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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 菅内閣総理大臣記者会見

[場所] 
[年月日] 2010年6月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【菅総理冒頭発言】

 新内閣のスタートと通常国会の閉幕に当たって、国民の皆さんにこういう形で私の考え方をお伝えする機会が得られたことを、大変うれしく思っております。6月8日に菅内閣が正式にスタートし、6月16日に通常国会が閉幕いたしました。鳩山前総理が、政治とカネの問題、そして普天間の問題の責任を取る形で辞任をされたことは御承知のとおりであります。

 私も鳩山内閣で副総理として、また財務大臣として総理を支える立場にあった者でありますので、支え切れなかったことについては私自身強く責任を感じているところであります。

 と同時に、鳩山前総理は、政権交代の原点に戻って再スタートしてほしい。そういう思いをいろいろな形で伝えられたわけでありまして、その鳩山前総理の思いを大切に受け止めて、この新しい政権で国民の皆さんの信頼を回復し、そしてやるべきことをしっかりとやっていきたいと思っております。

 この内閣としての抱負は、既に所信表明演説、更には代表質問への答弁等で申し上げたところでありますが、改めて基本的なことについて申し上げたいと思います。私は、この20年間、特にバブル崩壊からのこの間、日本は経済的にも社会的にも大きな行き詰まりの中にあった、閉塞状態にあったと思っております。その閉塞状態の日本の閉塞を打ち破って、元気な日本を復活させる。これが私の内閣のやらなければならない第一の方向性、取組みだと考えております。

 そのために、具体的には強い経済、強い財政、強い社会保障、これを一体として強い政治的なリーダーシップの下に実現していく、このことを所信表明でも申し上げたところであります。

 簡単にこのことをもう一度申し上げてみますと、強い経済については、閉幕後の6月18日の閣議において、新成長戦略を閣議決定をいたしました。これは、昨年12月30日に、基本方針というものを国民の皆さんにお示しをしてから、約半年の間、各省庁あるいは各方面の意見を十分に聞きながらとりまとめたものであります。

 最も大きな特徴は、課題解決型の政策となっているわけであります。環境問題に対しては、グリーンイノベーション、そして医療・介護、あるいは子育てといった問題に対してライフイノベーション、アジアの経済の成長に対して、そうした成長を日本もともにできるような関係を構築すること。更には、地域や観光という形で、新しい需要をつくり出していくこと。そしてこれを支える科学技術と人材・雇用、こういう形で構成されておりまして、2020年度までにこれからの10年間の平均で、名目成長率を3%、そして実質成長率を2%、これを上回る成長を実現する。そして失業率は3%台まで引き下げていく、こういう方向性を示しているところであります。是非とも、この内容については、もう皆さんにかなり詳しいものをお示ししておりますので、国民の皆さんも関心のある方は、ホームページなどで是非ごらんをいただきたいと、このように思っております。

 そして、こうした経済成長を支えるためには、強い財政が必要であります。日本の現状は、多くの方が御承知のように、債務残高がGDP比で180%を超えているわけであります。これ以上借金を増やすことが本当に可能なのか、あのギリシャの例を引くまでもありませんが、財政が破綻したときには、多くの人の生活が破綻し、多くの社会保障が、多くの面で破綻するわけでありまして、そういった意味では、強い財政は成長にとっても社会保障にとってもなくてはならない大きな要素であることは、言うまでもありません。

 そこで、この強い財政をつくり出すために、まず、第一にやらなければいけないことは、まさに無駄の削減ということであります。この間、こうした無駄の削減について手を緩めているのかというような御指摘も一部ありましたけれども、決してそうではありません。その証拠といっては恐縮ですが、その証拠には、このための事業仕分けに最も強力な閣僚を配置した。つまり、蓮舫さんにこの責任者になっていただいたこと、更には公務員人件費の削減には、玄葉政調会長を担当大臣となっていただいたこと、また、国会議員の衆議院80名、参議院40名の削減などは、これは政党間の議論が中心になりますので、枝野幹事長に特にこの問題を取り組んでいただく、こういう形で、徹底した無駄の削減は、まさにこれからが本番だと、そういった意気込みで取り組んでまいらなければならない。

