[文書名] 行政改革会議集中審議終了後の記者会見(橋本龍太郎)
○総理 大変長時間お待たせしてしまって済みませんでした。
大変遅くなって申し訳ありません。今、政府与党協議を経て、政府、行政改革会議における集中審議、調整を終わりました。結果を皆さんにご報告をいたしたいと思います。
これまで機会あるごとに申し上げてきたことは、我が国の行政システムというものが戦後五十年を経過してみて、これまではかなり有効に機能してきたままで時代に合わなくなった。将来の日本を見据えて戦略的、効率的に、かつ透明性を持って国政を進めていく上で、政府組織が余りに肥大化、硬直化し、また、縦割行政の弊害も顕著になり、二十一世紀に向けて自由かつ公正な社会をつくりあげていくためには、是非ともこのような弊害を抜本的に是正して、二十一世紀型の行政システムをつくりあげていかなければならない。これが私が一年前、中央省庁の再編をはじめとした行政改革を自分自身燃焼し尽くしてでもやり遂げよう、そう決心した理由のすべてでした。
今回、書き上げていただいた新しい中央省庁の姿の中に、将来の日本の姿を描いていく上で、特に私が力点を置いたのは、環境省の創設、そして創造的な科学技術行政の体制を整備することです。
環境と科学技術という二十一世紀の地球、日本の行く末を決定的に左右する、この戦略的分野でしっかりとした体制整備が出来たことを何より私は喜んでおります。「戦略と夢のある再編」とでも申しましょうか、私たちが住むこの日本、更にこの地球に、よりよい環境をつくり出し次代に伝える、その主役としての環境省の創設、内閣府の総合科学技術会議の下、教育科学技術省で学術と基礎研究分野を融合化させながら、科学技術を戦略的に、かつ夢を開くものにするための体制は十分に整備が出来たと考えています。
その戦略性、総合性の確保という点では、今回の改革の大きな柱が「官邸、内閣機能の思い切った強化」です。従来の官僚主導の硬直的な縦割り行政を打破し、政治主導でダイナミックな政策を展開していく必要があります。このため内閣官房及び内閣府の総理補佐支援体制を総理に直接選ばれたスタッフで基本的に運営することにより、危機管理機能の強化や、予算編制の基本方針など、国政の重要分野の総合戦略の具体化を図ってまいります。
また、各省庁については、その数を現行よりほぼ半減して、一府十二省に再編したところです。このような大ぐくりにより、これまでの縦割り行政や縄張り争いによって、国民が幾つもの窓口を回らなければならなかったり、同じような政策が重複して行われるような国民不在の行政が改められることを強く望みます。より高い視点とより広い視野をもって、国家・国民の利益を追求することが出来る政府をつくりあげること、これが今回の行政改革の歴史的な成果であることは言うまでもありません。
しかし、大ぐくりの省庁の数だけ減らしても不十分です。膨大な財政赤字を抱え、少子高齢社会に突入しつつある我が国が、二十一世紀に向けてその繁栄を確たるものとするためには、まず国自らがスリム化、効率化を率先して遂行することが大切です。官民の役割分担を明確にし、地方分権と徹底した規制緩和を車の両輪に、大ぐくりによる合理化効果も加えて、現在百二十八ある局をなるべく九十近い水準にまで削減します。一千二百近くある課も一五%程度は減らします。国家公務員の定員も、新規採用や増員の抑制、退職者の不補充などを通じて、雇用不安のないような形で減らしてまいります。私は、省庁再編の開始年である二〇〇一年には、総定員法を改正し、新しい定員削減計画を策定したいと思います。その計画では、最初の十年間で少なくとも一〇%、出来ればそれを超える削減を実現したいと思います。
もちろん、大臣の数も現行の二十人以内という枠を、十五人から十七人ぐらいには減らさなければなりません。今回導入を決定した独立行政法人は、国の政策の企画立案機能と実施機能を分離し、後者について一定のものを独立させ、民間的な手法を導入することにより、効率的で弾力的な組織運営を可能とする法人のことです。これにより、独立行政法人化した業務の国民へのサービスが飛躍的に向上することを期待しています。
次いで、個別改革問題で国民の皆さんの関心の高いものについて、大まかな方向が出ましたので、ご説明したいと思います。
