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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 平成十二年度予算成立に伴う小渕内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2000年3月17日
[出典] 小渕内閣総理大臣演説集(下),1010−1023頁.
[備考] 
[全文]

【冒頭発言】

○総理 平成十二年度予算がお蔭様で本日ただ今成立をいたしました。衆参両院におきまして、予算の成立のため大変御努力をいただきましたこと、心から感謝申し上げます。

 今回の予算は、予算の国会提出が明年一月の省庁再編のため、昨年より九日遅れにならざるを得なかったにもかかわらず、昨年と同じく、戦後最速で成立をいたしました。結果として、五十日間の最短の審議期間で年度内に成立したことになります。これは、予算の早期成立が景気の本格的回復の鍵を握るとの認識の下、与党三党が固く結束し、鋭意努力された結果でございます。

 平成十二年度予算は、我が国経済が緩やかな改善を続ける中にありまして、これを本格的な回復軌道につなげていくため、経済運営に万全を期すとの観点に立って編成したものであります。同時に、経済や社会の将来の発展につながる分野への重点化など、予算の「構造」にまで踏み込んだ取組を進めたものであります。

 例えば、公共事業につきまして、その総額の二割以上に当たる約二兆六百億円を、次の四つの課題に重点配分しております。すなわち、第一に物流効率化、第二に環境対策、第三に少子高齢化対応、第四に情報通信の高度化であります。

 一方では、「時のアセスメント」や「費用対効果分析」を活用し、新たに二十三事業の中止などに踏み切っております。また、私が提唱してまいりましたミレニアム・プロジェクトをスタートさせます。情報化、高齢化、環境対応の三つの分野で大胆な技術革新に取り組みます。その上で、最大の景気対策は、本予算を円滑かつ着実に執行することであります。具体的には、公共事業等につきまして、年度開始後直ちに着手できるよう、実施計画、いわゆる「箇所付け」の協議・承認を速やかに行います。

 我が国経済は、着実に前向きの動き、自律的回復に向けた動きが徐々に現れております。先般発表になりました昨年十〜十二月期の実質国内総生産は前期比でマイナスでありました。しかし、本年一月以降の足下の経済情勢を見ますと、例えば個人消費や新規求人数の動きは好調であります。また、長らく減少を続けてまいりました設備投資も昨年十〜十二月に反転しプラスとなっております。いわば、日本経済は、「雲間に朝日がさしてきた」といえる状況であります。

 私は、総理に就任して以来、デフレ・スパイラルに陥ることを防ぎ、日本経済に対する信認を回復するため、各般の政策を果敢に実行してまいりました。その結果、平成十一年度にはプラス成長へ転ずる見通しはほぼ確実にすることができたと考えます。せっかく芽生えました明るい兆しを更に強く、大きな流れに変えていかなければならないと考えております。今大事なことは、国民の皆様や企業が日本経済の将来に確信を持っていただくことであります。そして、前向きに積極的な取組の歩みを進めていただくことであります。政府としても、共に一層の努力を続けてまいります。

 こうした時期にありまして、経済の構造改革は極めて重要であります。経済の構造改革は、新たな市場を創り出し、雇用を生み出すものであります。企業の事業再編の円滑化、産業技術力の強化、規制緩和、そして情報技術革命すなわちIT革命といった課題に全力で取り組んでまいります。

 最後に、教育改革及びサミットにつきまして、一言申し上げます。教育は「国家百年の大計」であります。既に、この二か月間で各界の有識者の方々や、更に国民の皆様から四千を超える御意見を頂いております。近く江崎玲於奈氏を座長として発足する教育改革国民会議では、国民の皆様の教育に対する切実な思いも踏まえ、教育の基本にさかのぼって幅広い議論を積み重ねていただきたいと考えております。

 二〇〇〇年という節目の年に、アジア諸国と深いつながりのあります九州・沖縄地域で開催されるサミットは、本年の最重要の外交課題であります。開催まであと四か月ほどでありますが、来週末には私自身沖縄を訪問し、現地の視察やアジア太平洋地域の有識者の方々と懇談を行いたいと思っております。地元の皆様を始め、国民各位の御協力を改めてお願いいたす次第でございます。ありがとうございました。