 そして、強い財政をつくるために、経済の成長が必要であることは、これもまた言うまでもありません。これは、先ほど申し上げたので重複をしますので、具体的なことは、重複を避けるために省きますが、成長戦略を確実に実行していく。

 そして、それに加えて、税制の改革が必要だと、このように考えております。既に皆様にお配りをしたマニフェストの中で、この財政再建のための基本的な方向性をかなり具体的に申し上げているところであります。

 まず、1つの財政出動の原則として、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴー、新たな政策の財源は、既存予算の削減または収入増によって捻出することを原則とすると。

 更には、2011年の11年度の国債発行額を2010年度発行額を上回らないように全力を挙げる。更には、事業仕分けを活用した無駄遣いのさらなる削減。そして、早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始をしたいということもマニフェストに述べたところであります。

 更に中期的には、2015年までの基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの赤字を対GDP比を2010年度の2分の1以下にする。そして、2020年度までには、このプライマリーバランスの黒字化を達成する。

 更に2021年度以降においては、長期債務残高の対GDP比を安定的に低下させる。こういった方向性をマニフェストできちんと打ち出したところであります。

 消費税については、参議院の選挙が終わった中で、本格的な議論をスタートさせたいと思っております。その折に、既に申し上げましたように、自民党から提案されている消費税率10%ということも一つの大きな参考にしていきたい。また、消費税の持つ逆進性を改めるために、複数税率あるいは税の還付といった方式についても併せてしっかりと議論をしていきたい。このように考えております。

 いよいよ、この国会終了を経て、近くカナダにおいてG8、G20の会合があり、私も初めてそれに参加させていただきます。これまで財務大臣としてG7やG20の会合には何度か出席をさせていただきました。その中で、やはり最大の課題となると思われるのは財政再建。ヨーロッパを中心にした今の状況をどのようにして打開するか。これが世界経済に大きな影響を与えていますので、このことが大きな課題になろうと思っております。

 私は、今日もこの場でも申し上げた、日本における考え方、つまりは成長と財政再建を両立させるにはこういうやり方があるし、我が国日本はその道を取ろうとしているんだ。このことをしっかりと表明し、他の国の参考にしていただければありがたい。このように思っております。

 こうした全体会議に加えて、個別会談も極めて重要だと思っております。既に私が就任して以来、オバマ米大統領、温家宝中国首相始め、各国の首脳と電話での会談は行ってまいりました。しかし、直接お会いする会談は、このカナダでのサミットが初めてということになります。

 まず、オバマ大統領とは、電話会談の中でも確認いたしました、日米同盟が日本外交の基軸であるということを改めて確認するとともに、もっと大きな観点から、この日本とアメリカの関係について意見交換をし、個人的にも信頼関係が高められればと思っております。

 私は、日本は太平洋、つまり海洋国家であると同時にアジアに属する国であり、また、アメリカも太平洋を大変重視し、アジアを重視しておられます。そういった意味で、アジアと太平洋地域、ひいては世界の平和と安全にともに取り組んでいく。こういう姿勢を持って、日米の間における信頼関係をしっかりとしたものにできるよう、この会談がそういった会談になればありがたい。このように思っているところであります。

 胡錦濤主席とは、私が総理になる前にも何度かお会いしたことがありますが、戦略的互恵関係を大事にするというこの原則も改めて確認し合いたいと思っております。

 また、ロシアのメドヴェージェフ大統領とは、私自身、初めてお目にかかることになります。鳩山前総理が非常に力を入れられた日露の多くの課題、最も難しいのは勿論、領土問題でありますけれども、私の場合はまだ初めてお目にかかるわけでありますから、まずは個人的な信頼関係をしっかりしたものにする第一歩とできればと、このように考えております。