まず、私が最も心を砕いたのが郵政三事業の取扱いです。私は、さまざまな行政サービスがある中で、郵便局という存在が国民生活に密着した、いかに町や村コミュニティーの中で便利な存在であるか、そのことは十分知っているつもりです。その意味で中間報告では、郵便局を国民のための行政サービスの拠点として評価し、国営といたしました。その上で、国民の皆さんが本当に欲しておられる改革とは何なのか、十分考えました。そして、その結論が、郵政三事業は三事業一体として国営とするが、五年後に新たな公社、郵政公社に移行する。以前にありました国鉄や電電公社とは異なって、職員の身分は国家公務員としますが、事業の運営にあたっては、旧来の国鉄や電電のように、事業を事前に管理するのではなく、事後評価に切り替え、予算・人事などに弾力性、自律性を与えるとともに、企業会計原則の導入、情報公開、成果の評価を徹底することにより、効率性、透明性の向上を図る。資金運用部への預託を廃止して、全額自主運用とする。郵便事業への民間企業の参入について、その具体的な条件の検討に入るなどでございます。
これによって、郵便局の地域に根差した機能はしっかり守りながら、民間的手法や活力の導入、問題の多い財政投融資制度の抜本的な改革、ひいてはその資金供給先である特殊法人の整理合理化へ大きな道筋をつけたと考えます。
公共事業関係官庁の一元化の問題については、国土の総合的・体系的な開発・利用、そのための社会資本の整合的整備などに責任を有する省とし、建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁を母体に国土交通省を設置することとしました。私がそもそも開発と保全という概念で分けることを提案したのは、一大巨大利権官庁が出現するのではないかと心配される方があったからでした。原則として、本省は企画立案、総合調整業務を行い、公共事業などの事業実施については、徹底的な地方分権、民間活用を図る。その一環として、地方の建設局、港湾建設局などをブロックごとに統合し、その機関に予算の一括計上、公共事業の執行権などを与える、言わば公共事業のブロック分割とも言える措置を十分払拭出来ると判断をいたしました。
農林水産省は、引き続き存続させますが、公共事業である構造改善事業については、真に食糧安定供給に資するものに限り、必要やむを得ず整備するものについても、国土交通省との相互協議を通じ、公共事業全体が整合性をもって行われるように担保するつもりです。このことで、これまで公共事業が何かと体系的、総合的に出来ていない、分野間のシェアが固定化している、そうしたご批判にもこたえられると思います。
なお、沖縄・北方対策については、それを担当する特命相を置き、必要十分な組織を内閣府に設け、沖縄総合事務局はその下に置いて予算の一括計上を認めることといたします。
大蔵省のいわゆる財政と金融の分離については、与党協議が整わず、本日決定に至らなかったことは大変残念です。私がAPEC、カナダ訪問から帰ってくるまでに精力的に調整を進められるよう、与党各党の皆さんに強く要望いたしております。いずれにせよ、結論を出し、最終報告に盛り込む決意です。
もう一つの問題点であった防衛庁の省への格上げの問題は、私の判断として見送ることといたしました。しかしながら、自由民主党内の論議が本日終息をいたしませんで、この問題も私が帰国するまでに党内で十分議論され、早期に決着することを強く望みます。ただ、ここで申し上げておきたいことは、国防、すなわち国を守るという任務の重要性を正しく認識し、それに対して大きな尊敬を払い、名誉をもって関係者を遇するべきであるという気持ちは、私自身人後に落ちないということです。
以上、申し上げてまいりましたように、行政改革会議最終報告に向けて、私なりの行政への思いは最大限取り込んだつもりであります。その上で、あえて申し上げれば、行政改革への道のりはまだ道半ば、あるいは、まだ半ばまできていないかもしれません。二十一世紀の行政組織の枠組みは、この一年間で何とか大枠をつくり上げてきました。しかし、この過程で、各省が担う行政の内容、政策・制度を全面的に精査した結果、今後規制の撤廃や行政の関与の撤廃、地方分権の徹底など、抜本的な改革を要する政策課題の多さには目を見張るものがあります。
今回の行政改革案、最終報告を待って、今後速やかに政府によって基本法案化され、次期の通常国会に提出されることになりますが、法案が成立した暁には、直ちに内閣の直属組織として、基本法に沿って、二〇〇一年に向けて、行政組織の詳細に加え、政策・制度の全面的な見直しを行う、総合的な改革推進本部を設置するのも一つの案かと思います。
