[文書名] 安倍内閣総理大臣年頭記者会見
【安倍総理冒頭発言】
皆様、明けましておめでとうございます。
この年末年始は、カレンダーもよく、御家族とゆっくり9連休を満喫された方も多かったのではないかと思います。
明日は、来日するトルコのエルドアン首相と首脳会談を行います。今週の木曜日からは早速、アフリカ・中東へと最初の外国訪問に出かける予定です。心機一転、新たな気合いと緊張感を持って新年のスタートを切りたいと考えています。
昨年は、台風、豪雨、竜巻など自然災害が相次ぎ、大きな被害に御苦労されながら新年を迎えられた方もいらっしゃると思います。
東日本大震災の被災者の皆さんも、27万人を超える方々が避難先で新年を迎えられました。この1年間、月1回、東北の被災地を訪問してまいりましたが、夏あたりから青々とした農地、活気あふれる漁港、入居が始まった災害公営住宅、だんだん目に見える復興も進んでまいりました。今年も、一日も早い住まいの再建を始め、復興のさらなる加速に向けて全力を尽くしてまいります。
昨年は、11月にはフィリピンでも台風による甚大な被害が発生し、日本の医療チーム1,200人規模の自衛隊が緊急支援活動に当たりました。この年末年始、お正月も休むことなく、遠く中東・アフリカの地において、南スーダンの人々のため国連平和維持活動に従事し、海の大動脈で、世界の船舶を海賊から守る自衛隊や海上保安庁の諸君がいます。摂氏50度にも達する過酷な環境のもとでも、士気高く任務に当たる彼らに対し、感謝したいと思います。
今年も日本は国際社会と協調しながら、世界の平和と安定のためにこれまで以上に積極的な役割を果たしてまいります。
二度と戦争の惨禍に苦しむことがない時代をつくらなければならない。アジアの友人、世界の友人とともに、世界全体の平和の実現を考える国でありたいと考えています。新年に当たってその決意を新たにいたしました。
先ほど伊勢神宮に参拝いたしました。10月の遷御の儀に続く参拝でありましたが、境内の凛とした空気に触れますと、改めて身の引き締まる思いがいたしました。
日本経済は、1年前の危機的な状況から脱し、順調に回復軌道を歩んでいます。ノーアウト満塁でマウンドに立った私は、自分の信じる球を目いっぱい投げ込んできたつもりであります。三本の矢によって日本経済はマイナスからプラスへと大きく転換しました。有効求人倍率は6年ぶりに1倍を回復。失業中で仕事を探している方々もいらっしゃいますが、その同じ数だけ仕事、求人がある状態となりました。中小企業の景況感も好転しつつあります。昨年末には、製造業で6年ぶり、非製造業では何と21年10カ月ぶりにプラスに転換いたしました。
まだまだ厳しい方々もいらっしゃいますが、この1年間で景気回復の裾野は着実に広がってきました。1回表のノーアウト満塁の危機は何とか乗り切ることができました。
今年は、攻守交代、1回裏で、デフレ脱却という勝利に向けて攻める番であります。
この春こそ、景気回復の実感を収入アップという形で国民の皆様にお届けしたいと考えています。
そのことが消費の拡大を通じて、さらなる景気回復につながります。この好循環を今年は全国津々浦々に至るまで、広げていきたいと考えています。
今月、通常国会が始まります。5兆5,000億円の今年度補正予算と来年度予算、さらには従業員の給与を増やす企業を応援する税制の拡充など、税制改正もあります。
目指すは経済の好循環、収入アップの実現です。今年の通常国会は、「好循環実現国会」であります。
さて、今年は午年です。馬の視野は350度あるそうです。真後ろを除いてほぼ全てを見通すことができます。午年生まれの私としては、馬のように広い視野を持って、今年も政権運営に当たってまいりたいと考えております。
他方で、馬はあらゆる方向が見えるがゆえに、臆病な部分もあると言います。
日本も、20年近く続いたデフレによって、自信を失っていました。石橋をたたいて壊すがごとく、心配が先に立って、チャレンジを避けてきた面もありました。しかし、やればできる。世界は再び日本に注目しています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも決まりました。みんなで頑張れば夢はかなう。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」という言葉があります。何事もやる前から思い悩むのではなく、まずはやってみる、チャレンジしようとする気持ちが大切なのだと思います。
