[文書名] 安倍内閣総理大臣記者会見
【安倍総理冒頭発言】
昨日、通常国会が閉会しました。
4年前、政権奪還後の最初の通常国会において私は、建設的な議論を行い、結果を出していこう、こう各党各会派に呼び掛けました。
その原点は今なお変わることはありません。
しかし、この国会では建設的議論という言葉からは大きく懸け離れた批判の応酬に終始してしまった。政策とは関係のない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまいました。
国民の皆様に大変申し訳なく感じております。
印象操作のような議論に対して、つい、強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が、結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省しております。
また、国家戦略特区をめぐる省庁間のやり取りについて、先週、文部科学省が徹底的な追加調査を行った結果、新しく見つかったものも含め、文書を公開しました。これを受け、内閣府の調査も行い、関係する文書等を明らかにしました。
しかし、最初に調査した段階では、それらの存在を確認できなかった。二転三転した形となり、長い時間が掛かることとなりました。こうした対応が、国民の皆様の政府への不信を招いたことは、率直に認めなければなりません。
信なくば立たずであります。
何か指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく。
先週も調査結果の発表後に予算委員会の集中審議に出席いたしましたが、4年前の原点にもう一度立ち返り、建設的な議論を行い、結果を出していく。そうした政治が実現するよう政権与党としての責任を果たしてまいります。
国民の皆様から信頼が得られるよう、冷静に、一つ一つ丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならない。その決意をこの国会の閉会に当たって新たにしております。
今月もイギリスで、フランスで、そしてイランでテロ事件が発生しました。テロの恐怖は世界に拡散しています。
こうした時代に東京オリンピック・パラリンピックを3年後に控える我が国にとって、テロ対策の強化は待ったなしであります。テロを未然に防止するため、国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と連携を強めていく。今回成立したテロ等準備罪処罰法は、そのために必要なものであります。
今後、通常国会での審議、様々な御指摘などをしっかりと踏まえながら、本法を適正に運用し、国民の生命と財産を守る、そのことに万全を期してまいります。
天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立いたしました。
国民の皆様の理解の下、衆参両院の議長、副議長を始め、与野党の枠を超えた御協力をいただきましたことに改めて御礼を申し上げます。
今国会では、150日にわたった会期の間に政府が提出したほぼ全て、60本以上の法律が成立しました。
民法、刑法についてそれぞれの分野で1世紀ぶりとなる歴史的な改正が行われました。
衆議院の区割り法も成立し、一票の格差を是正するとともに、かねてからお約束していた衆議院定数の10削減が実現いたします。
改正福島復興特措法の下、原発事故により大きな被害を受けた福島の生業(なりわい)の復興を更に加速してまいります。
雇用保険法を改正し、4月から雇用保険料率の引下げを行いました。中小・小規模事業者の皆さんの負担を低減します。あわせて、本年の春闘では高い水準の賃上げが4年連続で実現していますが、これと相まって、働く皆さんの更なる手取りアップを図ります。
現在、有効求人倍率はバブル時代をも上回る極めて高い水準にあります。この春、高校や大学を卒業した皆さんの98%が無事就職を果たし、社会人人生をスタートさせました。これは調査開始以来最も高い水準であります。
雇用を増やし、所得を増やす。経済の好循環を更に力強く回転させていくため、これからも安倍内閣は経済最優先で取り組んでまいります。
その鍵は成長戦略の実行、構造改革の断行に懸っています。
今国会では、全農改革や酪農改革など、8本に及ぶ農政改革関連法の全てが成立いたしました。農業を魅力ある成長分野に変え、農家の所得アップを実現する。若者が夢や未来を託すことができる農政新時代を切り拓いてまいります。
岩盤のように固い規制や制度に風穴をあける、国家戦略特区法の改正案も成立いたしました。これまでこの制度を活用して、長年認められてこなかった一般企業による農地取得や学校教育に民間の知恵を取り入れる公設民営学校も解禁しました。千葉県の成田市では、国際的な医療人材の育成を目指し、38年ぶりの医学部新設が実現しました。
国会終盤では、国家戦略特区における獣医学部新設について、行政がゆがめられたかどうかをめぐり、大きな議論となりました。
獣医学部はこの50年以上新設が全く認められてきませんでした。しかし、今、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題となっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。
そうした時代のニーズに応える規制改革は、行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感をもって進めることは正に総理大臣としての私の意志であります。
当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入った、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事は全て公開しています。
むしろそうした透明で公平、公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。
半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます。
正に岩盤規制改革の突破口です。