いずれにせよ、今回の結論、本日時点のものは行政改革の到達点ではありません。むしろ、これが出発点となって、行政とは何であるのか、国は、地方分権や国民とどのようにかかわっていくべきなのかということを、全面的に見直して始めて、二十一世紀の国家像というものが、国民の皆様との間で共有出来るものと考えています。
最後に、さまざまな風圧を受けながら、終始、個人の識見と良心に基づいて真剣なご論議をいただきました行政改革会議の委員の皆様方、また日夜を分かつことなく、粘り強い調整をいただいた政府与党関係者の方々、そしてさまざまな分野から集まり、全身全霊を尽くして、この仕事に取り組んでいただいた事務局の諸君、そのすべての皆さんに対して、深甚なる感謝を申し上げますとともに、そして特に国民の皆様、この問題に対する関心とご支援に厚くお礼を申し上げます。
私たちが何とかここまでたどり着けましたのは、ひとえに国民の皆様のご支援と厳しくも温い励ましがあってのことであります。皆様の声こそが我々にとっての勇気づけであると同時に、私たちの改革努力を見守り、ややもすればさまざまな風圧の中で、後退を余儀なくされがちな私たちの背中を押し続けていただきました。今後とも国民各位におかれましては、我々の努力を、あるいは監視し、あるいはお叱りをちょうだいする形で、ご支援とご協力をいただければ幸いであります。本当にありがとうございました。
−それでは、幹事社の方からまず二、三、質問させていただいた後で、各社の質問を受けたいと思います。
まず、ちょうど一年前だったと思いますが、会見の中で公益や特定の業界の利益を廃して、真に国民のためになるような大胆な改革案をつくりたいというふうにおっしゃったように私は記憶しておりますが、現在、この最終案は、その目的を達成することが出来たとお考えですか。
また、集中審議までに課題が二つ残ってしまった点について、どうお考えになるか。加えて、その二つの課題をどう処理していかれるのか。まず、それをお願いします。
○総理 今、私自身率直な気持ちを申し上げたように、まだ私は道半ば、あるいは道半ばに到達していないのかもしれない。しかし、ようやく、皆さんに背中を押していただいたお陰でここまで来た。率直な気持ちをお礼の言葉とともに申し上げます。
そして、いろいろなご意見はあるかもしれませんが、それなりに私は随分大きな方向づけは出来たと思っています。その上で二つの問題が残っております。これはいずれも非常に大きな問題ですけれども、一方は与党三党の中で、なお論議を続けたいというテーマでありますし、一方は判断を求められて私自身の判断は既にお示しをいたしました。その上で、これから先よい結論を出していただくことを願っています。
大変広範な質問だったので、その後何でしたか。
−処理の見通しです。解決出来るかどうかという、その見通しはいかがですか。
○総理 解決していかなきゃ、最終報告はつくれませんし、多分APECから私が二十八日の夕方に帰ってきますから、残る時間は本当にわずかですが、その間にも与党内、また自民党内それぞれに議論を尽くしていただけるでしょうし、いい結果が生まれることを期待していますし、行革会議としての最終報告はいずれにしても、それぞれの問題点については、考え方をきちんと示したものにしていきます。
−もう一つ、焦点となりました郵政改革ですが、どうも突然出てきた公社化というのが、なかなか国民に、なぜ公社化になったかというのが非常に見えずらいと思います。この点についてどうお考えか。
もう一つ、今日の与党間合意の中で、公社化になった後に、民営化の見直しは行わないということを合意したということがあるようですが、この点、総理はどうお考えか。
○総理 これ、何回も同じようなご質問に対して私はお答えをしてきたように思いますが、郵政三事業の議論というのは、何か国営化、民営化、そこだけに焦点が当たってきたことが私は実は大変残念です。
何故なら、郵政三事業は何が問題か。特に大きなものは、要するにこの資金というもの、国民から郵便貯金、あるいは簡易保険を集められ、特に郵貯のお金がそのまま全部資金運用部に預託をされ、それが財政投融資として特殊法人等に流れる。言い換えれば市場のチェックを全く受けない一つの大きな金融の流れが存在していたということだと私は思います。
それが、例えば政策順位として必ずしも優先順位の高くないような特殊法人等にまで財投資金として流れ、皆さんからも批判を受け、これを改革することが私は大きな一つだったと思います。
