データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 内外記者会見

[場所] 
[年月日] 2017年4月29日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【安倍総理冒頭発言】

 1年ぶりにロンドンにやってまいりました。いつも変わらぬ、イギリス国民の皆さんのおもてなしに改めて心から感謝したいと思います。まず冒頭、先般、正にここロンドンで発生したテロ事件により犠牲となった方々に、改めて心より哀悼の意を表します。罪のない人々の命を無残に奪う、非道、卑劣なテロは断じて許されない。断固非難します。日本はこれからも、イギリスを始め国際社会と手を携えて、テロとの闘いを続けてまいります。

 自由、民主主義、人権、法の支配。悠久の歴史を刻んできたこのロンドンの地に立つ時、こうした普遍的な価値をつくり上げ、そして堅く守り続けてきたイギリス国民の皆さんの数世紀にわたる努力に、深甚なる敬意を表します。そして、これらの普遍的な価値こそが、イギリスのみならず世界の平和と繁栄の礎となってきた。こうした価値を共有する私たちG7は、これまでも、今も、そしてこれからも、世界の平和と繁栄に大きな責任をもつ、国際秩序のけん引者であります。しかし、今、こうした価値、国際秩序が脅かされている。世界の平和と繁栄が、重大な危機に直面しています。国際社会の強い警告にもかかわらず、北朝鮮が本日またも弾道ミサイルの発射を強行しました。我が国に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。更なる挑発の可能性も十分に考えられることから、引き続き、同盟国である米国とも緊密に連携しながら、高度の警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期してまいります。我が国として、毅然として対応してまいります。北朝鮮は国際社会の制止を無視して、この1年間で20発以上もの弾道ミサイルの発射を強行し、核兵器の開発を続けています。国連安保理決議への明確な違反であり、国際社会に対する明白な挑戦であります。今こそ、基本的な価値を共有する国々が結束しなければならない。国際社会は一致団結しなければなりません。昨日の日英首脳会談では、メイ首相とその強い決意を共有しました。日本は強い英国、強い欧州を支持します。欧州全体の結束がしっかりと維持されながら、英国のEU離脱が円滑かつ成功裏に実現することが必要です。そして、国際社会が直面する諸課題にグローバルな英国が積極的な役割を果たすことを強く期待しています。

 北朝鮮には、安保理決議を遵守し、危険な挑発行為をやめ自制するよう強く求める。この点で、一昨日、ロシアのプーチン大統領とも一致いたしました。そして、北朝鮮と国境を接するロシア、中国、さらには日米韓が緊密に協力して、この事態に対処しなければならないとの認識でも一致しました。モスクワでは、北朝鮮情勢のみならず、シリア情勢など世界の諸課題について率直な話合いを行いました。国際的な課題の解決に、ロシアの建設的な関与は不可欠であります。私は、これからもプーチン大統領と対話を続け、こうした課題に共に連携していく考えであります。

 そうした中で、戦後70年以上がたった今でも、日本とロシアとの間には、平和条約が締結されていない。これは極めて異常な状態であります。日本とロシアの協力には無限の可能性が眠っています。しかし、平和条約がないことが、長年、そうした協力を深化させる上で大きな障害となってきました。私とプーチン大統領とで、この平和条約問題を解決する。昨年末、長門会談で合意した、その真摯な決意の上に、今回の日露首脳会談では平和条約交渉を着実に前進させることができたと考えています。平和条約交渉の一環として、北方四島における共同経済活動、そして、島民の皆さんの自由なお墓参りの実現に向け、今回は大きな一歩を踏み出すことができました。共同経済活動の具体化に向けて、来月中に官民による現地調査団を派遣します。6月には、島民の皆さんが身体的な負担の少ない飛行機を利用して、択捉島や国後島でのお墓参りに行けるようになります。どの島に行くにも、まずは国後島の沖で出入域手続をしなければならなかった島民の皆さんの不便も解消します。島民の皆さんの平均年齢は、既に81歳を超えています。もう時間がない。そう語る島民の皆さんの切実な思いを、深く胸に刻みながら、今後とも具体的な結果を積み重ねていく決意であります。平和条約を締結する上で最も重要なのは、日露両国民の信頼関係であります。相互の信頼なくして、双方が受け入れ可能な解決策を見いだし、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできません。そのためにも、北方四島、さらには北海道、サハリンなど、広く極東地域の人的な交流も拡大していきたい。8項目の経済協力プランについても更なる具体化を進めていきたいと考えています。

 さて、日本では、今日からいよいよゴールデンウィークが始まりました。休日返上でお仕事という方もいらっしゃるかもしれませんが、今年は3日から7日まで5連休もあります。安倍内閣は、現在、働き方改革を進めています。仕事の生産性を上げるためにも、めりはりをつけてワークライフバランスを確保することが極めて重要です。こうした機会を生かし、時には仕事を忘れて休日を楽しんでいただきたいと思います。政府も常に課題山積ではありますが、そうした課題にしっかりと対処していくためにも、このゴールデンウィークは私も十分に英気を養いたいと考えております。

 私からは以上であります。