[文書名] 第百四十二回国会終了における記者会見(橋本龍太郎)
−それでは、通常国会閉会に伴い、総理の記者会見を始めさせていただきたいと思います。
冒頭総理から発言をいただき、その後幹事社から五問程度質問して、その後フリーの質問にしたいと思います。
それでは、よろしくお願いします。
○総理 どうもありがとうございます。
第百四十二回国会が本日閉会をしましたが、この国会を振り返りながら今後の課題について冒頭お話をさせていただきます。
まず衆参両院におかれては、政府が提出した平成九年度補正予算、平成十年度予算、また、補正予算、並びに多くの法律案、条約について大変精力的にご審議をいただきました。
この結果、暫定予算まで含めますと四本の予算、これをすべて成立をさせていただいたほか、九十七本の法律が成立、十八本の条約が承認をされました。この場を借りて、衆参両院を始め関係者の皆さんに厚くお礼を申し上げたいと思います。
他方、情報公開法案、ガイドライン関連法案、旧国鉄債務処理関連法案など、重要な法律案でありながら、今国会成立しなかった法律案については、今後出来るだけ早い機会での成立を改めてお願いを申し上げたいと思います。
また、議員立法として提出をしていただいた政治改革関連法案、あるいは国家公務員倫理法案などの早期成立も併せて期待をしております。
今国会で成立したそれぞれの予算は、いずれも日本経済のためにどうしても必要な内容を盛り込んだもの、とりわけ昨日成立をした平成十年度補正予算には、七兆七千億円に上る社会資本の整備と特別減税などが盛り込まれておりまして、当面必要な内需の拡大に向けて強力な措置を講じていく内容となっています。
また、国民の皆さんにとって身近で不安を持っておられるダイオキシン、環境ホルモン対策、あるいは少子高齢化の進展に対応するための福祉・医療・教育、更には情報通信、科学技術への投資など、現在、そして将来の世代にとって本当に必要な分野に事業費を思い切って重点配分をしたのも大きな特徴です。
現在、我が国は言わば自信喪失が行き過ぎている。過剰な自信喪失とも言うべき状態にありまして、円相場の下落や株価の低迷、失業率の上昇など大変厳しい状況に直面しております。
しかしながら、世界でもトップレベルにある高い教育水準、非常に高い勤労モラル、卓越した技術開発力、豊富な資金など、我が国には何物にもかえ難い強味があるということも事実で、本予算と補正予算を早急かつ着実に執行していくことによって、後ほど申し上げます不良債権の処理策の実施などと相まって、我が国はその潜在的な強味を発揮し、個人と企業が主役となる力強い経済成長を取り戻すことが出来ると考えております。
昨年の秋以来のアジアの金融経済危機や大型金融機関の破綻など、内外の急激な経済情勢の変化に応じて、この国のために何が必要かを考え抜き、強い日本経済、強いアジア経済のために断固たる措置を取ることとしました。
深刻な我が国の経済を立て直し、再び活性化するために、不良債権問題の解決による金融システムの安定、内需主導の経済成長の実現、市場の開放と規制緩和に最大限の努力を払っていく考えであり、こうしたことを踏まえて、昨日クリントン大統領と電話で会談をいたしましたが、強い円と市場の安定のために協調出来ることは喜ばしいと合意を得たところであります。
今後とも注意深く足元の経済を見据えながら、力強い日本経済のために万全を期してまいります。
昨年もちょうどこの場において、私は六つの改革の出発点となる国会であった、そのように申し上げました。同じ言い方を使わせていただくなら、今国会がそれぞれの改革について、その歯車が着実に回転した国会でありました。
例えば行政改革については、中央省庁等改革基本法の成立、大変大きな進展がありました。これにより新たな省庁の基本的な枠組みが整理をされるわけですが、今後は二〇〇一年一月の新体制への移行を目指して、二十三日に設立いたします中央省庁等改革推進本部を中心として、官から民へ、中央から地方へと行政改革の理念の実現と併せてスリム化された新たな省庁体制の具体化を進めていきます。
その際、既に発表しております規制緩和推進三か年計画、あるいは既につくり上げている地方分権推進計画に加えて、今後地方分権推進委員会から出てくるご意見等も踏まえて、これを進めることは当然です。
その際には、私自身強いリーダーシップを取るとともに、私に直結する第三者機関としての顧問会議を十二分に活用して、官僚主導との批判を招かないように、その検討を進めていこうと考えています。
財政構造改革につきましては、たびたび申し上げておりますように、将来世代のことを考えるとか、その必要性はいささかも変わるものではありません。財政再建をして、私たちの時代の負担を少しでも減らしてほしいという若い人たちの意見を私たちは忘れてはなりません。
その一方で当面する最大の課題である景気回復のために必要な措置を取り得るよう、今国会では財政構造改革法の骨格を維持しながら必要な改正を行いました。短期的な課題と中長期的な課題の両方に適切な処方箋を書くという大変難しい問題への答えとして、必ず国民の皆様のご理解をいただける判断であった、そう確信しております。