 こういった形で、この新しい政権にとっても、そして、この日本にとっても、こうした国々との関係性をしっかりとしたものにする第一歩として、このG8、G20に臨んでいきたい。このことを申し上げて、私からの冒頭の発言とさせていただきます。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、質疑に移りたいと思います。私の方から指名いたしますので、指名された方は、まず所属と名前を名乗っていただいてから質問を行ってください。質問は簡潔にお願いいたします。

 それでは、質問のある方、挙手を願います。中村さん。

(記者)

 毎日新聞の中村と申します。先ほどサミットについて言及がありましたけれども、日米首脳会談についてお伺いします。前鳩山政権は米軍普天間移設問題をめぐって、かなり日米関係がぎくしゃくしましたけれども、この移設問題について、今回の会談でどのようなメッセージをお伝えされようとしているのか、お伺いします。

(菅総理)

 まず、この間も国会の答弁を含め、あるいは所信表明を含めて申し上げておりますように、鳩山総理の段階で結ばれた日米合意というものは、しっかりと踏まえて対応したい。同時に閣議決定をいたしました沖縄の負担軽減ということにも、これは政府として取り組むと同時に、場合によってはアメリカ政府にも協力をいただきたい。こういう基本的なスタンス、そういう立場で臨んでまいりたいと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、次の質問を受けたいと思います。緒方さん。

(記者)

 TBSの緒方です。総理は先ほど冒頭発言でも税制改革についてお触れになりましたけれども、次の衆院選後の消費税増税では、税率に関して、自民党が掲げた10%を一つの参考にするというふうにおっしゃいました。これは党の公約という認識でよろしいのでしょうか。また、この総理発言をめぐって、民主党内から参院選への影響を懸念する声が出ておりますほか、国民新党の亀井代表が消費税増税の方針が正式に決まれば、連立離脱の事態もあるとしています。党内や国民新党の理解をどのように得ていくお考えでしょうか。

(菅総理)

 まず私が申し上げたのは、早期にこの問題について、超党派で議論を始めたい。その場合に参考にすべきこととして、自民党が提案されている10%というものを一つの参考にしたい。こう申し上げたわけであります。そういった意味で、そのこと自体は公約と受け止めていただいて結構ですが、それはあくまでこのマニフェストに申し上げたように、こういう方向での議論を始めたい。そのことについて、その努力は当然のこととして、参議院の選挙後にはやってまいります。

 また同時に、では、それまで何もしないでいるのかということになれば、先だっての記者会見でも申し上げましたように、2010年度内には、この問題についての一つの考え方を民主党としてもまとめていきたい。ですから、この選挙が終わったら、すぐに消費税を引き上げるような、そういう間違ったメッセージがもし国民の皆さんに伝わっているとすれば、それは全く間違いでありまして、まさに参議院選挙が終わった段階から、この問題を本格的な形で議論をスタートさせたい。それを公約という言い方をされるなら、まさに公約とおとらえいただいても結構であります。

 また、国民新党の中でいろいろな意見が出ていることは聞いておりますけれども、選挙のマニフェストになると、それぞれの党がそれぞれの独自性をこれまでも出してきたわけでありまして、そういう点では今回の問題も、例えば夫婦別姓なども国民新党は反対だということを明確にしておられますので、それは選挙における主張が異なるということと政権離脱ということは、私は若干の違いがあるのかなと思っております。

(内閣広報官)

 では、次の質問を受けたいと思います。そちらの、西山さん、お願いします。

(記者)

 朝日新聞の西山と申します。よろしくお願いします。今の質問に関連するんですが、税という政治の最も根本的な問題で国民新党との意見の食い違いが表面化しています。であれば、参院選後に消費税率の引き上げに賛意を示すような政党グループ、そういったものと新たな連立あるいは協力関係を構築するという意思はおありなのかどうか。

