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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 野田内閣総理大臣記者会見(2012年2月10日)

[場所] 
[年月日] 2012年2月10日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【野田総理冒頭発言】

 お待たせしました。まずは、復興大臣を始めとする大臣・副大臣・政務官の人事について、まずはご報告、ご説明を申し上げたいというふうに思います。

 初代の復興大臣は被災地のご出身で、これまでも復興担当大臣、防災大臣として現地に足しげく現場に入り、そして被災地の信頼も厚い、平野達男復興大臣にお願いをさせていただきました。副大臣には被災地で奮闘してきた松下経産副大臣。そして、官邸で復興担当の補佐官として私を支えていただきました、末松補佐官を新たに副大臣に任命をさせていただきました。その他の副大臣、政務官を含めまして、被災地をよく知り、政策の継続性の確保に最大限配慮した即戦力の陣容ということでご理解をいただきたいというふうに思います。

 復興庁設置に伴う閣僚の増員枠を活用いたしまして、中川正春前文部科学大臣に、防災と「新しい公共」と、少子化、男女共同参画の担当大臣をお願いをいたしました。震災の教訓を踏まえた全国的な防災対策の強化、子ども・子育て支援策の具体化、といった重要な政策課題に対して責任を果たしていただきたいと思っております。また、寺田学元補佐官を新たに官邸に入ってもらい、社会保障・税一体改革、行政改革担当の補佐官になっていただくことになりました。

 続いてでありますけれども、私も今日予算委員会の合間のお昼に復興庁の看板掛けをさせていただきました。高田松原の松を使った、それを素材とした看板でずっしり重たいものでございました。被災地の期待に応えるような、応えなければいけない、といった責任の重さを感じた次第でありますけれども、その復興庁の役割、復興庁に対する思いを次に申し上げたいと思います。

 復興庁は、まさにこれは復興の司令塔になる組織でございますけれども、その大きな役割は私、2つあるだろうと思います。第一は、被災地自治体の要望にワンストップで迅速に対応する、ということであります。こちらにこういうパネルがありますけれども、被災3県に復興局を置くと。それぞれの県に2カ所ずつ、沿岸部でありますけれども、支局を置く。さらには青森と茨城に事務所を置くと。こういう体制で、ワンストップで迅速な対応という、その使命を果たしていきたいというふうに考えております。

 それから第二にはですね、役所の縦割り、その壁を乗り越えるということでございます。私がトップとなり、各省庁より格上の立場という位置付けでございます。迅速果断に調整をすることが何よりも大事でございますけれども、特に総合調整権限、実施権限については強力な権限を付せられています。予算の一括計上、あるいは箇所付け、配分までできるということでございますので、この役所の壁を総合調整と実施を通じて、是非、やり抜いていきたいと思います。この、ワンストップできちっと迅速に対応することと、そして役所の壁を乗り越えていく、縦割りの弊害をなくしていくという、そういう使命、その器に魂が入るのは今回集った約250人の職員の志だというふうに思います。各省からまんべんなくですね、こういう実務に慣れた、関連制度に習熟をした人選をさせていただきました。現場主義に徹底して、そして先例主義に捉われずに、とにもかくにも被災地の皆さんの心を心として粉骨砕身、その使命を果たしていただきたいと考えております。

 なお、昨日の段階で、復興特区の第一号認定を発表させていただきました。さらに、3次補正と、いまご審議いただいている来年度の予算において、復興交付金、約2兆3千億が計上されております。この2兆3千億については、既に78市町村から約5千億円規模の一時申請がございました。速やかに配分を決めまして、復興事業を一気に加速をしていきたいと考えております。

 続いて、復旧・復興の今後の課題でありますけれども、これまで復旧・復興については私どもも全力で取り組んでまいりましたけれども、まだ行き届いてない部分はある、遅いというご指摘もありました。そういうご批判は、真摯に受け止めていきたいと思いますが、その上で特に、こちらもパネルに書いてございますが、主要な課題は5つあるというふうに思っております。