今年は2月にソチオリンピック・パラリンピックがあります。6月にはサッカーワールドカップが開催されます。日本の選手たちが世界の舞台できっと大活躍してくれるはずです。考えるだけでわくわくしてきます。頑張れば、来年の新年は、今年よりもきっとよくなる、そう信じて一人一人が新たなチャレンジに踏み出すことができる、皆さんがわくわくできるような一年にしていきたいと思います。
国民の皆さんにとって、本年がすばらしい年となりますことを心から祈念いたします。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様からの質問をお受けしたいと存じます。
質問される方は、所属とお名前を明らかにした上で、質問をお願いいたします。
最初は、内閣記者会の代表の方からお願いをしたと思いますけれども、どなたが。
どうぞ。
(記者)
テレビ東京の渋谷と申します。よろしくお願いいたします。
昨年は、アベノミクスの金融緩和と財政出動により、株価、為替が刺激され、経済指標が大きく改善しました。
しかし、総理が求めるデフレ脱却が完了したという形ではありません。また、4月以降、消費税増税による反動も想定される中、今年も経済を最優先課題とすることを話されてきていますが、具体的に、いつ、どのような形で新しい政策を打ち出すつもりでしょうか。また、成長戦略の1つと数え、昨年の大きな政治決断として挙げられたTPP交渉で、日本はアメリカとの妥協点が見出せていないままです。TPP交渉の妥結に向けて重要5項目にある586品目の関税維持は必ず必要とお考えですか。その前提がなければ、妥結がさらに先送りになっても構わないと思いますか。よろしくお願いいたします。
(安倍総理)
私は、そして安倍政権は、世界に誇るべき日本の年金、医療、介護、この社会保障制度をしっかりと守り、次の世代に引き渡していく責任を果たしていかなければならないと考えています。そのために、伸びていく社会保障費に対応し、さらに子育て支援を拡充していくために、消費税を5%から8%に引き上げていきます。それは同時に、国の信認を守ることにもつながっていきます。
しかし、一方、我々はやっと15年ぶりにデフレから脱却できるかもしれないチャンスをつかみました。このチャンスを逃すわけにはいかない。だからこそ、この4月からの消費税アップに対応しまして5.5兆円の経済対策と1兆円の税制対策を行い、そして、経済成長、デフレ脱却、それとともに、同時に財政の再建、これを一度に達成するよりほかに道はないと考えています。
そして、企業収益の向上を賃金の上昇や設備投資につなげていく必要があります。そのために、来年度から法人実効税率を2.4%引き下げます。1兆円規模の税制措置として大胆な投資減税を講じるほか、賃上げ企業への減税の思い切った拡充を行うことといたしました。昨年末には、政労使で企業収益を拡大させ、それを賃金上昇につなげていく必要があり、一致協力して取り組むという共通の認識に至ることができました。その実行に向けて、取り組んでいく考えであります。
先の国会で成立をいたしました産業競争力強化法と国家戦略特区法などをしっかりと実行に移してまいります。今月には、今後実行していく施策の実行計画を策定し、実施時期と担当大臣を明らかにするとともに、さらなる構造改革を進めるため、今年半ばの成長戦略改定を目指して、雇用、人材、農業、医療、介護などの分野を中心とした今後の検討方針を明らかにする考えであります。
TPPについてでありますが、TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みであり、まさに国家100年の計と考えます。農産品のいわゆる重要5品目については、衆参の農水委の決議をしっかりと受けとめ、攻めるべきは攻める、守るべきは守るとの方針で交渉に当たっています。
TPP交渉は、本来、ウィン・ウィンの関係をつくるものであります。ただし、局部的には、国益と国益がぶつかり合います。国益をぶつけ合う中において、最終的な着地点をどう見出していくか、知恵を出して大局的な判断をする考えであります。
(内閣広報官)
それでは、次に、三重県政記者クラブ代表の方、お願いいたします。
どうぞ。
(記者)
三重県政記者クラブ幹事社のCBCの松本と申します。よろしくお願いします。
原発への対応について伺います。中部電力が計画断念を表明した三重県の芦浜原発計画を含めて、原発の新増設を今後進めていくのかどうか、総理のお考えをお聞かせください。
(安倍総理)
原発については、再生可能エネルギーや高効率のLNG、石炭、さらには徹底した省エネルギーの推進など、エネルギー源の多様化を図りながら、可能な限り依存度を低減するというのが基本方針であります。
