[文書名] 安倍内閣総理大臣記者会見
【安倍総理冒頭発言】
本日、内閣を改造いたしました。この内閣は、「未来へ挑戦する内閣」であります。
少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。そして、高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害のある方も、誰もが今よりももう一歩前へ踏み出すことができる社会をつくる。一億総活躍という輝かしい未来を切り開くため、安倍内閣は新しい挑戦を始めます。
戦後最大のGDP600兆円、希望出生率1.8、そして、介護離職ゼロ。この3つの大きな目標に向かって、新しい三本の矢を力強く放つ。そのための強固な体制を整えることができたと考えております。
まず、これからも経済最優先。GDP600兆円を目指す。経済政策を一層強化していかなければなりません。麻生副総理、甘利大臣には留任していただきました。引き続きアベノミクスを支える骨格として、雇用を増やし、しっかりと所得を増やす。成長戦略を実行し、国民の皆さんが真に実感できる経済の好循環を回し続けてまいります。
地方創生もこれからが本番です。北は北海道から南は沖縄まで、目に見える地方創生を進めるため、今後も石破大臣に全力で取り組んでいただきます。
地方活性化の要である国土交通大臣は、石井大臣です。公明党で長く政調会長を務めてこられた政策のプロであり、その手腕に大いに期待しております。
TPPの大筋合意を受け、総合的な対策を進める農林水産大臣は、森山大臣にお願いいたしました。自民党で長年、農政を引っ張ってきた方であります。地方の農業者の不安に寄り添い、正に二人三脚でTPPをピンチではなく、チャンスとする。若者が夢を持てる農業へと、農業改革を大胆に進めてまいります。
成長戦略は、一にも二にも改革あるのみであります。経済産業大臣には、大ベテランである林大臣にお願いいたしました。豊富な政治経験をいかして全国の中小・小規模事業の皆さんを応援し、成長戦略、構造改革を果断に実行していっていただきたいと考えています。
誰もが結婚や出産の希望がかなえられる社会をつくり、現在1.4程度に低迷している出生率を1.8にまで引き上げる。さらには、超高齢化が進む中で、団塊ジュニアを始め、働き盛りの世代が一人も介護を理由に仕事を辞めることのない社会をつくる。
この大きな課題にチャレンジする。そのためには霞が関の縦割りを廃し、内閣一丸となった取組が不可欠です。大胆な政策を発想する発想力と、それらを確実に実行していく強い突破力が必要です。司令塔となる新設の一億総活躍担当大臣には、これまで官房副長官として官邸主導の政権運営を支えてきた加藤大臣にお願いいたしました。女性活躍や社会保障改革において、霞が関の関係省庁を束ね、強いリーダーシップを発揮してきた方であります。
加藤大臣が中心となって、自民党きっての改革派である塩崎厚生労働大臣、文部行政に精通し、大胆な発想力を持つ馳文部科学大臣など、関係大臣が力を合わせる。斬新かつ効果的な政策を立案し、実行してまいります。
一億総活躍社会に向かって、政策の実行、実行、そして実行あるのみであります。
女性の輝く社会づくりも一億総活躍社会の中核として、引き続き安倍内閣にとって最大のチャレンジであります。安倍政権においては、女性の皆さんにもどんどん活躍してもらう考えであります。今回、党では稲田政調会長、内閣では高市総務大臣に留任していただきました。引き続き政権運営の中核として御活躍いただけるものと思います。
そして、新たに島尻大臣、丸川大臣に入閣していただきました。それぞれの分野で女性ならではの目線をいかし、新風を巻き起こしてほしいと思います。
沖縄選出の国会議員である島尻大臣には、アジアとの架け橋である沖縄が21世紀の成長モデルとなるよう、沖縄の方々の心に寄り添った沖縄振興策を積極果敢に進めてもらいたいと考えています。
沖縄の基地負担軽減についても、担当大臣である菅官房長官を中心に、引き続きできることは全て行うとの基本姿勢の下、全力で取り組んでまいります。
外交・安全保障については、先般成立した平和安全法制の着実な施行に万全を期してまいります。安全保障の基盤を確かなものとするとともに、積極的な平和外交を力強く進めるため、岸田外務大臣、中谷防衛大臣には留任していただくことにいたしました。
