[文書名] 麻生内閣総理大臣記者会見(衆議院に解散について)
【麻生総理冒頭発言】
(はじめに)
麻生太郎です。
私は、本日、衆議院を解散して、国民の皆様に信を問う決意をいたしました。日本を守り、国民の暮らしを守るのは、どちらの政党か、どの政党か、政治の責任を明らかにするためであります。
1 反省とおわび
私は、就任以来、景気を回復させ、国民生活を守ることを最優先に取り組んでまいりました。その間、私の不用意な発言のために、国民の皆様に不信を与え、政治に対する信頼を損なわせました。深く反省をいたしております。
また、自民党内の結束の乱れについてであります。私が至らなかったため、国民の皆様に不信感を与えました。総裁として、心からおわびを申し上げるところです。
謙虚に反省し、自由民主党に期待を寄せてくださる皆様の思いを大切にして、責任を全うしてまいります。今回の総選挙に際し、国民の皆様と3つの約束をさせていただきます。
2 景気最優先
私が、昨年9月24日、内閣総理大臣に就任をした当時、世界は、百年に一度、そう言われた金融・経済危機に見舞われました。アメリカ発の世界同時不況から、皆さんの暮らしを守るのが政治の最優先の課題になったと存じます。
私は、政局より政策を優先し、自民党・公明党とともに、経済政策に専念してきました。はなはだ異例のことではありますが、半年余りの間に、4度の予算編成を行いました。お陰様でその結果が、ようやく景気回復の兆しとして見えてきたところです。7,050円まで下がっていた株価は、今日は9,600円台まで回復をしております。企業の業績の見通しもよくなりつつあります。
しかしながら、中小企業の業績や雇用情勢などは依然として悪く、いまだ道半ばにあります。
経済対策、この一点にかけてきた私にとりましては、確かな景気回復を実現するまでは、総理・総裁の任務を投げ出すわけにはまいりません。日本経済立て直しには、全治3年。したがって、景気最優先。日本の経済を必ず回復させます。これが、1つ目のお約束です。
3 安心社会の実現
2つ目の約束は、安心社会の実現です。私たちの生活には、雇用や子育ての不安、年金や医療の不安、格差の拡大など、多くの不安がつきまとっています。
私が目指す安心社会とは、子どもたちに夢を、若者に希望を、そして高齢者には安心を、であります。
雇用に不安のない社会、老後に不安のない社会、子育てに不安のない社会、それを実現する政策を加速します。行き過ぎた市場原理主義からは決別します。
特に、雇用については、従業員を解雇しない企業に対し助成するということで、今、月平均で約240万人の雇用を守っております。また、失業しても、雇用保険が支給されない方々に対しては、職業訓練の拡充や訓練期間中の生活保障を行います。更に、パートやアルバイトの人たちの待遇を改善します。
少子化については、妊婦健診を無料にする助成を行いました。更に、小学校に上がる前の幼児教育を無償にすることにも取り組みます。
4 責任
そのためには、財源が必要です。
私は、景気が回復した後、社会保障と少子化に充てるための消費税率引上げを含む抜本的な税制改革をお願いすると申し上げました。国民の皆様に負担をお願いする以上、大胆な行政改革を行います。
国会議員の削減、公務員の削減や天下りとわたりの廃止、行政の無駄を根絶します。増税は、だれにとっても嫌なことです。しかし、これ以上に私たちの世代の借金を子や孫に先送りすることはできないと思います。政治の責任を果たすためには、選挙のマイナスになることでも申し上げなければなりません。それが政治の責任だと思います。
5 民主党には、任せられない
他方、民主党は政権交代を主張しておられます。しかし、景気対策、福祉の財源、日本の安全保障、いずれをとっても自民・公明両党の案に反対するだけで、具体的な政策が見えてきません。
町工場の資金繰りの支援や仕事を打ち切られた人たちへの生活支援など、極めて緊急を要した予算にさえ反対し、国会の審議を引き延ばしました。若い世代の保険料の負担を抑えるための年金改革法にも反対したのです。
子ども手当に5兆円、高速道路の無料化に2兆円など、財源の裏打ちのないケタ違いのバラマキ政策であります。予算を組み替えれば、何十兆円もわいて出てくるような夢物語。国連決議に従って、北朝鮮の貨物を検査する、そういう法案についても審議に応じず、廃案にしてしまいました。この結果に一番喜んでいるのは、北朝鮮ではないでしょうか。
財源を伴わない空論に、日本の経済を任せるわけにはいきません。安全保障政策のまとまっていない政党に、日本の安全を委ねるわけにはいかないのです。日本の未来に責任が持てるのは、私の信じる自由民主党だけです。
今回の総選挙は、どの政党が政権を担うのにふさわしいのか、国民の皆様に判断をしていただく大切な機会です。
(おわりに)