また、金融システムを取り巻く課題に対しまして、今国会の冒頭で法律、予算、両面にわたる金融システム安定化対策を整備すると同時に、利用しやすく信頼出来る市場、制度の整備を図るための金融システム改革法案が成立をいたしました。これらの措置により経済の動脈である金融システムの活力が取り戻され、我が国経済の回復に役立つものと考えております。
そのほか、いわゆる六大改革に関わるものとして、例えば経済構造改革に関しては、大店法の廃止とそれに伴う新たな法的枠組みの整備、省エネ法の改正、また新たな産業を興すためにも非常に大切な役割を果たす大学等技術移転促進法の制定など、さまざまな分野での進歩がありました。大きな進展です。
また、社会保障構造改革については、医療保険制度の見直しを盛り込んだ国民健康保険法などの改正、教育改革については、中高一貫教育の導入など、学校教育制度の多様化、弾力化を推進するための学校教育法の改正など、それぞれの改革にとって重要な法案が成立をしています。
こうした前進を踏まえて、これからも積極的に改革への取組みを続けてまいりますが、是非国民の皆様のご理解とご協力をお願いをいたします。
今、申し上げましたように、私がお約束をした六大改革は一つずつ着実に進んでおります。国民の皆様にお約束をしたことを一つ一つ実行していくという私の政治姿勢、信条、必ずや国民の皆様のご理解をいただけると考えています。
そこで今後の課題について幾つか申し上げたいと思います。
まず第一に、景気回復の大きな足かせとなっている金融機関の不良債権問題の解決に向けて、根本的な対策を講じます。景気回復と不良債権処理は、言わば車の両輪です。先程申し上げましたように、景気回復に万全を期していきますが、同時に不良債権問題については、具体的に不動産を担保としている不良債権に関する債権債務関係を整理するための制度、体制づくり。
担保不動産や不良債権の売却や証券化などを進めることによって、土地、債権の流動化を促して、不良債権を処理やすい環境を整備します。
既に内閣を中心に具体的な検討に着手したところでありますが、党とも協力しつつ、この後行われる参議院選挙の期間中においても、議論を深めていき、その結果必要となる法整備については、次の国会にも所要の法案を提出したいと考えております。
もちろん、こうした施策とともに、金融機関の一層の情報開示を進めるなど、金融機関経営についてより一層の市場規律を徹底していくことが重要であり、また、その経営について厳しい責任を持っていただく必要があることは、改めて申し上げるまでもありません。
また、税制の見直しについても、さらなる検討を深める必要があります。法人課税については、国・地方合わせた税率を三年以内の出来るだけ早い時期に、すなわち三年を待つことなく国際水準並みに引き下げて、また、所得課税については、公正で透明性の高い国民の意欲を引き出せる、働く方が額に汗した上で報われるような税制を構築する必要があり、これらの税制の抜本的な見直しに向けて本格的な議論を進めていきたいと思います。
当面する最大の課題である景気回復の足取りをしっかりしたものにするためにも、こうした施策の具体化を全力で進めていきます。
更に本日この場を借りて一つ問題提起をさせていただきたい。それは少子化の問題です。結婚や出産という個人的な事柄に政府が立ち入るべきではないというのは、改めて申し上げるまでもありませんけれども、同時に我が国が直面する、世界でいまだかつて経験したことのない、類を見ない急激な少子化というものが続けば、我が国の人口構成は大きく変化し、将来の社会経済に深刻な影響を与えるというのも事実です。
私が六つの改革を提案いたしましたのも、高齢化に加えて、この少子化という現実にどう対応するか。そんな問題意識からでありました。
こうした状況を考えるときに、出産、子育ての妨げとなっているさまざまな社会的、経済的な要因を取り除いていく。老いも若きも女性も男性も、お互いが喜びあえるような家庭、地域社会、そして職場をつくっていくことが、今の日本にとって非常に大切な課題ではないかと思います。
この点については、今後皆様の中で本当に活発な議論をしていただきたい。政府としても、今申し上げたような問題意識を持って、具体的に何が出来るのか。どこまでしていいのか。そして、何をなすべきなのか、真剣に考えていきたいと思います。
国際社会に目を転じますと、先月インドが、そしてパキスタンが相次いで核実験を案施しました。核兵器のない世界を目指す国際社会の努力に逆行するものであり、誠に残念です。我が国としては、インド、パキスタン両国に対して経済協力面を中心とする厳しい措置を課すとともに、バーミンガムサミット、国連の安保理やG8の外相会合などの場において、この問題に関する議論のイニシアチブを取ってきました。
加えて先日、核軍縮不核散に関する緊急行動会議の発足を明らかにいたしました。今後一年のうちに我が国で数回会議を開催し、不核散体制の堅持・強化及び核軍縮の促進、更には核廃絶に向けた取組みについて、世界に向けた提言を行いたい。そのためにもここからのよい提言を得たいと考えております。