【質疑応答】

−−まず景気の問題ですが、総理の冒頭発言でもありましたが、三月の月例経済報告でも今日報告されましたが、まだ景気回復宣言には至らないということもあって、依然として景気回復の見通しというのは不透明な部分があると思います。総理は、現段階での経済動向をどう判断し、今後更にどのような景気対策をとっていこうと、予算執行と併せてその点と、これに関連して自民党内には五千億円の公共事業などの予備費を早期に使おうという意見もありますけれども、補正予算編成の可能性を含めてどう対応なさるのか併せてお聞かせください。

○総理 日本経済は、残念ながら過去二年引き続いてマイナス成長でございました。小渕内閣になりまして、何としても日本経済をプラス成長にしなければならないということで、景気回復、経済再生をこの内閣の最大のテーマとして取り組んでまいった次第でございます。各種の政策をすべて打ち出しまして対応いたしました結果、今年三月期、すなわち十一年度にはプラス成長になる見込みがかなり濃厚になってきております。

 ただ、実は、昨年十〜十二月の四半期におきましてマイナス成長になりました。これはいろいろな要因があると思いますけれども、やはり給与所得者に対してのボーナス、これがなかなか思うような数字が出てこない。したがって、賢明な消費者ということになりましょうか、消費も伸びなかったということもあります。またちょうど、いわゆるY2Kといいますか、コンピュータ二○○○年問題がございまして、旅行の方も控えよう等々がございまして、残念ながらマイナス成長になりました。

 しかし、その中で非常に特筆すべきことは企業の設備投資、これがプラス四・六という数字で久々にプラスの数字が出てまいりました。これは、ある意味では日本経済の先行的指標を示すものではないか。設備が、一旦リストラも済んで、これから新しい設備の下に経済活動をしていこうということでございますから、こういう数字がこれから堅調になってまいりますと、必ず当初の目標であるプラス○・五、あるいは○・六、この数字近くに日本経済が上がってくるということになりますと、マイナスからプラスですから、したがって十二年度以降、この勢いが安定的に成長するということになりますと、今年の秋ころには、しっかりした足下が固まってくるのではないかと強い期待をいたしております。

 おおよそ採るべき経済政策は採ってまいりました。その中では、いつも御指摘を頂いておりますが、国債も相当発行いたしまして下支えをしてきたということもありますが、自律的な経済の発展につながってくるものと確信をいたしております。

 冒頭申し上げましたように、これは企業におきましても、そうした気持ちがこの官需から、いわゆる民需という体制に切り替わってくれば、必ず私は今年夏、秋以降の日本の経済成長というのはかなり確実なものになってくるというふうに思っております。

 それから、この予算が成立をいたしましたので−−昨年も最速でございました−−最速ということはいたずらに早く国会により成立せしめていただいたということだけでありませんで、今日成立したということは、先ほど申し上げましたように公共事業にいたしましても、省庁がこうした公共事業を実施する場合に、四月一日から国のお金が行ったときに事業が開始するということでありますので、切れ目のない公共事業関係の事業が推進されることによって、これまた景気に対しましても、それなりの影響を与えられるものだというふうに思っております。

 したがいまして、何はともあれ予算が成立をいたしましたので、この予算を円滑かつ着実に執行する。これに尽きると思っております。相呼応して民需がこれとともに発展するということでありますと、日本経済も大きく進展しますし、また日本経済が伸びるということは、アジア経済も共々に発展していくという良循環が始まるのではないか、こういうふうに考えております。

−−次に、予算を編成するに当たって、国債を大量に発行されたということで、国と地方の長期債務残高を合わせてGDPを上回る六百四十五兆円ということで財政赤字は先進国中最悪の水準です。総理は、これまで経済回復、景気対策最優先とおっしゃっていましたけれども、この予算成立をきっかけに財政再建への具体的な道筋を示すというふうなお考えはないでしょうか。