私は、皆様の生活を守るため、景気の回復と安心社会の実現をお約束します。今度の総選挙は、安心社会実現選挙であります。国民に問うのは、政党の責任力です。この約束ができなければ、責任を取ります。これが、3つ目の約束であります。
政治の責任を果たす。重ねて申し上げます。子どもたちに夢を、若者に希望を、そして高齢者に安心を。そのために、私は、私の信じる自由民主党の先頭に立って、命をかけて戦うことを皆さん方にお誓いを申し上げます。
ありがとうございました。
【質疑応答】
(問)
総理に2点お伺いします。まず、総理は就任以来、これまで衆議院を解散する機会は何度かあったと思いますが、本日この時期になぜ衆議院を解散されたのか、その理由をお聞かせください。
また、この時期の総選挙は、与党にとっては厳しいという見方が強いですけれども、総理は一番に何を訴えて、どのようにして選挙戦を戦うお考えでしょうか。併せてお聞かせください。
(麻生総理)
解散の時期につきましては、私が衆議院の任期が余すところ1年である時期に内閣総理大臣に就任をいたしました。就任以来、いつ解散して信を問うか。それと、経済・金融危機に見舞われた日本を立て直すために、景気対策、経済対策を最優先しなければならない。この2つをずっと考えてきました。
こうした中で、4度にわたります経済対策の裏打ちとなる、予算案、また関連法案、更には他の重要法案を成立させることができました。その結果、景気は底を打ち、株価や企業の業績などにも明るさが見え始めてきております。
さまざまな御批判もありましたけれども、政局よりは政策を優先してきたこと、間違っていなかったと、そう思っております。このため、国民の皆様方には、これまでの成果、経済対策の成果を評価していただき、引き続き、この景気回復の基調を、より確かなものにするための経済運営を、是非任せていただけるかどうかを問うために解散を決断したところです。
選挙についてのお話もありましたが、厳しい選挙になることは覚悟しております。しかし、勝つためには、我々は国民一人ひとりに、愚直なまでに政策を訴えるしかないと思っております。
国民の皆さんにとりましては、国民の暮らしに責任を持てるのはどの政党か。それを判断していただきたいと思っております。自由民主党と他党との政策の違いを見ていただきたい。目指すべき日本の姿、具体的な政策、そしてその財源、私どもは具体的には景気最優先、安心社会の実現、安全保障、その点において、我々は他の政党には任せられない、そう思っております。日本の政策に日本に責任を持てることができるのは自由民主党、私はそう思ってこの選挙を戦い抜きたいと思っております。
(問)
先ほど総理の方から自民党内の結束の乱れについて、総裁として心からおわび申し上げるというお話がありましたけれども、自民党内では麻生総理では選挙は戦えないという声も根強くあるようです。そうした中で、党内をどう結束させて選挙に望まれるお考えなのでしょうか。
もう一点、自民党内ではこれに関連して、独自にマニフェストを示して選挙を戦おうとする動きがあります。こうした動きに対して、どういうふうに対処していくお考えでしょうか。
(麻生総理)
本日、自由民主党のすべての国会議員を対象に両院議員懇談会を開催させていただきました。いろいろ御意見をいただいた中で、私に対する批判というものは謙虚に受け止めます。
しかし、今こそ党が一つになって国民に訴えるべきときである。自民党の底力を発揮すべきときではないかとの御意見が多数を占め、党の団結が確認できたと、そう思っております。
今後は、私を始め、自民党自身も改めるべきは改め、真の国民政党として開かれた国民政党として生まれ変わった覚悟で、国民のための政策実行に邁進してまいりたいと思っております。
議論がいろいろ出る。いいことだと思っている。しかし、いったん決まった以上、団結して戦ってきたのが自民党の歴史、自民党は一致団結して戦わない限りは、選挙は勝てません。その先頭に立って戦い抜く覚悟です。
マニフェストについても御質問がありましたが、候補者個人が選挙公報などを通じて意見をおっしゃることは可能です。しかし、党が一致して戦わなければならないときに、この選挙を独自のマニフェストで勝ち抜くことはできないと存じます。
なお、公職選挙法というのがありますが、選挙運動のために配布できる党の公約、いわゆるマニフェストは1種類と決められております。党の決めた公約と違うものであれば、それは党の公約、マニフェストとは言えないということだと思っております。
(問)
安全保障政策でお伺いしたいんですが、1点その前に、もし、今回の衆院選で勝敗ラインを総理の方でお考えのものがあったら、それを聞かせてください。
それと、安全保障政策ですけれども、先ほども民主党の安全保障政策に総理は疑問を抱かれましたが、インド洋での給油継続などは、民主党が政権を取った場合には続けるといったような現実的な路線も民主党は出してきているようですが、あるいは日米同盟も基軸でいくといった感じで、大きな違いはないようにも見えるんですが、そこら辺はどうお考えでしょうか。