独立した原子力規制委員会によって、世界最高水準の新しい安全基準が策定されました。まずは厳格な新安全基準を乗り越えた原発について、その再稼働を判断していくことになります。原発の新増設につきましては、現在のところ全く想定していません。今、申し上げたとおり、まずはエネルギー源の多様化と、既存の原発の再稼働の判断に集中していく考えであります。
(内閣広報官)
それでは、再度、内閣記者会の代表の方からの御質問をお受けします。どうぞ。
(記者)
総理、明けましておめでとうございます。時事通信の纐纈と申します。
外交と憲法についてお伺いしたいと思います。
総理は昨年、靖国神社を参拝され、そして中国、韓国に自身の姿勢を直接説明したいというふうにおっしゃっています。ただ、これまで対話を呼びかける具体的なアプローチはありませんでしたけれども、これに関して今日、韓国の朴槿恵大統領は、日韓首脳会談に向けた十分な準備をすべきだということで、日本側への歩み寄りを求める発言もされています。今年その中韓といつごろの会談を目指し、どのようなアプローチをされるお考えでしょうか。
また、総理が進める外交安全保障政策は、中韓の反発もあります。さらにその憲法解釈の変更、改正には両国との外交も密接に絡んでいく中ですけれども、こうしたものをどうやって進められるお考えでしょうか。
(安倍総理)
中国、韓国と対話を図っていくことは、この地域の平和と安定にとって極めて重要であると考えています。首脳会談においては現時点において見通しがあるわけではありませんが、困難な課題や問題があるからこそ、前提条件を付けずに首脳同士が胸襟を開いて話をするべきだと、こう考えています。
靖国参拝につきましても、談話で示した私の真意をぜひ直接誠意を持って説明したいと考えています。
そして、今、御質問にございましたが、対話を求める直接的なアプローチは現在行われていないということでありましたが、私は常に対話のドアは開かれている。ぜひ日中首脳会談、そして日韓首脳会談をやりたい、こういうオープンな場で申し上げております。これこそまさに直接的なアプローチではないかと、こう思うわけでありますが、ぜひ前提条件を付けることなく、胸襟を開いて首脳間で話し合いを行っていく。こういう同じ姿勢を中国側、韓国側にもとっていただきたいと考えています。
そしてまた、憲法をめぐる問題については制定から既に68年になろうとしている今、時代の変化を捉えて、解釈の変更や改正に向けて国民的な議論をさらに深めていくべきであり、中国、韓国を含む諸外国に対しても丁寧に説明をしていきたいと、このように考えておりますし、今、安倍政権で進めている積極的平和主義についてもしっかりと説明をしていけば、必ず私は理解をしていただけると確信をしております。
(内閣広報官)
大変恐縮でございますけれども、予定の時刻がほぼ満了に近づいておりますので、次の質問をもちまして最後の質問にさせていただきます。
もう一度、三重県政記者クラブの代表の方、お願いいたします。
(記者)
幹事社CBCの松本です。
もう一点伺います。リニア中央新幹線についてです。三重県の方では経済効果を期待して品川、名古屋間を先に開業する2段階の開業ではなく、全線同時開業を求めていますが、総理はどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いします。
(安倍総理)
リニア中央新幹線は、日本が世界に誇る世界最先端技術の鉄道技術を用いるわけでありまして、私は夢のプロジェクトであると思います。こういうプロジェクトを進めていくということは、日本人みんながわくわくしていくのではないかと、こう思います。
将来、リニア新幹線がつながれば、わずか1時間ちょっとで東京から大阪まで移動できることになりますし、三重県にも来やすくなります。東京からちょっと伊勢神宮に参拝しようということも実現するわけでありまして、三重県にも大きな効果をもたらすと思います。
JR東海が建設主体となっておりますので、工事の進め方など、いろいろ考えていると思いますが、リニア中央新幹線は一種の、先ほど申し上げましたように、国家プロジェクトと言ってもいいと思います。政府としても様々な形で、できることはバックアップをしていきたい、こう考えております。
(内閣広報官)
予定の時間が満了いたしました。以上をもちまして、安倍総理の記者会見を終了いたします。
皆様、御協力どうもありがとうございました。
(安倍総理)
どうもありがとうございました。