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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第百四十五回国会終了後の小渕内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 1999年8月13日
[出典] 小渕内閣総理大臣演説集(下),958−974頁.
[備考] 
[全文]

○総理 第百四十五回国会が、本日閉会いたしました。この国会を振り返り、また、今後の課題につきまして冒頭私からお話しさせていただきます。

 まず、この場をお借りして、衆参両院を始め関係者の皆様の今国会でのご協力につき、厚く御礼申し上げる次第でございます。

 百五十日の通常国会に加えて五十七日間という長期の国会になりましたが、両院議員の熱心なご審議をいただきまして、ここにパネルがありますが、百四十五回国会で成立した法律は百三十八本であります。また、条約その他を加えますと、百六十六法案等の成立を見たところでございます。

 参議院におきまして最終段階で、やや法務委員会に混乱があったやに報道はされておりますけれども、衆参国会議員とも長丁場のこの国会に当たって真摯にお取り組みいただきました。私も、国会議員を長らく務めておりますけれども、土日の選挙区における選挙民との対話を除けば、この長い間、国会で真剣に取り組まれたことにつきまして、国民の皆様方にも国会の状況についてご理解いただいていると思いますが、ここに示した法律が国民の為になるべく成立いたしたことにつきましては、是非ご評価をいただければありがたいと思っております。

 さて、最重要課題の経済について申し上げます。幸い、これまでの政策効果と、企業やご家庭の方々のいわゆる「マインド」の前向きの変化が相まちまして、このところ景気は改善いたしております。私は、本格的な経済の回復を確かなものにしていくためには、これからしばらくの間が本当に「正念場」だと肝に銘じているところでございます。このため、今後の経済の動きをしっかりと見極め、公共事業等予備費の活用、十五カ月予算との考え方に立った第二次補正予算の編成なども視野に入れながら、切れ目のない経済運営に当たってまいりたいと思っております。

 今年は暑い夏ということでございまして、そういった意味からも若干消費の増加が見られております。何といっても国民の皆さんの消費活動、これが日本経済の牽引力であって、六割のシェアを占めているわけですから、政府としてなすべきことを十分になすことによって、その「マインド」を引き起こすことができればと考えております。また、「一時しのぎ」ではない本当の経済の再生に向けて欠くことのできないのは、雇用と経済の供給面の体質強化であります。

 こうした考え方に立ち、急遽、会期を大幅延長をしていただき、雇用対策のための補正予算と、産業活力再生法案のご審議をお願いし、雇用と競争力の両対策のしっかりとした枠組みを整えることができたと考えております。冒頭申し上げましたように、通常国会に加えて長期の延長をお願いいたしましたのも、経済、そして企業の競争力を強化することが現下の一つの大きな課題であります。

 また一方では、そのことによるとは申し上げませんけれども、企業が活性化していくためには企業自身の体質強化が行われる、これが非自発的失業者を生むことがあってはならないと考え、企業内の努力をひたすらお願いすると同時に、万一そうしたことになりました場合には、生活が安定していくような対策を講じなければならない。こういうことで、かねてこのことは危惧しつつ、本予算におきましても一兆円規模の雇用対策を講じてきたところでありますが、加えまして、第一次補正におきまして五千億超の対策を講ずることによりまして、ある意味で安心して、万一のときにも生活が維持できるような仕組みを講じてきた、こう考えております。

 そういう意味で、社会全体で雇用面のセーフティネットを手厚く用意することをはじめとして、これからも腰を据えて取り組んでまいりたいと考えております。

 また、経済の発展のためには、米国におけるアポロ計画の例に見られるように・・・・・・ご案内のとおり、今年は「アポロ」が月に到達して満三十年という記念すべき年でありますが、我が国におきましても、これから夢のあるいろいろなプロジェクトも考えていかなければならない。国民に未来への明るい展望を指し示し、国家としてのしっかりした戦略を持つことが是非とも必要であると考えております。