○総理 私も責任ある立場でございますから、一般論的に言えば、財政というものは「入るを量りて出ずるを制す」、これは中国の礼記の言葉でありますが、これは古今東西政治家が最も注意しなければならないことであります。がしかし、単年度における国債の発行ということをしなければ、日本経済が引き続き三年、四年のマイナス成長になるという、スパイラルの状況であったわけでありますから、これを一応押し止めたわけですから、これからは、この経済成長をしっかりさせていくということで、いずれの時期か分かりませんが、財政をより健全化させていかなければならないということは、これは四六時中忘れたことのないことでございますので、ただ、その時期をあらかじめ特定していくということになりますと、また財政再建ということになりますと、具体的にはどういう手法をとるかはなかなか難しゅうございますが、ごく簡単に言えば、税の問題にまで立ち入らなければならないということになりますと、またまた、前回消費税を導入して、たまたま不幸にしてアジア経済が非常に悪くなったということと非常に複合的にマイナスに働いて、日本経済が非常に落ち込んできたという反省も込めまして、やはり、しっかりとした成長路線というものを確実にした上で対応すべきものと確信をし、その時期の一日も早くなることのためのしっかりとした土俵づくりといいますか、足下固めといいますか、これをいたしていくのが今の務めであろうと、このように考えております。

−−予算は成立しましたけれども、今後七月の「九州・沖縄サミット」、そして一連の警察不祥事の対応とか、教育改革、様々な懸案があるわけですけれども、今後、総理自身何を最重要課題として位置付けていくのか。そしてまた、与党内には解散・総選挙につきまして、サミット後とか、任期満了とか様々な発言が相次いでいます。それを総理はどのような形で判断されているのか、そしてその判断材料として総理が何を一番重視するのかをお聞きしたいと思います。

○総理 先ほどの続きになりますが、何といっても日本経済を安定させていくということに尽きると思いますが、常々、私、二兎を追って一兎をも得ずという結果になってはいけないということを申し上げてまいりました。財政再建と景気回復と、二つともねらいをつけていきまして、両方取り損なったら目も当てられないと、こういうことですから、確実に景気を回復するということでいたしております。引き続いて、ですから、これからの課題も経済の再生から新生と申し上げましたが、いろいろの新しいミレニアム・プロジェクト等を通じまして、これからしっかりとした安定した経済運営を行っていくということが一つだと思います。

 それから、お話にありましたように、これからは幾つかの改革を着実にしていかなければならないのだろうと思うのです。これは、実は橋本内閣に「六大改革」がありまして、私は、この自民党の前内閣の政策というものは引き続いて重要な課題であろうと思っております。そういう意味では、教育改革がそうでありますし、また、社会保障改革、これも従来、それぞれ年金や介護保険やその他万般にわたりましていろいろございましたが、一つ一つ医療の問題等を解決するのではなくて、これを総合的に解決していかなければならない、こういうふうに考えておりまして、ある意味ではこれは財源の問題にも絡むわけでございますので、社会保障構造改革の最後の時期を私は迎えているのだ、そういう意味で審議会をこの間立ち上げまして今検討中でございますから、社会保障構造改革をしなければならない。それから司法改革、これも今審議会で御論議いただいておりますけれども、やはりこの問題も比較的専門家だけで考えがちでございますが、実は話がそれますが、中坊公平氏といろいろ話をしてみまして、日本の司法制度のあり方、こういうものについてもかなり積極的に取り組まないと国際的なグローバルな姿から遅れていくのではないか。

 この間もあるテレビで放送しておりましたけれども、企業同士の裁判がアメリカ、ニューヨークで行われている。なぜかというと、日本でやると相当長い時間かかってしまってなかなか決着がつかない。アメリカヘ行ったら数か月間で処理するというような事例が出てくることを考えると、やはり日本の中に何か問題がないかということもあります。したがって、そうした改革の問題も私はあるのではないかと思っております。そこで、お話のように今般いろいろな不祥事が発生をいたしておりまして、国民の皆様から、それに対する不信感が高まっておりまして、政府としても苦慮いたしますとともに、誠に申し訳なく思っております。いわく警察不祥事、また今般、防衛庁におけるこれまた不祥事件、こうしたものが出てきているわけであります。私は、これは戦後半世紀以上の問題として、いろいろな問題があってかくなるものとなっていると思いますけれども、ある意味では、この内閣としては非常にダメージが大きい問題であります。がしかし、考え方によっては、諺に曰く、「禍を転じて福となす」ということができれば、最終的に国民の皆さんに信頼をされる警察であり、自衛隊であるということになるだろうと思います。そういう意味で警察につきましては、警察刷新会議を来週開催していただきまして、本当に専門家の皆さんから厳しい御指摘を頂きながら、いわゆる国家公安委員会制度の問題等にまで御検討いただければ有り難いと思っております。

