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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 改造内閣発足後の小渕内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 1999年1月14日
[出典] 小渕内閣総理大臣演説集(上),28−33頁.
[備考] 
[全文]

冒頭発言

○総理 私は本日、自由民主党と自由党による連立内閣を発足させるため内閣改造を行い、自由党から野田毅氏を自治大臣・国家公安委員長としてお迎えをいたしました。

 昨年七月に組閣以来、私は日本経済の再生に全力を尽くす立場から、いわゆる金融二法の制定実施、緊急経済対策の策定、大型第三次補正予算の編成、更には、思い切った減税と景気対策に十分配慮した平成十一年度予算編成など、幅広い内容の政策を実行に移してまいりました。この間、国会を始め、国民の皆様からいただきましした御理解と御協力に改めて心から御礼申し上げます。 

 しかしながら、我が国を取り巻く環境は依然として厳しく、景気の回復を始め、緊急に解決しなければならない内外の課題が山積をいたしております。また、急速な少子高齢化や情報化、国際化などが進展する中で、あらゆる分野における改革を断行し、二十一世紀に向けてこの国のあるべき方針を明確にいたしていくことが強く求められております。

 私は、これらの課題に果断に取り組み、今日の国家的危機を乗り越えていくために、自由民主党と自由党の両党は政権を共にし、日本国と国民のために責任ある政治を行うことが是非とも必要であると判断をいたしまして、このたび連立内閣を発足させ、内閣を改造する決断をいたしたところでございます。

 改造に当たりまして、先ほど申し述べましたように、自由党から野田毅氏を内閣に迎えますとともに、かかる重要な時期に行政の停滞が生じないよう、閣僚の交替は必要最小限にとどめることにいたしました。

 また、行政改革の推進を図る観点から、閣僚数を二十人から十八人に削減いたしました。私は、この内閣に与えられた重大な使命をしっかり踏まえ、内閣の総力を挙げて諸課題に取り組んでまいる決意であります。

 国会を始め、国民の皆様の一層の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

質疑応答

−−総理は、自由党からの入閣者について、当初、小沢党首を迎え入れたいというふうなお話しをされていたと思いますが、野田議員にポストがいったということで、この理由をお聞かせください。

 それから、自治大臣というポストを当てられたことの理由もお伺いしたいと思います。それと、今回、連立が成立いたしましたけれども、自民党と自由党と合わせても参議院では過半数に足りないということで、今後の国会運営にどのように対応していくかという考えをお聞かせください。

○総理 まず、今般の連立内閣におきましては、私といたしましては、自由党の党首であります小沢党首とともに力を合わせてこの内閣を進めたいという念願をいたしておりました。しかし、党首といたしましては、党を代表して入閣をお願いいたしましたが、自分は党務に専念をいたしたいということでございまして、自由党からは今申し上げました野田毅幹事長を御推挙されました。私といたしましても、野田毅氏の実力、また政策通として内外に高い評価をいただいており、私自身も長い間、自民党におりましたときからも、その人となりを十分承知をいたしておりますので、この方ならば、共にこの政権を担って国民のために実績を上げることができると、こういう認識をいたしまして、今回お願いを申し上げたということでございます。

 自治大臣、国家公安委員長という仕事は誠に重責でございまして、必ずその任に応えていただけるものと認識をいたしております。

 また、今般、自由党との話し合い、協議をいたす過程におきまして、副大臣の問題等につきましても、その話し合いに積極的に参画していただいておりましたので、この自治大臣とともに補職といたしまして、こうした問題につきまして改めてその責任を負っていただきたいということで野田大臣に対してそのことを御指名申し上げておるところでございます。

 また、国会の運営につきましてお尋ねがございました。これもしばしば申し上げておるところでございますが、今般の自由党との連立政権というものは、単に国会における数合わせの問題でなくして、新しい保守の理念をもって共に協力し合い、そして切磋琢磨し、そしてお互いの党のよき点を相乗的に効果をあらしめて、その結果、国民と国家のために大きな役割を果たしたいと、そういう意味で今般の連立内閣を成立しておるわけでございます。

 御指摘のように、国会は国会議員の数によってこれが定まる点でございますので、そうした点では、残念ながら参議院におきまして過半数に達しておらないことは事実でありますが、必ず自民党と自由党とのこうした連立政権によりまして、より安定した政権運営を行うとともに、その行うべきことにつきましては、当然、各党、各会派の御協力を得られるものと確信をいたしておりまして、そうした意味合いにおきまして、是非これからも十分各党、各会派と協議協力をお願いし、そして、国政の難局に当たってまいりたい、このような決意をいたしておるところでございます。

−−昨日、自民党と自由党両党で合意された安全保障政策についてなんですが、その中でPKFの本体業務への凍結解除、それから新たに国連の平和活動への協力を実現するための新法の制定がうたわれております。この時期について、いつごろを念頭に置かれているのか、また、ガイドラインについては、両党間で話し合われてきた問題が、そして更に議論を深めるというふうになっています。

 総理は、幾つかの船舶検査の問題だとかあるいは国会承認の問題だとか、両党間で論議されていた点についてどうお考えになっておられて、また、この問題についてはどういう決着を図ろうと考えていらっしゃるのか、伺わせてください。