 私はそういった意味から、未来の「鍵」となる情報、高齢化、環境の三分野について、官民挙げて取り組むプロジェクト、いわゆる「ミレニアム・プロジェクト」を推進していくことといたしております(パネル)。言うまでもありませんが、来年、西暦二〇〇〇年を迎えるわけであります。二十一世紀がいつからかという議論はいろいろありますけれども、少なくとも世紀の変わり目であることは間違いない。一千年を展望したということになると少しレンジは長すぎるかもしれませんけれども、新しい世紀に向かって日本として何が最大の課題であるかと考えますと、まず、情報化の問題、高齢化の問題、環境の問題、強いて絞ればこうした問題が極めて重要と考えております。これを「ミレニアム・プロジェクト」と銘打ちまして、これからの政策の中心課題にしていきたいと考えております。

 次に、年金、医療、介護などの社会保障についてであります。今国会に年金改正法案を提出いたしたところでありますが、残念ながら継続審議となりました。今般のこの経緯は経緯といたしまして、また、明年四月からは介護保険がスタートすることでもあります。特に介護保険につきましては、全国の市町村の責任者をはじめ、今、その準備に取り組んでいただい{前4文字ママ}おります。改めて感謝いたしますと同時に、介護を余儀なくされる方々も安心して介護していただけるような体制を作り上げなければならないと考えておりまして、これが極めて重要であります。

 この際、年金、医療、介護などの社会保障のあり方につきまして、特に若い世代を念頭に置きつつ、国民全体の理解を深めるための努力をしてまいりたいと考えております。

 次に、内政面につきまして、政治と行政の仕組みについてであります。今国会におきまして、戦後の我が国の政治や行政のシステムを根本的に改革する法案といたしまして、国会活性化法、中央省庁等改革関連法、地方分権一括法が成立いたしました。これら三大改革を真に実効あらしめていくためには、特に政治がしっかりとした国益を見極め、また、勇気をもって果敢に政策を実行していくことが重要となります。

 ちょっとご説明いたしますと、三つの中で、国会活性化法、これは、戦後ずっと、国会が行われた場合には、政府は内閣総理大臣以下、予算委員会ですべてこのお並びでありまして、それに対して、野党第一党から始まりまして質疑をする。それから、野党は質疑権を十分行使する、政府はそれに対してご答弁を申し上げるという形の国会であったことはご案内のとおりであります。

 今般、国会活性化法が成立したことによりまして、いわゆる政府委員の廃止というようなことにもなりますので、政治家同士の討論、質疑応答が行われる。簡単に申し上げれば、政府は一方的に答弁の側に回るのではなく、質問される側に対しても、その真意や、お考えや、そうしたこともお聞きすることが新しい方式だろうと思います。

 これ(パネル)は、イギリスの国会における質疑応答のことも参考になると思っておりますが、この絵は、イギリスにおきまして、与党と野党が違ったベンチに座りまして、与党の代表、すなわちプライム・ミニスターと野党の代表とが、一週間に一遍、クエスチョン・タイムというのを設けて質疑応答をする。したがって、内閣総理大臣も答弁側ということではなくて、時には野党に対して、特に野党の中でもシャドー・キャビネットも恐らくできるだろうと思いますから、そうした方々に対しましても、野党の政策その他についても質問し合えるという新しい国会のあり方でございまして、次の国会から、できるものから進めていくということで一致しております。非常に新しい民主国会の姿に変貌していくのではないかという、極めて重要な法律が通過しているわけでございます。

 特に、これは自由党と私との間の合意によって成立を見ておりますので、今後、これが国民のために、また、国民の理解を深めるために、よりよい制度として発展することを祈念しているところでございます。

 また、中央省庁等改革法案につきましては、現在の二十二の省庁を一府十二省に整理するわけでございます。行政機関も明治以来いろいろな役所が設置されてまいりましたが、今回、改めてこれが整理・統合されることによりまして、行政の機能を十分発揮できる法律が通過したと思っております。

 また、地方分権法は、いままで中央と地方との関係は、中央が地方に対して縦の関係でありましたが、今後、地方は地方としての考え方に則っていくということでありまして、いわゆる中央集権型の行政システムから一変しまして、地方と中央とが横の協力関係になろうという、これも明治以来の画期的な大改革につながるものであると考えております。

 第四に、外交・安全保障の問題についてでありますが、「国益」を守り、国家と国民の安全を保障することは政府の最も重要な任務でございます。私はそうした原点をしっかりと見据えまして、多くの重要な首脳会談に臨んでまいるとともに、北朝鮮のミサイル発射、不審船事件などの問題について、断固たる行動をとってまいったところでございます。私は、そういう意味からも、日本の国土と国民の生命・財産を守るためにあらゆる手段を講じ、適時適切に対応していく覚悟を強くいたしているところでございます。