これらも核軍縮、核廃絶に向けて一層の努力を積み重ねていきたい。それが唯一の被爆国である我が国に課せられた使命であるとの思いを改めて痛感しています。
七月にはクリントン大統領、シラク大統領からお招きをいただき、日米、日仏二つの首脳会談がございますし、秋にはロシア訪問が予定されております。江沢民国家首席、金大中大統領の訪日の予定もございます。
こうした会談において、今までに培ってきた各国首脳との信頼関係を基本に、我が国の立場を明確に申し上げ、ともになすべきことはなしながら、二十一世紀に向けた平和と繁栄の構築のために、全力を尽くしたいと考えております。
通常国会を終えて私から所感と、そして今後の政策として考えていることの一部を申し上げましたが、今の時点で明確な施策の姿が見えているものばかりではありませんけれども、今申し上げたようなさまざまな問題点について、常に問題意識を持って、国民の英知を結集し、今後とも精力的に取組みます。国民の皆様が持っておられる不安を一つ一つ取り除いていきます。
来るべき参議院選挙では、国民の皆様の審判を仰ぐことになります。私も日本各地を遊説し、その場所、その場所で皆様に私の信念や考え方をお話させていただきますが、どうか耳を傾けていただきたい。その上で長いこの国の将来を見据えて、今、何をなすべきかという皆様のご意見を是非聞かせていただきたい。
皆様にお目にかかることを心から楽しみにしています。今国会中、会期の間じゅう、各党、各会派の議員の各位、また、多くの国民の皆様からいただきましたご理解やご協力に重ねてお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
−それでは幹事社からの質問を行いたいと思います。
昨日のクリントン大統領との電話会談の結果、円安是正のための協調介入が実施されましたが、これはやはり一時的なものであって、日本の構造改革がやはり急務になっていると思います。特に、総理の冒頭発言でもありましたけれども、不良債権の問題が大きな課題だと思います。自民党では、三十兆円の公的資金枠に積み増す形で財投資金を整理回収銀行に投入する案なども出ているかと思います。さらなる公的資金の投入について、総理はどのようにお考えなのか、不良債権問題処理の具体的道筋をもう少し詳しく述べていただきたいと思います。
○総理 今、申し上げたように、日本の経済、私どもは本当にこの深刻な状況から脱して、再び活性化をするために、不良債権問題の解決によって金融システムを安定させ、内需主導の経済の成長を実現すること、市場開放、規制緩和のために最大限の努力を払っていきたいと考えていますが、まさにそうした思いを込めて、昨日クリントン大統領との電話会談をしました。そして、強い円と市場の安定のために協調出来ることは喜ばしい、そんな合意を得たわけです。その中で、やはり金融というのが、何といっても国民の皆様の資産運用の場でもありますし、同時に経済活動に必要な資金を供給するという重要な役割を担っているわけですから、その本来の機能が発揮されるように、預金者保護とシステムの安定性を確保します。
そして、その中で金融機関の不良債権問題を早く解決をしなければならない、こうした認識の下で、政府として金融機関経営に対する市場規律を徹底することによって、不良債権処理の早期打開、そんな考え方を持ってきました。
具体的には、今年度四月から導入した早期是正措置で、金融機関の資産内容、各金融機関による自己査定や公認会計士の監査、銀行検査によるチェックを行うことで、不良債権の処理を徹底させていく。同時に、いっそうのディスクロージャーを進めてもらうことによって、不良債権を帳簿の上から、バランスシートから本当に消してもらわなければなりません。
ちょうど、本年の三月からアメリカのSECの基準、従来の日本より厳しい基準ですけれども、このシステムで金融機関の決算を始めた。そして、今までのルールだと、去年の秋、十六兆円規模だった不良債権が十四兆円ぐらいに減っていいはずだったわけです。そして、それは事実減っていた。しかし、新しいSECの基準で計算してみると、不良債権は二十一兆円に増えていた。これは主要十九行だけのことですから、情報開示が必要なこと、同時に、そのバランスシートから落とすということがいかに大事か、お分かりがいただけると思うんです。
ですから、政府としては、不動産担保付きの融資をめぐる権利関係を整理するための仕組み、あるいは不動産担保付きの債権の証券化など、これはさきの総合経済対策で盛り込んだ施策ですが、これの具体化を図るとともに、更に金融システム再生のための実効のある施策に取り組むために、新たに設置された政府与党金融再生トータルプラン推進協議会で検討を始めた。ちょうど、先月五月二十八日、八項目の中間取りまとめをしました。今月二十三日にもこの会議は開いてなお努力を進めていきます。
土地の関係では、例えば、住都公団による土地の有効利用の推進のように、補正予算の成立で法律を必要とせずに実行に移れるものがあります。また、権利関係の調整のための委員会のように、現在、法律案の準備にかかっているものもあります。更に、さまざまな構想も出てきているわけですが、これはこれから検討していくことになる。
