[文書名] 第66回国連総会内外記者会見(野田佳彦総理大臣)
【野田総理冒頭発言】
まず、訪米中、官房長官から毎日報告があったが、常に気がかりだったのは、台風15号の動きと、その被害であった。改めて被害に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、引き続き土砂災害に警戒していただくようお願いしたい。
今般の訪米の位置づけだが、私にとっては総理大臣に就任してから初めての海外訪問であり、4つの狙いがあった。第1に、東日本大震災において、160以上の国・地域、40以上の国際機関から、多大なる支援を頂いた。そのことに対する感謝の意をお伝えするとともに、復興と原発事故の収束に向けての日本の決意をお示しすることが1つの狙いであった。
2つ目の狙いは、こうした大震災で得た、あるいは原発事故で得た、教訓や知見というものを国際社会と共有をするということ、発信するということである。
3つ目の狙いは、我が国はいろいろと困難があるが、内向きにならずに更なる貢献をしていくこと、グローバルな問題の解決に向けての貢献をしていくこと、より良い未来のための国際協力をしていくこと、これをメッセージとして打ち出すことが3つ目の狙いであった。
4つ目は、バイ会談を可能な限りこなしたが、各国の首脳との間の信頼関係を築くということ、これが4つ目の狙いであった。
一連の会合を通じた成果だが、まず昨日原子力安全に関するハイレベル会合、本日国連の総会において一般討論演説、2回国連で演説を行った。先ほど申し上げた、感謝と決意のメッセージを込めて話をさせていただいたつもりである。
特に、教訓や知見を共有したいとの我が国の強い意志について、国際社会も好意的に反応していただいたという意味で、手応えを感じることができた。来年は、大規模自然災害に関する協力、そして原子力の安全に関し、2つの国際会議を日本で招致する、開催することを決定した。
さらに、より良い未来の実現という一貫したテーマで、日本は積極的に世界に貢献する意志を提示した。財政健全化と経済成長の両立を図っていくという日本の決意、さらに、ODA等を通じて、途上国の中間層の厚みを増していくという支援、人間の安全保障の推進、こういう訴えをさせていただいた。加えて、南スーダンであるとか、アフリカの角の干ばつ問題であるとか、中東・北アフリカ地域における今後の改革・民主化努力等へ貢献していくという意志も強調させていただいた。さらに、原子力発電の安全性を世界最高水準に高めるとともに、再生可能エネルギーの開発・利用の拡大を主導するといった日本の決意も表明させていただいた。
また、北朝鮮の問題、特に拉致の問題については、ことあるごとに、今日も国連における一般討論演説でも触れさせていただいたが、オバマ大統領、あるいは韓国の李明博大統領、潘基文事務総長にも、拉致問題の解決に向けての協力の要請を強くさせていただいた。
なお、バイ会談での成果であるが、オバマ大統領との日米首脳会談では、日米同盟が日本外交の基軸であるという信念をお伝えし、より一層のこの同盟の深化を図っていくということ、それから双方において経済成長と財政健全化への両立への取組をしていかなければならないことの確認させていただいた。日米間の懸案の解決に向けて、オバマ大統領と個人的な信頼関係を築く良いスタートが切れたと自負している。またその他、カナダ、韓国、EU、英国、インド、フランスの各首脳、先ほど申し上げた潘基文国連事務総長、ナスル国連総会議長とも良好な雰囲気のもとで、有益な意見交換を実施することができた。
秋には、G20のサミットがある。APEC首脳会議もある。ASEAN関連首脳会議も予定されているが、こうした国際会議を通じて、新興国の台頭、多極化の進行、アジア太平洋の安全保障の変化を始め、国際社会の様々な課題に対応すべく、我が国のコミットメントを果たしながら、一歩一歩着実に前進する外交を推進していきたいと考えている。
【質疑応答】
(毎日新聞・高塚記者)
総理の初外遊が国連総会出席となった。先程、一般討論演説も終了された。その際にアピールしたかった点について説明されたが、その中でも特に訴えたかったことは何か。また、その手応え如何。加えて、様々な二国間会談も行われたが、それについての感想如何。
(野田総理)
今回の初めての外国訪問に際し、先ほど述べたとおり、特に自分の思いとして強く持って臨んだことは、東日本大震災における各国の協力及び支援に対してしっかりと日本を代表して感謝の気持ちを伝えるということと、そして、我が国は懸命に復興に向けて、あるいは、原発事故の収束に向けて、取り組んでいるということ、日本再生の取り組み、またその決意というものを、お伝えするということである。加えて、これは自然災害もあるいは、場合によっては、原子力事故も、これは世界共通の課題、それぞれが我がこととして思っていることであるので、今回日本が得た、反省点、教訓、知見というものを迅速且つ正確に国際社会にお伝えするということが大事だと思うので、そのことに努めさせて頂いた。加えて、先程も述べたとおり、内向きになっているのではなくて、日本は様々な困難を乗り越えなければならないが、一方で、グローバルな問題、様々な問題がある。経済の問題、人道の問題、あるいは平和に関わる問題、テロの問題、様々な問題について、日本は今まで以上にさらなる貢献をしていく意志があるということを伝えさせて頂いた。概して、各国には好意的に受け止めて頂き、一定の成果があったと思う。二国間会談でも基本的には同様の話をさせて頂いた。それぞれ、日米関係のみならず、それぞれの二国間の間でも懸案はあるが、そういう問題を解決しながら、共に手を携えて、国際社会が抱えている課題について一緒に仕事をしていこうというスタートラインには立てたのではないか、そういう意味での信頼関係は築けたのではないかと思う。