 翻りまして、我が国の安全保障を考えますと、まずは日米関係をこれ以上に強固なものにしていく必要があります。このために、今国会におきまして、懸案となっておりました日米ガイドラインの関連法が成立し、これによりがっちりとした日米体制が確立されたものと確信いたしております。

 特に橋本総理とクリントン大統領との間において、日米新安保に対する「共同宣言」に基づいてのガイドラインにつきましては、私が総理になりましてからこれが成立を見ることができたことは、私も大きな責任を果たしたという認識をいたしているところでございます。

 また外交面では、今国会中に行いました韓国、中国との首脳会談におきましても、これらの国との間で未来志向型のパートナーシップを確認できたことは、我が国の国際関係にとり大きな前進でありました。

 向こうのほう(パネル)は金大中大統領と私との会談の模様ですが、三月に私は韓国を公式訪問いたしました。昨年の金大中大統領との「共同宣言」に基づきまして、日韓の関係におきまして大変残念な時期もございましたけれども、こうしたものを今世紀のうちにお互い結末をつけて、新しい世紀は共々にということでございまして、私は、日韓の関係は従来になく大きな展開をしていると認識いたしておりまして、そうした意味で、大統領の決断につきましても改めて敬意を表しております。

 こちらの写真(パネル)は、五月に江沢民国家主席を中国に訪問いたしまして、政治の会談はともかくといたしまして、新潟の「トキ優優」の写真をお贈りいたしまして、和やかな中に会談ができたことを大変喜んでおります。

 さらに、ケルンのサミットにおきましても、我が国の立場、主張につき十分な理解を得ることができました。これ(パネル)は、最終日にエリツィン大統領も参加されまして、サミットにおける円卓での話し合いです。このサミットの会談の冒頭におきまして、現下、日本でとっております経済政策についても非常に評価をいただきまして、我々としては、この経済の状況、特に日本経済がアジアのみならず世界経済に与える大きな影響力を考えましたとき、国際社会におけるこうしたサミット国との関係をより深めていかなければならない、こう考えております。

 そうした意味で、我が国の立場、主張につき十分な理解を得ることができたと思っておりますが、実は、明年は日本においてサミットを開催する順番でございます。日本としては「九州・沖縄サミット」が予定されておりまして、サミットの議長国として「二〇〇〇年という節目に沖縄で開催される」ことの意義を踏まえて、万全の取り組みを行ってまいりたいと考えております。

 これ(パネル)も、既にご案内の絵でございますけれども、「万国津梁館」、大変すばらしいお名前をつけられたと思っております。沖縄がかつて万国の交易の中心であったことを考えますと、ネーミングが大変すばらしいと思っておりますが、これがその地であります。こちらのほうに那覇がございますから、若干移動時間はありますけれども。

 実は、これはまだ完成されておりませんで、これから、こうした沖縄にふさわしい立派な館もでき上がりまして、ここで青い海、美しい青い空の中で、世界の問題を語り合うことができれば幸いだと思っております。改めて、沖縄県民はじめ国民の皆さんのご理解とご支援をお願いいたす次第でございます。

 今国会におきまして、その他、国旗及び国歌に関する法律が成立いたしました。本法律の成立を契機に、国旗と国歌についてより理解を深め、次代を担う子どもたちが国際社会の中で尊敬される日本人として成長されることを心から期待いたしているところでございます。

 さて、今国会におきましては、通常国会に当たって自自連立が行われ、さらに、連立に参加していただける公明党との協力という確固たる枠組み、政権基盤があってはじめて、これまで申し上げてきた重要な政策課題に適切に取り組むことができました。皆様方の信頼と期待に何とか応えることができたと考えている次第でございます。

 皆様方のご支援を得て一応の道筋をつけることができましたが、先ほど申し上げましたように、いずれの課題についてもこれからが正念場であるという覚悟をいたしております。

 二〇〇〇年、そして二十一世紀を目前にして、「戦後の日本」、「二十世紀の日本」を総決算し、解決すべき課題は躊躇することなく解決に全力を尽くしていくとともに、二十一世紀においてこの国が何を目指すかについて、基本的な方向を指し示していくことも政治の大きな責任であります。