 いずれにしても、この際、出すべき膿は出し切って、きれいな体で国民の再び信頼をかち得て、それぞれ責務を全うできるようにしていかなければならないと思っております。私は警察も自衛隊も、それぞれの署員、あるいは隊員は本当に日々訓練に励み、その責務、治安・防衛に当たっていただいていると思いますが、こうした幹部の事象が起きますと、本当に国民の信頼全体にわたって低迷せざるを得ないということでありますので、この点につきましても、治安並びに防衛に責任を持つ私といたしましても、この機会に本当に悔い改めていく努力をしていきたいというふうに思っております。

 最後にサミットであります。「九州・沖縄サミット」、特に首脳会談は沖縄県で開かれます。過去三回東京で開かれましたが、四度目、七年に一遍のこのサミットを、日本にとって最もアジアに距離的に近い地域でありますと同時に、戦前、戦中、戦後、大変な御苦労をされておられる沖縄県で開催することと決断をいたしました。各国とも、是非その成功のために協力をするということをおっしゃっておられますので、必ず大成功すると思っておりますが、議長国としての日本といたしまして、是非「九州・沖縄サミット」を成功させるために全力を尽くしたいと思いますので、地元はもとよりでございますけれども、国民皆さんの御理解と御支援を頂きたいと考えている次第でございます。

−−総理、解散・総選挙の判断と最重要課題のことについて。

○総理 解散・総選挙ですか。今日予算を通過させることができました。当然のことでございますが、予算関連法案というのは、また来週早々から審議に入っていくわけでございます。予算が通っても関連法案が通らなければ、これは政策を実行できませんから、これをまず最重要と考えて、政府といたしまして、またときには議員立法として、提出をいたしていますすべての法案の成立のために全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。したがいまして、現在では解散について特に念頭にはありませんが、これは野党の皆さんも、あるいは憲法・国会法に基づいて、この内閣を不信任するということになりますか、不信任に対して「必要ない」というふうに与党の先生方がおっしゃるからというようなこともございますから、そういうこれからの政治の動向を見つつ、その時期は改めて考えていくべきものだろうというふうに思っておりますが、結論を申し上げれば、今ともかく懸案の法律を通すことと同時に、せっかく成立させていただいた予算の執行に遺漏なきを期して、てきぱきとそれぞれの予算が実行される、その努力を行政府の長としては懸命に努力していくということに尽きると思っております。

−−経済問題から離れますが、日米安保問題について、総理も昨日コーエン米国防長官にお会いになられましたが、この安保問題をめぐる日米関係については、「思いやり予算」の削減問題や、米軍厚木基地のダイオキシン被害問題などで安保条約をめぐる日米関係にきしみが見られますが、これらの問題解決を含めて、今後日米安保条約をどのようにしていきたいとお考えになっているのでしょうか。

○総理 橋本・クリントン両氏の会談によりまして、日米新同盟時代に入りました。それに伴うガイドライン関係の法律も私になりましてからこれを国会で成立させていただきました。したがいまして、ますますもって日米両国の同盟の絆が私は強まったと思っております。昨日もコーエン国防長官が参られましたけれどもそのことを非常に強調されておりますし、日本としても同盟国としては、日米安保によってなさなければならない義務といいますか、そういうものは確実に行っていくつもりでございます。もちろん、国民の皆様の御理解と御協力を得ながら、この駐留経費その他ホストネーションサポートにつきましても日本としての責任を果たしていく。果たしていくことによってアメリカもこの日本と同時に極東の安全について責任を持つと。昨日もいわゆる米軍十万人体制についていささかもこれをおろそかにすることはないと、責務は十分果たしていきたいとアメリカの国防の最高責任者も強調しておりましたから、そのことを強く信頼をいたしまして、共々に万が一にこの安全保障を壊すようなことが起こることのないように、努力をしていくことだろうと思っております。

 かつてない、私は日米間は安全保障の面のみならず、極めてより良い関係にあると思っております。もちろん、この貿易問題その他につきましては、いろいろとございます。あるいは、通信問題をめぐりまして、いろいろとお互いの国々の要望・要求というものがありますが、これはどんな国の間柄でもあるのでありまして、交渉によって、話し合いによって難関を乗り越えられることの自信が双方にあるということが、真の同盟関係である国のことだと思っております。

