[文書名] 野田内閣総理大臣記者会見
【野田総理冒頭発言】
昨晩にかけて、台風17号が列島を縦断し、高潮も相まって、各地で被害が出ました。被害に遭われた方にお見舞いを申し上げたいと思います。また、引き続き土砂災害の警戒も怠らないように国民の皆様にお願いをしたいと思います。
先の民主党代表選挙において、党の代表として再任をしていただきました。以来、党と内閣の新たな体制づくりに熟慮を重ね、本日、内閣改造を行うことといたしました。
今般の内閣改造は、山積する内外の諸課題に対処する上で、政府・与党の連携を一層深め、内閣の機能を強化するために行うものであります。
私から、野田第三次改造内閣の閣僚名簿を発表させていただきます。
副総理兼、行政改革、社会保障・税一体改革、公務員制度改革担当、内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)、岡田克也さん。留任であります。
総務大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、地域主権推進担当)、地域活性化担当、樽床伸二さん。政治家として長年、地域主権改革に情熱を注ぎ、国対委員長、幹事長代行などの党の要職を歴任されてまいりました樽床さんに、民主党の一丁目一番地の政策である地域主権改革をリードする役割を託すことといたしました。
法務大臣、拉致問題担当、田中けいしゅうさん。民主党のまさに重鎮として国会や党の要職を歴任され、拉致問題にも長年取り組んでこられた田中さんに、国民に身近な司法を実現し、拉致問題に責任を持って対応するという重要な役割を担ってもらうことといたしました。
外務大臣、玄葉光一郎さん。留任。
財務大臣、城島光力さん。財政健全化と経済再生を両立させるという重責を果たしてもらえると期待しております。党政調会長代理、幹事長代理を歴任され、国対委員長としてねじれ国会の難しい局面を取り仕切ってこられた経験を生かし、特例公債発行法案をはじめとする課題の打開に道を開いていただけると考えております。
文部科学大臣、田中眞紀子さん。科学技術庁長官、衆議院の文部科学委員長を歴任されるなど、文部科学行政に通じておられることに加え、持ち前の発信力を政策面で発揮していただくことを期待しています。
厚生労働大臣、三井辨雄さん。厚生労働行政のエキスパートであり、一体改革の取りまとめに当たっても節目で重要な役割を果たされました。国民会議での議論をリードする上でも手腕を振るっていただけると確信をしています。
農林水産大臣、郡司彰さん。留任。
経済産業大臣、原子力経済被害担当、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償支援機構担当)、枝野幸男さん。留任。
国土交通大臣、羽田雄一郎さん。留任。
環境大臣、原発事故の収束及び再発防止担当、内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)、長浜博行さん。官房副長官として、縁の下で野田内閣の屋台骨を支えてこられました。福島の再生なくして日本の再生なしという私の思いを、福島の方々の心に寄り添って進めていただける方だと確信をしています。持ち前の確かな調整力と手腕を発揮され、がれき処理や除染、原子力安全の確保などに取り組んでほしいと思います。
防衛大臣、森本敏さん。留任。
内閣官房長官、藤村修さん。留任。
復興大臣、東日本大震災総括担当、平野達男さん。留任。
国家公安委員長、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)、小平忠正さん。危機管理に安定感と緊張感ある対応が求められる中、長い政治経験があり、冷静沈着に困難な課題もこなしていただける方だと思います。消費者問題や食品安全にも国民目線での取り組みを期待をしています。
内閣府特命担当大臣(金融、「新しい公共」、少子化対策、男女共同参画担当)、中塚一宏さん。内閣府副大臣として金融行政に尽力されてきた中塚さんに、引き続き大臣として職務を担っていただきたいと思います。また、少子化対策をはじめ国民生活に密着した課題にも対応していただきます。
国家戦略担当大臣、海洋政策担当、内閣府特命担当大臣(経済財政政策、科学技術政策、原子力行政、宇宙政策担当)、前原誠司さん。成長戦略づくりに熱心に取り組まれ、政調会長として政策全般を束ねてきた前原さんに、政府全体の司令塔として日本再生戦略の実現と切れ目ない経済対策に力を発揮してほしいと思います。
郵政民営化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災担当)、国民新党の下地幹郎さん。郵政民営化法に基づき、郵政改革は実行段階に入っております。先の大震災を踏まえた全国的な防災対応の強化も含め、下地さんの突破力に期待をしています。
内閣官房副長官は、大臣になる長浜さんの後任に、参議院から芝博一さんを新たにお迎えをいたします。齋藤、竹歳両副長官、法制局長官は留任となります。
以上が野田第3次改造内閣のメンバーであります。留任される閣僚におかれましても、引き続き職責を十分に発揮してほしいと思います。
なお、本日、午後5時からの認証式を経て、正式に任命される運びとなります。初閣議は午後7時15分からを予定をしています。
