[文書名] 内外記者会見
【安倍総理冒頭発言】
世界のリーダーたちが一堂に会し、直接顔を合わせ膝詰めで話し合う。国際社会には様々な問題がありますが、世界のリーダーたちが信頼関係を築き、共に行動することで、必ずや解決をする。私はそう信じています。
テロリストによる核の不正な使用を許さず、平和目的で安全に利用する。これは、人類共通の大きな課題です。
平和と正義の国際都市であるこのハーグで、世界のリーダーたちが集い、協力して取り組むことで一致いたしました。
特に、高い技術を持つ日本とアメリカが手を携えて、こうした取組をリードする。
今回発表した、核物質の削減に関する日米の共同声明こそ、「今回のサミットの最大の成果」である。そう語るオバマ大統領とサミット会場で再会し、友情を改めて確認することができました。
日本は、世界で唯一の戦争被爆国です。
核兵器の廃絶に向け、世界的な核不拡散と核軍縮をリードしていく責任は、日本にこそある。
世界の平和と安定のためにも、今後とも全力を尽くして参ります。
昨日、G7サミットを開催いたしました。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア。民主主義や、法の支配といった、基本的な価値を共有する国々です。
ウクライナ情勢について、率直で、濃密な議論を行いました。
「力を背景とした現状の変更」は、断じて許してはならない。
ロシアによるクリミアの併合は、明らかな国際法違反であり、もはや、ヨーロッパという一地域の問題にとどまらず、アジアにも影響を及ぼす、グローバルな問題であります。
私の主張に対して、多くの国々から賛同を得ました。
日本や東南アジアの友人たちにとっても、他人事では済まされない。「対岸の火事」ではありません。
その意味で、G7の首脳が共同して、改めて、法の支配、国際法遵守の原則を確認し、世界に向けてメッセージを発することができたのは、タイムリーで、大変意義深いものであったと思います。
原理・原則を曲げることはできない。
しかし、私たちは、この問題を平和的・外交的に解決しなければなりません。
世界が、冷戦の時代に戻るようなことがあっては、なりません。
対話のドアは閉ざしてはなりません。
先人たちが築き上げてきた歴史と英知の上に立って、すべての関係国が自制し、責任ある行動をとるべきであります。
日本もこの問題の解決のため、力を尽くしていきたいと思います。
ここオランダでは、アンネ・フランクの家を訪れました。
「ジャーナリストになり、やがて有名な作家になりたい」
本棚の裏の隠れ家にあって、アンネは最後の瞬間まで、将来への夢を失うことなく、平和が訪れる日を待ち望んでいました。
残念ながら、彼女の夢は叶いませんでした。
しかし、戦後、その思いは受け継がれ、人類は、「二度と戦争を起こしてはならない」との決意で、基本的な価値を共有し、「平和な世界」を創る努力を積み重ねてきました。
21世紀こそは、子どもたちがアンネのような悲しい思いをしなくても済む世界を創っていかなければなりません。
私たち、世界のリーダーには、大きな責任があります。
世界平和への強い思いを新たにした旅でありました。
この後、日・米・韓、三か国で首脳会談が予定されています。
オバマ大統領、そして朴槿恵大統領と、東アジアの安全保障について、率直な意見交換を行い、日・米・韓の緊密な連携を確認いたします。
また、未来志向の日韓関係に向けた第一歩とする。そのような会談にしたいと考えています。
【質疑応答】
(NHK 原記者)
まずウクライナ情勢について伺います。昨日G7の首脳会合で、ソチ・サミットについてボイコットを決めました。ロシアのクリミア併合への動きには歯止めがかけられていません。総理は対話の重要性をかねがね強調されていますが、日本として今後、具体的にどのような行動をとっていくお考えでしょうか。また、ロシアのクリミア併合、中国の海洋進出強化の背景には、アメリカの影響力低下があるという指摘がアメリカ国内でもあります。この指摘について、どのようにお考えでしょうか。
(安倍総理)
今回はG7が一致して、「力を背景とした現状変更」は決して認められない、とのメッセージを出したことは重要であります。我々は、ソチG8への参加をとりやめることにいたしました。同時に、G7各国とよく連携をとりつつ、ロシアとも意思疎通を図り、解決の糸口を模索する努力を続けることが重要であります。私もG7の会合において、そのことを強く主張いたしました。事態の平和的・外交的な解決に向け、日本としても役割を果たしていく考えであります。
国際社会が直面する問題は、どの国も一国で対処できるものではありません。ウクライナの問題におきましても、米国はG7の連携のため、リーダーシップを発揮しています。日本も、公海の自由などの問題をはじめ、幅広い分野で日米同盟関係を基盤としながら、他の諸外国とも協力を強化しています。オバマ政権は、アジア太平洋地域を重視する戦略を進めています。このようなオバマ政権の方針は、地域の平和と繁栄に大きく貢献するものであり、日本として歓迎をしています。日本は地域の平和と繁栄のため、米国と協力していく考えでありますし、日本と米国が力強く協力していくことが、アジアの平和と安定につながっていくと、このように思います。
(AP通信 スターリング記者)
