[文書名] 日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議後の共同記者会見(小泉内閣総理大臣)(要旨)
【冒頭発言】
【小泉総理】
皆様のおかげで無事に今回の首脳会議を終えることができた。沖縄県知事をはじめ、沖縄県の関係者の皆様にも厚くお礼申し上げる。沖縄では、「この島で一回会って言葉をかわすと兄弟あるいは姉妹になる」と言われている。この言葉通り、私たちはこの2日間のサミットで、大変美しい沖縄のくつろいだ雰囲気の中で率直にうちとけた議論が交わされたと思っている。
首脳会議では、太平洋島嶼地域の持続可能な開発の実現に向けて、地域の開発戦略の主要な要素である域内の安全保障、貿易・投資、開発・保健、教育、環境の5つの重点分野につき議論した。特に環境問題と教育問題については、各国首脳の間で問題意識が共有され、多くの具体的な提案がなされた。
今回のサミットの成果として、「沖縄イニシアティブ」をとりまとめた。この5つの重点分野において、具体的に何を行っていくのかにつき合意できたことは大きな成果。
「沖縄イニシアティブ」を効果的に実施していくため、この地域の大きな援助国である日本・豪・NZの3ヶ国が協力していくとの共同文書を出せたことの意義は大変大きい。
今回のサミットの成功は、稲嶺知事をはじめ沖縄県や名護市のご尽力の賜物であると改めて感謝申し上げる。昨日、他の首脳と共に沖縄NGOの活動の一端を拝見したが、その積極的な活動には敬意を表したい。
これからこのサミットを契機に兄弟、姉妹の心で、交流を拡大していきたい。誠にありがとうございました。
【ガラセPIF議長・フィジー首相】
自分も小泉総理と同様、太平洋諸国を代表し、稲嶺沖縄県知事および沖縄県の皆様にお礼申し上げる。この島サミットはきわめて有用かつ実り多いものであった。沖縄県の皆様には大変暖かいおもてなしをうけた。24時間前に到着して以来、大変親切にしていただいた。
さて、昨日、今日とすばらしいサミットが行われ、5つの重要分野についての議論が行われ、いずれも太平洋地域にとってきわめて重要な問題が話し合われた。さらに日本のみならず、この地域内の他の援助国にとっても重要なテーマだったと考える。
昨日、小泉総理がこのサミットをできるだけ行動中心のものにしたいと、前回2回のサミットとは違うものにしたいと言われたので、我々一同、大いに意を強くした。この首脳宣言はこの意識が反映されていると思う。行動計画が含まれていることもこうした意識を示している。我々がこの地域におけるパートナーとして経済・社会開発をどのように行っていくかについて具体的に書かれている。
また、日・豪・NZが三国で共同文書を出されたことに関してもお礼申し上げる。太平洋地域支援に関する改めてのコミットメントを表明し、三国間の努力を調整することの重要さも述べられている。それぞれがばらばらに支援を実施するのではなく、共同、調整することにより、島嶼国にとって最も利益になる形でのプロジェクト推進を目指すことは望ましいことである。今次島サミットでは、これまでで最も成功したもののひとつだと認識。
共同行動計画の実施に関しては一年ごとに見直しをするということも考えられている。もちろん書かれた内容の実施にはさまざまな困難もあると思われるが、そのような方向でやっていくことが決められた。激務の合間を縫って最初から最後まで出席してくださった小泉総理にお礼申し上げるとともに、事務方で支えて下さった方々にもお礼申し上げる。
【質疑応答】
【質問】議論の成果で沖縄イニシアティブが取りまとめられたと聞いているが、沖縄イニシアティブをどのように評価しているか改めてお聞かせ願いたい。
【小泉総理】太平洋の島嶼国はそれぞれ国の事情が違うが、大きな地域に分散してはいても、海によって隔てられているというのは、必ずしも離れているわけではない、逆に結びつけられているのではないか、という気持ちを持つことができた。わが国にとっても太平洋島嶼国は重要な隣人であるという意識を持つことができた。そして、持続可能な開発を実現するために首脳間で率直な意見交換を行うことができた。意見交換の結果、具体的な戦略、行動計画を打ち出すことができたことは大きな成果。今回の沖縄イニシアティブは我々の関係の基礎になるものであり、これを着実に実施することにより、よりよき未来を創って行きたいという意欲を持つことができたので大変有意義であった。