(麻生総理)
まず、日本を守るという点についてはテロ対策、また、海賊への対処のための自衛艦の派遣、反対するだけで代案を出されたという記憶がありません。
北朝鮮の貨物検査法については、審議にも応じず廃案にされた。民主党の政策は、私はこの安全保障に関しましては、極めて無責任、不安を感じるのは当然だと思っております。
今、政権を取ったら変わるというんだったら、なぜ今はやらないんですか。なぜ今ならできないんですか。それは反対するためにだけ反対していたということを自ら言っているようなことになりはしないか。今の御発言を私は民主党の公式な発表というものを聞いておりませんので、私はあなたの御意見が本当かどうかわかりません。しかし、向こうがそう言っておるというあなたのおっしゃる話が正しいとする上で申し上げるなら、今のが答えです。
2つ目のどれくらいが勝敗ラインか、私どもは公認候補の全員当選を目指すのは当然です。しかし、今、この段階で、どれくらいが勝敗ラインかは、今、解散総選挙が始まったばかりでもあり、今からみんなが戦う、その決意をしているときに、勝敗ラインを私の口から申し上げるのは、いかがなものか。慎むべきことだと、私自身はそう思っております。
(問)
総理は、今後、党が一致結束して選挙に臨まなければいけないとおっしゃっているんですけれども、解散後も離党表明をする議員がいるなど、党内に動揺が引き続き続いています。本当に一致結束して、この選挙に臨むことができるとお考えでしょうか。
(麻生総理)
自民党の結束については、皆さん方にもオープンにさせていただいた上で、両院議員懇談会の場の雰囲気を見ていただいたと存じます。多くの御意見をいただき、そのおかげで党の団結が確認できたと、私自身はそう思っております。
今後、自民党として改めるべきことは改める、私自身も含めてそう申し上げたところですが、我々は我々がやってきた政策に自信を持ち、そして、我々が目指すべき日本の未来というものにつきましても、自信を持って私どもはやっていかなければなりません。
今、離党された方がおられるというお話ですが、私どもは一致団結という状況というものは、今日の両院議員総会に代わる両院議員懇談会、あの場でも改めて確認をさせていただいた上での話で、私どもはその点に関しては今後一致団結して戦っていけるものだと、そう思っております。
(問)
総理に、先ほど勝敗ラインについて、すべての候補者が当選することを目指すというお話がありましたが、自民党の幹部からは、既に自公で過半数を維持するというのが大前提だという目標が出されていますけれども、その自公で過半数が取れなかった場合の総裁としての責任について、どのようにお考えになっているのかというのが1点。
もう一点は、選挙後の獲得議席数によって、自民、公明以外の政党と政治の安定ということを目標にした場合に、何らかの形で政策理念が一致するグループと連携を図る考えがおありかどうか、お伺いしたいと思います。
(麻生総理)
我々は政治をやっております。したがって、基本は理念。理念、政策、これが一番肝心なところです。数合わせだけしているつもりはありませんし、理念というものはお互いにきちんとした政権の中にあって、お互いに意見を交換し、きちんとした意見を、きちんと詰め合わせた上で、我々は自公連立政権というのをやってきたと思っております。
我々は、ここに国旗を掲げてありますけれども、少なくとも国旗国歌法というのを通したときも、自公によって、あの国旗国歌法は国会を通過した。それが、我々のやってきた実績の一つです。
勝敗ラインにつきましては、先ほど申し上げたとおりであって、今、仮定の質問に安易にお答えするべきではないと思いますし、むやみにこれぐらいが勝敗ラインなどと、どなたが言われたか知りませんけれども、そういったことを今の段階で安易に言うのは軽率だと思います。
(問)
今までもあった御質問ですが、やはり与党で過半数を割った場合の責任の取り方を明らかにしないのは、いかがなものかと思いますが、その点が1点と。それから、総理のお話の中にもありました、消費増税なんですけれども、2011年に景気回復ということを前提に、消費増税について国民にお願いするというのは、自民党のマニフェストにはっきり書き込むというお考えでよろしいのかどうか。この点を確認させてください。
(麻生総理)
選挙で負けた話を前提にしての質問ということに、私が安易に答えることができるとお思いでしょうか。選挙を今から戦うんですよ。私どもは、その心構えがなくて、選挙戦などというものは戦えるものではないと思っています。自分のこれまでの選挙を戦った経験で、皆、力の限り必死になって、あらん限りの力を振り絞ってやるのが選挙です。私はそう思って選挙を戦ってきたつもりです。
したがって、まだ、解散されたばかり、公示・告示にもなっていない段階で、今からどうする、こうするというのは、私どもとしてお答えするところではありません。