昨日、総理は大量のプルトニウムを米国に返還することを発表した。日本がまだ9トン以上のプルトニウムを国内に保有している理由は何か。近い将来に利用する目的があるという専門家もいるが、総理は将来利用しないプルトニウムは持たないとも述べている。日本及び他国に対して危険となり得る核物質を保有する理由を伺いたい。
(安倍総理)
結論から申し上げますと、我が国の取組は、核セキュリティ・サミットの目的と完全に合致しています。今回のサミット会合でも、「日本には、核セキュリティ強化を主導する責任がある。私自身が先頭に立って取り組みを進める」こう申し上げました。
プルトニウムについては、今回、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持することを明言いたしました。
日本におけるプルトニウムについては、その全量についてIAEA保障措置の下、全て平和的活動にあるとの結論を得ています。更に、日本独自の自発的な措置として、プルトニウムの管理状況について、国際的な指針よりも詳細な情報を公開をしています。
我が国は、核物質の最小化にもコミットしています。今般、高速炉臨界実験装置の高濃縮ウランと分離プルトニウムの全量撤去を含む、核物質の移転・処分についての日米協力に合意をいたしました。
核テロ対策についても、原子力発電所において、警察の銃器対策部隊が24時間常駐警備に当たるとともに、海上保安庁も周辺海域に巡視船艇を常時配備するなど、適切な防護措置を講じているところであります。更に、今回の新規制基準におきまして、航空機衝突も想定した対策も講じるなど、核テロ対策を強化しています。
(共同通信 林記者)
これから臨まれる日米韓首脳会談について伺います。総理はかねて中国・韓国との対話のドアは常にオープンであり、課題があるからこそ対話すべきと述べてこられました。今回の会談は、日韓関係改善に向けた第一歩となると思いますが、歴史認識や領土問題など課題が残っています。今回の会談の成果として、何を期待し、これを踏まえ、どのように日韓関係の更なる改善につなげていくお考えでしょうか。一方、中国との首脳会談が実現していませんが、関係改善についてはどのようにお考えでしょうか。
(安倍総理)
国と国との関係においては常に課題というのはあるんだろうと思います。今般、オバマ大統領のご尽力によりまして、オバマ大統領と朴槿恵大統領と、東アジアの安全保障について率直な意見交換を行う予定でおりますが、今回の日米韓首脳会談では、北朝鮮問題に関して、基本的価値と利益を共有する日米韓の緊密な連携を確認したい、と思います。また、今回の会談は、朴槿恵大統領とは初の会談となりますが、未来志向の日韓関係に向けた第一歩としたいと思っております。
中国につきましては、習近平国家主席と、昨年のサンクトペテルブルグG20の機会に、握手をし挨拶を交わし、戦略的互恵関係の原点に立ち戻って、日中関係を発展させていくべきとの考え方を伝えました。それ以降、より深く意見交換する機会を設けられていないことを残念に感じています。質問の中にもありましたように、国と国との関係には様々な課題があります。課題があるからこそ、首脳レベルを含め対話をすべきであり、中国とも大局的見地から、政治・経済・文化などあらゆる分野において未来志向の協力関係を発展させていきたい、と思っております。対話のドアは常にオープンであります。ぜひ中国側にも同じ対応をとってもらいたいと思います。
(TBS 山口記者)
核セキュリティ・サミットの会場で、オバマ大統領の隣の席に座られ、お話をされていたが、どのような話をしていたか。来月のオバマ大統領の訪日に向けて、日米関係の強化に向け、改めて決意をお伺いできればと思います。
(安倍総理)
核セキュリティ・サミットで隣の席がオバマ大統領でありました。スタートまで少し時間がございましたので、まずウクライナ情勢の問題の解決に向けて、オバマ大統領のリーダーシップに対して改めて敬意を表したいし、我々も米国との同盟関係の中で、大統領のリーダーシップを支援していきます、という話をいたしました。また、今般、核物質削減に関する共同声明を日米で発表することができたことは良かった、というふうに申し上げました。その際オバマ大統領から、日米の共同声明は、今回のサミットにおける最大の成果である、この日米共同声明をとりまとめるにあたり、安倍首相が努力をしてきたことを感謝したい、という話がございました。
(日本テレビ 菅原記者)
日米韓首脳会談では、北朝鮮情勢について話し合われると思いますが、今月末から日朝の政府間協議が再開されます。拉致問題の早期解決に向けて、現在行っている経済制裁の緩和はあるのでしょうか。また、現状において金第一書記とのトップ会談についてはどのようにお考えでしょうか。
(安倍総理)
拉致問題は、国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、被害者のご家族もだんだんご高齢になっているなかにおいて、安倍政権の間に必ず解決をしたいとの信念の下、この問題に取り組んでいます。今回の会談で、米韓両国との連携を確認した上で、引き続き両国と緊密に連携しつつ、政府として拉致問題解決に向けて全力で取り組んでいく考えであります。韓国も離散家族の問題など、人道上の問題を北朝鮮との間で抱えています。後ほど行われる日米韓首脳会談ではこうした自分の考えを、オバマ大統領と朴槿恵大統領に直接伝え、説明し、核やミサイル問題に加えて、こうした人道上の問題についても日米韓三カ国で連携して取り組んでいくことを確認したいと思います。