−−総理、国会改革の関係なんですけども、今国会から予算委員会の質疑がですね、総理の発言を伺う機会が減ったと思うんですけども、国民からすればもう一つ総理がどうお考えになられているのかということを直接聞きたいという声もあると思うんですが、総理御自身はどう考えていらっしゃるんですか。

○総理 これはそのよって来るところは、国会活性化法ということによりまして、いわゆる政府委員を廃止いたしまして、今予算委員会で御覧になっていただいているようにですね、今までは事務当局が答弁に出てきたわけですが、事務当局無しで大臣並びに政務次官が責任をもって答弁すると、これが一つ大きな明治以来の大改革だったと思うんですね。それから、来年の一月六日、新しい行政機構の編成が行われれば、その時には副大臣制度というのが出てくるわけであります。この副大臣が国会に対する責任を負ってくるということであります。と同時に、総理大臣に関しましては、総理大臣と野党党首とのいわゆる国家基本政策委員会、すなわち通称クエスチョンタイムと言っていますが、これを行うということが大きな柱になっているわけです。したがって、そういう三つの改革の中で、総理大臣としていかに国会にコミットメントしてくるかということだろうと思いますが、一つのクエスチョンタイムで言いますと、元々これはイギリスのいわゆる労働党・保守党、現政権とシャドーキャビネットの党首がやり合うということで、イギリスは、総理大臣は、国会には週一回のクエスチョンタイム三十分間出席すると、あとはそれらの大臣と副大臣が国会の方で議員各位との討論をする、というのが我が国のクエスチョンタイムの元々の発想が出たゆえんでございます。

 そこで、私としてはですね、それこそ国会でも議員としても相当長い方になってまいりました。国会というものが私のすみかであるぐらいのつもりでいるわけでございまして、呼ばれればいつでも御出席させていただいて、お話をさせていただくということであります。が、率直なところを申しますと、最近は外国の方々も相当多く見えられます。昨日もコーエンさんも見えられたし、それから国連の大使のホルブルックさんが参られまして、この方は今、国連における日本がP5に加われるかどうか、すなわち安保理の常任理事国になれるかということについて、非常にこのアメリカの国連大使というものは大きな役割を果たしております。したがって、昨日は夜になりましたけれども私もそのことを強くお願いをしております。このように、総理大臣として外国の皆さんの御訪問を受けることが非常に多くなったということも事実です。ですから、そのことと国会とを両立させていかなければならない。

 あえて私は国会を忌避しているつもりはさらさらありません。しかし、国会に一度入りますと、今日は午前三時間、夜五時間、ずっと座りきりでいろいろ答弁申し上げながら、仮にそういうときに外国の皆さんといわれましてもこれは不可能です。ですから、何とか両々あいまって、国の最高責任者として近来外国のほとんどの政治家のみならず、多くの方々が一度日本の総理に一言申し上げたいという回数は、今数字はありませんけれど抜群に増えてきている、ですから、それとうまく組み合わせしていただきまして、時にはそういう方に会うときはお許しいただいて、国会の方をちょっとはずしてもよろしいというようなことをお考えいただければよろしいかと思います。私は元々長きにわたって国会を愛しておりますから、是非機会があれば大いに出席をする、と同時にそうした形での総理大臣としての役割もまたあると同時にもっと言いますと、日本の役所の中の最高責任者です。したがって、これから改革の中では、先ほど申し上げなかったけれども、行政改革というものは引き続きあるのです。各省庁、一府十二省庁になったから終わったのではないのです。一緒になったならば、役所のトップは次官が生まれますが、二つの役所が一緒になったらその次官は、ある役所が最初で、その次の役所がこうだというような形で、いわゆる「たすき掛け」みたいなことをしていてはならないのだろうと思います。もちろん、それは人物によりますけれども。したがって、そういう意味では本当、これから大きくなった内閣府が、それぞれの役所に対しましても相当言葉はいかがかと思いますけど「威令」が行えるということでなければならない。そのためには、総理大臣としては、できる限り官邸にどっしり座って指揮していくという形でなければならないのではないかというふうに率直に思います。したがって、そうした総理大臣としての役割を充分に果たしつつ、私は、国会というものは「国権の最高機関」、大事なことですから、呼ばれなくてもと思ってはおりますが、国会のルールがございまして、議員運営委員会またあるいは国会対策委員会、そういうところで御審議をいただきまして、積極的に参加していくということについては、私はいささかも躊躇もないということだけは申し上げておきたいと思います。