 第一は、住宅再建、高台移転。そして二つ目ががれきの広域処理。三つ目が雇用の確保。四つ目は被災地の孤立防止と心のケア。五つ目は原発事故避難者の帰還支援ということでございます。特に、がれきの広域処理についてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 住宅周辺から撤去されたがれきについてはいま、港や空き地を利用して、いわゆる仮置き場に集められている状況でございますが、これから進めるべきは、被災地におけるこの処理能力というのは限界があります。がれきの処理・処分でありますけれども、岩手県では通常の11年分、宮城県では19年分ということでございますので、被災地のところで自己完結はできません。その意味からは、まさに安全ながれきを全国で分かち合って処理するという、広域処理が不可欠でございます。現在、東京都、山形県、秋田県、静岡県、静岡県島田市、(神奈川県)を始め、積極的にご協力をいただいているところもございますけれども、幅広く、今日の閣僚懇でも話題になりましたが、全閣僚がもっと幅広く広域処理に向けての各自治体への協力への呼び掛けをしていこうということになりましたので、今日改めて、そうしたご報告もさせていただきたいというふうに思います。安全情報の丁寧な発信に務めながら、協力をしていただける自治体というものを、もっと増やしていきたいと考えております。

 なお、福島の関連で申し上げますと、福島の再生なくして日本の再生なし、何度も口にしてまいりましたけれども、それを具体化していく一歩であります、福島再生特別措置法案を今日、閣議決定をいたしました。早期成立を目指していきたいと思います。  私からは以上でございます。

【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、質疑に移ります。指名された方はまず、所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。

 それでは、どうぞ。それでは関口さん、どうぞ。

(記者)

 東京新聞の関口と申します。復興庁は各府省よりも格上の組織と位置付けられ、復興の司令塔と位置付けられています。ただ、個別の復興事業は国交省など既存の省庁に権限があるため霞が関の縦割りを打破できず、復興の司令塔としての機能を果たしきれないとの指摘がありますが、いかがお考えでしょうか。また、総理ご指摘のワンストップ機能ですが、総勢250人体制のうち、岩手、宮城、福島の復興局の人員は、それぞれ30人にとどまります。自治体の膨大な申請や要望をこなしきれず、復興の遅れを招きかねない恐れがありますが、復興庁は被災地の期待に十分応えられるような迅速な対応ができるとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(野田総理)

 はい。先ほどの冒頭のところでも申し上げましたけれども、本当に復興庁が被災地のために役に立つかどうかというのは、ワンストップで要請を受けて対応することと、いまご指摘のあった、縦割りを乗り越えること、だということであります。そのために、先ほどもご説明いたしましたけれども、いわゆる総合調整の権限と実施権限、これ、強力なものが付与されております。これをしっかりと活かしていくことが、まさにこの新しい組織が機能するかどうか、復興に役に立つかどうかの肝だと思いますので、特に、私がトップでございますので、そのことはきちっとリーダーシップを発揮していきたいというふうに思います。

 体制においてのいま、ご質問をいただきました。確かに岩手、宮城、そして福島と、この3県における復興局はトータルで合わせると90人ですね。ただしいままでの、いわゆる現地対策本部の体制よりは、はるかに人員が拡充をされた、というふうにご理解をいただきたいと思いますし、東京にいる復興庁の人たちが、ずっと東京でデスクワークしているかというと違います。現実には、被災地にどんどん入っていくという現場主義を徹底いたしますので、現地常駐はさっき言った3県、90人ですか、現地で汗をかいて頑張って調整をしていく、ということは、東京にいる人たち、復興庁の人たちもどんどん出る、ということで機動的に対応していきたいと思います。

 なお、先ほど協力をいただいているがれきの広域処理の時、神奈川県を言いそびれてしまいましたことを、いまメモが入りました。感謝を、神奈川県に、黒岩知事にもしております。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは山根さん、どうぞ。