もう一つは、郵便事業というものが、国家の独占でいいのかという問題提起であったと私は理解しています。その公社の郵便事業への民間の参入、これは認める。その上で具体的な条件の検討に入るということが決められています。
そして、その資金運用というものを完全に自主運用にして、預託はしないという中で、しかも国民の資産をお預かりをしているわけですし、そして、これが財政投融資として使われて返済をされるまでには随分の期間があると思います。その間に例えば簡易保険や郵便貯金を、今行っておられる方々に不安を与えるような形は取れません。それなりに経営形態というものは安定していなきゃいけない。
そういう中で、言わば二律背反のようなところがある問題点をどうほどくかということで、私たちは随分いろんな角度からの議論をしてきました。
そして、郵政三事業一体として新たな方式、郵政公社、仮の名前ですけれども、新たな公社というものを考え、五年後に郵政公社にこれを移行するということを決めたわけです。
この新たな公社というのは一体何だ、これは独立採算性の下に自律的、弾力的な経営を可能にするということです。言い換えれば、公社といった瞬間に皆さんが憂慮をされるであろう日国鉄、あるいは旧電電公社、専売もありましたけれども、このころの公社と中央省庁との関係というのは、事前の管理、それが弾力性を失い、自律的な経営をやりにくくさせた。結果として民営化という方向に移行せざるを得ない状況になった。今後は事前管理から事後評価にがらりと仕組みを変えていきます。そして、予算及び決算を企業会計の原則に基づいて処理をしていく。そして、国による予算統制は必要最小限にして、言い換えれば、毎年度の国会決議を必要としない、これは年度間に繰り越しとか、剰余金の留保などを可能にするわけですし、中期の経営計画を策定する。それに基づく業績評価を実施する。これは経営にかかわる具体的な目標設定策ということです。
そうした言わば皆さんの目に見える形をつくり上げていく中で、我々はこの結論に達し、新しい公社というものを安定してスタートさせる、その時期を五年後と、そのように設定をしたいということです。
−もう一遍、公社化の後の民営化はしないと。
○総理 ですから、今申し上げたように、皆さんが例えば簡易保険なりに加入しておられる、あるいは郵貯に貯金をしておられる。その方々からお預かりしたお金は資金運用部から現在、ある程度の利益を上げることを前提に特殊法人その他に投資されている。使われているわけです。これが皆返ってくるまでの時間というものを考えてください。財政投融資はどちらかと言えば、長期で、資金が固定する、民間だけではなかなかやりにくい分野の仕事に振り向けられているわけですから、その間の安定というものは必要ではないでしょうか。その間、ぐらぐら経営形態を変化するような形、それが望ましい姿でしょうか。
そして、最初に申し上げたような資金運用部への預託を廃止する。しかし、既に預託され、財政投融資として使われているお金が返済されるまでの時間差を考える。
−総理自らが会長となった行政改革会議が中間報告で申したものが、族議員等を含めて、政党の意見でちょっと変えられたという印象を強く持っているんですが、この点についてどういうふうにお考えかですか。
○総理 政党政治の中で、与党が意見を持ち、それを政策の上に反映させていくのは当然のことだと思います。その上で、中間報告まで、言い換えれば中間報告という一つの共通の論議の理解を設定するまで、そうした意見というものが集約された形では提示をされてきませんでした。その中間報告が出されて始めて、政党、それぞれの意見というものがこれに基づいて議論をされ、集約されてきました。そして、当然ながら連立政権であれば、その与党、それぞれが考え方を持ち、それは必ずしも一致するものばかりではありません。その中で与党間の協議というものも行われ、それを集約したものが、私は政府の考え方、そして政府の方向づけというものに影響を持つのは当然だと思います。
その上で、その意見の中にも受け入れるべきもの。あるいは、党としての考え方に対し、行政改革会議としてこういう考え方を持って臨んでいることについて、党側に理解してもらいたいということで、党側の考え方を変えてもらう。そうしたプロセスというのは私は当然あって悪いことだとは思いません。
−しかし、大胆な改革というものは出来ないように思うんですが、その点いかがですか。