あなたのご質問で、最初から公的資金という形で話が出てきたんですけれども、ちょっとその話の順番は違いはしないか、むしろ、今申し上げたようなことをきちんと手順を踏み、法律を必要としないものは今の住都公団の例のように、すぐにでも始めていきますし、法律を必要とする制度、これは選挙の期間中といえども、政府の作業は進めていきますし、党も努力をしてくださると言っていますから、出来るだけ早い国会に、こうした法律案をご審議をいただけるように、私たちとしては全力を尽くし、可能なものから順次作業を進めていきたいと思っています。だから、始めに公的資金ありきというのはちょっとどうかな。
−それでは、税制改正についてお伺いします。冒頭の発言の中でも、法人税の引き下げの時期について、三年以内出来るだけ早くということをおっしゃっていましたが、これは二年以内というぐらいの気構えでいらっしゃるのか、また、所得税については、具体的にどういう方針で見直していくのか、課税最低限の引き下げなども含めて検討なさっていくのか、その辺をお伺いします。
○総理 これは今まで国会で申し上げてきた以上に申し上げる問題点はないわけですけれども、皆さんの議論で、往々にして境目がよく分からないのは、国税だけを対象としておられるのか、地方税も含めておられるのか、言い換えれば、所得税だけですか、個人住民税も含んでいますかという、実は、法人税の場合でも地方税としての法人事業税があります。そして、それぞれ持っている問題点は違っています。
法人課税の方から先に申し上げるなら、平成十年度の改正で、法人税、あるいは法人事業税、両方とも基本税率を引き下げました。そして、今後三年のうちに出来るだけ早く、三年を待つのではない、国際水準並にしていきますということは既に明言しています。その上で、地方分権が進めば進むほど、地方の財源というのは大事な問題になります。その法人事業税についても、いろいろな議論が既に出されています。こういうものをどうするか、これはやはり地方自治体の皆さんの意見も伺わなければなりません。
その所得課税についても実は同じ問題が一つあるということを付けた上で、例えば、税率構造についてもさまざまな議論があります。あるいは資産からの所得に対する課税の在り方、あるいは年金をめぐる税制、言い換えれば、どの方にどのぐらいの負担をお願いするかという問題。そして、これは問題点は既に私自身も提起をしましたが、聖域を設けることなく予断を持たない、幅広くきちんとした検討を行っていく、そうした中において、今も申し上げてきたように、国民が額に汗をして働かれ、そこから納めていただける税にする。税金を払うのに喜んでということはなかなかないかもしれないけれども、公正なものであり、透明なものだと受け取っていただけるような税制にしていきたい、そういう方向の議論をお願いをしています。
問題点は今申し上げたような幾つかの問題があります。そして、国税だけではなく、これから先、分権が進めば進むほど地方財政というものも意識に入れて考えていただきたい。この点を付け加えて申し上げておきたい。
−参議院選挙の話を少しお聞きしたいと思いますが、参議院選挙では景気対策というのはやはり争点の一つになると思うんですが、総理はこれまで政権の担当者として、このような厳しい経済状況を招かれたという責任の声もあると思うんですけれども、こうした点について国民、有権者にどのように説明をされていくのか、それから、参議院選挙の結果として当然議席数が出てくるわけですけれども、そうした有権者に訴えたことがどれぐらいの議席を取れば、信任を得られたというふうに判断をされるのか、その議席数についても見解をお聞きしたいと思います。
○総理 ちょうど、二年前の衆議院選の際、私は地方分権とか規制緩和といった努力を進める、それを土台にして中央省庁の制度解体ということと合わせて、国民の皆さんに消費税の税率の引き上げをお願いしたい、そのうちの一%は地方の財源なんですという訴えをしました。
そして、昨年、その申し上げたことを、先行している所得税、住民税減税の見合いのパーセンテージ、二%引き上げさせていただいたわけですが、これは国会の答弁でも申し上げたことですけれども、私たちが予想した以上に昨年の一月から三月の間、多くの方々がいろいろな買い物をされて、その反動が四月から六月の間に出てきました。この影響は正直私たちが予測していたものを越えていたんです。
しかし、七月から九月にかけて消費が回復をし始め、よかったなと思っておりましたときに、途端に影響が出たものとして、アジア地域の通貨金融市場の混乱というものが起こり、我が国の大きな金融機関が幾つか経営破綻する、そうした状況の中で、家計もそうですし、企業もそうなんですが、景況感が厳しさを増してきた。そして、その厳しい見方というのは、実は個人消費にも設備投資にも影響を及ぼして、非常に厳しい状況になりました。そして、それは今年になってから、発表されたいろいろな数字でも、その方向というものが出てきたわけです。
