[文書名] 群馬県中之条町における小渕内閣総理大臣記者会見
−−小渕内閣総理大臣「お国入り」記者会見を始めさせていただきます。
まず最初に、県政の刀水クラブ御質問お願いいたします。
−−刀水クラブで幹事社をしております毎日新聞の松尾と申します。
まず一つ目の御質問なんですけれども、正式にお国入りをされるのは今回が初めてということですが、群馬に戻って来られた御感想と、群馬県民は待ちわびていたと思うのですけれども、その方々へのメッセージみたいなものがあったらお願いします。
○総理 その前に、大変寒いところ私の生まれ故郷まで出掛けていただきまして恐縮しています。
まず、今回、俗に言う「お国入り」ということになりました。私を育ててくれた地元の皆さんに心から感謝を申し上げ、お礼を申し上げたいということを念じておりましたが、その機会を得たことを、大変私自身も喜んでおりますし、特に私を育てていただいた多くの皆さんにも、それなりに私自身の総理大臣としての働きに強い激励と支持をいただいておる皆さんに、お話しができまして大変うれしく思っております。
改めて昭和三十八年、二十六歳という最年少の議員として当選いたして、政治家としては最も重責を担うことになったことでございますので、そういった意味で、その原点になりました地元の皆様にごあいさつができたことを喜んでおります。
大変厳しいスタートだったものですから、その点で時々お電話等をちょうだいをして、みんな歯ぎしりをする思いでおりましたけれども、お互いこれからも支持していくという強いお気持ちを受け止めることができまして大変うれしく思っています。
いずれにしても、総理に就任しまして八か月、大変激動の嵐の中で全力投球をいたしてきましたが、幸いにして昨年のスタートから、金融システム対策、景気対策に取り組みまして、外交でも集中的に米露中韓との首脳会談が行われまして、特に本年、自由党との連立内閣を樹立して、責任ある政治の実現を築くことができました。
こうした基礎の上で、景気が下げ止まりということで、経企庁長官から発表されております。是非これを反転上昇を目指す時期でありますので、大きな力となる十一年度予算が最も早く成立した。この執行を、御案内のとおりに、公共事業その他前倒しで考えておりますので、この効果が生まれれば相乗的にいい結果が生まれてくるのではないか。
昨日、日韓首脳会談を終えて帰国いたしましたが、昨年秋と今回の首脳会議で日韓関係ががらりと変わって上昇気流に乗っていると思っておりますし、金大中大統領と私との間の信頼関係というものはますます絆が強固になったという自覚、自信を持っておりますので、是非頑張っていきたいと思います。
こういう時期に、それこそ地元に訪れて、多くの皆さんにお目に掛かることができて、またお話しができたことは大きな喜びでございます。本日寄せられた地元の皆さんの温かい心を更に糧といたしまして、これからも一日一生涯の気持ちで国政に取り組む決意を新たにいたしました。
今後とも地元の皆さんに温かい御支援、御激励、時には厳しい御叱正もお願いいたしたいと思っておりますが、これからこの機会に心更に新たにして、勿論、地元の皆さんの御期待に添いたいと思いますけれども、特に厳しいこれからの山谷の中でこの温かい、おふくろの情愛に満ちた地元の皆さんの変わらない声援をいただきたい、密かにそういう思いをいたした今回の地元ごあいさつだったと思っております。
−−もう一つ質問させていただきますが、群馬からは三人目の総理大臣になられたわけですけれども、なられてみて、御自身感じるところがおありでしたらお聞かせください。
それから、これまで国会議員として、それから大臣として群馬県をごらんになってきたと思うんですけれども、今回総理大臣になられてみて改めて群馬をごらんになって、今まで見てきた群馬と違いみたいなものがあったらお聞かせいただきたいと思うのですが。
○総理 たまたまでしょうし、またこういうことは恐らく日本の選挙制度の中でも稀有なことだし、最もこれから小選挙区になりますから一選挙区から三人の総理大臣が誕生したんだということは、この群馬旧三区をもって最後になるのでないか、勿論、選挙制度が変わればまた別のことでありますけれども。
私としては、福田先生、中曽根先生、こういう両巨頭といいますか、日本の戦後の政治に大きな役割を果たした、同じ選挙区でまず選挙で当選させていただいた。合わせて総理大臣まで両先生の後を継ぐことができたなどということはまことに感慨深いことでございまして、先ほどごあいさつしましたけれども、やはりこの両先生がおられたということ、今にして思えば、その中で切磋琢磨することができましたし、私の幸いなことは年齢的にも福田先生が明治の生まれ、中曽根先生が大正生まれ、私は昭和二桁と、こういうことで、時代的な背景もそれぞれ違っておりまして、それが連綿としてこの群馬において後継ぎをつくろうというお気持ちになったのではないか。
これは、県の風土、環境、県民性といったものが、有形無形に影響しているのだろうと思いますが、是非、私としては、この二人の先輩総理の残された功績を踏まえまして、これを汚すことなく、自分として更に大きな歩を進めてまいりたいと思っております。
