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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 小泉内閣総理大臣記者会見(第三次小泉内閣発足後)

[場所] 首相官邸
[年月日] 2005年9月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【小泉総理冒頭発言】

 本日の衆議院本会議におきまして、首班指名を受け、三度、内閣総理大臣の重責を担うことになりました。よろしく御支援、御協力のほどお願い申し上げます。

 引き続き自由民主党と公明党の安定した連立の基盤に立って、これまで進めてまいりました構造改革路線をしっかりとした軌道に乗せていきたいと思います。

 これまでも多くの国民の皆さんの御支援によって改革を進めてまいりましたけれども、今回の解散、総選挙の結果を見ますと、引き続き構造改革を進めよという国民の声だと受け止めまして、しっかりと改革を止めることなく、多くの皆さんの御支援、御協力の下に進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

【質疑応答】

【質問】 本日、第三次小泉内閣が発足します。総理の残りの任期は来年の9月までの1年間で、この1年間で小泉改革の総仕上げという形で取り組まれると思いますけれども、先の自民党総裁会見の中で内外の課題が山積しているということを総理御自身でおっしゃっておりましたけれども、この1年間、何を最優先として、どういう舵取りでもって政権運営に当たっていかれるか。内政面及び外交面、両面からお聞かせください。

【小泉総理】 まず、今日、開会されました特別国会において、先の国会で否決されました郵政民営化関連法案、これを成立させていきたいと思っております。

 その後、今までの骨太の方針に示されておりますように、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」という方針に沿いまして、言わば地方の改革につきましては、補助金、税源移譲、交付税見直し、いわゆる「三位一体の改革」、これがこれからの年末に向けての予算編成におきまして、4兆円規模の補助金削減、更におおむね3兆円程度の税源移譲、地方交付税見直しがありますから、これが年末の予算編成におきましては、具体化させていかなければならない。

 そして、公務員の総人件費、あるいは定員等、こういう問題にも引き続き取り組んでいきたい。

 今後、この国会が終わりますと、来年度の予算編成は待ったなしであります。ここにおいて、具体的な数字が出てまいりますので、これは私にとりまして、小泉政権にとって最後の予算編成でありますので、これは大変大事な予算編成だと思っております。ここでしっかりと今までの「改革なくして成長なし」、いわゆる財政出動に頼ることなく、景気、経済を活性化していく。いわゆる改革路線を後戻りさせないような方向を示していかなければならないと思っております。

 更に外交におきましては、国連改革等、今次の国連総会におきましては実現を見ませんでしたけれども、今後更に強力な国連を目指して、今まで各国と協力して得た教訓を基にして、更に少しでも前進できるような改革に率先努力していかなければならないと思っております。

 また、テロ等の対策、これは今、国際社会が最も関心を持っている。また、多くの国が協力していかなければならない問題でありますので、このテロ対策というものを日本としても国際社会の責任をいかに果たすかという観点から、協力していかなければならない問題だと思っております。

 そして、イラクの人道支援、復興支援、更に北朝鮮等の問題、これは6者協議で合意を見ましたけれども、この合意をいかに実行していくかということは、まだまだ困難な問題がたくさんあります。11月に再度6者協議が行われますが、その間におきましても日本として6者協議と、更に北朝鮮側との2国間の問題をいかに解決していくか、その交渉、対話も進めていかなければなりません。

 そう考えますと、まさに内外に問題は山積しております。私の残された任期1年、これからもしっかり総理大臣の職務を精一杯務めてまいりたいと思います。

【質問】 今日の衆議院の本会議での総理指名選挙ですが、いわゆる無所属で当選してきた造反議員の方からも10人を超える方が小泉総理に投票いたしました。こうした中には、郵政民営化法案に賛成する考えを表明している人もいますけれども、これに対する総理の受け止めと、こうした対応が今後予想されます自民党内の処分の内容に影響を与えるかどうかお聞かせください。

【小泉総理】 無所属の方がかなりの部分、首班指名で私を指名していただいたということは、これはありがたいと思っております。郵政民営化法案に反対した方でも、やはりこの選挙の結果を受け止めて、国民は民営化賛成だった、ということを認識されたんだと思います。言わば民意を尊重するということで、これからの国会審議において郵政民営化法案、中身を変えずに再度提出いたしますが、そういう場合においてもやはり今まで自分の考え方と国民の考え方とずれていたなということで、民意を尊重する意味からも、先の国会で反対した議員も何人かは賛成に回ってくれる人が出てくると思っております。

