[文書名] 野田内閣総理大臣記者会見(2012年6月26日)
【野田総理冒頭発言】
本日、社会保障と税の一体改革の関連法案が衆議院で可決をし、通過をすることができました。力強くお支えをいただいた連立与党の国民新党の皆様。そして、お互いにこの国のために譲り合うところは譲り合う形で、3党合意という大変重要な成案をまとめさせていただいた、御協力をいただいた自民党、公明党の皆さん。また、御賛同いただいた、たちあがれ日本の皆さん。こうした皆様のお陰でございました。
ねじれ国会という中で、今を生きる国民のために、あるいは将来世代を慮って、このように大きな改革の第一歩を踏み出せたことは、私は大きな意義があると思っております。とはいえ、衆議院は通過をしましたが、これからは参議院に舞台は移ります。気を引き締めて、今まで以上に緊張感を持って参議院での審議に臨み、そして、何としてもこの国会中に成立をさせたい。こうした決意でございます。
今回の一体改革の意義でありますが、何よりも社会保障を持続可能なものにする。充実させるところは充実させる。安定化させなければいけないところは安定化させる。そのための改革を行うということが、基本中の基本でございます。
国民の皆様におかれましては、人生いかなるときに、社会保障のサービスを受けるかわかりません。困ったとき、つらいとき、苦しいとき、子育てで苦労しているとき、仕事を見つけているとき、病気やけがをしたとき、老後の生活、このようなときに必ずや、どなたもこうした社会保障のサービスを受けることになります。まさに国民生活そのものであります。その国民生活そのものである社会保障、その根幹は半世紀前にスタートしました国民皆年金、国民皆保険。この制度は、世界に冠たる、私は制度だと思います。
しかし、残念ながら、少子高齢化が急激に進み、人口構成が大きく変化をする中で、改革をしなければならない。そういうときを迎えています。特に支え手が減ってきていることが大きな問題です。現役世代、子育て世代が疲弊をしながら、今の日本の社会保障を支えるということには、もはや限界があると思います。現役世代、子育て世代ではなく、むしろ、これから生まれてくる将来の世代につけを回す形で社会保障を機能させるということも、これももはや限界があると思います。社会保障の改革は、待ったなしの状況でございます。その社会保障の安定財源を確保すると同時に、財政健全化を同時に達成するというのが、今回の一体改革の意義です。安定財源とは消費税でございます。
国民の皆様に御負担をお願いすることはつらいことです。日々、経営に苦労されている中小企業・零細事業者、家計のやりくりに苦労されている皆様、そういう皆様に御負担をお願いするということは、政治家としては本当につらい仕事です。避けることができるならば避けたいとだれもが思うと思います。だけれども、どなたもその恩恵を受ける社会保障をだれかが支えなければなりません。すべて社会保障に還元をされる、これが今回の改革の大きなポイントであります。そのことを是非国民の皆様には御理解をいただきたいと心から思います。
社会保障と税の一体改革でありますが、実はこれはもっとより広範な包括的な改革です。景気が悪そうだから、心配だから消費税は上げない方がいいという議論があります。そのような受け身な姿勢ではなくて、この一体改革をやり遂げるためにも経済を強化しなければいけないという強い決意で、これから政策の総動員をして、デフレ脱却、経済の活性化に努めていかなければなりません。
もっと無駄をなくしてからやった方がいいのではないか、やるべきことがその前にあるのではないか、こういう議論があります。身を切る改革もやりなさい、そのとおりだと思います。国民の皆様の御理解を得るためには、行政改革、政治改革、定数削減、しっかりやり抜かなければなりません。でも、これらのことをやってから一体改革というのでは、待ったなしの状況に対応することはできません。一体改革もやる、経済の再生もやる、行革も政治改革もやる、ありとあらゆることを2014年の4月に消費税率を8%に引き上げるときまでにやり抜かなければいけないと思います。
何かをやってからその後に、その理屈で、これまで決めるべきタイミングをずっと逃してきたのではないでしょうか。決めるべきときに決める、結論を出す、先送りをしない、そういう政治を私はつくり出していきたいと思っています。今回の衆議院における可決はその大きな一歩につながるものと確信をしています。
残念ながら、与党、民主党から造反者が出ました。昨日の代議士会でも、一致結束してみんなでこの改革を成し遂げようとお話をさせていただきましたけれども、極めて残念な結果でございました。政党でありますので、当然党議拘束がかかっておりました。これに対する対応をしなければなりません。私と幹事長と、よく相談をしながら党内の所定のルールにのっとって、厳正に対応をしたいと考えております。
なお、我々がやらなければいけないことは、この一体改革だけではありません。昨年9月に野田内閣が発足をしたときに、最重要、最優先の課題は震災からの復興、原発との戦い、日本経済の再生と申し上げました。そのほか、この申し上げた基本的な重要課題のほかにも、たくさんの国難とも言える様々な課題に、我が国は今、直面をしています。
