[文書名] 内外記者会見
【冒頭発言】
日本の皆さん、おはようございます。
ここニューヨークで、錦織選手が、並み居る強豪を押しのけて、アジア人初の決勝進出を成し遂げたのは、2週間余り前のことでした。
9月は、ニューヨークにおいて国連総会が開催され、世界中から、政治や経済のリーダーたちが集まる季節でもあります。
ニューヨークが、まさに「世界の中心」となる。それは、日本の考え方を発信する「絶好のチャンス」でもあります。昨年に続き、今年も、このタイミングをとらえ、ニューヨークにやってまいりました。
「復活を遂げた日本経済は本物なのか?」世界経済をリードする投資家や、ハーバード大学など世界でも一流の経済学者の皆さんが、日本の成長戦略に大いに注目しています。
特色ある日本の「地方」にこそ、「投資のチャンス」がある。和歌山県知事、京都市長、新潟の十日町市長、岡山の美作市長と共に、日本の魅力あふれる「地方」のアピールも行いました。
「日本から、世界を変えてほしい。」女性の輝く社会を目指す日本の役割に、ヒラリー・クリントンさんを始め、多くの女性リーダーたちから、大きな称賛と期待の声を頂きました。
日本が、再び、世界の中心で活躍する国になろうとしている。そのことを改めて実感いたしました。
「世界は、今、深刻な危機に直面しており、我々は、国連の旗の下、結束すべきである。」
国連総会の場で、先ほど、私は、このように世界に呼びかけました。
エボラ出血熱は、人々やモノが世界中を活発に動き回る現代において、アフリカだけではなく、世界の安全保障を脅かしかねない課題です。日本は、更なる人的な貢献や最先端薬品の提供も含め、力を尽くしてまいります。
太平洋やカリブ海などに浮かぶ島々にとって、地球温暖化は、国家の存亡に関わる問題です。気候変動への対処でも、日本は、世界最先端の省エネルギー技術や災害対策の知見を最大限に活用して、世界に貢献してまいります。
ISIL、いわゆる「イスラム国」の活動は、国際秩序に対する重大な脅威です。人道支援や周辺国支援のため、緊急支援を行っていきます。イラクのマアスーム大統領にも、イラクの「テロとの戦い」を支持する考えを、直接お伝えしました。
ウクライナの安定確保に向けて、引き続き、力強い支援を行ってまいります。
こうした世界的な課題に、日本は、国際社会と手を携えながら、大きな責任を果たしていく決意であります。「積極的平和主義」の旗のもと、日本は、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献してまいります。
来年は、国連創設から70周年を迎えます。グローバルな課題に有効に対応できるよう、21世紀の現実にあった姿へと、国連を改革していかなければなりません。その中で、日本は、ふさわしい役割を担っていく覚悟であります。
こうした日本の考え方は、世界の国々から、強い支持を得ることができました。
今回ニューヨークでは、フランスのオランド大統領や、オーストラリアのアボット首相を始め、多くの首脳の皆さんとも再会を果たしました。いずれも、会ったらすぐに、具体的な「各論」から話し合える友人たちばかりでもあり、充実した議論を行うことができました。
この20か月余りで行った首脳会談は、200回を超えました。首脳同士が、直接対話することで、相互の理解が深まり、日本の国益にもつながる。
今後も、「地球儀を俯瞰する外交」を積極的に展開してまいります。
さて、今回訪問した、ニューヨークの名門・コロンビア大学では、日本について学びたいと考えるアメリカの学生が、5年前と比べて、2倍に増えているそうです。
4月に訪日したオバマ大統領と、2020年までに日米の学生交流を2倍にしよう、と約束しました。日米同盟の絆を更に強め、両国関係に新たな発展をもたらす原動力になると確信しています。
国と国との絆の原点は、次世代を担う若者たちの交流です。日本への注目が高まっている今、日本の若者たちにも、もっと世界に飛躍してもらいたい。力強く後押ししてまいります。
地方、女性、そして若者。日本が持つ、ありとあらゆる可能性を、世界という舞台で、大きく開花させていく。その決意を新たにいたしました。
若き日本のサムライ、田中将大選手が、今週、見事に復活を遂げました。
「来年以降も、ヤンキースで、長い年月にわたり、素晴らしい活躍をしてくれると期待している。」
あのデレク・ジーター選手が、こうエールを送ってくれました。偉大なる「キャプテン」と過ごした、この1年間は、田中選手にとっても、更なる成長の糧となったに違いありません。
今回の私の訪問を歓迎してくれた、ニューヨークの皆さんに感謝するとともに、今年引退するジーター選手の長年の活躍に心から敬意を表したいと思います。
私からは、以上であります。
【質疑応答】
(NHK 原記者)
総理は11月のAPECの際、中国の習近平国家主席との首脳会談の実現を目指しているが、中国側は、尖閣諸島をめぐって領土問題が存在することを認めるよう求めているほか、靖国神社も参拝しないよう求めています。こうした課題にどのように対応する考えでしょうか。また韓国の朴クネ大統領は、従軍慰安婦問題をめぐって、日本側に解決を促しており、国際社会においても同様の主張を展開しているが、こうした韓国の対応についてどのように考えでしょうか。また具体的に事態打開に向けた方策は。
(安倍総理)
私は、中国や韓国との関係を改善していきたいと考えています。中国も韓国も、日本にとって大切な隣国であります。隣国同士であるが故に様々な問題が生じるわけであるが、課題があるからこそ、前提条件を付けずに対話していくべきであると考えています。