そうした状況に対応しなければならないということから、今国会が始まって以来、緊急経済対策、そして、二兆円規模の特別減税、九年度補正予算、更に、皆さんの預金は心配がありませんということとともに、だめな金融機関はこれはもうどうしようもないんですけれども、ちゃんとした金融機関が自分の力をなくしちゃ困りますから、そうしたことを含めた金融システム安定化策、こうしたものを大急ぎ、そして的確に実行するように努力してきました。こうした対策が既に実施に移されておりまして、この金融安定化策などによりまして、例えば、預金をしておられる方々が、自分の預金がなくなってしまうという心配をかけることは少なくともなくなりましたし、その意味での不安感というのは鎮静してきたと思っています。
その上で、今、申し上げたように、我々としてはこの短期間における景気の回復への足取りをしっかりさせるため、同時に、中長期的に見ても絶対に今やっておかなければならない課題として、過去最大規模の総合経済対策とともに、今、不良債権の処理、本格的な処理というものに取り組もうとしています。
今まで私たちの中に、帳簿の片側に不良債権があれば、片側にそれに見合う積立てをきちんと、引当金を計上していれば、一応処理されているという甘い考え方が全くなかったとは言えません。しかし、それでは実はそこに積まれているお金は使われないわけですから、それは貸し渋りの原因にもなりますし、体質として改善をされるということにはならないとなれば、これは我々としてどんなことがあっても、バランスシートから本当に債権を消すためにこれを放棄するのか、債権化して市場で取引の対象にするのか、手法はいろいろあるでしょう。こうした対策に全力を挙げていこうと今しております。そういう意味では、昨日のクリントン大統領との電話会談、力強い日本経済のために私は万全を期していきますが、強い円と市場の安定に協調出来ることは喜ばしいという合意を得た。これもこうした思いの中の表われとして受けとめていただきたい。
それから、参議院選というお話が今、出たのですが、これは本当に我々はこの選挙戦は必死で闘い抜いていくつもりですし、私自身当然ながら先頭で闘い抜いていきますが、党所属の国会議員、党員の皆様方、同じような気持ちで一つになって、一丸として選挙に取り組んでいきたいと思っています。そして我々は本当に改選議席の六十一よりも一つでも多く積み上げたい、全員当選を目指したい、そんな思いで闘っていくわけです。
ですから、あなたのご質問に大変答えにくいのは、数字ももちろんあるでしょうけれども、それ以上に国民の皆様に訴えて、それに対して国民の皆さんがどう反応してくださるのか、どんなふうに激励していただけるか、あるいはご批判をいただくか、その中身は一体何なのか。精いっぱい選挙戦を闘い抜いていく中で、私自身が肌身で感じるものがその信任うんぬんというものについての感じを言うことになるのでしょう。そうした自分で感じるもので評価をし、判断をしていくという以上に今、申し上げる言葉がありません。
−自民党内では早くも参議院選挙後の話題で内閣改造ですとか、役員人事を求める声も上がっていますけれども、現段階での総理のお考えというのは、改造や人事を行うお考えはあるのかどうか。これを行う場合には、時期は臨時国会は七月末にもと言われていますけれども、臨時国会の前になるのか、後になるのか、その点について。
○総理 今日この通常国会が終わったわけです。そしてこれから私たちは参議院選に臨む。その参議院選が実施もされていない状況の中で、その後の内閣改造とかいうのは少し早過ぎると思いますし、また私自身、今そういう問題について申し上げられる、そんな気分ではありません。とにかく景気の回復というものを抱え、そのために予算を早期に執行し、施策を国民の下にお届けをする。あるいはこの不良債権処理などに全力で取組みながら、参議院選の先頭に立って闘い抜く、これがすべてです。
−先程総理の方から問題提起という形でありましたけれども、少子化の問題です。これについてもう少し具体策が、総理のお考えの中にあるのかどうか、もしお聞かせ願えればと思いますが。
○総理 これは大変実は難しい問題点で、私自身もこれがすべてだという模範解答が今、出来るような課題ではありません。そしてさっきも申し上げたように、やはり本来政治が介入してはいけない部分に触れる可能性もある問題点でもあるわけです。
ただ、これは本当に皆さんにともに考えていただきたいと思うのですけれど、高齢化というものが非常に大変なピッチで進んできた。これは本当にめでたいことだと思っています。それはどんな感じか。老人福祉法が出来た昭和三十八年に、日本政府は初めて百歳人口の統計を取り始めたのですが、そのとき日本中に百歳以上の方は百五十三人おられた。昨年の敬老の日、同じ基準日なのですけれども、八千四百九十一人おられる。しかし実はその間に出生率は昭和三十八年に二・○だったのが、どんどんどんどん下がり続けてきて、ついに一番最新の数字は一・三九という数字になった。