国難から逃げる政治ではなく、国難に立ち向かう政治。国論を二分するようなテーマでも先送りをせず、決断し、実行する政治。そういうものをしっかりと道筋をつけていきたいと考えております。
79日間、国会が延長されました。その延長された幅の中でこれらの様々な困難を解決できるように、全力を尽くしていくことを決意として申し上げさせていただきまして、まずは私からのごあいさつとさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。
指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
それでは、佐藤さんどうぞ。
(記者)
日本テレビの佐藤です。
今、造反者について厳正に対処するというお考えのようですけれども、自民党の谷垣総裁、石原幹事長は厳しい処分をすることが、この消費税増税法案含め、一体改革法案の参議院での審議に協力する前提だということを早速おっしゃっています。実際その造反者、反対者が57人出たと承知しておりますけれども、かなり多いのですが、民主党の規約で最も厳しい除籍という処分も念頭に置いていらっしゃるのかどうか。
もう一つは、処分を直ちにではなくて、しばらく時間をかけて処分を下すというお考えが党内にはあるようですけれども、時間をかけるようなことはあるのでしょうか。その辺の時間的なものも加えてお願いしたいと思います。
(野田総理)
まずは、今回の政党内における対応、これは政党自治に関わる問題です。他党から言われる筋合いはありません。あくまで民主党としてどう対応するかだということであります。
この対応については、これはルールがあります。いわゆる役員会で発議をし、常任幹事会で決定承認して、そして倫理委員会に諮問する。そのルールに乗せていきますが、その前に発議をする段階で、私と幹事長がよく相談をして決めたいと思いますけれども、具体的な処分の内容はまさにこれからのお話でございますし、時期の問題でありますけれども、これは一人ひとりよく精査しなければいけない部分があります。どの法案にどの方が反対したのか、賛成したのか、どういう理由なのか等々含めて、精査をする時間は必要ですが、だからと言ってだらだらとやるということはない、ということであります。
(記者)
小沢さんたちは基本的にすべて反対しておりますけれども、除籍という処分も排除せず検討するということでよろしいでしょうか。
(野田総理)
厳正に対処するということであります。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、湯本さんお願いします。
(記者)
読売新聞の湯本です。
衆議院解散についてお伺いします。多数の造反者が出たことで、今後、民主党の小沢元代表は新党結成を否定しておりませんし、今後、不信任決議案が出れば可決されるという事態も、現実性を帯びているのではないかと思われます。仮の話とおっしゃらず、仮に不信任案が可決された場合の衆議院解散があるのかどうか、その覚悟があるのかどうかを聞かせてください。
(野田総理)
新党とか不信任というのは余りにも仮ではないですか。仮だと思います。私はやらなければいけないことをやり抜いた後に民意を問う、適切な時期に民意を問うという基本姿勢はそのままであります。
(記者)
本国会の会期内というお考えはありますか。時期は。
(野田総理)
何の時期ですか。
(記者)
民意を問う時期です。
(野田総理)
やり抜いた後にです。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、関口さんどうぞ。
(記者)
ダウ・ジョーンズ通信の関口と申します。
総理は、一体改革に政治生命をかけると度々明言されていましたが、今国会で成立がほぼ確保できた今、閉会後間もなく行われる民主党代表選で再選を目指されるのでしょうか。その場合、総理が第一に掲げる最重要課題は何になるのでしょうか、お聞かせください。
(野田総理)
ちょっとお話があさってに行き過ぎていると思います。
今国会で成立が確実というお話がございましたけれども、私は、これから参議院で御審議が始まるわけでございますし、緊張感を持って成立を、万全の体制で期していきたいと思っておりますので、余り楽観をして国会運営は考えておりません。一体改革だけではなくて、ほかにもやらなければいけないテーマがたくさんございます。そういうものをしっかりこの国会中に緊張感を持ってやっていきたいと思います。その上で、代表選云々ということは、まだそこまで考えていません。とにかくこの国会でしっかりと国民のための、私どもは国民生活と経済財政に責任を持つ立場でありますから、しっかりと責任ある対応をやり抜いていきたいと考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、加納さんどうぞ。
(記者)
産経新聞の加納です。
輿石幹事長についてですけれども、今回、大量の造反を出した責任が輿石幹事長にないのかどうか、その辺りについて御自身の責任も含めましてどうお考えになっているのか、そのままこの任に当たってもらうつもりなのかどうか。