野田内閣の前途には、乗り越えていかなければならない政策課題が、なお山積をしています。足元では、何よりも特例公債発行法案の処理であります。このままでは政府の財布が空っぽになり、国家機能が制約され、国民生活に悪影響が出る事態も避けられません。そして、未完の一体改革を最後までやり抜くことであります。先の3党合意に基づき、社会保障の残された課題について、超党派で議論を煮詰めていかなければなりません。国民会議での議論を早急に立ち上げる必要があります。
また、1票の格差の是正と国会議員の定数削減を含む選挙制度改革は、早急に片づけるべき前国会からの宿題であります。
さらに野田内閣は、昨年に発足して以来の最重要課題である震災復興、原発事故との戦い、日本経済の再生という、まだ道半ばの課題に全力を尽くしていくことは不変であります。そして、我が国を取り巻く外交安全保障上の課題も多岐にわたり、危機管理面も含め、引き続き、緊張感をもって対応していく必要があります。
新たな陣容のもとで政府与党がまさに一体となり、内外に山積する課題を克服するチーム力を最大限に発揮していきたいと考えています。そして、決断する政治を一歩でも二歩でも前に進めていくことが国民の負託に応える唯一の道であると考えます。
なお、本日、米軍の新型ヘリコプターオスプレイが岩国飛行場から普天間飛行場に移動を開始しました。本件に関する私のメッセージを先ほどの官房長官会見で公表させていただきました。日本政府として、安全性を十分に確認できたと考えています。また、今後の運用に当たっては、安全性はもとより、地域住民の生活に最大限の配慮を行うことが大前提であります。同時に戦後から続く沖縄の皆様の御負担は国民全員で受け止める必要があると改めて感じています。
こうした視点に立ち、普天間飛行場の1日も早い移設返還をはじめ、沖縄の負担軽減や振興に一層力を入れていくとともに、オスプレイの本土への訓練移転を具体的に進めるなど、全国で負担を分かち合うよう努力を重ねていきたいと思います。どうか国民及び地元の皆様の御理解をお願いをいたします。
私からの冒頭発言は以上でございます。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
それでは、どうぞ。
それでは、松尾さん、どうぞ。
(記者)
幹事社の毎日新聞の松尾と申します。よろしくお願いします。
今回の改造の狙いとして、先ほども内閣の機能強化ということを挙げられましたが、陣容を見ると閣僚18人中10人と大幅に入れ替えたり、党の執行部と閣僚を入れ替えたりするという人事も目立っています。これまでの内閣で具体的に何が不足していたから機能強化するということをお考えなのかということが一つ。
それと、特に田中眞紀子さんを文部科学大臣に起用されたことについて、先ほどは特におっしゃいませんでしたが、険悪化する日中関係へのことも考慮されての起用なのでしょうか。
さらに、先の党代表選で対立候補だったお三方に近い議員の方は、今回は入閣されませんでしたけれども、内外から今回の人事は論功行賞だというような批判も出ていますが、今後の党内融和、離党者対策、こういったものにどういうふうに取り組まれるおつもりでしょうか。
(野田総理)
まず最初に、今までの内閣が何か不足していたのかというお話でありますけれども、それはありません。復興、原発事故との戦い、日本経済の再生に向けて、懸命に取り組んできたし、デフレ脱却のために日本再生戦略を閣議決定、あるいは福島の復興再生基本方針を閣議決定する等々、この第2次改造内閣以降もそういうことをちゃんとやってまいりましたし、何よりも大きな山だった社会保障と税の一体改革の関連法案を成立させたメンバーでありますので、何かが不足したというよりは、大きく改革の一歩も二歩も踏み出せることをつくり出した内閣であったと私は思っております。
その上で、9月はいつも代表選があった後には、これは与党になってからは政府の人事、党の人事、国会の人事等を一体的に行って、よりバランスをとりながら、それぞれの力を強めるということをこれまでやってまいりました。今回はそうした一環での特に内閣の機能の強化を図るという位置づけでございます。
それから、田中文部科学大臣を選んだ理由として、日中関係云々のお話がございました。外務大臣に選んだのではありません。先ほど、冒頭御説明したとおり、これまで科学技術庁長官を務められたり、衆議院で文部科学委員長を務められたり等々、この分野でも大変経験を蓄積をされてきている。そのことをいじめの問題とかそういう課題で、果敢にそれを取り組んでいただきたいという思いからであって、日中関係云々で文部科学大臣を選ぶということはあり得ません。
それから、代表選で出られた方を選んでいないということの御指摘がございましたけれども、代表選を戦った方が仮に負けたら、閣内に入りたいという御希望があったのかというと、決してそうではないと思います。それぞれ閣僚経験者で、力を持っていらっしゃる方だと思いますが、代表選を通じて私にいろいろ御指摘いただいたことをしっかり踏まえて、これから政権運営、党運営をすることが、先ほどの挙党一致体制であるとか、あるいは離党者が出ないようにすることとかにつながるものだと思いますので、閣僚に代表選に出られた方が入っていないから云々という御指摘は、そうではなくて、その心はちゃんと受け止めながら、これからの運営をしていきたいと思いますし、これから副大臣、政務官の人事等もこうしたバランスはちゃんととっていきたいと考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
