めて、そして、ゆくゆくは新しい党に結集出来るようなものにしていきたいものだというふうに期待をいたしております。−− 各社どうぞ。
−−元旦に決意をされたと言うんですが、今日の表明のまでの間に与党三党のうち、ほかの新党さきがけの武村さんとか、橋本さんに、総理の意向というのは伝えていたのか。これをまずひとつお聞きしたいと。
それから、三党の枠組みをこれからも維持していく。それで、委員長選にも出られるということなんですが、仮に委員長選で新しい次期委員長になられた場合、三党の枠組み重視と、三党首がその次期政権の中に入っていくという観点から見ると、新たな政権へも総理が入閣していくということがあり得るのかどうか。この二点です。
○総理 それは、今のところあり得ないんじゃないでしょうか。私は総理を辞任をして、そして新しい陣容にバトンタッチをすることが、これからの日本を考えて非常にいいのではないかというふうに思って辞任をする訳です。
しかし、党の役割というのは依然として残っている訳ですから、したがってその役割までは投げ出す訳にはいかない。その責任は、やはりこれを一身に受けてでも果たしていかなくてはならぬ責任があると私は思いましたので、委員長には出る手続を取るようにいたしましたけれども、しかし、新しい内閣に入閣するというようなことは全然考えておりません。飽くまでも党の立場で、三党の連立政権を全面的にバックアップして協力していくという体制はつくっていきたいというふうに思っています。
−−その三党連立を維持していくということになると、新しい政策合意とか、そういうことをまたつくり直すということになるんでしょうか。
○総理 私が申し上げましたのは、これまで三党連立政権で合意した政策がある訳ですね。その政策に、これは総理も代わりますし、内閣も変わる訳ですから、この政策を踏まえた上で、なお新しく課題として加えるものがあるならば、三党で十分ひとつ検討をして、そして新しい内閣にふさわしい政策合意というものをつくっていただきたい。そして、それを前提にして首班の指名も行われるでしょうし、組閣も行われるということになるのではないかというふうに考えております。
−−三党の連立を維持した上で辞任された場合、当然三党の中から首班が出る訳ですが、これは与党での政権のたらい回しという印象を与えるんですが、何故人心を一新することを強調されるならば、解散というもっと大きな意味の人心一新の道を取られなかったんですか。
○総理 これは、私はたびたびこれまでも申し上げてまいりましたけれども、これだけ緊急の課題を抱えておるときに、解散によって空白をつくることは決して好ましくない。これは、金融の不良資産の処理の問題とかございますし、同時にようやく景気もやや指標としては明るい兆しも見えたという状況の中で、今こそ切れ目なく景気対策を推し進めていくことが何よりも大事なことだというふうに思っていますし、四月にはクリントン大統領もお見えになって、これから日米関係の在り方についても十分話し合いをしなくてはならぬといったような課題も抱えているときですから、私は今、空白をつくることは決していいことではないというふうに思っておりますから、政権たらい回しなどというものではなくて、引き続き当面の課題を解決し得る新しい内閣をつくるということが何よりも大事な道ではないかというふうに思います。
−−それだとますます分からないんですけれども、それだけの課題があるにもかかわらず、委員長としての責任をお感じになっていて、首相としてそれだけの課題を前にしてお辞めになるというのは無責任ではないでしょうか。
○総理 委員長としての党の責任と、それから政権を担っている政権の任務と役割というのはおのずから違う立場ですから、したがって先ほど来申し上げておりますように、私としては与えられた歴史的な役割と任務というものを自分なりに自覚をして、そしてその自覚に立った仕事は勿論十分とは言えませんけれども、自分なりに力の限りを尽くしてやってきたつもりなんです。それで、ここまできてこれから先のことを考えた場合に、ここで人心を一新をして新しい体制で対応していただくことがよりベターではないかというふうに考えたのでその道を選んだということでございます。
−−昨年就任以来、この一年半で村山政権の意味づけというか、何だったのかということを御自分ではどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○総理 ですから、私は先ほど来申し上げましたように、ちょうど五十年の節目の年で、いろいろな事件や事故もありましたけれども、しかし、この政権でなければ解決出来ない問題が残されておるのではないか。その残された問題を処理することもこの内閣の与えられた役割ではないかというふうに考えて、被爆者援護法とか、それから従軍慰安婦の問題とか、あるいはまた水俣病の問題とかということの解決に努力をしてきたつもりでございます。
−−先ほど、不満足な点もあったということだったんですが、具体的にはどういうところですか。