 そういう方に対して、どういう処分をされるかというのは、今後この法案審議、そして法案の結果を見て党執行部が参議院とよく協議をしながら進めていくんだと思っております。今どういう処分がなされるかというのは、今の時点でこうだということはまだ早いんではないかと。また個々人によって違ってくると思いますし、衆議院と参議院によっても違いが出てくるんではないかと思っております。

 その辺は、よく今後の審議と御本人の対応を見ながら、執行部としても党紀委員会の意見を聞きながら判断されると思っております。今の時点で、この人はどうだ、あの人はどうだというのは、まだ言える段階ではないと思っております。

【質問】 今回の選挙では、多士済々多くの新人たちが当選いたしましたけれども、今度予想される内閣改造の際に、こういった新人議員たちを大臣なり副大臣に起用する考えはお持ちでしょうか。

【小泉総理】 これはまだこの国会、いかに全力を尽くして対応していくかということでありますので、その後の人事の問題につきましては、国会が終わってから衆参両院をながめて判断していかなければならない問題だと思います。

【質問】 選挙後に民主党では、43歳の前原代表が新たに就任しました。総理は、いわゆるポスト小泉の候補者につきましては、この前原代表が武器としている若さや清新さというものをお求めになりますか。

【小泉総理】 前原さんが民主党の新しい代表になられた、43歳ですか、私より20歳も下で、清新の息吹を政界にももたらしたと思っております。

 また、今までの議論を通じても非常に真面目で意欲的な議員でありますので、私はこれは民主党の若返りだけではなくて、政界全体に若さというものに対して肯定的な若返りも必要だなという機運をもたらしたのではないかと思っております。

 ですから、民主党だけの若返りだけではなくて、自民党にもかなり影響を与えるのではないかと。これから将来、前原さんの活躍いかんによっては、若さに対する不安よりも、若さに対する期待の方が大きく伸びていくというか、可能性を国民に与えるんではないかと。また、そういう活躍を前原さんに期待しております。

 また、考え方からいっても、今まで前原さんの議論を聞いてみても、自民党とは協力しながらやっていける部分がかなりあるんではないかと思っております。

 やはり政権交代ということを主張されるなら、自民党との違いを出そうというのも結構ですけれども、政権にとっても余りぶれない、違わない点も安定した面も出していくということが必要ではないかと思っておりますので、私はそういう対応を前原さんならしてこられるんではないかと感じております。

【質問】 総理は先ほど三位一体ですとか、公務員改革ですとか、課題をお挙げになりましたけれども、いずれも国と地方ですとか、省庁間の利害の対立が非常に激しい課題ばかりが残っております。こうしたものについて、残り1年の任期の中ですべて決着をつけるおつもりなのか、あるいはある程度改革の道筋を付けるだけにとどまるのか、どういうお考えをもって臨まれるんでしょうか。

【小泉総理】 これは、今まで私が進めてきた改革について、常に激しい抵抗があったものです。道路公団の改革にしても、郵政の民営化にしても、あるいは規制の改革にしても、常に省庁間のみならず議員の抵抗も激しかった問題であります。

 今、言われた「三位一体の改革」におきましても昨年方針を出した。これについても抵抗、反対が強かったわけであります。しかし、昨年の方針どおり進めていくわけでありまして、この抵抗は強いんですけれども、こういう抵抗を承知の上で改革の必要性を感じてやってきたわけですから、この方針どおり進めていきたいと。

 もとより、これで改革は終わりということではありません。改革に終わりはないわけですから止めることなく、今後、後を引き継ぐ方がより改革を前に進めることができるような、そういう基盤はつくっておかなければならないと思っております。

【質問】 先ほどおっしゃられた公務員の人件費の改革、あとおっしゃられはしませんでしたが、政府系金融機関の改革など、秋に向けて基本方針であるとか、基本指針などを出すということを諮問会議で言っている課題が幾つかありますが、この秋に向けて、今おっしゃられたように、省庁の抵抗がかなり強いものが多いわけですが、総理としてリーダーシップを発揮されながら、いかに進めていかれるかというところについて、具体的にお考えなどをお聞かせください。