法亢さん、どうぞ。
(記者)
TBSの法亢と申します。よろしくお願いします。
自民党と公明党との党首会談についてお伺いします。
総理は、党の体制づくりが整ったら申し入れますとおっしゃっていましたが、日程についてはいつごろお考えでしょうか。
また、野党の幹部は、党首会談の際には、「近いうちに」とした解散の時期の言質を取りたいとしています。総理は先の国会で、自民党が問責に同調した後に、状況に変化があるとおっしゃいましたけれども、解散の時期について、今回の党首会談では、前回と認識を変えた言及をされるという理解でよろしいのでしょうか。
あと、臨時国会の先送り論が今、出ていますけれども、招集についても、これはまた野党側とどのような調整をして、いつごろの招集を考えていらっしゃいますでしょうか。
(野田総理)
まず、党首会談ですけれども、今日閣僚人事発表、明日が副大臣、政務官で、今週末あたりが常任幹事会を開いて、党の人事の最終的な確定となりますので、そういうものを踏まえて、もう既に決めさせていただいた幹事長、国対委員長を中心に、党首会談の持ち方等を含めての協議を始めさせていただきたいと思いますので、まだ今いつかと言える段階ではございません。
もし党首会談が実現した暁には、私のほうからは、先ほども少し触れさせていただきましたけれども、前国会からの宿題があります。特例公債法案、あるいは1票の格差、定数削減を含んだ選挙制度改革、さらには社会保障と税の一体改革の関連で、早くスタートさせたほうがいいもの。こういうものをまずどうお考えなのか議論をすることが大事ではないかと思いますので、それをもって、どこまで意思疎通をしながら、ある程度、合意形成の可能性等があるのかどうかを含めて、次の国会をいつ開くのかどうかという判断につなげていきたいと考えております。
なお、その党首会談の際に、私から解散の時期云々とかということを言及するということはないです。
(内閣広報官)
次の方、どうぞ。
それでは、長谷川さん、どうぞ。
(記者)
AFP通信社の長谷川と申します。
領土保全の問題、特に中国との関係についてお聞きします。
首相は、領土保全の問題については、国際法に従い、平和的な原則に従って解決するとおっしゃっていまして、韓国に対しては、竹島の問題は国際司法裁判所に共同付託することを提案していらっしゃいますけれども、尖閣諸島の問題については、これは我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないとおっしゃられていますが、これによって具体的に日中の戦略的互恵関係をどのように発展させていくという道筋がどうもよく見えていないかなという印象を受けるのですが、仮に中国側から、国際司法裁判所のほうに共同付託等の提案があった場合、受けられますでしょうか。また、受けられないで、領土問題は存在しないという原則を貫かれる場合ですけれども、これは竹島問題について韓国がとっている立場と同様であるという批判を免れないのではないかという意見もありますが、どのようにお考えでしょうか。
(野田総理)
いっぱい色々なお話が含んでいるように思いますけれども、先般、ニューヨークの国連総会で一般討論演説の中で私が申し上げたのは、残念ながら、今、国と国の間で領土、領海をめぐって衝突するようなことが起こり得ます。その際には、国際司法機関などを使って、あくまで理性的に、平和的に解決することが望ましいし、日本はそういうことを遵守していると、最重要視しているということを主張させていただきました。この考えが基本にあります。
その中で、例えば竹島の問題については、これは我が国の歴史上、国際法上も固有の領土であるのですが、実効支配は今、韓国が行っています。それに対しては、国際司法裁判所に共同付託するように働きかけを行ってまいりましたけれども、残念ながら、応じていただいてはおりません。これは残念なことでありますけれども、現実に領有権の問題が発生をしていると、我が国の固有の領土であるということをちゃんと国際司法機関の中で白黒はっきりしましょうよというのが我々の立場です。
一方で、尖閣については、これは国際法上も歴史上も我が国の固有の領土であるということは間違いないという上に、今、有効支配しているという現実があります。したがって、これは領有権の問題は存在はしないというのが我々の立場であります。
この基本的な立場は堅持していきたいと考えています。堅持しなければいけないと思っています。その上で、やはり冷静に、理性的に対応するという意味においては、中国も独自の主張がありますけれども、これはさまざまなチャネルを通じて、対話を通じて、やはりどうやっていわゆるクールダウンをさせていくかということを、その可能性を探るということが今、大事ではないかと認識しています。
だから、日本はこの尖閣の問題について、領有権の問題は存在しないわけですから、竹島と同じように、主導的にICJに対して、いわゆる付託をするということは考えません。中国はどうかというと、これまで国際司法裁判所に付託をしようとしたことはありません。現実に今、その動きもありませんので、今、御指摘をいただいたような国際司法裁判所を通じてどうのということは、今、具体化している状況ではないと思っています。
(記者)
中国がICJに付託があったというのは。
(野田総理)
わかりません。今、その動きは全くありません。
(内閣広報官)
それでは、時間が参りましたので、記者会見を終わります。
どうもありがとうございました。