 今回の参院選で、総理は財政問題を今の冒頭の発言でも強調されておりましたが、参院選の最大の争点は財政問題のスタンスだとお考えでしょうか。

(菅総理)

 まず、第1問目は、もう先ほど申し上げたことでありますが、今から超党派的な議論を呼びかけたいと思っておりまして、皆さんに賛同をいただけるのか、あるいはいただけないのか、すべては参議院選挙の後からスタートするわけでありますから、今の段階でその先の先のようなことを何か聞かれても、それにお答えすることは余り適切ではないと思っております。

 財政問題を最大の争点にするのかと言われましたが、私が申し上げているのは、強い経済と強い財政と強い社会保障を一体的にやらなければならないんだということを最も強く申し上げているわけです。ですから、何か財政だけで再建すればいいとかということは考えていません。

 例えば消費税を上げて借金返しに充てる、これはデフレ政策になりますから、そうではなくて成長も実現し、社会保障もより強いものにし、そして財政も健全化していく。この3つの目標を一体的に実行するというのがまさに元気な日本を復活する大きな道筋だと思っておりますから、この3つのことを一体的に推進するというのが、最大の私たちが主張するテーマというか公約であります。

(内閣広報官)

 それでは、次の質問を。真ん中後ろの方で。江川さん。

(記者)

 フリーランスの江川紹子と申します。先ほど政権交代の原点に戻ってというお話がありましたけれども、前回の衆議院選挙のマニフェストでは、冤罪を防止するということで取り調べ過程の可視化がきちっと明記をされていました。

 ところが、参議院選挙のマニフェストではそれが消えています。これは消えたのはなぜかということと、菅政権でこの問題についてどういうふうに取り組んでいくのかというところを教えてください。

(菅総理)

 マニフェストについて、今回、昨年のマニフェストの中で継続して取り組むべきものは継続して取り組む形で申し上げ、また、修正するべきものは表現を含めて修正をした形で提示をさせていただいております。

 個々の課題すべてを私もチェックをしておりませんが、特に変わっていないものについてすべて載せているわけではないと承知をしておりまして、必ずしも考え方が変わったということではありません。

(内閣広報官)

 それでは、次の質問を受けたいと思います。では、こちらのあれで、船津さん。

(記者)

 産経新聞の船津といいます。先ほどから話になっている消費税の議論、我々からすると突然消費税という言葉が出てきたような感じがするんですけれども、そもそも総理、所信表明演説のときには消費税ということは言っておられなくて、国会を閉じた後のマニフェストの発表でいきなり消費税という言葉を出されて、国会論戦を避けたようなタイミングでの方針表明のように思えるんですけれども、この点いかがでしょう。

(菅総理)

 まず、昨年の12月の税制大綱の中に、当時、税制調査会会長は藤井財務大臣でありましたが、その中にも消費税を検討するということは入っております。その後、私が財務大臣になり、税制調査会会長になった中では、特に所得税、法人税、消費税についてもしっかり議論してほしいということで専門家の皆さんを中心に議論を進めていただいてまいりました。

 そして、このマニフェストについては、自民党が出された時期とそう大きく違わないと思いますが、ぎりぎりの党内調整をする中で、先ほど申し上げたような形の表現をしたわけでありまして、決して消費税ということが突然に出てきたとは、この経緯を踏まえても思っておりません。まさにマニフェストに沿った中で、その扱いについて私から申し上げたということであります。

(内閣広報官)

 それでは、外国プレスのディッキーさん、どうぞ。

(記者)

 フィナンシャルタイムズのミュア・ディッキーと申します。総理は、選挙のすぐ後、消費税が上がるということはないですが、一番早いのはいつごろ上がると思いますか。

 それと、世論調査には結構消費税が上がることに反対の有権者がいると見えますが、そういう反対の有権者のことは、どれぐらい心配でしょうか。よろしくお願いします。

(菅総理)