【小泉総理】 私は、今までと変わらないんです。今までどおり進めていくと、常に抵抗ある問題、一方では独裁者、一方では丸投げという両方の批判がありますけれども、この方針は4年前と全く変わっておりません。4年前に言ったことをいかに実現していくかということでありますので、この公務員の給与の在り方についても、やはり都会と地方とは、いかに民間に準拠するといっても、都会の企業と、また地方における民間の企業という点については給与も違います。そういう点をどう対応できるかという問題があります。

 それと政府系金融機関、これも各省庁それぞれ必要だからということで、統廃合なり民営化については今まで抵抗してきた問題でありますけれども、これだけ民間主導で力強い経済の動きが出てきているというときに、やはり私は新しい時代に合った民間の活力を阻害しないような金融体制というものを取っていかなければならないということで、私は政府系金融機関の統廃合、民営化についても、あと1年でありますけれども、しっかりとした方針を打ち出して、今後だれが私の後を継がれようともその方向を実現していくような路線は敷いていきたいと思っております。

【質問】 前原新代表に対する見方を伺いたいんですけれども、前原さんに限らず民主党の新しい執行部を見ると、憲法問題でありますとか、外交安全保障において自民党とかなり話し合える素地が広がっていると思うんですけれども、今、政権交代と総理がお話しになりましたが、例えば法案における部分的な連携でありますとか、もっと総理在任中以降も含めて政界再編までもにらんだときに、今の民主党の前原執行部、今後、自民党との関係、どのようになっていくというふうにお考えになりますか。

【小泉総理】 これは、政界再編といいますと、すぐ見通すということは難しい問題だと思いますが、よく2大政党になったんだから、第2党、野党は与党と違いを出さなければいかぬと言う方がいますけれども、私は2大政党というのは外国の例を見ると、むしろ違いがなくなっていると思うんです。違いを出すというのだったらば、民主党がかつての社会党になるのが一番違いが出るんです。そうしたら、本当に政権交代可能な野党と国民が見るでしょうか。私は、それに疑問を持っています。

 マスコミの皆さんは、与党に協力するとすぐ第2自民党だとか批判しますね。私は、それは当たらないのではないか。是々非々といいますか、自民党と協力できる分野が今の民主党にかなりあるのではないか。あるのにもかかわらず、第2自民党という批判を恐れて、あえて協力できるものを協力しないのが随分あると思います。個別具体的な問題としては言いませんが。

 そして、2大政党であるからこそ、野党はますます与党に近寄らない限り政権は取れないのではないか。イギリスでも、ドイツでも、アメリカでも、言わば2大政党です。そういう2大政党の国を見ますと、与党と野党の違いというのはそんなにない。だからこそ、政権交代が起きるのではないでしょうか。今みたいに、日本の野党みたいに与党と違いを出さなければだめだと言ったら、それはますます野党にとっては、ただ与党だから反対だというのだったら、これはかつての社会党みたいだったら、国民はやはり政権交代は無理ではないかと思うので、そこが私は、第2党の野党の民主党はここが難しいところだと思います。

 自民党と協力しながらどういう形で違いを出すか。また、自民党と同じように、政権を取っても不安がないような政策を打ち出せるか。これが新しい民主党といいますか、前原代表の下にどう対応するか。私も注意深く、また興味深く民主党の対応をこれから見守っていきたい。協力できるところは大いに協力していきたいと思っております。

【質問】 外交に関して1点お願いいたします。

 今日、政府としてテロ特措法の期間を1年間延長されまして、従来のように2年ということではないけれども、1年間は延長される。これは総理のテロとの闘いにおける必要性とか、あるいは日米同盟と国際協調の両立ということを踏まえると、どういう判断でこの1年になったのかということと、この判断が今後の予定されるイラクへの自衛隊の派遣延長をするかどうかという判断にも影響を与えると考えてよろしいのかどうか、それをお願いいたします。

【小泉総理】 国連におきましても、テロ防止、テロ撲滅、これは国際社会が協力してやっていかなければならないということで、今のインド洋におけるアフガンに対する支援、また、テロ対策という面から、日本の自衛隊の活動というのは各国から高い評価を受けております。そういう点から、私は継続していく必要がある。また、時限立法でありますので、これは1年でいいのではないか、そのときの時点でまた判断すればいいのではないかと思っております。

 この問題と、イラクの自衛隊の人道復興支援活動、これはまた別であります。このイラクにおける自衛隊の活動については、またしかるべき時期に判断していかなければならない問題だと思っております。