あともう一つ、小沢さんと輿石さんと総理がお会いになったときに、解散もしない、党も割らないと、輿石さんがそういうことをおっしゃっているのですけれども、総理と小沢さん、輿石さんとの間でそういう話があったのかどうか。もしかしたらこれが造反にゴーサインを出すようなシグナルになってしまったのではないかと思うのですけれども、この辺りの認識をお願いします。
(野田総理)
まず、前段のところですが、だれかの責任というお話ではないと思います。残念な結果を出しておりますけれども、ここはしっかり前へ進んでいくことです。参議院でこの一体改革の法案を成立させるという責任を、執行部として共有しながら持っていきたいと思っております。
もう一つ、後段のところですけれども、何かの約束ということはありません。余り中身の話は、それぞれが言っていないことを言うということはおかしいと思いますけれども、幹事長がおっしゃった点の関連で言うと、党はしっかり一致していった方がいいねと。それはだれだってそう思います。そのことの確認はしています、その時点で。何とかまとまって対応していける、そういう知恵はないかなという話はしました。
もう一つ、選挙の時期については、さっき、これはやらなければいけないことをやり抜くということを申し上げておりますので、その意味で、今では、まだないねと。そういうお話の問題意識の共有はあったということでございます。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、佐々木さんどうぞ。
(記者)
処分の問題に戻りますけれども、総理は先ほど厳正に考えると力強くおっしゃっていましたが、仮にも代表である、総理大臣である総理が政治生命をかけると言っていた重要法案に反対したということですから、これは党内にも除籍でしかるべしだという声が強いのですけれども、民主党の過去の例に従うと、今まで法案に反対した場合、党員資格停止というのが一番重い処分なのですけれども、この前例を重視されるというお考えなのでしょうか。
(野田総理)
まだ、その中身の話は、今、いちいち言う段階ではありません。厳正に対処するということに尽きます。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、藤田さんどうぞ。
(記者)
NHKの藤田です。
今回の大量造反によって政権基盤というのはちょっと弱体化したと思うのですけれども、総理は昨日の国会答弁で、自民・公明両党との関係について個別の政策でスクラムを組むことが国家・国民のためになるのだ、大事だという答弁をされていますけれども、今後、修正合意して自民・公明両党と協力関係を築きながら政権運営に当たるというお考えはあるのか。更に、政策ごとに連携する、いわゆる部分連合といったことを模索していくお考えはあるのか。この2点をお願いします。
(野田総理)
極めてオーソドックスに考えておりますけれども、ねじれた国会の中で与野党がしっかり合意をしながら前へ進める。時には、これは針に糸を通すような大変粘り強い作業になることもあるのですが、それをやらないと物事は進まないという現実があります。その中で、本当に国家・国民のためにお互いに歩み寄って知恵を出す、その実例というのは幾つか出てきたと思います。今回の一体改革もそうです。これは大きなテーマでありましたが、そうした事例になりました。
去年の東日本大震災から、震災関連の対応でもそういうものは出ていますね。こういうことを踏まえて、ほかの分野は何ができるかという政策のスクラムを組む可能性のあるものについては、しっかり見つけながら与野党の協議をやっていきたいと思いますし、特にまだ、本当は歳出と歳入一体で対応すべきであった特例公債等が残っていますので、そういう問題も含めて、真摯に与野党協議を求めて結論を出せるように努力をしていきたいと思います。
(内閣広報官)
それでは、時間が迫っておりますので、最後の質問とさせていただきます。
それでは、高田さんどうぞ。
(記者)
フジテレビの高田です。
先ほど小沢元代表が記者団の取材に答えまして、その中で総理との会談のことについて聞かれた中で、とにかく今後、自分としてはマニフェストの原点に党・政府が戻ることを主張していきたい。その気持ちが野田さんにあれば喜んで話し合うという趣旨のことを小沢さんは言っています。総理は当然、マニフェストの原点を忘れられている気持ちは全くないと思いますが、小沢さんの言うところのマニフェストの原点に返るという点に理解を示すお気持ちがあって、更にそうした会談の用意があるのかどうかをお聞かせください。
(野田総理)
国民の生活が第一という理念については、その原点は踏まえているつもりでございますし、なぜ一体改革でこういうそごが出るのか、わかりません。まさに国民生活に直結する社会保障、これまでも政権交代以降、ずっと力を入れてまいりました。それをより一層、前へ進めるための、今回は改革であります。私自身は原点から外れているつもりは全くございませんが、会談するかどうかはよく判断したいというふうに思います。
(内閣広報官)
それでは、以上をもちまして総理会見を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。