(記者)

 共同通信の山根です。よろしくお願いします。震災復興とともに政権の重要課題の一つである社会保障と税の一体改革についてお伺いします。野党側は、一体改革に関する協議に応じない姿勢を変えていません。関連法案の提出期限とする3月末が迫っていますが、今後どう打開していくお考えでしょうか。また、足元の民主党ではですね、小沢一郎元代表が、消費税増税に反対する方針を明言されています。どう対応していくおつもりでしょうか。

(野田総理)

 基本的には私どもが、政府与党でまとめた素案を、是非与野党で協議をしていただき、そして大綱にしていきたいという基本的な姿勢は変わりません。今日、党のほうで、いわゆる野党からいろいろご指摘をいただいた試算について党内で説明をし、そしてそれを公表をしたと思います。公表しただけではなくて、各党にそのいわゆる位置付け等々についてご説明にあがると、政調会長中心にあがるというふうに思います。そのことを通じまして改めてですね、与野党の協議をお願いしていきたいというふうに思います。これからも粘り強く、与野党協議の可能性を追求していきたいと思います。

 また、党内にまたそういう意見があるということは承知をしておりますけれども、これは昨年の6月に社会保障と税の一体改革の成案を作るときも、そしてその後に1月6日に素案をまとめる過程においても、丁寧な党内の議論はずっと積み重ねてきたつもりであります。もうほとんどこれ1年越し、昨年議論してきた中で、そのプロセスに瑕疵があったとは思いませんので、みなで、政府与党一丸となって成立を期していきたいというふうに思います。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは山崎さん、どうぞ。

(記者)

 テレビ朝日の山崎です。今、総理のほうからもおっしゃられました社会保障と税の一体改革で、今日党のほうで試案が公表されました。この試案によりますと、最大で2075年度には7.1%分の、消費税に換算すれば、7.1%分の財源が必要になってくると。まずこの試算について、まず総理の受け止めについて一言お願いしたいのと、この後さらにですね、最近の人口動態とかを踏まえて、また新たに計算をしなおすという方針だと思いますけれども、その計算した結果ですね、やはりこれぐらいの規模の財源というのが必要になってくるのか、総理のイメージをお願いします。

(野田総理)

 まずこの試算の位置付けなんですけれども、昨年の春の段階でこの社会保障と税の一体改革を扱う調査会の幹部が、まあ一部の人たちが要は、新しい年金制度をつくる際の一つの頭の体操として発注したものであります。で、そこにおいてどういう仮定を置くのか等々によって試算ってずいぶん変わりますよね。しかも、その試算を作ってもらった後に、それをもって議論をした後にですね、回収をしてるんですね。すでに、回収をした内容です。ということは、それ以外の人たちはその情報を共有していなかったということです。当時の党の幹部の人たちも知らなかったし、当時の財務大臣だった、政府にいる私も知りません。それをもって、何かの新しい意思決定をしたとか、新しい制度の制度設計をしたということではないので、その数字がどんどんと出てしまったことによって、ちょっと議論が拡散してしまったなというふうに私は思っております。

 これは2015年までに消費税を引き上げるときの、まさに材料ではないんですね。抜本的な年金制度を作るときに、来年法案を出すときには詰めた議論をしていく、そのときには正確な試算に基づいて議論しなければいけないと思いますけれども、試みの計算が出てしまったと。今、その、だから63年後、2075年にさらに、7.1%増えるという話じゃないですか。そこだけが一番、例えば最低保障年金の支給の厚い部分のシミュレーションでそういう形になっているということでありますので、そればっかりがなんとなく喧伝されていることが冷静な議論とちょっとかけ離れてしまっていることは、私は残念に思います。従っていわゆる試みの計算で、回収をされたものについて説明を果たすことができないんですね。改めてきちっとした議論をするためには、新しい人口推計であるとか、賃金の上昇率どうするのかとかですね、あるいは利回りどうするのかとか等々の、きちっとむしろこれは与野党でこういう数値でやったほうがいいねというところからむしろ私は始めたほうがいいのではないかなと思いますし、そのほうが冷静な議論はできるんではないかなというふうに思いますが、今のそうした位置付けの問題を含めて、試算の中身、試算の仕方を含めて各党に、政調会長中心にご説明にあがっていただき、ご理解をいただきたいというふうに思います。  

