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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 福田内閣総理大臣記者会見[道路関連法案・税制の取り扱いについて]

[場所] 首相官邸
[年月日] 2003年3月27日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【福田総理冒頭発言】

 年度末、3月末までに、あと5日ばかり残す時期になりました。ただいま、そういう時期に参議院で予算及び関連税制法案の審議をいたしておりますけれども、この年度内に税制法案が成立しなければ、地方財政や国民生活に大きな支障及び混乱が生じかねません。

 1週間前に、私は税制法案の見直しにつきまして、検討を与党に指示をいたしました。その後、野党に対して何度も政策協議を呼びかけてまいりましたが、今日に至るまで何の進展も見ておりません。混乱を回避して、国民生活を守るという総理大臣の責任を全うするためには、なんとしても野党の皆さんとの話し合いの機会をつくらなければいけないと考えてまいりました。そういう話し合いができない状況において、本来であれば与野党間の政策協議の場で提示すべき内容でありますが、時間も切迫してきたということもありますので、こうした形で発表することといたしました。

 この提案に当たりましては、私は見直すべきは大胆に見直すという決意をいたしました。本日は、そうした観点から道路特定財源の改革案について、野党の皆さん、そして何よりも国民の皆さんに対して御説明をさせていただきたいと考えておる次第でございます。

 第一に、道路予算については、娯楽用品を買ったり、公益法人の職員旅行に使ったりと、不適切な支出が次々と明るみに出ました。こんな使われ方をしている税金なんて払いたくないと国民の皆さんが感じることは、全くそのとおりでございます。このように国民の信頼を著しく失墜させたことに、私も大きな怒りを感じております。行政の長として、国民の皆さんにおわびをするとともに、支出の在り方について抜本的な改革を行うことといたしました。

 まず、道路予算に大きく依存している公益法人について、廃止・民営化を進め、契約の在り方についても競争政策を取り入れて見直しします。併せて、不透明な天下りは排除します。また、娯楽用品を買うなどといった不適切な支出を根絶し無駄を排除します。

 第二に、道路以外にも政府がやるべきことはたくさんあるのに、なぜ道路にしか使えないのかという疑問もたくさんいただきました。ガソリン税などの収入を道路整備にしか使えないとしている道路特定財源制度につきましては、今年の税制抜本改革時に廃止し、21年度から一般財源として活用します。その際、地方財政に悪影響を及ぼさないような措置を講じます。そして、CO2を排出しない新エネルギー開発など、地球温暖化対策、救急医療体制の整備、少子化対策など、さまざまな政策にも使えるようにします。

 第三に、一般財源化に伴って、暫定税率を含めたガソリンなどへの税率の在り方についても今後検討します。その際、ガソリンなどに課税することでCO2の排出を抑制して、地球温暖化対策に取り組んでいる国際的な動向や、地方における道路整備の必要性、国・地方の厳しい財政状況を踏まえて検討してまいります。

 第四に、10年間で59兆円が必要だとしている現在の道路整備計画についても、これまでの国会審議などを通じて、この計画にはまだまだ見直しの余地があると痛感いたしました。まず、10年という計画期間は長過ぎるとの指摘がありました。今後、最新のデータを用いながら5年間に短縮した上で、新たな計画を策定することといたします。その上で、厳格、かつ客観的な評価を行って、十分な吟味を行い、本当に必要と判断される道路だけを着実に整備してまいります。

 以上の4点について、改革を着実に実行することを国民の皆さんにお約束したいと思います。

 また、こうした改革につきまして、4月からの20年度予算においても可能な限り反映してまいります。

 まず、道路予算の執行に当たっては、これから策定する新しい道路整備計画によって見直すべきところがあれば、厳格に反映させていきます。また、20年度予算についても、一般財源としての使い道については、野党の皆さんから現実的な提案があれば協議に応じる考えです。

 更に、これらの道路財源改革を進めるに当たっては、私は与野党政策協議会の設置を提案したいと思います。この協議会においては、第一に一般財源化したガソリン税などをどのような政策に使うべきか、その場合税率はどれぐらいが適切か。第二に、新しい道路整備計画の中身。これらについて、野党の皆さんと一緒に協議し、決定してまいりたいと考えます。