 そうした思いに立ちまして、私は、「二十一世紀日本の構想」懇談会を設け、先般も私自身合宿に参加するなどして、鋭意検討を進めてきているところでございます。新しい千年紀(ミレニアム)、新しい世紀を目前にする歴史的な大転換期にありまして、引き続き国政をお預かりする者として、国家と国民のために貢献し責任を全うしていきたいと強く念じているところでございます。

 最後になりましたが、私は、内閣をお預かりして以来、開かれた内閣を目指し、その一環として、首相官邸ホームページの中身を充実させてまいりました。お陰さまで、昨日までに、五千五十九万五千六百十二件のアクセスを頂戴いたしました。国民の皆さんの政治への関心の高まりの表れと感謝いたしております。

 このホームページには小渕恵三のプロフィールを設けさせておりまして、その中で、私の大好きな詩であり、また、私の政治にかける気持ちとも重なるところの多い、高村光太郎の「牛」という詩を掲載させていただいております(パネル)。ここで、その一節を紹介させていただきたいと思います。

 なお、ホームページのアドレスは、ちょっと映りが悪いですが、下のほうに書いてあります。ここでございますので、さらに国民の皆さんにアクセスしていただければありがたいと思っております。

 この中の一文でありますが、

「牛は為たくなつて為た事に後悔をしない

牛の為た事は牛の自信を強くする

それでもやつぱり牛はのろのろと歩く

何処までも歩く

自然を信じ切つて

自然に身を任して

がちり、がちりと自然につつ込み食ひ込んで

遅れても、先になつても

自分の道を自分で行く」

 国民の皆さんのご支援とご協力を心から感謝し、また、お願いいたしたいと思います。ありがとうございました。

−−最初に、内閣記者会の幹事社として、四問ほど伺わせていただきまして、そのあと各社の自由質問になります。よろしくお願いします。

 最初に、自・自・公三党の連立政策協議が開始されることになりましたけれども、今後、どのように始められて、いつごろまでに終えられるかというスケジュールの話と、次期国会の冒頭で処理されることになりました衆議院の定数削減の話です。これは、今回継続審議となりました自・自提出の法案を採決するという形になるのか、それとも、自・自・公三党で新たに法案を出し直すのか。それと、その法案が施行されるまでは衆議院の解散・総選挙は行わないという考えでよろしいのかどうか、そのあたりを伺わせてください。

○総理 まず自由党、そして公明党と相協力して日本の政治に大きな役割を果たしたいと念願いたしてまいりましたが、今日午前中に、自由党の小沢党首と、この通常国会、連立政権としてのお互いの努力に対して、大きな問題の処理ができたことを喜ぶと同時に、今後とも力を尽くしてこの国難に当たろうということで一致いたしました。

 なお、午後に神崎代表との間におきまして、公明党がかねて党大会の議を経て、連立政権参加というご意思をいただきました。

 来るべき時期におきましては、自由党、自民党、公明党、三党における連立政権を樹立することによって、相協力して困難な問題に立ち向かうことにつきまして、三党間の党首の意志が明らかになりました。今日は、自由党党首、そして神崎公明党代表との別々の会談でございましたが、いずれ、今御指摘のありましたように近い将来におきましては、政策の協議も踏まえて三党間で話し合いを進めていくということでございます。

 具体的なことにつきましては、今日は、党の執行部、特に政調会長もお見えでございましたが、これからどのような仕組みでいくか、協議会を作るか、あるいはどのような形にするかについては、直ちに今日から検討に入るということで了解し合ったところでございます。そういった意味で、三党の連立政権が、実際の内閣ができる前にも、頭に予算的には来年度予算のシーリングもございますし、今月末には概算要求の基準が生まれてきますから、もうその段階から協力していこうという形になっていくものと期待しております。

 次に、定数削減の問題につきましては、自・自協議によりまして既に衆議院において法律が審議されております。この点につきましては、次の国会において三党の連立内閣ということになりますれば、三党の理解がなければ成り立たないわけでございますから、そういった意味で今提出されている法律案をもとにして、公明党のお考えを承るか、あるいは、どのような形にしていくかにつきましては、今後、連立政権を目指していき、かつ、それが成立した国会において、少なくとも定数を削減する点につきまして、国民的な理解が得られるようにしていかなければなりませんし、そのことが両党のご理解のもとに成立することをまず考えていかなければならないと考えております。