ちなみに実は私の厚生大臣のとき、昭和五十四年です。百歳人口九百三十七人で、私は昭和三十八年から六倍になったかという感慨を持ったのですけれども、そのときには出生率が一・七七でした。下がりっぱなしなのです。だからこの傾向が実は続いていくと、どんどん人口は減り始める。そして三十年後の二〇三〇年、アバウトですけれども、今一億二千六百万の日本人が約一千万減る。そして五十年後には一億人になる。もしそのままの数字が続くとすれば、二一〇〇年には現在の人口は半分になる。そして生産年齢に当たる人口、生産年齢人口は今の四割に減ります。ですから、社会保障構造改革、あるいは財政構造改革など、よくばりだと言われながら六つの構造改革に取り組もうという、その原点の問題は実はこの問題なのです。そして、昨年行われた有識者調査で大部分の方が非常に深刻だという認識を持っていただいていました。ですから一体我々はどうすれば、多くの人々が結婚や出産を望んでおられるのにかかわらず、こういう状況が生じているのか。子供を産む、産まない。これは本当に個人の、あるいはご家族の選択の問題なのですけれども、産み、育てることに夢をかけられるような社会というものを目指した環境整備をしなければならない。
ですから例えば、私自身当時の社会党の皆さん、あるいは他の党の方々と一緒になって、教育職、福祉職、それから医療職、言い換えれば看護婦さんであり、保母さんたちであり、学校の先生方に対する育児休業の議員立法をつくり、提案者であった本人なんですけれども、子育てと仕事を両立させるための育児休業制度が非常に大事なんだけれども、それが取りやすいような職場環境をどうつくればいいのか。あるいは再雇用、あるいは中途採用といった柔軟な雇用の仕組みというものが、どうやれば普及出来るのか。あるいは子育ての環境整備として、突拍子もない言い方かもしれませんけれども、保育施設、保育の人材を多様化していく。その場合に、例えば地域のお年寄りが保育ボランティアに参加していただくことは出来ないものだろうか。子育てグループといったような発想になるのでしょうか。こんな考え方もあると思うのです。
あるいは、今、小中学校に随分あき教室が出てきました。これを例えば保育の施設、または子育ての施設に転用するように何かうまい促進策がないだろうか。あるいは育児に対する支援ということと同時に、世代間の共通性、お年寄りの生きがいを増すということだけでも、世代間同居住宅というものを建設していく上で何かメリットが考えられないか。あるいは、これは本当に議論が真っ二つです。しかし、出産時の経済的負担を軽減するための出産一時金といった考え方、これは賛否両論があるのですけれども、一体どちらに考えるか。あるいは、その中で子供を本当に産みたい、しかし産めない方に対して不妊治療のご相談とか、研究というものはどうしたらいいのだろうか。考えると実は非常にたくさんの課題があります。
今、政府として私どもは関係省庁がただ連携するだけではなくて、現実に子育てに携わっておられる男性、女性を始めとして、幅広い有識者の方々にも参加していただいた有識者会議とでもいうようなものをスタートさせて、対策の検討を開始したいと思っているのです。これは子どもたちの問題についてもとった手法ですが、その中から今後とっていくべき対策の要綱というものが、もしまとまってくれば、大変幸せだと思います。今、縦割り行政の壁ということがよく言われまずけれども、既に二〇〇一年の省庁再編を先取りした形で、厚生・労働両省を中心にして、文部省なども加えたプロジェクトチームを発足させることも一つの考え方だと思っています。既に厚生・文部の両省の間の協議を始めていますが、この問題だけは政府が強制すべきことでもないし、一定の限界を超えて行動してはならない部分を持つ問題だけに、考えていくといろいろな課題が出てくるのですけれども、今、具体的に有識者の方々にそうした考え方のエッセンス、要綱というべきものでまとめていただけないだろうか、そういう会合をスタートさせる。そうしたことを考えています。
−各社自由にご質問いただければと思います。
−昨日、総理がクリントン大統領と電話で会談されて、その結果、ニューヨーク市場に協調介入しましたが、総理ご自身として両国が協調介入するという意思がマーケットに十分伝わったというふうにお考えですか。一日たってどうでしょうか。
○総理 市場のことは市場の関係者に聞けという言葉はよくあるんだけれども、私たちとしては本当に昨日お互いに合意をし、その上で介入を開始した。そしてその介入が市場で、私は好感を持って受けとめられることを本当に願ってきました。ニューヨークにおいて協調して介入をしたわけですけれども、これは今、私どもが一定以上のことを申し上げるべきではないと思うのです。むしろしばらく前まで国会のご論議なんかを聞いていても、例えばG7の協力体制が一体どの程度のものなのか。あるいは、日米の間できちんとした対応がとれるのかとか、いろいろな角度のご質問がありました。恐らくそういう感覚が一般的にあったんだろうと思います。それだけにきちんと両国が協調して市場に介入した。これは今、結果としてそれなりの評価を市場からいただいていると思っていますし、同時に、そういう評価を我々が継続していくためにも、日本の経済の先行きに対する不安を消す努力を、全力を挙げて我々は見える形で、しかも結果が出せるように進めていく必要があるわけですし、それが先程来申し上げてきている金融の信頼性の回復、言い換えれば、不良債権の実質的な処理ということに結び付いていくんだと思うんです。