 残された時間はあとわずかでありますが、私はまだあきらめていません。与野党で話し合いを行えば事態は打開できると信じております。政治のつけを国民に回してはならないという一点で、野党、特に民主党には是非話し合いに応じていただきたい。もう時間がないと逃げ出すことは簡単ですが、私は最後まで決してあきらめません。政治を動かすのは国民の皆さんです。私も最後まで懸命に努力していく覚悟でありますので、国民の皆さんの御理解、力強い御支援を心よりお願いいたします。

 以上です。

【質疑応答】

(質問)

 民主党は、暫定税率の即時撤廃というものを求めておりますが、総理の先ほどの提案ですと、検討するということなんですけれども、この検討というのは、廃止ということが念頭にあるのかどうかということと。

(福田総理)

 検討とは申し上げておりません。20年度のことですか。

(質問)

 暫定税率分です。

(福田総理)

 暫定税率は、先ほど私が申し上げたのは、道路特定財源制度は、今年の財政抜本改正時に廃止し、21年度から一般財源化と申し上げております。

(質問)

 その期限というのは来年。

(福田総理)

 ですから、21年度から一般財源化です。

(質問)

 暫定税率を検討するにしても、21年度からということで、今年度の予算の組替えということは、もう念頭にないということですか。

(福田総理)

 これは、暫定税率を廃止するといった話もある。野党の皆さんがそういうふうに、今、言っておられることでありますけれども、これをいたしますと、まず、財源が不足します。また、税率が下がるわけですから、ガソリンの値段が下がるといった、そういう問題が起こります。そのことによって、どういうことが起こるかといえば、ガソリンが下がる、一体いつまで下がっているのかということもあるかもしれません。それは恐らくガソリンのユーザーは大変混乱することになると思います。

 同時に、税金が安くなるために2兆6,000億円という財源が失われるんです。その結果、何が起こるか、それは勿論、道路の整備費がなくなるということもございますけれども、地方に行くお金がなくなるということであります。ある党は、地方には不足しないようにするということを言っておられるようでありますけれども、それはどこからお金が出てくるか、中央からお金が出ていくことになるのであれば、では中央はそのお金を一体どこから調達するかといった当然の問題が出てくるわけです。そのことについての説明をまだいただいておりませんので、正直申しまして、よくわかりません。

 ですから、そういうことは、本当に現実的に可能なのかどうかということを考えますと、暫定税率を20年度から廃止するといった議論は、現実無視の議論ではなかろうかと思っております。

(質問)

 そうしますと、民主党は暫定税率の即時廃止ということを求めていますけれども、仮に総理が今日、発表された提案を野党側が受け入れなかった場合、暫定税率の期限が切れて失効するといった場合は、4月末に3分の2のルールを使って、衆議院で再可決するというお考えはあるんでしょうか。

(福田総理)

 私は、先のことは、今、考えておりません。この5日間で何をなすべきか、それはただいま申し上げましたように、国民生活に混乱を生じさせないということ、そして、地方が財政的に混乱しないように、また混乱させないようにするということ。そして、また、そのことによって日本の経済に悪い影響を与えないようにするということ、これが大事だと思います。そういう観点からすると、これは暫定税率を維持するということで、野党の皆さんにも御理解をいただかなければいけない。また、そういう御理解を是非していただきたい。そのために、野党の皆さんといろいろと話し合いをしていきたいとも考えております。

(質問)

 この新提案については、与党側にも説明をなさったと思うんですけれども、これは与党の了解が得られているんでしょうか。それから、先ほど谷垣政務調査会長が来ていましたが、その中では党側の雰囲気はどういうふうな報告を受けたんでしょうか。

(福田総理)

 党側ではいろいろな意見がございますが、しかし、党の皆さんにも話をいたしました。おおむね了解をされていると、私は理解をいたしております。

(質問)

