データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内外記者会見

[場所] 
[年月日] 2016年9月5日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【安倍総理冒頭発言】

 まず冒頭、本日、北朝鮮が、またも弾道ミサイル発射を強行しました。我が国の排他的経済水域に3発ものミサイルが同時に打ち込まれた。これは、例のないことであり、安全保障上の重大な脅威であります。地域の平和と安定を損なう、許しがたい暴挙であり、断じて容認できません。

 ここ杭州で、世界のリーダーたちが、平和と繁栄について真剣な議論を行っている、まさにその瞬間に、国連安保理決議に違反するミサイル発射が行われました。国際社会への明確な挑戦であり、北朝鮮に対して、断固抗議します。

 G20サミットの場において、直ちに、アメリカのオバマ大統領、そして、韓国の朴槿恵大統領と協議を行い、国連の場も含めて緊密に連携していくことで、完全に一致しました。先ほどの日中首脳会談におきましても、この問題での連携を強く求めました。日本として、国際社会と手を携えながら、毅然として対応していく考えであります。

 本年5月、日本にG7の首脳たちが集いました。「新たな危機に陥ることを回避するため、全ての政策対応を行う。」そのことを、伊勢志摩の地で、G7が合意しました。

 「成長のエンジン」であった新興国経済が減速する中、世界経済の持続的かつ力強い成長をG7がリードしていく。その決意を、私は議長として、首脳宣言に取りまとめました。

 あれから3か月。今回のG20サミットにおいても、最大のテーマは世界経済でありました。

 私からは、伊勢志摩サミットにおける議論をベースに、世界経済が大きなリスクに直面している今、国際協調を強化していくべきである。その重要性を強調いたしました。

 そして、今回、新興国とも、世界経済への危機感を共有し、全ての政策対応を行っていく必要性で、一致いたしました。財政政策、金融政策に加え、中国を始めとした新興国が、過剰設備などの構造的な問題にも、しっかりと取り組んでいくことで合意できたことは、大きな成果であったと思います。

 日本も、G7の議長国として、また、今回のG20における合意を踏まえ、その責任を果たしてまいります。

 先般、事業規模28兆円を超える経済対策を決定し、補正予算を編成しました。今月召集する臨時国会で、その早期成立を図るとともに、来年4月に予定されていた消費税率の引き上げを延期し、内需をしっかりと下支えしてまいります。TPPの批准と関連法案の成立も目指します。

 秋の臨時国会は、いわば「アベノミクス加速国会」としたい、と考えております。

 世界的に需要が低迷し、世界経済に弱さが見られる中にあっても、各国が、保護主義などに決して陥ることなく、世界経済の持続的かつ力強い成長のため、協力して行動していく。取りまとめにあたられた、中国の習近平国家主席のリーダーシップに敬意を表します。

 中国は、日本にとって、古くからの大切な友人であります。私たちは、共に、地域の平和と繁栄、世界経済に大きな責任を持っています。そのことを十分に自覚し、大局的な観点から、共に、関係改善に努めていかなければなりません。

 習近平国家主席とは、この機会を利用して、3度目となる首脳会談を行いました。

 確かに隣国ゆえに様々な課題・問題はあります。意見が異なる課題もあります。しかし、困難な課題があるからこそ、話し合う。先ほどの首脳会談では、様々な分野、様々なレベルでの対話を進めていくことで合意しました。東シナ海を、平和・協力・友好の海とするため、防衛当局間による「海空連絡メカニズム」の協議を加速することでも一致しました。

 「戦略的互恵関係」という大きな原則の下に、これからも対話を重ねてまいります。

 「晴れて方(まさ)に好(よ)く」、「雨も亦(また)奇なり」。

 「本物」は、いかなる状況でも、その輝きを失うことはありません。古来、絶景を称えられてきた西湖を、今回訪れることができました。心温まるおもてなしをいただいた杭州の皆様に、心から感謝申し上げたいと思います。

 私は明日、ラオスへと向かいます。この半月ほどで、リオデジャネイロ、ナイロビ、ウラジオストク、杭州、そしてビエンチャン。地球2周分の距離を動き、積極的な外交を展開しています。スーパーマリオのように、土管でワープできれば一瞬ですが、そういうわけにもいきません。

 不透明感を増す世界経済、地域紛争、テロ、難民。世界は今も、様々な課題に直面しています。そうした課題の解決に、 日本は「積極的平和主義」の旗を掲げ、リーダーシップを発揮してまいります。世界の平和と繁栄に貢献していく決意であります。

 南シナ海の問題を始め、ASEANも様々な課題に直面しています。いかなる時においても、また、課題が複雑であればあるほど、私たちは原則に立ち戻ることが重要です。

 いかなる紛争も、力の行使や威嚇ではなく国際法に基づいて、平和的・外交的に解決しなければなりません。

 法の支配を貫徹し、この地域の平和と安定、そして将来にわたる繁栄を確かなものとする。東アジアサミットでは、そうした地域の未来について、ASEANの友人たちと共に、しっかりと語り合いたいと思います。

 私からは、以上です。