 これは、玄葉政調会長もテレビ討論などで言っておられますように、勿論超党派での協議というものがどうなるかということ。更には、逆進性を緩和するためには、複数税率を入れようと思えばインボイスというものの準備が必要になります。還付という形を取ろうと思えば、やはり番号の導入が必要になります。番号などについても、既に検討は開始しておりますけれども、それを最終的に設計し、実現するまでには、やはり2年とか3年という時間が必要に一般的にはなりますので、それを考えれば、よほど早くても、どうなんでしょう、余り私が日程を区切るのは好ましくないかと思いますが、少なくともこれから2年、3年あるいはもう少しかかるのではないかと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、次の質問を受けたいと思います。真ん中の荒木さん、どうぞ。

(記者)

 中国新聞の荒木と申します。地域主権改革についてお伺いします。鳩山前総理は、鳩山内閣の一丁目一番地と地域主権改革を位置づけて、事あるごとに強調してきましたが、菅総理については関心が薄いのではないかという見方も一部にあります。菅内閣にとって、地域主権は何丁目何番地でしょうか。

 国の財源、権限を地方に移すことには、各省庁の強い抵抗があると思いますが、菅総理はどのようにして実現していくお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(菅総理)

 基本的には、鳩山内閣として取り組んできたこの地域主権の実現の方向性、その取組みは、全く変わらない重要性で取り組んでいきたいと思っております。

 この問題は、いろんな表現がありますが、私がよく表現していたのは、明治維新は大変分権的な構造であった幕藩体制から、中央集権的な明治政府をつくり上げて、しかし当時はそうせざるを得なかった外的状況があったわけですが、今日の日本はかなり成熟した国家でありますから、ある意味では幕藩体制というか、藩に多くのものを移すような形で地方主権を進めるべきだというのは、私自身の持論でもあるところであります。

 と同時に、議論していくと、具体的な問題になれば、例えば保育所一つにしても、それぞれの自治体にお願いをしたときに、いわゆるナショナルミニマムがしっかり実現できるのかといった心配が、またいろんなところから出てくる、そういう場面も私もこの間で幾つか見ております。

 そういった意味で、基本的な取組みは変えるつもりはありません。その中で、今、申し上げたような問題も含めて、大いに議論を進めていきたい。たしか予定では、明日の閣議で一定の中間的な方向性を出すことになるのではないかと伺っております。

(内閣広報官)

 次の質問、どうぞ。

(記者)

 フジテレビの松山です。普天間の移設問題についてお伺いしますが、先ほど総理はオバマ大統領との会談で、日米合意をしっかりと踏まえていくということを伝えるとおっしゃいましたけれども、日米合意の中には共同声明の中で、8月末までに辺野古周辺の移設について、位置や工法などについて決定するとありますけれども、ここの部分をどれくらい厳格に8月末という期限を守るお考えなのでしょうか。現在、沖縄県側は、これに対して反対の姿勢を示していますけれども、多少沖縄県の反対があったとしても、期限を優先でしっかりと取り組むというお考えなのでしょうか。

(菅総理)

 私は、先日、2日後に沖縄に全戦没者追悼式典にお邪魔をする、その前に仲井眞知事がこの官邸においでいただいて、意見交換と言いましょうか、少しお話をする機会がありました。

 そういった形で、オバマ大統領とは電話会談ではありますけれども、ある意味では、日米合意そのものはしっかりそれを踏まえて守っていくという姿勢は崩しませんが、その前提の中で、特に沖縄の皆さんとの話し合いを、これから私としては本格的に始めなければならない、そのスタートが先日の仲井眞知事との会談や23日の沖縄訪問だと思っております。

 合意の中で、8月末までに専門家における結論というか、議論を終了するといった趣旨のことがあることはよくわかっております。

 ただ、何かここで決めたら、後は問答無用とか、更に2プラス2の日程も一応出ておりますが、ここで決めたら問答無用と、そういう意味合いにするということは考えておりません。

