[文書名] 大阪市における記者会見(小渕内閣総理大臣)
○司会 小渕内閣総理大臣の記者会見を始めたいと思います。まず最初、地元記者会十分二問、同行記者から十分二問でございます。まず、大阪府政記者会、お願いいたします。
−−地元記者クラブの大阪府政記者会の幹事社の産経新聞社、サカイワカサと申します。
地元からとして二つ質問をさせていただきます。時間も限られていますので、質問を続けさせていただきます。
まず一つ、政府は、減税や景気対策など、地方財政の歳出をも伴う政策を行おうとしていますが、総理は破綻を目前にした地方自治体の財政再建に向けた施策を何かお考えでしょうか。あれば具体的にお答え願いたいと思います。
続いて二つ目です。大阪ではオリンピックやサミット誘致の機運が高まっていますが、オリンピックに関しては、国内候補都市として大阪市が決まったものの、誘致に向けた閣議了解がいまだ行われておりません。両イベントの政府の誘致に関する具体的な方策があればお答え願います。
○総理 それではお答え申し上げますが、御指摘のとおり、地方財政が極めて厳しい状況にございまして、特に大都市部の府県で、景気の低迷によりまして、法人関係税を中心とした税収の落ち込みが非常に大きい。さらにここにまいりまして一段の厳しさを増しておるという状況については、十分認識をいたしております。先般の知事会議におきましても、山田知事が参られまして、冒頭このことを主張いたしております。
一方で、我が国経済は極めて深刻な状況にあることから、まず国、地方を挙げて当面の緊急課題である経済再生に全力を尽くす必要があると考えております。したがいまして、今後の景気回復策の実施に際しましても、地方自治体をはじめ関係方面の意見を十分承りながら、地方財政の運営に支障が生ずることのないよう適切に対処するとともに、個々の地方自治体においても、徹底した行財政改革を推進していただくことなどにより、地方財政の健全化を高めてまいりたいというふうに思っております。
重ねてですが、極めて厳しい財政状況にあることは承知をいたしておりますし、各市の地方税関係の税収が極めてこれまた厳しい環境にあります。そういう中で、実は国としての税制改正も考えておるところでございまして、これに伴いまして、国税・地方税との問題も起こってまいっておりますので、早急に大蔵大臣、自治大臣に指示を申し上げて、この調整方についても、最終的に減税を行うという場合には、調整が可能なようにいま折角の努力をお願いしておるというところでございます。
第二の大阪の五輪誘致についてでございますが、オリンピック開催を我が国でするということは、我が国のスポーツの普及、振興、国際親善の推進、社会経済の活性化等にも大きな意義を有することは認識をいたしております。
今回のオリンピックの大阪招致の活動につきましては、過去のオリンピック招致と同様、大阪への招致や開催に対する支援のあり方などについて、閣議了解が必要であると考えております。現在は文部省をはじめとする関係省庁におきまして鋭意検討を進めており、できるだけ早い時期の閣議了解を目指して取り組んでおるところでございます。今後とも大阪オリンピックの招致活動が円滑に展開できるように、適切に対処してまいりたいと思っておりますが、恐らくこのオリンピックについては、世界のかなりの有力な国が立候補されるのではないかと聞き及んでおります。そういう中で我が国大阪が何としても開催地に選ばれてほしいというのが日本国民の気持ちの総するところだと思いますので、そういう意味から言いましても、国を挙げてこれを支援するという意味での閣議了解というものは極めて重要だと理解しております。
過去大体、自治体がオリンピックを開催する年、それから開催都市の決定の時期、あるいは正式立候補、こういうのがあるわけですが、ぜひ閣議了解をできる限り早い時期にこれを行って、そして準備万端怠りないという日本の体制を整えていくことは極めて大切なことだという認識は深くいたしております。
○司会 ありがとうございました。引き続きまして内閣記者会にお願いいたします。
−−今月の半ばに、政府が第三次補正予算をお決めになりますけれども、その内容で特に重視したいと思われている施策にどういうものがあるかということです。いまのところ事業規模十兆円超と言われていますけれども、その超にどの程度の上積みを考えていらっしゃるのか。現時点でのお考えをお聞かせください。
○総理 我が国の経済の現下の厳しい状況にかんがみまして、経済対策閣僚会議を開催いたしまして、十一月半ばまでに緊急経済対策を策定することを決意いたしたところでございます。先週末に各省庁から提出された景気対策臨時緊急特別枠に盛り込まれる施策を含め、私の十月六日の閣議における指示に基づき検討されてきた施策を十分吟味して、タイムリーかつ効果的な緊急対策をとりまとめまして、これを受けまして、第三次補正予算を編成することをいたしたいと思います。