 それから、その施行なくしては解散・総選挙はないのかということでございます。是非、新しい定数をもって、これは国会全体であると思いますけれども、現下の国民の皆さんにおかれては、企業におきましても、いろいろと雇用の問題について難しい状況にある、そういった意味で、率先垂範して国会のあるべき姿としての削減論というものもございますから、是非、そのことなくしては国民の理解と協力は得られないと考えれば、当然、国民の信を問うときにはそうした形をとるべきものではないかというふうに考えておりますが、形式論を申し上げるわけではありませんけれども、九月以降の総理大臣を中心として各党間で十分話し合ってまいるべきものだと、こう考えております。

−−自由党との選挙協力ですけれども、これをどのように進められるのか、特に、今日自由党の小沢党首が記者会見で、選挙協力を極限まで進めていけば党と党が一体化になる、という趣旨のことを言っておられるのですけれども、自由党の自民党への合流の可能性について総理自身のお考えはどのようなものでしょうか。

○総理 それぞれ政党は、政党のよって来るところの理念もあり方針もあると思うのです。ただ、自由党と自民党がまず連立を組んだという所以のものは、基本的なポリシー、あるいは理念において隔絶した考え方があるということでなくして、むしろ、極めて近いものがあった。これは、それぞれの議員のご経歴を見てもそういう経過があるわけです。

 いずれにいたしましても、選挙協力は、選挙を前にしては、連立を組む以上、お互いその勢力を減少せしめないということが当然でありますから、それぞれ譲るべきところは譲り、協力し合うことは協力し合うという形で、現下も具体的なそれぞれの選挙区から考えていろいろな検討を進めているわけでございますが、今、一般的に、ある種のスタンダードといいますか、そういうものを作りつつあると認識いたしておりますがいずれ、そういう形で両党間の話し合いがまとまってくる過程の中で考えられるべき問題ではないか。

 一部、正直申し上げて、それこそ考え方も極めて近似しておる、そして思想哲学も一緒であれば、自由党、これを保といってはいけないかもしれませんが、自民党と自由党とのいわゆる保・保連合と申しますか、合同といいますか、そういうことを考えてもいいのではないかという声も私のところに聞こえてきております。しかし、お互い政党として長い間その道を歩んできておりますので、事はそう安易なものではないと思っておりますし、それは、それこそ自由党もどうお考えになるか、自民党もどう考えるかということでありますけれども、まずは選挙の協力をお互いし合うという過程の中で、あるいは、いまおっしゃっておられるような方向に両党の議員が納得されればということであろうと思いますが、これはあくまでも今後の課題だと思っております。

−−総理、今日国会が終わったばかりですけれども、早速次は九月の自民党総裁選ということで、既に党内では小渕総理の再選を求める声が多くなっています。この総裁選についてどのように臨まれるのか、その決意をお聞かせください。

○総理 私の任期は九月末まで、こういうことになっております。昨年、橋本総裁の退陣を受けまして、総裁に就任し、かつ総理大臣という大役を引き受けさせていただいて、ひたむきにこの一年間、歩んできたわけでございます。

 内閣は当初、経済再生内閣ということで、現下の日本の経済をまず回復させないことには、アジア、世界に対する責任を果たし得ないということでいろいろな手だてを講じてまいりました。幸いにして上向きの状況になってきていることは事実でございますが、これを確実なものにしていかなければならないと思っております。同時に、先程御紹介いたしましたが、二十一世紀の課題、社会保障の問題、環境の問題、少子高齢化の問題等々、課題は大きいわけでございますので、できるべくんば、私もその責任をさらに全うしていかなければならないという考え方を強くいたしておるところでございます。

 総裁としてこの選挙にいかに臨むかということにつきましては、お許しをいただければ、後刻、自由民主党におきまして私の考え方を申し上げさせていただきたいと思っております。

−−先ほども、経済の再生について引き続き最大の努力をされるということでございましたけれども、景気につきましては、これからが正念場だとおっしゃっていました。第二次補正予算の編成にも触れられましたけれども、経済の今後の基本方針と、それから、全体として本当に景気がもっともっとよくなるのだろうかという気持ちが国民の中にあると思うのですが、その見通しについてお聞かせいただければと思います。