 例えば家を建てようと、こういう設計図もある、ああいう設計図もあると、しかし、その設計がたとえ固まったとしても、本当にどういう形で建てられるのかというのは、勿論、そこに今、住んでおられる人やいろんな人の了解も要るわけでありますから、そういう意味では、日米合意は合意としてしっかり踏まえつつ、その進め方については、まさにこれから米側とも、そして、沖縄の皆さんともしっかり話し合っていきたい。

 多少追加的に言えば、この普天間移転の問題以外にも、例えば嘉手納以南の基地を返還するとか、あるいは海兵隊の一部をグアムに移転するとか、そういうことも、これまでのいろんな話し合いの中で、ある部分1つの合意があったり、あるいはそういう検討が進んでいるわけでありますから、私としては、この普天間の移設問題は、非常に難しい課題であることを十分に認識しながら慎重に進めていきますけれども、同時に、それと並行して沖縄の負担軽減になる問題は、並行して進めていきたいと、このように考えております。

(内閣広報官)

 それでは、質問を受けたいと思います。

(記者)

 ビデオニュースの神保です。よろしくお願いします。マニフェストについてなんですけれども、菅総理おっしゃっているような経済成長や財政再建というのは、恐らくどんな政権が今できたとしても優先的な課題なんだと思います。

 そこで伺いたいんですが、今回のマニフェストは、今の質問にもありましたように、取調べの可視化も消えていますし、ネット戦略という文言も消えています。また、ワーク・ライフ・バランスという言葉も消えてしいますが、このマニフェストの中に、菅政権ならではの、菅カラーというものを、我々はどの辺に見出したらいいでしょうか。総理が最も思い入れが強い部分というのをお教えいただければと思います。

(菅総理)

 先ほども申し上げたように、今回のマニフェストの中に書き込まれていなかったから、全部それを政策として外したということではないということは、先ほど申し上げたとおりです。

 私が、今回のマニフェストで、特に申し上げたかったことは、これは一貫して言っておりますが、去年の政権交代というのは、どういう国民的な皆さんの意思が、そうした力を生んだのかと、私なりに考えてきました。勿論、マニフェストも一つの大きな要素だったと思います。

 しかし、私は、もっとその背景には、バブル崩壊以降、20年間にわたる日本の経済社会の閉塞状態、例えば自殺者の数が3万人を超えて減ってこないとか、私は団塊の世代ですから、大体就職したら、最初は3万5千円の初任給がだんだん上がっていくのが普通だったわけですが、今の若い皆さんは、必ずしも上がってこないどころか、非正規の場合は、突然首を切られると、そういうことを含めて何かこの日本社会がうまくいっていない、行き詰っている、こういう思いを多くの国民の皆さんが持たれた。それが、ある時点では小泉政権を誕生させるエネルギーにもなったわけですけれども、結果として小泉政権も、その20年にわたる閉塞状態を大きく打開することができなかった。そのエネルギーが、昨年の秋の選挙では民主党政権を誕生させた。このように私は理解しているわけです。

 その国民の声に応えることが私の政権の最大の仕事だ。そこで、まさにこの表紙に書きましたように「元気な日本を復活させる」。元気な日本を復活させるために何をすべきか。まずは経済と財政と社会保障。これを強い経済、強い財政、強い社会保障を強い政治的なリーダーシップで実行していく。これがまさにこのマニフェストで最も国民の皆さんに申し上げ、また、お約束する課題であります。

(内閣広報官)

 予定の時刻が迫ってきております。手短にお願いしたいと思います。そちらの方で、五十嵐さん、どうぞ。

(記者)