○総理 大変恐縮だけれども、あなたの言われる大胆な改革というのはどういうものですか。というのは、これ自体、随分、人によると乱暴だと言われる方もあるし、いろんな批評がされているんですが・・・。ですから、大きな問題を二つ残している。しかし、それは最終報告までにきちんと整理をつけますということを申し上げている。これは大胆じゃないですか。
−後退ではないと思われますか。
○総理 だから、後退というのは何に対しての、どの部分が。というのは、中間報告どおりでないということですか。
−中間報告については、かなり大胆だという受け止め方があったんです。
○総理 だから、中間報告で終わりであるなら中間報告ではないですね。だけれども、最終報告をまとめるまでに議論のプロセスを明らかにしながら、なお残っている問題点、論議が尽くされていない問題点もオープンにしたからこそ、私はここまでの議論が進んだと思っています。
そして、中間報告の中に触れていない問題が幾つもあったこと。最終報告に向けては当然ながら触れられるべき課題が触れていない問題があったことにお気づきでしょう。とすれば、私はその内容が大胆であるかないか、これはごらんになる方によって違うと思います。少なくとも私は中間報告以降、中間報告には抜けていた部分をその後の議論の中で加えて、より明確化する。当然ながら与党との調整の中で変化した部分があることも事実ですけれども、それをもってすべて否定される話だとは私は思いません。
−分かりました。幹事社からの質問は以上です。各社の質問を受けたいと思います。お願いします。
−理念なき行革という批判をよくされると思うんですけれども、そこで例示を一つ挙げてもらいたいんですが、公共事業省を一つつくるというようなことで、今回、国土交通省というのをつくられたわけで、地方の部分をスリム化すればいいということがここに書いてあるんですが、それならばなぜ農林水産省の構造改善事業も一緒にしなかったのか、その部分をちょっと説明していただきたいと思うんです。
○総理 農林水産省、むしろ私は農林水産省について聞かれるのは違ったご質問かなと思ったんです。確かに農林水産省の仕事の中に農林公庫という事業があります。しかし、同時に農林水産業というものの一つの特色、それは第一次産業であると同時に、食糧の安定供給という問題とともに、自然とのかかわり、あるいは環境とのかかわりを色濃く持つ部門です。
そして、農林水産省の仕事は公共事業だけだとは私は思っていません。食糧という視点からとらえたとき、あるいは環境の保全という視点からとらえたとき、この第一次産業を主管する一つの行政組織がそのまま存続をするという決断をする。これは私は間違っていないと思います。
その上で、農業構造改善事業というものは、まさに農業の部分と切っても切り離されない関係のものです。しかし、それを公共事業全体の中で重複を避けるために、先程も申し上げたように、国土交通省という形でくくられた分野との緊密な連携という形を私は皆さんにご説明をしました。ですから、ブロック化という中に、こうした緊密な連携というものが当然ながら入っていく。今の状況とは全く私は変わっていくと思います。
−例えば建設省から河川局を分離させる、あるいは郵政省の放送通信の分野を別のところに持っていくという、機能によって、その機能を整理し直すという考え方が中間報告にあったと思うんです。
それに対して、各省庁が出来るだけ今の形というか、今持っているものを離そうとしたくないということは確かにあったと思うんです。このことがどうしても最終的な結論には反映されてしまったのではないかと思うんですが、その点はどうお考えですか。
○総理 例えば冒頭申し上げたように、始め国土整備という考え方で交通事業主管省を一つに束ねようという構想が行革会議で議論されたとき、余りに巨大過ぎるのではないか。あるいは、大き過ぎて利権が発生するのではないかという批判がありましたから、それなら開発と保全という分け方をすれは{前1文字ママ}いかがですかということを、私はその当時申し上げたはずです。
しかし、その後議論をしていく中で、むしろその分け方よりも、今ご説明をしたように、国土交通というくくりの方がより合理的にまとめられた。例示は現在の北海道開発局を思い浮かべていただきたいと思います。庁ではありませんよ。北海道開発局を思い浮かべていただきたい。ここは公共事業をまさに一括計上しています。これは先程のご質問にあった構造改善等、農業土木も含めて、農業関係の公共事業を含めて計上しています。
同じような形でブロックを整理して、そこに予算の一括計上、執行等を委ねていくことで、全体のそうした利権官庁と言われるような、あるいは巨大官庁と言われるような弊害は除去出来るのではないか。この点については先程私は申し上げました。
