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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第二回アジア欧州会合への出席における内外記者会見における冒頭発言(橋本龍太郎)

[場所] 
[年月日] 1998年4月4日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),410−411頁.
[備考] 
[全文]

 今回のアジア欧州会合首脳会合は、大変実りあるものであった。

 一昨年のバンコクにおける第一回会合は、アジアと欧州の首脳が一堂に会したこと自体が画期的な出来事であった。今回の第二回会合は、いくつかのアジアの主要国が経済・金融危機に直面し、欧州は、「一つの通貨」の導入を間近に控えて、こうした時期に開催され、こうした問題につき各国首脳と率直な意見交換を行うことができたことは大変有意義であったと考える。

 この中で私が特に強く感じたことを二点冒頭に申し上げる。

 第一は、現在、インドネシアを含む幾つかのアジアの国が直面している経済・金融上の困難についてである。インドネシアに対しては、自民党の調査団及び政府の調査団が訪問し、また、私自身、与党三党の政調会長に同行を願い、三週間前にインドネシアを訪問し、スハルト大統領とじっくりと話をした。「ス」大統領より会合直前の一昨日電話があり、インドネシア政府とIMFとの交渉が最終段階にある旨連絡をいただき、インドネシアは今後とも約束した合意を着実に実施していく、特に欧州の各首脳に是非協力をお願いしたい旨、総理より併せて伝えて欲しいとの要請があった。私はこのメッセージをASEM各首脳に伝えたところ、大変喜んでいただくことができた。私自身としても、「ス」大統領の国内改革への決意に改めて敬意を表するとともに、我が国としてインドネシアに対する支援を今後とも率先して行っていく考えである。

 第二は、我が国の景気をいかに回復するかについてである。今回のASEMの場で、私から各首脳に対し、客月二十七日に与党三党が策定した総合経済対策の基本方針を、政府としては早期に具体化し、必要に応じ大胆な措置を執っていく考えであることを申し上げた。私自身、韓国の金大中大統領との会談や、ASEMにおける各首脳との会談を通じ、我が国の内需拡大、すなわち景気回復に対する期待が極めて高いことを改めて感じた次第である。

 ASEMは欧州とアジアの関係強化を図る重要な場になった。金大統領の提案で私が強く支持したビジネス・ミッションの派遣は、アジアに属し、同時に欧州とも関係の深い我が国が、ASEMで担っている役割の大きさを改めて認識させるものであった。

 なお、今回の会合の際に行った各国首脳との二国間会談についても、更に申し上げたいが、時間の関係で、記者の皆様の質問に委ねることといたしたい。