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは竹中さん、どうぞ。

(記者)

 ロイター通信の竹中です。イランのことに関してお伺いします。イランに対する経済制裁ですが、中央銀行と取引のある金融機関、アメリカで金融活動ができなくなるという経済制裁、発動されますが、日本もこれに対してイランからの原油の輸入、減らしていく方向であるということは表明されていますが、この制裁、日本の金融機関がこの制裁から除外されるようになる見通しというのは今のところいかがでしょうか。そして、その前提となる削減幅、削減の規模なのですが、どういったふうな見通しをもっていらっしゃいますでしょうか。そして最後に、イランからの原油が減ることによって、そして一方で原子力発電所の稼働というのがどんどん細っています。代替のエネルギー源をどういったふうに調達していくのかということに関して、お考えを教えていただけますでしょうか。

(野田総理)

 まずですね、イランの核開発についてはこれは国際社会と同様に懸念を持っています。基本的には対話と圧力だと思います。圧力の部分は国際協調の中でやってきております、今までも。一方で対話、日本独自の働きかけもやってきました。基本的には外交的平和的解決が望ましいと思いますが、その一方で今ご指摘のような、制裁の部分がございますが、これについては例えばこれまで5年間で40%、イランからの原油の輸入は減ってきています。その趨勢で行くことは、間違いございませんので、そういうことも含めまして、今、日米間の協議を実務的にやっています。その協議の目的は、この国防授権法の適用除外を実現をしたいという意味合いでの協議を、今やっている最中ということでございますけれども、趨勢としては、イランからの原油は減らしていくということです。これまた5年間のお話もしました。そうするとじゃあ代わりの原油はじゃあどうするのか、これは今年に入ってから玄葉外務大臣を始めとして中東各国を歴訪しながら、まさにその他に代わる代替のエネルギー源、原油を確保するとの努力を今やってきている、その最中であるということでございます。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは七尾さん、どうぞ。

(記者)

 ニコニコ動画の七尾です。よろしくお願いします。原発の再稼働についてお伺いいたします。最終的にはですね、総理を始めとする関係閣僚の政治判断になるわけですが、地元自治体の同意がですね、不可欠と伝えられている中で、例えばですね、同意が得られなくても政治判断というものはあるのか、政治判断の具体的なイメージについてですね、教えていただければと思います。

(野田総理)

 原発を再起動するためには一定のプロセスを踏むことになっています。それは事業者によるストレステストを行うと。で、そのストレステストについてはIAEAのレビューを受けました。そういうものを踏まえまして、次は保安院による、これは評価、そしてその後に安全委員会における確認。それを経た後に、まさに今ご指摘があったとおり地元の皆さまにご理解いただけるかどうかなども踏まえて、最終的には政治判断をするというのがプロセスでありますけれども、やはり地元の皆さまのご理解をなくして、なかなかこれは物事は進まないであろうと。そのために必要ならば、一定のプロセスですよ、再起動させるか、させないかという一定の意図ではなくプロセスを辿った後、そこまで来たときには、どうしても必要だと地元の理解どうなるかということは確認をしながら、場合によってはご説明をきちっとすると。政府が前に出てご説明を地域にするということはある、というふうに思います。

(内閣広報官)

 それでは時間がまいりましたのでこれで記者会見を終了させていただきます。

どうも大変ありがとうございました。