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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 麻生内閣総理大臣年頭記者会見

[場所] 首相官邸
[年月日] 2009年1月4日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【麻生総理冒頭発言】

 新年、明けましておめでとうございます。それぞれにいい正月を迎えられたことと存じます。今年は、今上陛下即位20年、御成婚50周年、金婚式、誠におめでたい年であって、国民を挙げてお祝いを申し上げたいと存じます。

 安心して暮らせる日本、活力ある日本、この思いを年初めの字に込めたいと存じます。

(麻生総理、書初め)

 「安心」「活力」であります。年頭に当たって、私は新しい国づくりに向けた決意を新たにしております。私が目指す目標は変わりません。強い決意を持って、この難局に立ち向かい、国民の皆様の期待に応えたいと思っております。国民の皆様の生活を守るために、やり抜く覚悟です。

 悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである。好きな言葉であり、ある哲学者の言葉です。未来は、私たちがつくるもの、我々がつくる。未来は明るい。そう信じて行動を起こす。そうした意志こそが未来を切り開く、大きな力になるのだと思っております。国民の皆様のために、明るい日本をつくりたい、そう強く考えております。

 以上です。

【質疑応答】

(問)

 総理、明けましておめでとうございます。

(総理)

 おめでとうございます。

(問)

 まず、明日召集の通常国会についてお尋ねします。今、総理は国民の生活を守るためにやり抜くとおっしゃいました。昨年末の記者会見でも、来るべき国会は意思決定能力が問われる、経済危機から国民生活を守ることができるか否かを国民は国会に求めているとおっしゃいましたが、第2次補正予算案について民主党は、定額給付金の分離を求めており、審議の行方というのは、まだ見通しは不透明だと思います。

 総理の基本的なお考えとして、景気対策を早く実行に移すために、民主党と何らかの話し合いをする意図があるのか、それとも政府案が最善のものだということで、再可決を前提にあくまで正面突破を図るおつもりなのか、そのお考えをお聞かせください。

(総理)

 基本的に国会というところは、論議をすべき場所であります。したがって、しかるべき提案が出されたのであれば、それを論議するのは当然なことです。しかし、我々は論議した上で結論を出さねばならない、その結論は、景気対策、金融対策、経済対策、いろいろありますけれども、今の生活者を守るためにいろいろ今、法案を予算の中にもいろいろ出してありますので、そういったものを含めて審議する、プラス結論を出す。その結論が早ければ早いほど基本的に予算が景気対策にはこの予算というのは、最も大事なものだと思っておりますので、論議をするということと結論を出すという基本的なところを忘れないでやっていただくというのが肝心なんじゃないでしょうか。

(問)

 総理、今、書初めで「安心」「活力」と書かれました。安心・活力のある日本にするためには、まず景気対策が重要になってくると思います。それに絡めて、少し解散総選挙のことも絡めてお伺いしたいんですが、総理はかねがね2次補正、新年度の予算案、これを成立させて1次補正と合わせて三段ロケットで景気回復をとおっしゃっています。

 それは、すなわち新年度の予算と関連法案が成立するまでは、解散総選挙は行わないということを意味するということでいいんでしょうか。また、国会の運営が行き詰ったときに、予算成立のために野党と話し合い解散をすることがあり得るのか。改めて伺いたいと思います。

(総理)

 急ぐべきは景気対策、はっきりしています。まずは予算と関連法案を早急に成立させることが重要、それまで解散を考えていることはありません。また、今、国会が行き詰ったときに話し合い解散ということは考えておりません。

(問)

 総理は解散の時期について、かねがね御自身で判断するというふうにお話しされていますが、支持率が大分下がっていく中で、与党内には麻生総理では選挙は闘えないのではないかという声も強まっております。それでもあくまでも御自身で解散をするということでよろしいんでしょうか。その場合、どういった争点を掲げて闘おうというお考えでしょうか。

(総理)

 まず、基本的には、解散は最終的にだれが決断するか、総理大臣が解散を決断します。すなわち、麻生太郎が決断します。

 それから、争点、これはもうはっきりしているんではないでしょうか。国民生活の安定、我々は効果的な経済対策とか、生活対策とか、そういうことを迅速に打つということができるのは政府自民党と確信しております。

 また、次に、国の将来に対して責任を持つということも大事なところだと思っておりますが、今、日本としては中福祉というのであれば中負担ということがどうしても必要だということで、私は景気回復の後に、消費税の増税をお願いするということを申し上げました。無責任なことはできない。そういうのが政府自民党だと、私はそこを一番申し上げたいと思っております。

(問)

 外交についてお伺いいたします。最初に、イスラエル軍がガザ地区に地上部隊を進攻させましたが、そのことについてどういうふうにお考えですか。それと日本政府としてどんなメッセージを出すのか。