【質問】今回沖縄イニシアティブが採択され、継続的にいろいろな活動を実行していくとのことだが、モニタリングを行うような機関はできるのか、そのときの付託事項は何か、どのような任期で誰が選ばれるのか。もしそういうものができないとすればそれは何故か。
【ガラセ首相】年1回の見直しをやっていくと申し上げたが、おそらくそのような見直しを行うチームが、モニター機関としても機能できるのではないかと思う。いずれにせよ、事務方で決めていくべきものと考える。PIF事務局はそのような調整および実施の中心的な役割を担うことになると考える。支援プログラムに関しては日本だけでなく他の援助国からのプログラムもPIF事務局で調整していると思うので、こうしたやり方が今後も継続すると思う。共同行動計画が、この地域内で日本・PIF間のプログラムが成功するかどうかにとってきわめて重要な役割を果たすことになると思う。二国間援助に関してはそれぞれ取り決めがあり、流れができている。そのような意味で共同行動計画の実施の主体となる機関はもう出来上がっていると承知。
【質問】日本は漁業に関する自給率は50%とのことだが、持続可能な環境のためには水産分野が大変重要である。違法操業対策に関してはどのような観点をお持ちか。2015年までに水産資源の回復をするとのことだが、これを達成するためのどのような基準をお持ちかお聞かせ願いたい。
【小泉総理】確かに日本は世界の中でも一番魚の好きな民族であると思う。漁業資源をいかに保護していくかということは重要。PIF諸国にとっても大変重要なことである。特に、かつお・マグロを今後どのように保護しつつ経済に役立てていくか、国民の食生活を豊かにするかはきわめて重要な問題と認識。昨年PIF諸国と日本は不法な漁業を駆逐するため協力することを確認した。今次サミットにおいても貴重な漁業資源の保存と持続的利用のため協力を強化することが確認された。
【質問】沖縄の印象とサミットの2日間を終えて、今後沖縄との交流にどのように生かして行くつもりかの二点をお聞かせ願いたい。
【ガラセ首相】沖縄の印象はすべてよい印象ばかりである。首脳全員沖縄の経済発展の目覚しさに驚いている。空港からここまでの道すがら感銘を受けた。道路、その他の社会基盤の整備状況におどろき、我々の国よりも格段に優れたものがあるという印象を受けた。沖縄の人々の暖かいもてなしにも大変感動した。沖縄と島嶼国の間にはかなりの共通点があるという印象を受けた。昨日拝見したところによれば、国の歴史や成り立ちを踊りや音楽であらわしているところなど、たくさん共通点がある。それぞれの国に持ち帰って人々に伝えたいと思っている。今回採択された首脳宣言および行動計画をどのように実際の行動に結び付けていくか、その橋渡しが我々首脳に課せられた最も大きな役割のひとつだと考える。実施の枠組みはもうすでに出来上がっているので、首脳はこの行動計画の先行きについて楽観的に、確信をもって沖縄を離れることができる。日本も同様の確信を共有していると考えている。我々は3年後の次回島サミットを楽しみにしており、それまでの3年間は、日・PIF双方のパートナーシップが着実に実を結ぶことを期待している。お互いに助け合いながらともに歩むことにより非常に多くのことが達成できると確信している。
【質問】大手銀行のりそなホールディングスが公的資金の再投入を申請する見通しとなった。これにつき、どのような報告を受け、政府としてどのような対策を考えているか。
【小泉総理】昨晩から今朝にかけ、竹中大臣から状況報告を受けている。大臣に対しては無用な混乱や不安を起こさないよう、適切に対処するよう指示してある。これから東京に戻り、どのような状況か報告を受けるが、いずれの事態に対しても金融危機を起こさせないようなしっかりした対応をしていきたいと思っている。