遠藤大臣にも引き続き担当大臣として、東京オリンピック・パラリンピックの準備に万全を期してもらいます。
自民党は人材の宝庫であります。今回、9名の方が初入閣となりました。大いにその能力を発揮してもらいたいと期待しています。
大ベテランの政治家である岩城大臣には、課題山積の法務行政のかじ取りをお願いいたしました。
髙木大臣は、党内で長年政策を磨いてきた政策通でもあります。国土交通副大臣などの経験をいかし、復興をますます加速していってもらいたいと思います。
河野大臣は、大勢に迎合することなく、常に改革を強く訴えてきた情熱の持ち主であります。閣内でも改革断行の総元締として、これまでの経験をいかしてあらゆる改革を一気に加速してもらいたいと期待しています。
さらには、丸川大臣のように若い力も加わります。環境大臣として、そのバイタリティーで地球温暖化対策、福島の除染の加速などにチャレンジしてほしいと思います。
老壮青のバランス、正に世代横断的に日本の未来の姿を大胆に構想し、果敢にチャレンジしていく体制を整えることができたと思います。
GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロ、一億総活躍社会なんて本当にできるのかという声も耳にいたします。20年近く続いたデフレによっていかにデフレマインドが日本の隅々にまで蔓延してしまったのか。日本を覆う自信喪失の根の深さを改めて感じています。
しかし、やらなければなりません。少子高齢化をこのまま放置していいわけはありません。私たちの子や孫の世代に誇りある日本を引き渡すため、安倍内閣は明確な目標を掲げ、未来に向かって挑戦します。
まず、年内のできるだけ早い時期に、緊急に実施すべき対策第一弾を策定し、直ちに実行に移します。加藤大臣には早急に「一億総活躍国民会議」を立ち上げ、対策を取りまとめてもらう考えです。さらには、2020年、そしてその先を見据えながら、3つの明確な目標に向かって、そしていつまでに実現を目指し、さらには具体的にどのような政策を実行するのか。具体的なロードマップを「ニッポン一億総活躍プラン」として取りまとめてもらいます。
安倍政権発足から1000日余りが経ちました。アベノミクスにより雇用は100万人以上増え、給料は2年連続で上がりました。もはやデフレではないという状況をつくり出すことができました。国民の皆さんの努力によって日本は新しい朝を迎えることができました。
やればできる。その強い自信を持って、国民の皆さんと共に少子高齢化という構造的な課題にチャレンジする。一億総活躍社会という未来に向かって、大いなる挑戦を始めたいと思います。
新しい安倍内閣に対しましても、引き続き御理解と御支援を賜りますようにお願い申し上げます。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様から御質問をいただきます。
御質問をされる方は、所属とお名前を明らかにした上で、お願いいたします。
まず、最初は幹事社のほうからいただきますので、どうぞ。
(記者)
幹事社の産経新聞の阿比留です。
今の冒頭の御発言と多少ダブるかもしれませんが、今日、第3次改造内閣が発足して、これまでも安全保障法制、農協改革、TPP、原発再稼働など、大きな政治課題がありました。先月、自民党総裁選で再選を決めたことによって、平成30年9月までの任期があります。今も最優先課題としての経済再生や少子高齢化の問題を話されましたが、長いスパンで、来年の夏の参院選後も含めてこれからの3年間で成し遂げるべき政策は何だとお考えでしょうか。また、その優先順位についてはどうお考えですか。お聞かせください。
(安倍総理)
これからの3年間ということについての御質問だと思いますが、この3年間、最大の課題は何といっても一億総活躍社会の実現であります。GDP600兆円、そして希望出生率1.8の実現、また介護離職ゼロ。どれもが難しい課題でありますが、この大きな目標に向かって、その実現に全力を尽くしていきたいと思います。野心的な目標でありますし、最初から設計図があるような簡単な課題ではありませんが、誰もが活躍できる日本を実現するために、内閣の総力を挙げて大胆な政策を進めていく。実行あるのみである。こう考えています。