 それから、今年1年外交について、総理はどのようなことを重点にお考えになっておられますか。特に、オバマ政権が1月20日に発足しますけれども、アメリカとの外交、アメリカはアフガンの方にイラクからシフトしていくと言われていますけれども、さらなる日本に貢献を求める可能性も予想されますが、その点はどういうふうに対処されるお考えでしょうか。

(総理)

 まず、最初に、イスラエル軍のパレスチナ、ガザ地区への進攻の前に、昨年の末、オルメルト、今年、昨日か一昨日、アッバス、それぞれ電話で会談をいたしております。それぞれ、双方に自制を求める旨話をしましたし、人道支援を日本としてはやることにしておりますけれども、それらの医療物資などなど搬入するに当たっては、これはイスラエル軍に阻止されるということのないようになど、いろいろ話をしておりますけれども、この問題は、なかなか簡単な停戦ということに至らないだろうというのは、私も世界中の識者とほぼ同じ意見を持っております。

 長い話で、もともとロケットを打ち込まれた話からスタートしておりますので、それに対する報復ということになりますので、そういった意味では、ことのスタートからなかなか話はまとまりにくいであろうと思っております。

 地上軍というのが導入されていますけれども、これが話を更に悪化させているということを大いに懸念をしているところです。

 オバマ大統領との話がありましたけれども、これは1月20日に発足されますので、その後にどういった時期にという話は、その後に調整をしていくことになろうと思っております。

 世界との中の外交の中において、今年間違いなく一番優先順位の高いのは、やはり金融、国際金融、これは明らかに金融収縮を起こしているわけですから、国際金融、それに対して日本は、これに責任を持つIMFに対して10兆円融資、こういったことをしている国は日本しかありませんから、基本的に、こういった大きな額をきちんとしている、そういったものを早目に去年も出しておりますので、こういったことによるきちんとした対応というものを世界の大国として責任を持っていかねばならないということだと思っています。新しい国際金融秩序というのをつくらないと、何となくすべて市場経済、原理主義みたいな話が一時ずっと言っていましたけれども、それの欠陥が出たことだけは今回明らかだと思いますので、そういったことで、こういったものに対して、きちんとした国際的な監視が必要ということに関しては、昨年のワシントンD.C.でも話を提案し日本の案がそのまま採用になっておりますので、そういうものを含めて、我々としてはきちんとした対応がその後なされているのか、そういったことはきちんと世界中でチェックし合わないといけない事態なんだと思いますので、我々としては大事なところは、今、言ったようなことだと思っております。

 アフガニスタンにつきましては、これはテロとの闘いをやっているわけなのであって、アフガニスタンと闘っているわけではありません。したがって、テロをいかに未然に防止するかというのは、最善の努力をすべきであって日本が貢献できるところに関しては当然のこととして、テロ防止のために国際的な協力をし続けていく必要があるという立場は変わりません。

(問)

 集団的自衛権についてお伺いしますけれども、総理は、去年、国連総会に出席された折に、集団的自衛権を行使できるように、憲法解釈を変えるというふうにおっしゃいましたけれども、いつごろ、そしてどのような手順で解釈を変えるか、お考えをお聞かせください。

(総理)

 私の立場は一貫しているんだと思いますが、いわゆる従来から政府は集団的自衛権の行使は憲法上許されないという解釈をとってきている、この立場は、今、変わっているわけではありません。

 ただ、一方、これは非常に重要な課題なんでして、これまでさまざまな議論がなされてきたということを踏まえて、これはかなり議論をされる必要があるのではないか。ソマリア沖の海賊の話などを含めて、具体的なことになってきておりますので、そういったものを含めて対応を考えておかないと、我々としては、自衛官、海上自衛官でもいいですが、派遣をして、その派遣した者が派遣はしたけれども、効果は全く上がらなかった、派遣された隊員、非常に危険なことになったということになったのでは意味がない、私はそう思っていますので、こういった問題については、懇談会の報告書も出されていますので、そういったものも踏まえて、引き続き検討していかねばならないと思っております。

(問)

 それは、ソマリア沖に派遣する前にということですか。

(総理)

 今、既にいろいろな形で検討がなされております。それ以上ちょっと答えられません。

(問)

 次の通常国会の予算審議では、自民党の中から予算関連法案の再議決をめぐって造反する可能性が取りざたされていたり、それから、民主党サイドからは、そういったことを期待するような声も上がっているんですけれども、総理は自民党の総裁として、こういった反党行為が仮に起きた場合には、例えば離党を促すだとか、次の総選挙で公認しないだとか、いろいろな対応があるかと思いますけれども、どういった方針で対処されるお考えなんでしょうか。

(総理)

 そのような事態は想定していません。お気持ちはわかりますけれども、あなたの質問している側の気持ちはわかるけれども、そういった状態を想定しているわけではありません。