○総理 自分で百%満足していますということは言えませんから、それは反省も含めて、必ずしも皆さんの十分な期待にお応え出来なかったかもしれませんけれども、自分自身にとりましては力の限り努力をしてきたつもりでありますということを申し上げている訳です。
−−これまで、社会党から総理に出しているという理由で社会党内に納得している部分もあったと思うんですが、仮に社会党から総理が出ないとした場合、今後、社会党がまた先祖帰りをするような心配というのはないですか。
○総理 今の客観的な情勢の中における社会党の立場、役割というものを考えた場合に、私はそんなことにならないと。社会党は一致して十九日の大会は成功させなくてはならぬというふうに思っていますし、恐らくそういうことになるというふうに思っております。
−−辞められることが、この国にとって、日本にとっていいことだというふうに判断されているようですけれども、続けるとどういう悪い影響が出ると自分なりに考えられるんでしょうか。
○総理 続けるとどういう悪い影響が出るって、それは何と言いますか、やはり事柄というのは前向きに前進をさせていくということが大事なんで、そんな意味からすると、一つの区切りというものはやっぱりあっていいんではないかというふうに、私は私なりに思った訳です。ちょうどいい区切りをつける時期だと。この区切りを踏み台にして、更に人心を一新した新しい体制で更に前進を図って欲しいという期待を込めて申し上げている訳です。
−−総理、また元に戻りますが、住専問題では苦渋の決断、また、沖縄問題では行政訴訟が始まったばかり、あのときも苦渋の決断とおっしゃいましたけれども、その苦渋の決断というのは一体どこに行ってしまったのかと。
○総理 これは方向を決めた訳ですから、決断をして決めた訳ですからね。あとは決めたことのレールをずっと推し進めていっていただければいいんで、このレールを敷くまでがやっぱり大変大事なことではなかったかと。
−−最後まで責任を持って決着をつける。総理がお好きなお言葉で始末をつけるところまで、どうしてやらないのかなというのがまだ疑問に残るんですが。
○総理 それだけ一つ考えれば、そういうことは言えると思いますけれども、しかし、国政というのは多面的なたくさんの仕事を抱えている訳ですから、それだけを持って判断をする訳にはいきませんしね。
ただ、私は物事はどういう処理の方針を決めるかということも、一つの大きなけじめになると思いますよ。この住専問題にしても、沖縄の問題にしても、そういう選択をしたと。あとは法律的な手続に従って、沖縄の問題等についてはやっていただくことになる訳でありますから、清々とやっていただければいいのではないかと思います。
それから、住専問題等については、一つの処理方針を決めた訳ですから、その処理方針に基づいて、これは母体行やら、一般の銀行やら、あるいは系統の農協関係の金融機関やら、それから住専、あるいは借り手、たくさんの方がある訳ですから、そういう問題を、どこに問題があったのかという解明をしながら、その責任の所在も明らかにして、決着をつけていくということが、私は日本経済のためにも、あるいは内外の信頼を高めるためにも、あるいは預金者保護のためにも、これは金融というのはある意味ではやっぱり経済、産業の動脈みたいなものですから、血液を投入していくということは大事なことではないかというように思いますから、緊急の課題として処理はさせていただいたと。方針を決めさせていただいたと。
出来ればね。いつも申しますけれども、全容が解明されて、責任の所在も明確になって、そして、なるほどこういう決着の仕方しかなかったのかということが分かれば、あるいは皆さんにも納得をしていただけるのではないかと思いますけれども、これには時間が掛かる訳ですから、時間が掛かれば掛かるほど傷口は大きくなって、結果的には国民に対する御負担も、また増えていくというようなこともあり得るのではないかと思われますから、これはやはり緊急の課題として処理方針を決めて、その決めた方針に基づいて、やがて全容も解明されるし、責任の所在も明らかにされていくと。そうすれば、国民の皆さんも、ああ、こんなことだったのかと言って、勿論、不満だと思いますけれども、御理解はいただけるんではないかというふうに私は期待をいたしております。
−−では、最後に一問。
−−今回新しい体制を決めると。五十年の区切りをつけるということであるのでしたらば、昨年末であってもよかったんじゃないですか。何故新年になってこういうふうになったのか。その間に心境の変化などがあったんですか。
○総理 それは考えないでもございませんでしたけれども、しかし、新しい年度の予算の編成の過程でもありますし、そういう継続された仕事がやられている過程に、そういうことを引き起こすのはやっぱりよろしくないのではないかと。ですから、予算の編成も終わった。そして、次の通常国会も終わって、しかも、通常国会に臨む、ある程度の準備期間も置いて、そしてやれるような時間帯というものを考えてやる必要があるのではないかという、私なりの配慮もして、今日という日を選ばしていただいたということでございます。
−−どうも御苦労様でした。
○総理 どうもありがとうございました。