○総理 かつて世界経済の中で、アメリカがクシャミをすると日本が風邪をひくという時代がございました。しかし、今は、日本が風邪をひきますと、アジアの諸国も、クシャミでなくて、それこそ肺炎にもなるという大きな責任を国際的に背負っているということでございますので、そうしたことから考えますと、やはり一定の経済成長率というものは確保していかなければならない、こう考えております。

 私は国会で、今年度、すなわち来年の三月期までには、マイナス成長を転じて○・五%の経済成長にもっていきたいということで、あらゆる施策をそこに一点集中してきたと、こう思っております。幸いにして、一〜三月につきましては、今日の経済企画庁の長官の説明によりますと、一・九ということでありましたが、修正いたしまして二・○、そう変わるわけではありませんけれども、この傾向が四〜六月にどのようになるか。十五ヵ月予算もそうでありますし、あらゆる経済対策も先行しようということでいたしました。

 これは、申し上げましたように、今年度予算が少なくとも三月の早い機会に通ることができた。したがって、四月一日からこれを施行するためのことが行えた。予算が早く成立することの意義は、単に予算案をこの内閣として歴代最速で通したなどということを申し上げているのではなくて、この三月期の早い時期にできたことが、実はいま、景気につきましても、四月以降の公共事業の実施、あるいは住宅その他の問題についても、いろいろと国民の皆さんがお考えになる基礎を作っていくと。

 そこで、ある意味で先に公共事業その他も投資されたので、後が続かないのではないかという不安も一部にあると聞いております。予算の執行というものは、実際にお金が入る時期を考えると、今これからお金が入ってきますから、必ずしも先行でやったことに対しての不安はないと思っておりますけれども、しかし、これから、言われるような腰折れがあってはならないためのということを考えていかなければならない。従って、九月の当初にGDPの四〜六月の数字が出てきますから、こうしたものをしっかりと見据えながら、必要とあらば、第二次補正予算も適時適所に作り上げていかなければならないのではないかと思っております。

 現実には、公共事業等予備費というかつてない予算の仕組みの中で、これは、五千億円、既に予算化しております。国会が終了いたしましたので、これも政府の責任において執行できることになりますので、いまの状況を十分踏まえながら、必要なものは早くこれを出していかなければならない、こう考えております。

 したがって、今こうして第二次補正予算のことも含めまして、次の臨時国会のことを今申し上げるわけではありませんけれども、必要があればそうした措置を講じていかなければならないし、特に中小企業対策について、いろいろなことをやらなければならない。いま、「産業競争力会議」で、ある意味で全体的な日本産業の活性化の努力をしておりますが、なかんずく、中小企業が本当に力を持っていかなければならない。

 金融面につきましては、昨年、四十兆に近いお金を、中で特別融資として二十兆、中小企業の皆さんも年末これで乗り越えられたことを感謝しているわけですから、こうしたことを含めて、金融面はともかくですが、税制面その他につきましても、中小企業。「しからば中小企業とは何ぞや」という問題について、長らく一定の考え方をしてきましたけれども、新しい時代における中小企業とは何かということになりますと、中小企業基本法という問題も残ってくるだろうと思います。これを、この夏の間に関係省庁に一生懸命勉強してもらいまして、もしそれができ上がることになれば、これに対しての対処もしていかなければならない。

 昨日ですか、宮澤大蔵大臣もそのことについて「十分対処すべき課題である」と申されておりますので、一致して取り組んでいきたいと思っております。

−−では、各社、自由に質問をお願いいたします。

−−第二次補正予算に関連してですけれども、補正予算の中で赤字国債の増発はなくて済みそうとお考えでしょうか。また、財政の赤字の増大が指摘される中で、総理在任中に消費税率のアップはお考えになっていないのでしょうか。

○総理 まず、この内閣は当初、ご記憶しておられると思いますけれども、財政構造改革で財革法を凍結しているということでございます。それは、財政につきましては言うまでもありません、個人の家計においても、会社にしても「入るを量りて出ずるを制す」、その財政均衡が基本であることは、古今東西、そういう考え方です。