 読売新聞の五十嵐です。今、総理は元気な日本を復活させるというふうにおっしゃいましたけれども、例えば消費税を10%上げても、総理御自身が御指摘されたように、社会保障の穴埋めにしかならないで、成長戦略を進めるのはなかなか難しいのではないかという指摘があります。総理御自身としては、最終的に税率としては何%ぐらいまでを確保した方がより強くできるとお考えでしょうか。

 また、今度G20で財政再建と成長の両立を訴えるということですけれども、消費税上げについては国際公約として方向性をしっかり打ち出すお考えはおありでしょうか。

(菅総理)

 消費税の議論の中で、私もこの場でも申し上げたんですが、その前提になっている現実というものを是非、国民の皆さんにも御理解をいただきたいと思うんです。決して私は増税がいい、消費税を引き上げることがいいと言っているのではないんです。そうではなくて、今は税金ではなく、赤字国債でもって多くの社会保障に関わる費用が賄われている。その結果、GDP比180%を超える、いわゆる債務残高が累積しているわけです。

 この状態を同じように、毎年赤字国債、一部建設国債を含めて発行していって、果たして持続可能性があるのか。あと100年持続できるということをどなたか保証してくださるのであれば、それはそういう道筋もあるでしょう。しかし、もし持続できなかったときに何が起きるかというのは、これはギリシャの例を見ても、まず起きることは福祉の切り下げであり、場合によっては人員整理であり、あるいは給与の引き下げであるわけでありまして、そういうことにならないために、強い財政を復活するにはどうするかということを申し上げているんです。

 ですから、何か新しいものをどんどん買うためにといいますか、使うために上げたいというように、もし誤解をいただいているとすれば、そうではなくて、現在、既に、例えば予算総則のことを出せば、もともと消費税で高齢者に関わる福祉の費用は賄う、充当するということに一応なっているわけですが、実際にかかっている費用は17兆円かかっています。しかし、今の消費税で国の分は約7兆円です。ですから、その差額の10兆円は、実質的には赤字国債で毎年それを埋めているわけです。そういう形で継続できないとしたらどうするんですかということを申し上げているわけです。

 そういう意味で、まず、そうした認識を共有できる皆さんとしっかり議論をしたい。その議論の一つの材料として、自民党から提案されている10%というものを一つの参考にしていこう。こういう考えです。

(内閣広報官)

 予定の時刻が迫っておりますが、最後の一問ということで受けたいと思います。どうぞ。

(記者)

 日本経済新聞の藤田です。今のお話に関連してですが、2011年度予算の新規の国債発行額について、先ほど総理は44.3兆円を超えないように全力を上げるとおっしゃいましたが、具体的に来年度予算をどのような方針で編成されるお考えなのか。

 それから、消費税の具体的な引き上げについては、今後2〜3年をかけてとおっしゃいましたが、その前に国民に信を問うというお考えはあるのかどうか。それをお聞かせください。

(菅総理)

 来年度の予算について、1つは新成長戦略というものを汲み上げましたから、これは単にウィッシュリスト的に扱うのではなく、どの分野に財政投入すれば、どういう成長が見込めるか。つまりは最も成長という観点から効果の高いものを判断する。そういう基準として、この成長戦略を、特にマクロ経済部分については、位置づけたところであります。

 そういった意味では、従来の予算編成がややもすれば、こういう力のある政治家が言っているからとか、こういう団体が言っているからとか、あるいは天下り先を守るためとか、別の要素で財政配分がされていた面が相当程度あったと思いますが、この次の予算、私の内閣では、成長ということを一つの大きな軸に置いて、勿論、他の部分が全くなくなるわけではありませんが、成長ということを大きな柱に置いて、予算編成に当たりたいと思っております。

 基本的には大きな税制改革をやるときには、やはりそういうものがまとまった段階で、国民の皆さんに判断する機会を持ってもらうというのは、私は必要なことであろうと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、時間がまいりましたので、これをもちまして、記者会見を終了させていただきます。御協力ありがとうございました。

(菅総理)

 どうもありがとうございました。