ただ、これは今までいろいろ議論がありましたように、例えば一つの土地をとってみても、そこに対する抵当権、権利義務関係が大変錯綜しているといった問題を解きほぐす仕組みと同時に、それを担保付債権として市場に出す、そういう市場もきちんとつくらなければいけないわけですから、口で言うのは簡単ですけれども、結構作業としては大変な問題があるんですが、先程申し上げたように、その努力を、政府は選挙中といえども続けていくし、与党もそういう考え方でおられます。法改正を必要としないものはさっさとやり始めるし、法律を必要とするものは、あるいは改正ではなくて新たな立法を必要とするものは、出来るだけ早く国会でご審議をいただけるようにする。そういう努力をすることによって、きちんとした信任が得られる、そうした流れになっていくと思います。
−特別減税は今回も手当されたと思うんですけれども、税制の抜本改革に絡んで恒久減税のことについては、例えばクリントン大統領と昨日お話しされたのでしょうか。それとも今後総理としては、そういうことも含めて考えていらっしゃるのでしょうか。
○総理 クリントン大統領との会談の中で、特別減税ということは話題にはありませんでした。先程も申し上げたように、税制改革というものは我々が考えていかなければならないテーマですから、それぞれの税制について、特に先程は法人課税と、所得課税と、国税、地方税を含めた論議として申し上げたんですが、税目としてあなたが言われるのは、何を指しておられるのか分からないけれども、少なくとも恒久減税というような話題は、昨日大統領との間には出ていません。
−総理、今ずっと会場の中で、昨年暮れからとってこられた施策のご説明がありましたし、不良債権の問題等これから取り組むことのご説明があったんですけれども、総理がいろいろとってこられた施策について、若干タイミングが遅れたのではないか。例えば、トゥーレイトの方ですけれども、という批判があろうかと思います。そういう批判に総理はどういうふうにお答えになるのでしょうか。
○総理 私はそういう批判があることを否定をしません。殊に今、例えば不良債権の問題で申し上げたのは、新たな仕組みをつくるために法律を必要とするようなケースにおいて、発表したタイミングから法律案を用意し、その法律案を国会に審議をお願いし、国会が審議されてから、否定されるケースもあるだろうけれども、成立し、その施策が実行出来るまでには一定のタイムラグがあります。その意味では、今回の総合経済対策十六兆円強の中で特別減税の二兆円の上積みを含め、また七兆七千億円の公共事業についてもいろいろなご議論がありますけれども、総合経済対策を発表してから、その中の予算関連の分では補正予算という形で国会のご承認をいただいたのが昨日の段階でした。その時間差というものが遅れと言われる部分については、これは本当に甘受しないわけにいかない点だと思うのです。
これは例えば、日本のシステムで予算が編成されてから国会で通過、成立するまで、衆参両院のご審議をいただく時間というのはおおむね一定の時間を必要とする。これ実は日本人は皆それを理解していただいていますけれども、必ずしも海外でそれが理解されているとは言えません。それはいろいろな場面にあることなんですけれども、発表してからそれが実行されるまでの時間差というものについて新たな特に仕組みをつくらなければならず、そのために法律をつくり、その案を国会に提案し、国会でご審議いただき、それが成立し、実行に移るまでの時間差というものが、これは遅れている。お叱りの中に一つはそういう部分もあるのですが、それは私は甘んじて受けなければならないと思っています。
−時間の関係であと一問になるけれども、どなたか。
−今の関連なんですが、時間差というのは分かるんですが、それだからある程度見通しというものが大事になってくると思うんです。それで昨年の段階で消費税を二%税率を上げるなど、九兆円の負担増をなさったわけですよね。このことが現在の景気の停滞に結び付いているんではないか。総理がおっしゃられるのはアジアの経済の問題とか、金融機関の破綻の問題もあります。これは分かるんですが、そういうことを考えて、見通しには誤りがあったんではないかということはないんでしょうか。
○総理 だから先程私、素直に申し上げたと思うんだけれども、消費税率を引き上げさせていただきたい、選挙で訴え、そしてそれを現実に実行しようとしたときに、駆け込み需要、これは我々の予想を超えて本当に多かった。その分反動として昨年の四月〜六月に落ち込みが大きくなりました。その幅が大きくなりました。そこの見通しは確かに我々は甘かったのですということは、先程素直に申し上げていると思うんです。その上で七月〜九月期の消費は回復に直かっていた、プラスに転じていた、これは事実の問題としてこれは認めていただきたい。
それと同時に、先程申し上げたようなピッチで進む高齢・少子社会の中で、社会保障負担というものを本当に将来も国民の暮らしのセーフティネットワークとして残していく。その必要性はみんな認めていただいていると思うんですけれども、そのために今のままで仕組みがいいかといえば、あるいはこのままの仕組みを続けていけるかといえば、私は見直しはしなきゃならないと思うんです。
