[文書名] 内外記者会見
【安倍総理冒頭発言】
今日は10月10日。49年前の10月10日。抜けるような青空のもとで開会したオリンピックを機に、日本はいち早く成長センターとなり、アジアの成長の牽引車となった。
APEC、そしてTPP首脳会議が開催されたバリ島の澄み渡った空は、あの日の興奮を呼び起こしてくれた。アジア・太平洋地域が、「世界の成長センター」として、新たな飛躍のモデルを求めつつある。今回のAPEC首脳会合では、地域全体の成長の加速化に向けて、大きく動きつつある。そう実感した。三本の矢によって、経済再生への道を力強く歩み始めた日本には、さらに大きな関心と期待が集まっている。
アジア・太平洋全体に、ダイナミックで、人々に繁栄と豊かさをもたらす、大きな自由経済圏をつくっていく。RCEPも、その先のFTAAPも、もはや絵物語ではない。TPPは、その大きな自由経済圏への第一歩。モノの取引だけではなく、サービス、投資、知的財産、そして環境など、幅広い分野で共通のルールをつくっていくこと。これこそが、21世紀の成長センターにふさわしい市場を実現する道である。
政治的な決断によって歩みを進め、アジア・太平洋にまたがる、新しい経済統合を実現する。その認識を首脳たちが共有し、年内妥結に向けて大きな流れをつくることができたと考えている。
その中心に、ASEAN諸国がいる。私の外交は、ASEAN訪問からスタートした。ここブルネイで8か国目となる。日本とASEANは、40年にわたって共に手を携えて、発展してきた。その協力関係を、もう一段の高みへと押し上げていく。今回の日・ASEAN首脳会議では、ASEAN側からも強い意欲が示された。次世代を担う若者たちの交流をさらに強化する。医療、都市開発、災害対策など様々な分野で、日本の経験と技術を活かし、ASEAN各国の人々の生活を豊かにすることに貢献していく。
東アジア首脳会議でも、地域の安全と繁栄のために、海洋分野をはじめとした法の支配の重要性、北朝鮮問題への一致した対応の必要性を強調し、多くの首脳から賛意を得たところである。「積極的平和主義」を掲げる我が国の安全保障政策についても、私から丁寧に説明をし、一層の役割を期待する声もいただいた。
12月には、首脳の皆さんを東京にお招きし、日・ASEAN特別首脳会議を開く。今回の結果を弾みに、日・ASEAN関係のさらなる発展の将来ビジョンを示したいと考えている。
今回の訪問中は、前回の国連総会に引き続き、多くの友人である首脳と再会することもできた。特に、プーチン大統領とは、ここ5か月で4度目の会談を持つことができ、個人的な信頼関係を深めることができたと考えている。
来週からは、いよいよ臨時国会がスタートする。問題は山積しているが、この国会を通じて、決める政治、そして結果を出す政治に全力で取り組んでいく考えである。
【質疑応答】
(NHK 原記者)
中国、韓国との関係について伺う。今回の外国訪問中、両国の首脳と短時間の接触はあったようだが、とりわけ中国側からは、日本に対して厳しい発言も出ている。今後、関係の改善や首脳会談の実現に向けて、具体的にどのように取り組んでいく考えか。
(安倍総理)
日本と中国、韓国が良好な関係を維持していく、良好な関係を作っていくことは、アジア太平洋地域の安定と繁栄にとり、有意義であると考えている。
中国との関係は、我が国にとり最も重要な二国間関係の一つ。また、韓国は我が国にとって基本的な価値を共有する重要な隣国である。私は何か問題があるからといって、対話のドアを閉ざしてしまうのではなく、むしろ、問題があるからこそ、首脳レベルも含めて、話し合うべきと考えており、私の方からは、中国、韓国に対して対話を呼びかけている。
今回は残念ながら、首脳会談を行うことはできなかったが、私の対話のドアは常にオープンである。これからも両国に対話を呼び掛けていきたい。
(ロイター通信 モガド記者)
東アジア諸国との首脳会合にて、南シナ海について協議したが、日本にとって、南シナ海の問題はどれほど重要か。日本として問題解決に向けて、どのような役割を果たすのか。
(安倍総理)
日本をはじめ、アジア太平洋地域の諸国は、開かれた海洋から多くの富を得ている。南シナ海の平和と安定は、日本をはじめ、国際社会の関心事項である。
海洋は重要な国際公共財であり、紛争の平和的解決、航行の自由、国連海洋法条約を含む国際法の遵守といった、海洋に関する基本的なルールが尊重され、「力」ではなく「法」によって支配されるべきだと考える。これは、多くの国々が共有する考えだと私は思う。
ASEANと中国の間のCOCに関する協議の行方に高い関心を有している。法的拘束力があり、紛争解決にも資する実効性のあるCOCが、早期に作成されることを期待している。
日・ASEAN首脳会合をはじめとする一連の会議では、私より、以上の趣旨の発言を行い、ASEANをはじめとする多くの国々が、日本と同様の認識を有していることを確認することができた。今後ともASEANをはじめとする地域の国々と連携していきたいと考えている。
日・ASEAN首脳会議の議長をつとめられた、ボルキア・ブルネイ国王陛下がとりまとめられている文書にもこのことが表れていると思う。
(時事通信 大塚記者)
今回の総理大臣の外遊では、環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐる動きが大きく注目された。その中で、自民党の西川TPP対策委員長がコメ、砂糖など重要5項目の扱いをめぐり、関税撤廃の是非を検討すると発言したことが、国内から大きな波紋を広げている。野党などからは「参院選の公約違反」と厳しい批判が出ている。総理はこうした批判にどう答えるか。
(安倍総理)
我々自由民主党の選挙での公約は違えてはならないと考える。交渉はこれから本格化する。守るべきものは守り、攻めるべきものを攻め、国益を追求するという政府の方針に何ら変更はない。西川議員は、党のTPP対策委員長としての立場で発言されたものと認識している。政府としては、与党の検証作業を見守ることとしたい。今後とも与党とよく連携して対応していく考え。
(ブルネイ・タイムズ バンディアル記者)
ASEANと日本の関係をより高い次元に引き上げるとおっしゃったが、ASEAN諸国を政治的・経済的にさらに関与させるためにどのようなことが必要か。そして、地域に対して中国はどの程度の影響力を行使するとお考えか。そして日本は中国とのその影響力において競争しているのか。
(安倍総理)
本年は日・ASEAN友好協力40周年の節目の年である。こうした長年にわたる協力によって、日・ASEANの間には経済、政治、安全保障、文化、人的交流などの幅広い分野にわたる深い絆が築かれている。
一方で、地域の戦略環境が大きく変化している。そのような中、日・ASEAN間の協力関係をさらに進化させていくために、12月にASEAN各国首脳を日本に招いて、日・ASEAN関係の将来を方向づけるビジョンについて議論し、世界に示したいと考えている。
このように日本のASEAN重視の姿勢は、特定の国を念頭に置いたものではない。なお、中国の経済発展は、地域や世界の経済発展にとって必要である。日中両国はアジアと国際社会の安定と発展に共に責任があり、戦略的互恵関係の考え方に基づいて、中国との関係を発展させていく考えである。