(ロイター通信・エッカート記者)
一年程前に、この部屋で、野田総理の前任者である菅総理(当時)の記者会見に自分も参加した。当時、日中関係は、尖閣諸島沖での漁船拿捕の問題等でかなりの緊張があった。今は若干落ち着いたが、日中関係というのはいくつかの理由で脆弱なところがある。冒頭発言でカンヌG20、ホノルルAPEC、バリでのASEAM関連首脳会議にも出席すると述べられたが、大国である中国との関係、新たな絆をいかにして強化していくのか。
(野田総理)
ご質問に感謝。日中関係はアジア太平洋地域、あるいは世界という大きな視野に立った時でも大変重要な二国間関係だと認識している。ちょうど折しも来年が日中国交正常化40周年という大変大きな節目の年になるので、やはり、大局的な観点に立って、お互いの関係が安定するように、戦略的互恵関係が深化するように努めていかなければならないというのが、基本的な認識である。その上で、特に国民感情が大事だと思う。国民感情を踏まえると、自分もかつて胡耀邦国家主席と中曽根総理の頃、日中3000人青少年交流というものがあり、その時に初めて訪中したが、未来を担うような青少年の交流などを通じながら、お互いのことをよく理解し合えるような対話を通じていく、交流を促進していくということが肝要ではないかと思う。それが両国の関係を発展させる裾野になるのではないかと思う。時折、難しい問題が生じることがあるが、そういう時こそ、日中関係全体に悪影響を及ぼさないような、大局的な見地に立った努力をお互いしていかなくてはならないと思う。先般、自分が就任した早々、温家宝首相と電話会談をしたが、その際に、訪中の招請があった。是非お互いにとって適切な時期に、訪中を実現させたいと思うが、今お話をしたことを中心にお話することができればと思っている。
(日本テレビ・佐藤記者)
先程総理からもあったが、演説で取り上げた北朝鮮拉致問題だが、六者協議も開かれず、全く進展しない状況が続いている。これをどういうふうに動かしていこうと今考えていらっしゃるのか、具体的なプランを、できる限り具体的にお答えいただきたい。またそれには、先程も話が出たが、中国の力を借りるというか、後押ししてもらうことも必要と思うが、具体的に訪中の時期は、どのあたりを目処に考えているか。
(野田総理)
北朝鮮がその非核化を約束したことがあった。自ら約束したことを具体的な行動をもって示すことが望まれると思う。この認識は、今回、オバマ大統領とも、或いは李明博大統領とも基本的には認識は一致している。とういことは、日本と米国と韓国が緊密に連携を取りながら、北朝鮮の具体的な行動を求めていくことが基本中の基本と思う。その上で、今中国というご指摘があったが、中国や、あるいはロシアにもその働きかけを強めていただくべくお願いをする、協力をし合うことは大事ではないかと思う。核の問題、ミサイルの問題もあるが、特に今回は、拉致被害者の皆さまを一日も早く国に返すためにわが国は全力を尽くすことを、オバマ大統領にも李大統領にも潘基文事務総長にもお伝えした。そのような強い気持ちを持って、これから対応していきたいと思う。
それから訪中の時期だが、時期は確定していないが、先ほどもご質問でお答えしたが、お互いにとって都合のよい時期をしっかり選んだ上で訪中を是非実現させたいと思うし、北朝鮮に絡んだ問題での中国の貢献も強く求めていきたいと思っている。
(AP通信・マシュー・ペニントン記者)
冒頭発言で米国との関係は日本にとって基軸だと仰ったが、日米関係で問題となっている問題につき質問したい。つまり沖縄の普天間基地の移設計画問題であるが、移設の現行案について沖縄の方々の合意を得られると思うか。もし、現行案を再考し、他の計画を検討する可能性もあるのか。その場合、移転にはかなりの経費がかかるが、日本がその経費を負うという準備はあるのか。
(野田総理)
オバマ大統領にも直接申し上げたが、今ご指摘の普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍の再編の問題については、昨年の日米合意に則って日米が協力をしながら推進をする、という考え方をご説明させて頂いた。その上で、抑止力を維持しながら沖縄の負担をできるだけ軽減する、そういうことを実現するために、沖縄の中には県外移転を望む声があることも良く承知しているが、沖縄の皆様にしっかりとそのことを丁寧にご説明しながらご理解を頂くと、沖縄の皆様も、少なくとも普天間の固定化は避けたいという気持ちが強いと思うので、そういうことも含め、しっかりと政府としての考え方をご理解頂くように全力でご説明をしていくことが基本である。