 いただいているペーパーの6番目に書いてありますけれども、整備計画は20年度道路予算の執行にも厳格に反映させる。これは、20年度予算の予算案には手を付けないけれども、20年度につくる道路についても不要なものはつくらないようにしていく、そういうことなんでしょうか。

(福田総理)

 この道路計画につきましては、国会議論の中でもございました。この秋にセンサス調査の結果が出るということでありまして、そういうことであるならば、そのセンサス結果を見て、その差が今の計画と大きな乖離があるということになれば、それは可能な限り是正していくということは視野に入るというように考えております。同時に、道路予算で競争政策がしっかり行なわれるかどうかといったようなことも、これからよく厳格に見ていかなければいけない。また、勿論、ただいま申し上げましたように、無駄の排除ということも徹底的に行なわなければいけない、そういう意味であります。

(質問)

 まだ、民主の主張とは、例えば暫定税率の方向性がはっきりしていない点とか、来年は今の道路の暫定税率と一般特定財源の制度を維持するということで、隔たりが大きいと思うんですけれども、この案で民主党の了解を得る自信が今おありなのか。それと、民主党との話し合いで更に妥協する余地もあるのかどうか、これをお願いします。

(福田総理)

 最初の質問ですけれども、一般財源化する、どういう方向でそれを使うのかといったようなことについては、与野党でまさに協議をしていきたいと申し上げているんです。それでその協議会を立ち上げたいという提案を申し上げたところでございます。差がある、しかし、それは埋めなければいけない。その埋めるための努力を双方でしなければいけないんです。私どももこういうような提案をいたしました。そうしたら、これにどういうふうに応えていただくか。これは野党の責任になるわけですね。そのことをしっかり、残されたわずかな時間でありますけれども、協議をしていきたい。その場をつくってまいりたい。このように思っております。

(質問)

 小沢代表は暫定税率を即時廃止というのを自分の原則として掲げていますけれども、小沢さんの言い分は年間2兆6,000億の事実上の減税対策にもなるという論理立てで物事を言っているわけですけれども、今、総理は暫定税率の即時廃止というのは、現実を無視した議論であるとお答えになりました。 今後残された期間、必死の努力をなされるとは思うんですが、先ほどの質問とも関連しますけれども、小沢さんに改めて党首会談を呼びかけて、お話し合いになると、胸襟を開いて話されるというお気持ちはおありですか。

(福田総理)

 私は、党首会談をすることは、できればしたいと思います。そして、それが解決につながるのであれば、積極的にするということを申し上げたいと思います。

 ただ、前段の暫定税率を廃止する減税法案とおっしゃるけれども、しかし、その分、都市も地方もそうですけれども、これは財政難に陥る可能性があるんです。そのことによって景気の足を引っ張ることも当然あるわけですから、そのことを考えていただきたい。総合的に考えて、今年は暫定税率を維持する。そして、今、提出申し上げている20年度税制改正法案は、道路関係の法案については認めていただきたいというのは、全体を考えた上で一番いい方法だと考えているから申し上げているわけであります。

(質問)

 再度確認させていただきますが、この配ったペーパーの4ですが、21年度からの一般財源化に伴う暫定税率分の検討については、税制事情を考慮して、環境税等々、衣替えがあるにせよ、2.6兆円分の歳入は21年度以降も維持するというお考えでよろしいんですか。

(福田総理)

 これは税制の改革をする際に、この部分だけを取り上げて言うべきではないと思います。社会保障制度もありますし、この分もございますし、もう一つ、年金の公的部分を増やすということもございました。その財源調達をどうするかといったようなことも含めて議論すべき問題だと思います。その中で、この暫定税率を維持する方が今の国際的な石油不足、環境問題といったような観点から考えると、必要なことではないかと私は思いますけれども、しかし、このことについても税制抜本改革時に大いに議論をしてほしい。そういうふうなときにも、野党にも意見を言っていただきたいというのが、我々の率直な思いであります。

(質問)

 仮に野党との合意が得られない場合でも、21年度から一般財源化をすると国民に約束しているということでよろしいんでしょうか。

(福田総理)

 これはどういう状況にあろうと、今、私が申し上げたことは守っていきたいと思っております。