 しかし、ことにおいては、全部予算がバランスをとれなければならないということを単年度でやれないということであります。橋本内閣のときには財政再建という大きな柱、しかも、当時、幸いなことに日本の経済成長も三%を超えるような趨勢になってまいりました。ですから、ある意味では、その時点で財政の改革をやらなければならないことは当然だっただろうと思いますが、大変不幸なことには、御案内のように、アジアにおける金融不安が生じてきまして、アジアから大きな金が皆引き揚げていくという中でアジア経済が崩壊してくる、こういう中で、日本経済も同じような趨勢になってはならない。そこに、ご案内のように日本の金融システムの大きな改革が行われてきているわけでございます。

 話が長くなりましたが、おっしゃっていることは、要するに財政の面でいわゆる赤字公債を発行してでも予算編成をするか、ということでございます。けれども、願わくばそうならない税収の増加があれば言うまでもないと思いますけれども、前回、二%の消費税の増徴というものは真にやむを得ない必要性から生じたことでありますが、これが影響がなかったということは嘘になる話だろうと思います。こういう時点で、今、消費税を大きく引き上げるというような環境にはないだろうと思っております。

 したがって、せっかく上向きになってきた日本経済をさらに大きく前進させることによって、いずれ、日本の経済が財政に寄与できるような、そうした税収が増加してくるという時点をしっかり見極めないと、その時期の見極めを誤りますと、また同じような景気が後退するというウエーブになってしまったのではいけない。ここは、できるべくんば国民の理解も得ながらではありますけれども、財政も積極的に取り組むことによりまして、この趨勢を確実なものにしていくという必要があるのではないかと考えております。

−−小渕内閣は経済再生内閣として出発したわけですけれども、今国会で、経済対策、雇用対策等されまして、評価されていると思うのですけれども、一方で、国旗・国歌法案、通信傍受法案、住基法の改正などが行われました。このことについて国民の間では、右傾化であるとか、疑問を持っている方もいらっしゃると思います。野中官房長官はこの処理については、戦後処理の一環ということで言われていますけれども、総理ご自身はどのように説明されますでしょうか。

○総理 右傾化でも何でもなくて、当然、必要なことであると思います。一つ一つの法律案について説明することはいかがかと思いますけれども、国旗・国歌につきましては、これまた言うまでもありませんけれども、慣習法として存在してきた。ところが、日本全国、地域によりましては、これが法制化されていないということを理由に学習指導要領がそのまま実施されない。そこに、しようか、するまいかということで非常に考え方が異なってきて、それを理由に実行されないということがあってきたと思っております。広島県の世羅高校の石川校長が残念ながら自ら命を絶つことになったのも、その原因の一つだろうと思っております。

 国旗・国歌につきましては強制するものではありませんけれども、日本全国で、やはり入学式、卒業式等においては、ごく素直な気持ちでこれを掲揚し、これを斉唱することが行われており、何ら問題がなければよかったかと思います。

 私のことを申し上げるようですが、私の群馬県などは、小・中・高いずれも一〇〇%これが実施されておりまして、あえて法制化する必要性を地元からのお話では聞いていないということを考えますと、いろいろ思うことはありますけれども、法的な根拠がないというゆえに全国の状況があまりにも異なることにおいては、法律を定めたということの意義があるのではないかと思っております。

 それから、いわゆる犯罪三法の問題に関しての通信傍受の問題でございます。これも話せば長いことで、ともかく日本で組織的な犯罪がこれほど多くなって、しかも国際化してきている。既に新聞、テレビを見ましても、外国の方々がたくさん入ってきて、日本における犯罪その他がかなり大きなものになってきているというようなことを考えますと、通信というものを悪用しながら、日々の国民の安寧秩序を維持できないということであれば、これはしごく当然なこととして、それを防止する必要があるということであります。そのことをもっていわゆる盗聴法と言われることは、その漢字から言いましても、全くそういうことはないというふうに考えております。

 住基法につきましては、全国の地方自治団体がいろいろな意味で、情報を交換したり、便宜の上からいきましても、これは極めて重要なことだろうというふうに考えております。十ケタの住民票をつくるからプライバシーが保護されないのだということではないことについては、別途、個人情報の保護のための法律案を企図しております。両々相まって、人々のプライバシーは保護しつつ、かつ、コンピュータがこれまで発展してきた時代には、それにふさわしい行政のあり方もこれまた望ましいものだろうと思います。

 いずれにしても、もっと早い時期にあるいは結論をつけておくべきものであったかもしれませんけれども、幸い、国会における多数の理解と協力を得てこれが通過することにつきましては、国民の理解が得られるものと考えております。