ですから私は、これはこれから先も、年金も、医療保険も、福祉も、当然ながら国民のセーフティネットとして、同時に国民連帯、ネットワークの一つとしてきちんと維持し、続けなきゃならないと思っています。ただ、若い働き手がこれだけ減ってきているという事実は認めてください。そして支えていかなきゃならないお年を召した方々が増えてきて、それはどこかで負担をするか、給付をより効率的なものとして見直すか、いずれにしても我々次の世代になっても、その次の世代になっても、社会保障という仕組みが維持出来るようにしていかなきゃならないんですから、その中で選択肢を広げる努力をしていかなきやならないんですから、消費税率について二%の引き上げというものが私どもの予想を超える駆け込み需要を生み、それは逆に四月以降の消費の落ち込みという形で出ました。これは事実として私決してその見通しの間違いを、あるいは見通しの甘さというものを隠してはいません。その上で、将来に向かって考えていかなきゃならないことは、やはり一緒に考えて、きちんと維持出来る仕組みをつくっていかなきゃいけないんじゃないでしょうか。
−少子化の関連なんですけれども、先程いろいろなポイント、これからの検討のポイントになるものと、それから総理の問題意識として挙げておられたんですけれども、具体的に挙げておられた出産一時給付金を含めて、これまでの議論というものが、経済的な支援に偏っていて、つまりはばらまき的だったために、いろいろな自治体の試みや政府の試みが空振りに終わったということがあったと思うんですね。今回の厚生白書が鋭く指摘しているのは、固定した日本の男女の役割分担とか、長時間労働に代表されるような日本の雇用的な慣習が、いろいろな面での壁になっているのじゃないかという点があったと思います。その点についての方向を転換するとしたら、それは行政ではなくて政治の方の役割だと思うんですけれども、そういうことに関して、総理はどういう問題意識をお持ちなのか。具体的に何か手を打たれるようなお考えはあるのか。
○総理 問題提起として、私は先程そうした点にも触れたと思うんです。産みたくても産めない方、その場合にどうすれば、雇用という面からその仕組みを考えていけるんだろうということは申し上げてきました。それがまさに男女共同参画社会という方向で我々が議論をし、またこれからもし続けなければならない大きな役割の問題だと思います。ですから、これは物の面ととらえられるか、あなたの言われるような仕組みの面としてとらえていただけるか分かりませんが、例えば介護保険ひとつ考えてください。こういう仕組みが必要なのは、従来固定的に女性の役割としてとらえられ、それが家庭の奥様方、お嫁さん、ある場合はお嬢さん、その肩に背負わされてきた介護というもの、これを社会的なシステムとしてきちんと構築をし、その介護という負担が、ただ単に家庭の中の女性の役割と位置づけられているところから姿を変えようとして、介護保険という仕組みがつくられたわけです。そういう意味では、政治も行政もこうした問題意識を持って、どちらか一方の性にすべての責任がかかるような状態から、男女共同参画社会と言われる方向に向けようという努力を既にしています。
その上で、例えば、雇用機会均等という面では、既にルールが定着しました。仕組みとしては、先程も申し上げたように、育児休業という仕組みは、私自身かかわりを持った、スタート時に議員立法した提案者ですけれども、そういう時代から今に至るまでの間に、仕組みは変わってきましたが、実はなかなかその育児休業制度が定着をしない理由、定着というか、定着はしているんですけれども、利用されない理由の一つに、その期間を終わって復職する、その間に同僚は昇進しているけれども、自分は育児休業を取ったところからスタートというハンディを背負わされる。そういう問題があることは事実なんです。だから、その雇用のルールを変えていけるかどうかとか、しかしこれは行政だけが、あるいは政治で押し付けられるものではありません。
例えばそういうルールを行政で固定しようとしたとき、私はなかなかうまくいかないだろうと思います。もちろん、そういう方向にそれぞれの職場が動いていくように、そして動いていくとすれば、それを加速出来るような、そういう役割は政治も行政ももちろん果たしていきますが、むしろそういう意味では、私などもそうなんですけれども、頭の中に無意識のうちにしみ付いているいろんな意識を変えていく、これはむしろ行政とか政治という部分を超えているんじゃないでしょうか。言い換えれば、お互いここにおられる一人一人が、どういう意識でこの問題に取り組んでいただけるか。そして、そういう仕組みづくりに協力をしていただけるか。
今、あなたが指摘されたように、資金的な支援というか、そういうものだけでこの問題が解決するものではない。男女共同参画社会というものの目指す方向はそこにあるという、そのご指摘は私はそのとおりだと思うし、既に一つの例として介護保険を今挙げましたが、そういう取組みを我々が皆やっていかなきゃならない。その点、私は今の指摘は非常に正しい指摘だと思います。
どうもありがとう。