ですから、これはもともと国土整備という視点で全部を束ねようとする考え方に対して問題提起があったのに、まさに中間報告段階において、私が一つ示した対案であったことは事実なんです。
その上で国土交通という束ね方にした。そして、それをブロックに、予算の一括計上、執行等を委ねることによって、問題は解決するということを私は考えました。
それから、郵政省という例示がありましたけれども、ご承知のように、郵政省には電気通信、放送、こうした行政があります。ここでの一つの問題意識として、私自身も提起していた問題、それは果たして通信と放送というのが将来ともに今の格好で続くんだろうか。言い換えれば、通信と放送というのはきちんとした分離がいつまでも可能なんだろうか。例えばインターネット一つを取ってみても、その境目というのは非常に薄くなってきたのではないだろうか。こんな問題意識も実は行革会議の中で提起をし、議論をされてきた視点でした。
その上で、最終的に取った判断それは情報というもの、その放送と通信の境目があいまいになってきている中で、将来を戦略的に考えたときに、一つに束ねるのがいいのか、あるいは規制職を持つ部分について、情報産業というのは、むしろ戦略的に育成すべき産業として位置づける方がいいのか。そういう判断の中で郵政省の通信放送関係の三局を二局に編成し直していく。情報産業という将来育てていかなければならない分野の位置づけというものは、当然通信だってこれは育っていくものなんですけれども、放送と通信が融合してれば、ここには規制というものがどうしても残ります。情報というストレートに、民間がどうやったら伸びていく、そのサポートに徹する分野とはおのずから違いがあるわけです。論議としてはそのように整理していく。
ただ、そのプロセスでいろいろな議論があったり、複雑な動きが外で行われた。私もそれは聞いていますけれども、行政改革会議として議論を集約するプロセスの問題意識、これはまさに当初からありました。一つは、放送と通信というのは将来ともに別の体系であり続ける。それとも融合していく。融合していくとすれば、いやおうなしに規制というものを伴う問題です。当然ながら育成していく部分も多分にあるんですけれども、規制というものをかぶせなくてはならない。情報という視点からとらえて、これはむしろ行政が規制するのではなく、これが伸びていきやすい環境をつくることに徹する。その育成をしていくと私はそう思っています。
−もう一つ同じ文脈なんですが、海上保安庁の扱いというのは、最初とは考え方が変わったんですか。
○総理 これは変わったと言えば変わったのかもしれません。ただ、私自身としては、当初薬物乱用といったことに対する警戒の論議の中で、海上保安庁のそうした取り締まりの部分だけを取り出して、警察の機能と合わせていく。そういう発想が出たことに対して、海上保安庁の機能というのはそれだけではない。例えば一隻の船の、ここまでは取り締まりの部分で、ここからは海洋汚染防止の部分で、ここからは海難救助の部分などと、そんな仕分けが出来るわけがない。むしろ、これは一体として考えなければならない。ですから、そうした言わば治安と言いますか、そういう部分でこれを考えるのであれば、保安庁の場合は一体とした組織として、動かす以外にない。それは麻薬取締官事務所についても同じ。ですから、そのときには国家公安委員会の下に海上保安庁の機能を分割するのではなく、全部移し替えるという考え方を私は出したわけです。
なぜなら、そのほかにも例えば水路部の職員がやっている仕事、あるいは灯台部の職員がやっている仕事、海上保安行政というのは、これが一体になっている。そういう業務を切り分けることは出来ない。治安という面で切るのなら、これを一体として動かさなければいけない。その場合には、警察業務とは全く違った機能が国家公安委員会の下に入るわけですから、当然国家公安委員会は改組されなければいけないし、同時に、専任の閣僚を必要とするわけです。中間報告段階で私が申し上げてきたことはそういうことです。
しかし、灯台業務、水路監査、こういった業務に加えて、海洋汚染防止、あるいは海難救助といった活動が、圧倒的に海上保安庁の業務の中心を占めているということをご理解いただく中で、与党三党からも、海上保安庁を、言わば治安の部分だけを抽出した形で国家公安委員会の下にまとめることはいかがなものかというご意見があった。先程の行政改革会議でもう一度その点をご説明をし、了解をいただきました。