郷土群馬、自分を育て、励まし、支えてくれる大きな存在であり、大変ありがたく、力強く感じておるところであります。
人間性も非常に情愛に満ち、そして、義理人情に厚い、そういうことで、若干ぶっきらぼうなところはありますけれども、私は非常に上州人というのはそういう意味で大変愛すべきといいますか、自らその地に生まれ、育ち、こうして政治家の道を歩めたということを幸いに感じております。
−−では、次、同行の永田クラブお願いいたします。
−−東京新聞の浅田と申します。内閣記者会を代表して質問させていただきます。
まず一問目ですが、韓国公式訪問から昨日帰国されましたが、北朝鮮政策をめぐる韓国との温度差は解消されたと見てよろしいでしょうか。また、仮にミサイルの再実験が行われた場合、KEDOの枠組みはこれからも堅持していくことになるでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。
○総理 まず、韓国の金大中大統領との首脳会談の結果、金大統領が提唱しており、また実践をしているいわゆる太陽政策、包容政策とも言いますけれども、これに対しては全面的な支持をいたしました。そのことは誤解があってはいけませんけれども、基本的に国家としての安全保障というものはきちんとこれを保持していく、そういう中で北との関係を良好にしていこうということで、大統領も確か言っておられましたが、単なる融和政策ではないということは私もしばしばお聞きしておることでありまして、それを信頼し、日本も共に国際社会の中で、北朝鮮というものが世界の中に共々に平和を目指していくということを期待し、そのための努力をしていきたいと思っております。
それから、第二の質問は、これは、そうしたらという仮定の問題なので、今のところは発射実験というものは恐らく今のところは承知をしておりません。北といえども、前回のミサイル発射実験によって、少なくとも日本国民が大きなショックを持ったということについては、これは承知をされておると思いますから、軽々に同じようなことをされるとは認識いたしておりません。しかし、金大統領と私との話し合いの中でも、この問題は重要な事項として考えていかなければならないと思っております。
なお、KEDOについてどうかということですが、そういった発射実験が行われるということは、これはあり得ないだろうと、勿論、日本を目掛けてなどということは全くあり得ないというふうに認識しております。KEDOは御案内のとおり、核開発に対して日本として、それを阻止する有効な手段として北朝鮮に軽水炉の発電所の協力をすることですから、これは既に協力の再開を日本としては決めておることですから、これはこれとして日本としての約束というものは果たしていくべきだろうと思いますし、果たしていけるようなことに北朝鮮としても、是非日本国民が安心してKEDOで協力し、北朝鮮のエネルギー問題についても協力ができるように是非いたしていきたいというふうに思っております。
−−ありがとうございました。
続いて二問目なんですが、ガイドライン関連法案の集中審議が始まりますが、衆議院通過への見通しをお聞かせください。
また、自由党の小沢党首との調整について不安はないかどうか、御見解の方をお聞かせください。
○総理 まず第一点は、特別委員会が設置をされて、熟練した山崎拓委員長がこれを指揮していくわけですから、与野党話し合いを進めていくことによって是非今国会に成立を一日も早くお願いをしたいというふうに思っておりますが、既に衆参の予算委員会等におきましても、質問の大半がこのガイドライン問題に集中しておりまして、問題点の所在というのは大体与野党とも十分承知をしているんだろうと思います。
ただ、政府といたしましては、既に昨年春に提出いたしました法律案を是非そのまま通過をさせていただきたいというお願いをするのみでありますけれども、各党ともいろいろな考え方がありますので、この審議をいたしております過程で、いろいろ十分な御審議をいただけたらというふうに思っております。
もう一つは。
−−自由党の小沢党首との間でガイドライン関連法案について若干考え方のずれが見えているのではないかという見方もあるわけですが、その調整について不安はないかどうかということで、お考えの方をお聞かせください。
○総理 失礼しました。自由党との調整については本年一月十三日に、自民党、自由党との間で合意した安全保障の基本的な考え方、いわゆる自自合意の中で、周辺事態安全確保法案については今後両党間で更に議論を深め、通常国会で早急な成立、承認を期すこととされているところでございまして、現在、この合意に基づき協議が進められており、今後の調整に不安はないと思っております。
特に、小沢党首と私との関係でありますけれども、忌憚なく、事あればお互いに率直に話し合っていこうという気持ちでございますから、もし言われるようなことで相違があり、かつそのことが自由民主党と自由党との間の話し合いを阻害するということが仮にもあるとすれば、それは好ましいことではありませんので、そういう段階では小沢党首と本当に常々問題があれば話し合っていこうということですから、必ず解消ができるというふうに思っております。
−−ありがとうございました。これで総理会見を終了させていただきます。