なお、その規模につきましては、従来より公約として、事業規模十兆円超の補正予算と申し上げているところでありまして、当初予算や一次補正の執行状況も見きわめつつ、現下の景気情勢に的確に対応した補正予算を編成するよう努力してまいりたいと考えておりますが、現下の経済状況の厳しさにかんがみまして、先般来、各省庁最高責任、すなわち大臣・長官に、それぞれとしてどういうものができるかということを十分検討して、これを提出してほしいということをいたしておりますので、そういった意味では、考え考え抜いて各省庁とも出してきていると思います。
それと同時に、政府与党といたしましても、現在の状況の中でいわゆる「十兆円を超えるような予算を」と、こういうことを言っておりますし、かなり党の幹部の皆さんにおかれましては、十兆円の中身についても、俗に言う真水でどの程度できるかということについて、強い主張もあるようです。ですから、当然のことですが、政府与党としての強い要請というものも受けとめなければならぬと思っておりますから、党の方からもより良い補正予算の中身というものが具体的に出てくるということであれば、私は常々申し上げておりますように、この機会に少しずつ出動するのではなく、やるべき時はきちんとやらなければならぬということを申し上げておりますので、しかし、それにはその内容が極めて重要なのでありまして、今時点において景気回復に大きな効果を発揮するということがポイントでありますが、同時に、これは長期にわたりましてもそういう施策が有効に国のために働くということでなければならぬと思っておりますので、ここは党・政府を挙げて補正予算の編成に向けて、大車輪で頑張ってみたいと思っております。
○司会 次の質問をどうぞ。
−−最後の質問になります。幹事社の日経新聞のヤマネと申します。臨時国会を前に自民党は野党との政策協議を始めておりますが、特に自由党、公明党との連携について、どのような姿勢で臨むお考えでしょうか。特に商品券構想が出ておりますが、この実現性について総理はどうお考えでしょうか。よろしくお願いします。
○総理 まず最後の方の商品券構想につきましては、先日、公明、新党平和からの申し入れを神崎・浜四津両代表からお受けをいたしました。そのときに申し上げましたが、この問題については、実務的に種々の困難の問題もありまして、なかなかその発想自体がまだ初めてのことでございますので、その時点ではお答えを申し上げずに、この点については与野党間で十分御議論いただきたいということで、私お答えをいたしておきましたが、その後、自民党と平和、改革、公明とこの問題について政党間で話し合いが始まったように聞いておりますので、そうした動向も十分見きわめながら対処していかなければならないと考えております。
前段の各党との関係につきましては、過ぐる第百四十三回国会をかえりみて、金融二法についても、再生法案あるいは健全化法案、それぞれ賛成をされた政党の組み合わせが違っておったわけですね。したがいまして、国会ですから、そうした国会の場面を通じて法案について議論をし、かつ、時には議員立法というような形で国民のために必要な法律というものを制定していくことは、これは国会のあるべき姿だと考えております。
ただ、政府といたしましては、政府としての基本的な考え方もございますので、政府としてこれが必要だという法案につきましては、これを野党の皆さんの御理解を得て法律を制定していくということも、これまた当然のことだろうと思うのですが、顧みますると、いろいろな各党間の話し合いというのに若干の時間を必要とした。これも民主主義でございますから、当然だろうと思いますけれども、あらかじめ国会が始まる前に、話し合いのできるものは私はしてもよろしいのではないかというふうに思っておりまして、したがって、いまこの商品券問題については、関係の政党と、それからまた、中堅企業に対する貸し渋りの問題等について、これについての諸施策がないか否かについては、自由党と自民党といろいろ話し合いを始めておるところでございまして、そういった形で各党間との話し合いの中で、より良き法律を制定していく作業も必要かと思いますが、今後、各党間との話し合いは、いずれにしても、積極的に政府としては、当然のことながら与党と、そしてまた野党の皆さんにも御協力を得られるような形のものをつくり上げる努力によって、各党間の支持を得て、国会に対処していきたいなというふうに考えております。
○司会 ありがとうございました。これで総理大臣記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。