○総理 まず、自民党と自由党の政策決定責任者が十分、何日間も真剣に御議論されました。その結果、両党の間で安全保障に関する基本的な考え方はまとまりました。政府といたしましては、この両党間のまとまった点につきまして、今後国会での御審議の状況も見なければなりませんが、その内容の実現のために真摯に政府としては対応していくことは至極当然のことだろうというふうに認識をいたしております。

 なお二点の、実効性確保のための関連法案等について申し上げれば、この日米防衛協力のための指針、すなわちガイドラインの問題につきましては、冷戦の終結後もなお現在このアジア地域を巡りまして極めて困難な難しい状況も見過すことができない状況でございますので、そういった意味でこの地域の平和と安定の維持が日本の安全により一層重要であるということにかんがみまして、この効果的な日米防衛協力の関係を構築するために作成されたものでありますことから、政府といたしましても、早急に国会で御審議をいただき、成立または承認をお願いいたしたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、基本的に日米安保条約というものをしっかりとこれを踏まえて、日本の安全を確保していこうという観点につきましては、自民党も自由党とも、その基本的理念、考え方にはいささかの相違もないわけでありますが、いずれにいたしましても、それぞれの党の主張につきましては、この協議を通じまして、まとめてまいっておりますので、是非、この点につきましても実現をしてまいりたい、そして、一日も早く次の通常国会におきまして、これが成立せしむるように更に連立内閣としての実を上げてまいりたいと、このように考えております。

−−総理、自由党との連立内閣ですけれども、政策協議も税制の問題等継続していく問題もあります。今後、政府与党の連携というのはどのように取っていかれるのか、あるいは政策協議、継続している部分、どのように調整されていくのか、その辺りは具体的にはこれからでしょうか。

○総理 一応発足に当たりまして五つのプロジェクトが話し合いを詰めてまいりました。その結果、本日こうして自由党からも閣内に入っていただきまして、ともにこの内閣を推進していただくということに相成りました。個々の具体的な政策課題につきましては、これは今後政府与党間の会合も双方の責任者が集まりまして、随時開いていきたいというふうに思っておりますので、そうした中でのそれぞれの御主張を受け止めながら、お互いの立場を認識し合いながら、その実を上げることが私は必ずできるものだというふうに考えております。

−−総理、今回の連立で、総理と小沢党首が、まさに政権運営でコンビを組まれるという形になったわけですが、お二方の政治手法、あるいは人となり、これについては全く異質ではないかという見方も一部あるわけで、政権運営面で一部に懸念も出ているという印象を受けるんですが、今後、その辺の懸念を払拭されるか、自信のほどを。

○総理 今、御懸念があると言われましたが、私は非常に二人のコンビといいますか、相協力する体制というものは非常に堅固なものがあるというふうに認識をいたしております。ただ、一般的にその手法としていろいろと指摘もされておりますが、ごくわかりやすく言いますと、小沢党首は野球で例えると剛速球を投げると、私の方は若干軟投型だという批判もありますが、むしろ、そうした小沢党首の持てるよさと私の持つよさと、これがしっかりかみ合えれば、二乗三乗の効果を上げるのではないかと、私自身は思っておりますし、必ず小沢党首もそのような考え方をいたしておると思いますので、私は今回のこの連立、特に、両党党首自体がこれからしっかり諸問題について話し合っていけば、多くの成果が得られるものと、こう自信を持って申し上げたいと思います。

−−総理は一内閣一閣僚というのが持論でいらっしゃいますけれども、自民、自由の両党の中には、より結び付きを強めるために、政務次官の入れ替えも含めました本格的な内閣改造を予算成立後、あるいは国会終了後に行うべきだという意見もあるようですけれども、そのようなお考えは現在ございませんでしょうか。

○総理 御指摘のように、私はかねて来一内閣一閣僚ということは私の持説として持ってまいりました。そういった意味で、総理大臣ももちろん、国民の支持がなければこれを維持することはできませんけれども先般もヨーロッパ三か国回ってまいりましても、それぞれの政権というものはかなりの長期にわたってその任に当たっておりまして、そういった意味で日本におきましても、閣僚におきましても、従来のような状況というものは、いろいろ批判の対象にもなりかねないということでありますし、今次内閣におきましては、全く私としては、それぞれのエキスパートがそれぞれの任に当たっておりまして、これ以上の内閣は私はあり得ないと常々思っておるところでございます。

 ただ、今般このような形で自由党との連立政権に踏み切ったということでありますれば、当然閣内に今般、野田大臣をお迎えしているような形で、このきずなを更に強くしていかなきゃならぬと思っております。 

 長くなりましたが、お尋ねのように、それでは本格的と言われますが、私の今回の内閣も本格的でございます。

 ただ、将来にわたりまして、更に今後の政局、政権の推移、また、国会その他の状況ともかんがみまして、そうした形でこの内閣の在り方について検討する時期が、あるいはあるのかもしれませんけれども、今の時点ではそのようなことは全く考えさせていただいておらないということでございます。

 何よりも今回改造いたしました内閣のそれぞれの責任ある閣僚が一〇〇%以上の責任を、心新たに、そして、政治に取り組んでいただければ、必ず大きな力を発揮し得るものと、このように考えております。