また、外交・安全保障の面においても、積極的平和主義の旗の下、世界の平和と繁栄に貢献をしていく。世界の中心で輝く日本をつくり上げていくことも重要な課題であります。
そしてまた、この3年間というスパンで見ていきますと、日本という国の未来、私たちの未来を自分たち自身の手でつくり上げていく。この3年間、時代が求める憲法の姿、国の形についても国民的な議論を深めていきたいと考えています。
少子高齢化を始め、長年懸案であった諸課題に真正面から向き合って克服する。誇りある日本をつくり上げ、そして次の世代にしっかりと引き渡していく。これは今を生きる私たちの、そして、政治家の大きな責任であろうと思います。未来をしっかりと見据えながら、国民とともに大きな、そして明確な課題に挑戦し、結果を出していく決意であります。
(内閣広報官)
同時通訳で行っておりますので、総理の御発言、答えが終わっても、通訳が終わるまで少しタイムラグがあることがありますので、御承知ください。
それでは、幹事社の方、もう一問お願いします。どうぞ。
(記者)
北海道新聞の小林と申します。閣僚人事についてお伺いします。
今回の改造で新設した一億総活躍担当相に加藤副長官を起用されましたが、その狙いについてもう少しお聞かせいただきたいと思います。
また、石破地方創生担当相が留任されましたが、一億総活躍の分野と地方創生の分野では重なる部分も多いように思いますが、関係閣僚の間での役割分担についてはどのようにお考えなのか、具体的にお聞かせください。
(安倍総理)
冒頭の説明と少し重なるかもしれませんが、少子高齢化、それに伴う過疎化といった課題は、既に地方において深刻さを増しており、これへの対応抜きに地方創生を論じることはできません。今後とも、地方におけるこうした課題に、石破大臣には取り組んでいただきたいと思います。
一方で、少子高齢化について言えば、全国で最も出生率の低いのは東京であります。必ずしも地方創生の視点だけで少子化の問題を論じることはできない課題であろうと思います。また、教育再生や子育て支援、仕事と介護の両立、生涯現役社会の実現など、省庁の枠を越えた、従来の発想にとらわれないアプローチで国づくりを進めていくことも必要であります。そうした思いで一億総活躍を目指し、希望出生率1.8、介護離職ゼロなど明確かつ野心的な目標を掲げ、その実現に取り組むことといたしました。
一億総活躍大臣は、関係大臣と緊密に連携しながら、そうした野心的な目標の実現に向かって内閣全体をリードしていってもらいたい。そのための司令塔であると思います。加藤大臣は、政権発足から1000日余り、官房副長官として各省庁を束ね、官邸主導の政権運営を支えてきてくれました。具体的な政策でも女性活躍や社会保障改革などを担当し、強いリーダーシップを発揮をしてくれたと思います。これは皆さんにも官房副長官としての仕事ぶりは評価をしていただいているのではないかと思います。
そうした経験の下で培った、省庁の縦割りを廃した広い視野、そして大胆な政策を構想する発想力、それらを確実に実行する強い突破力を、存分に発揮してもらいたいと思っています。一億総活躍へのいわば司令塔であり、かつ切り込み隊長として頑張ってもらえると期待をしております。
(内閣広報官)
それでは、これから幹事社以外の皆さんから質問をいただきますので、御希望をされる方は挙手をいただきたいと思います。私のほうから指名いたしますので、改めましてお名前と所属を明らかにされた上で、お願いいたします。
では、山口さん。
(記者)
AP通信の山口と申します。よろしくお願いします。
今回の改造内閣では、総理が今おっしゃったように一億総活躍の社会が大きな目標となっていますが、中でも総理が最重要課題の一つとしてこれまで取り組まれている女性の活躍についてお尋ねしたいと思います。
この女性の活躍の支援が目指すところというのは、やはり経済効果、つまり、経済の再生と出生率増加によって人口の減少を食い止め、強い経済と社会保障を維持できる国をつくるということなのでしょうか。
また、この2年間で女性の支援のいろいろ政策がありましたけれども、この中で成果がいま一つ十分ではなく、更なる努力が必要だと思われることがあれば、それはどのような分野で、今後の課題はどのようなことでしょうか。よろしくお願いします。
(安倍総理)
私は、国内だけではなくて世界に出かけていっても、アベノミクスはウィメノミクスである、こう申し上げています。少子化による人口減少を食い止め、経済活力を維持していかなければなりません。