11月には北京でAPECが開催される。中国の平和的発展は、日本にとって、そして世界にとってチャンスであると言えると思います。APECで北京を訪問する際に、日中首脳会談ができれば良いと考えているが、そのためには、両国がお互いに静かな努力を重ねていくことが必要であろうと思っています。
韓国についても、ちょうど今頃、日韓外相会談がここニューヨークで行われています。今後、様々な国際会議の機会に、首脳会談を行うことができればいいと考えています。
(ニューヨーク・タイムズ グラッドストン記者)
沖縄における米軍基地の移設に関して伺います。辺野古への基地移設に係る建設が始まる兆候はありますが、地元から抵抗や反対が予想されるにもかかわらず、安倍総理は基地移設を進めるお考えでしょうか。また、11月に行われる沖縄知事選の前に建設を開始するお考えでしょうか。
(安倍総理)
最も大切なことは、まさに市街地の真ん中にあり、住宅や学校等に囲まれている普天間の固定化は、決してあってはならない、ということであります。これが大前提であり、政府と地元の皆様の共通の認識であるといってもいい。
普天間の返還については、辺野古への移設が、日米間で合意した唯一の解決策であります。これは、昨年の日米「2+2」でも再確認されており、また、本年、オバマ大統領との首脳会談においても、早期移設の必要性について一致しています。
辺野古移設に必要な沖縄県知事の埋立承認を受けて、既に、本年8月、移設に必要な海上作業に着手したところであります。引き続き、速やかな普天間の返還に向けて、作業を進めていく考えであります。
沖縄の負担軽減については、「できることは全て行う」というのが、安倍政権の基本的な方針であり考え方であります。
先月、普天間配備の、KC−130空中給油機15機全機の、山口県岩国基地への移駐が完了しました。今後も、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、目に見える形で負担軽減を図るため、政府一丸となって、様々な政策を進めていく考えです。
(共同通信 倉本記者)
日露関係について伺います。政府は24日にウクライナ情勢をめぐり、対ロシア追加経済制裁を発動しました。安倍総理は、北方領土問題を解決する観点から、ロシア側と対話と関与を通じた働き掛けも重視されているが、日露首脳で合意した秋のプーチン大統領訪日を引き続き模索するのでしょうか。それとも11月のAPECに合わせた首脳会談を目指すのでしょうか。総理の対応戦略を伺いたい。
(安倍総理)
プーチン大統領とは、就任以来、1年9か月の間に5回の首脳会談を行っています。先日21日に、私の誕生日にもプーチン大統領から電話をいただき、電話会談を行ったところでありますが、今後も両国の間で対話を継続していくことで一致しました。
ウクライナ情勢については、日本は、力による現状変更は断じて認められないとの基本的立場に立ち、G7の連携を重視して対応しています。24日に発表した追加的措置もその一環であります。同時に、ロシアに責任ある国家として振舞うよう働きかけていくために、対話は重要であると考えています。
日露関係については、今後とも日本の国益に資するよう進めていきます。11月の北京APECの際の首脳会談の可能性も含めて、マルチの国際会議の機会も活用していきます。
プーチン大統領訪日については、引き続き実現を目指していく考えでありますが、訪日の日程については、何ら決まっていません。種々の要素を総合的に考慮して、検討していく考えです。
(AP通信 マシュー・ペニングトン記者)
日本は、米国等によるシリア及びイラクのISILに対する軍事的な攻撃、空爆を支持しているのでしょうか。近い将来、日本自身が同盟国のこのような作戦に軍事的な援助を行うということはあるのでしょうか。
(安倍総理)
ISILの攻撃によりイラクやシリアの都市が制圧され、多くの犠牲者が出ている事態を深く憂慮しています。武装勢力による攻撃を強く非難します。
日本は、米国を含む国際社会のISILに対する闘いを支持しています。今回の米国等によるシリアでの空爆については、シリア政府が武装勢力の活動を取り締まることができない状況の中でこれ以上の事態の悪化を防ぐためのやむを得ない措置であったと理解しています。
日本としては、難民支援や周辺国に対する人道支援など、軍事的貢献でない形で、可能な範囲の支援を国際機関と連携して行っていく考えです。
(日本テレビ 竹内記者)
昨日、岸田大臣が、日朝の外交当局間で来週会合を持つことを発表されましたが、その会合において、拉致被害者の調査の進捗状況について説明を受けるとのこと。当初、この調査結果について、夏の終わりから秋の初めにかけて連絡があるのではないかとのことでしたが、いつまでに1回目の報告はされるべきと考えるか。当初の報告予定時期から遅れていることは総理も認めていたが、こうした事態を踏まえ、解除した経済制裁を改めて行うという考えはあるのでしょうか。
(安倍総理)
日本側としては、北朝鮮側が誠意をもって迅速に調査を行い、その結果を速やかに通報すべきと考えています。
こうした観点から、29日の瀋陽における外交当局間会合の開催を日本側から提案しました。この会合において、北朝鮮側に調査を迅速に行い、その結果を速やかに通報すべきである旨強く求めるとともに、同時に、北朝鮮の特別調査委員会による調査の現状をしっかり聴取し、状況を見極めていく考えです。対話と圧力の姿勢であることに変わりはありません。
全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱きしめる日が訪れるまで使命は終わらないとの決意で、今後も対応していく考えです。