ですから、これは海上保安庁だけではありません。国土交通省に海上保安庁が移行することに、中間報告の案から言えばですね。雇用福祉省に麻薬取締官事務所を置くと。そして、国家公安委員会は、そうなれば今までと変わるわけではありませんが、専任の閣僚を必要とするものではなくなるということです。
−郵政の問題について伺いたいんですが、先程質疑の中で、郵便事業への民間企業の参入を認めるというふうにおっしゃっておいでのように聞こえたんですが、その点の確認が一点。
もう一つは、なぜ職員の身分を国家公務員としたのか。それは先程のお話の中で、代表性を与えるという部分と矛盾するのかしないのかというのが二点。
もう一つは、情報公開。
○総理 ちょっと待ってください。相当私もばてているから、余り一編に出さないでください。
まず、一番が民間事業の参入の話でしたね。それは文章として、郵政事業への民間企業の参入について、その具体的な条件の検討に入るというふうに書かれていましたが、与党の十者協の砦さんに諮ったとき、これは民間参入を認めることですねということを確認し、そうですという答えをいただきました。そのとおりにさっき申し上げました。
それから、国家公務員の身分、これは新しい公社というものを設計する中で、私たちの考え方がここに落ち着いたということです。
三点目は何ですか。
−ここに情報公開、成果の評価を決定することにより、広域性、透明性の向上を図るというお話が先程あったんですが、情報公開、透明性の向上というのは何も郵政に限った話ではなく、すべての行政の根幹にかかわる話だと思うんですが、その部分だけに書かれているというのが、少しさびしいというと語弊があるかもしれませんが、そういう気がするんですが、情報公開の重要性というものを総理はどのようにお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
○総理 情報公開が必要でないなんて一遍も言っていません。ただ、先程申し上げたように、情報公開を徹底する。これはその前に、例えば予算、決算、企業会計原則で処理する。そして、予算統制は必要最小限にする。それから、毎年度の国会決議を要しない。その意味は年度間繰越運用、剰余金の留保などを可能にするということを申し上げました。これ、困りましたね。情報公開を徹底するというのを落とした方がいいですか。むしろ、これだけ透明性の高い組織にしますよということを申し上げたつもりだったんです。新しい公社という形、これをご理解いただくためにもきちんと書き込んであることが悪いことだと思っていないんです。情報公開法について、今、政府がこれを提出するために法案の作成を急いでいることもご承知のとおりです。その上で新しい公社というものを少しでも分かっていただくために、こうした点まで書き込んだ。私はこれは抜かなきゃならぬとは思わないんです。
−恐れ入りますが、あと一問ということでお願いいたします。
−今後の新しい省庁の設置法の起草作業なんですけれども、金融監督庁の法案の作成作業などを見ていますと、官僚の方たちだけに任しておきますと、出身省庁ですとか、その辺の縄張り争いで、骨抜きとか、いろいろどたばたが起きるような気がしまして、法案の作成作業について、ある程度チェック体制みたいなものが必要だと思うんですけれども、その辺は何かお考えになっていますか。
○総理 行政改革会議が一年以内に結論を出すと言いながら、来年の半ばまで任期があるという理由を考えてください。行政改革会議が最終報告を出される。一遍に全部の法律の設置法まではつくれませんから、恐らく最初に国会にご審議を願う形になるものは、言わば基本法のような枠組みを明らかにして、その業務の大きな筋というものを示すような形のものになると思うんですけれども、まだ最終報告じゃないですから、十二月に最終報告が出た段階で本当はお答えすることかもしれない。恐らく基本法的な性格のものになるでしょう。それが私は大事だということでは、今、あなたが質問されたのと同じことです。
そういう、心配を招かないためにも、行革会議が一年以内に結論を出すとしながら、その任期は来年半ばまで取ってある。この点は私はそんなに心配をしていただかないように、行革会議の皆さんからも十分ご意見をいただくつもりです。
−これをもちまして会見を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○総理 どうもありがとう。