これまで保育待機児童の解消など、女性が子育てと仕事を両立しやすい環境の整備に力を入れてまいりました。そしてまた同時に、企業にも女性役員についての情報開示を求めることによって、女性の登用を働きかけてまいりました。政策は一定の効果を上げまして、この2年半で新たに約100万人の女性が労働市場に参加をし、企業における女性の役員が約3割増えました。
今後、更に成果を上げるため、ワーク・ライフ・バランスの追求による働き方の改革、先般成立をした女性活躍推進法の着実な施行による官民の組織における女性の採用・登用の促進、困難を抱える家庭に対する支援を、一層強化をしていきます。
それでもなお、指導的地位に占める女性の役割を3割とすることは簡単ではありません。その原因は、一定のキャリアを積んだ年代にそもそも女性が少ないということがありまして、まずは採用における女性の割合を高め、その上で指導的立場に就くふさわしい経験を積ませ、人材のプールを拡充していく必要があるのだろうと思っています。
その意味においては、隗より始めよということで、公務員において、しっかりと将来の幹部候補生を3割採用し始めているわけであります。
女性が着実にキャリアを積む上で最大の壁は、長時間労働を是とする働き方でありました。限られた時間で効率的に働くことを評価する企業文化を広げ、家事や育児を夫婦で共に担うことを日本でも当たり前にしていかなければならないと思っています。
この永田町とか、霞が関や皆さんの世界でもそうでしょうけれども、我々もしっかりと、こうしたワーク・ライフ・バランスに取り組んでいかなければならないと思います。
そうなれば、男性も女性も生産性の高い仕事と豊かな生活を無理なく実現できるようになっていくのではないかと思っています。
そしてまた、あらゆる分野で、指導的地位の3割以上が女性となる社会を目指してまいりたいと思います。それには、もちろん先ほど言った制約があるのは事実でありますが、しっかりとこの目標に向かって進んでいきたい。
そういう意味においては、政治のありようは大きな影響を与えると思います。その中において、我々もできる限りの努力をしていきたいと思っています。
(内閣広報官)
ちょっと時間的に最後の質問になってしまうかもしれませんけれども、次、どうぞ、御質問される方。では、杉田さん。
(記者)
共同通信の杉田です。
総理、先日の会見でTPPの国内対策、影響を不安がっておられる農業者の方などを踏まえて、国内対策を急ぐ考えを示されました。
それから、今、総理が御説明されたように、一億総活躍社会に向けて、対策の第一弾をつくられるお考えを説明されました。
こうしたものに向けて、総理、補正予算の編成を指示する考えはございますでしょうか。もしあるならば、その規模感を含めてお考えを聞かせてください。
(安倍総理)
甘利大臣が帰国いたしまして、本人からも直接、TPP交渉大筋合意の中身について報告を受けました。
TPPを真に我が国の経済再生や地方創生に直結するものとするため、全閣僚をメンバーとするTPP総合対策本部を設置し、総合的な対策を検討するよう指示をいたしました。農業は国の基であり、そして、美しい田園風景を守っていかなければなりませんし、それは、政治の責任であると、こう考えています。私の地元も農村地域を多く含むわけでありまして、東京のような国際的な都市、そして、個性のある地方都市、さらには、美しい農村、漁村、田園風景があって、初めて私は日本であろうと、こう思っています。
そのためにも、活力ある農村、漁村をつくり出していく必要があり、正にこれはピンチではなく、チャンスに変えていきたいと思っています。
今後、農林水産業にどのような具体的影響が生じ得るかを、十分に精査していきます。
その上で、TPP協定の締結について国会の承認を求めるまでの間に、政府全体で責任を持って国内対策を取りまとめ、交渉で獲得した措置と併せて、万全の措置を講じていく考えであります。
国内対策に当たって必要な予算については、様々な観点から、今後、検討を進めていく考えであります。
(内閣広報官)
予定をしておりました時刻が経過いたしましたので、以上をもちまして、安倍総理の記者会見を終わらせていただきます。
皆様、御協力どうもありがとうございました。
(安倍総理)
ありがとうございました。