しかし、この特区制度について、この国会では民進党の皆さんから、制度自体を停止する法案が提出されました。改革を後退させようとする発想であり、誠に残念でなりません。
岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。
しかし、私は絶対に屈しません。既得権と手を結ぶことも決してありません。今後とも総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃(やいば)となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく。その決意であります。
この国会では、長年実現してこなかった返還不要、給付型の奨学金制度を新しく創設する法律も成立しました。児童養護施設や里親のもとで育った子供たちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に既に運用を開始しています。
子供たちこそ我が国の未来であります。この通常国会は、正に未来を拓く国会となりました。どんなに貧しい家庭に育っても、希望すれば高校にも、専修学校、大学にも進学できる。子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる日本でなければなりません。
そして、若者も、お年寄りも、女性も、男性も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる一億総活躍の日本をつくり上げていかなければなりません。
その本丸は、あらゆる人にチャンスをつくることであります。
家庭の経済事情にかかわらず、高等教育を全ての子供たちに真に開かれたものにしていく。リカレント教育を抜本的に拡充し、生涯にわたって学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。これらに応えるため、当然、大学の在り方も変わらなければなりません。
人づくりこそ次なる時代を切り拓く原動力であります。
これまでの画一的な発想にとらわれない「人づくり革命」を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく。
そのエンジンとなる有識者会議をこの夏、立ち上げます。いわば「みんなにチャンス!構想会議」であります。そのための体制を来月中に整えます。
憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら、「人づくり革命」の実現に向けて、総合的かつ大胆な戦略を構想したいと考えています。
2週間後にはドイツでG20サミットが開催されます。米国、EUのほか、中国、ロシア、韓国など主要国の首脳が集まるこの機会を活用して、積極的な首脳外交を展開したいと考えています。
挑発をエスカレートさせる北朝鮮問題について、日米韓のがっちりとしたスクラムを確認したい。そして、来たるべき日中韓サミットの開催に向けて準備を本格化してまいります。
課題山積ではありますが、内政に、外交に、更に気を引き締めて全力投球してまいりますので、国民の皆様方の御理解と御支援をお願い申し上げます。
私からは以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様からの質問を頂きます。
質問をされる方は、所属とお名前を明らかにされた上で、お願いいたします。
初めに、幹事社の方からの質問です。どうぞ。
(記者)
幹事社の毎日新聞の高山と申します。よろしくお願いします。
先ほど、冒頭でもおっしゃいましたが、この通常国会では加計学園をめぐる問題や森友学園をめぐる問題などの論戦に注目が集まりました。加計学園の問題では、特に国会最終盤、文科省の再調査で総理の御意向と明記された文書の存在が確認される一方、内閣府の調査ではそういう発言や文書はなかったという調査結果が発表され、食い違いも見られました。
野党は閉会後もやっぱり説明を行うべきだと主張していまして、森友学園についても疑念はやっぱり払拭されていないんじゃないかと主張しています。この2つの問題について、もう十分、説明責任は果たされたという認識でいらっしゃいますでしょうか。また、先ほど説明を積み重ねるともおっしゃいましたが、どのように説明を果たしていきますか。
さらに、テロ等準備罪を新設する法案の審議では、与党は委員会審議を省略する中間報告という異例の手法を使って成立させました。当然、法案の審議が不十分だったという指摘もございます。国民の不安払拭に向けて、どう説明をこれからも果たしていくおつもりでしょうか。
この週末の各社の世論調査では10ポイント近く、内閣支持率も落ち込みました。そうした状況も踏まえて、以上の点、お答えいただけたらと思います。
以上です。
(安倍総理)
今、御指摘をいただいた問題については、国会において、政府として説明を重ねてきたところでありますが、残念ながら、必ずしも国民的な理解を得ることはできていない。率直に、そのことは認めなければならないと考えています。
テロ等準備罪処罰法は、テロ対策について国際的な連携を強化していく上において不可欠な法律であると考えておりますが、依然として国民の皆様の中に不安や懸念を持つ方がおられることは承知をしております。
しかし、改めてこの機会にもう一度、私からはっきりと申し上げておきたいことは、一般の方が処罰の対象となることはない。そしてまた、一般の方が被疑者として捜査の対象となることはないということは改めてはっきりと国民の皆様に申し上げておきたいと思います。
これらの法律を実施していくに当たって、国会での御議論なども踏まえて、適正な運用に努めてまいります。しっかりと適正に運用していく中において、今、私が申し上げたことについて、我々が申し上げていることは間違いなかった。そう確信していただけると、こう思っています。
国民の命と財産を守るための法律であります。国民の命と財産を守るために、万全を期していく考えであります。
また、森友学園への国有地の売却については、既に会計検査院が検査に着手をしており、政府としては全面的に協力をしてまいります。
国家戦略特区における獣医学部の新設につきましては、文書の問題をめぐって対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては、率直に反省しなければならないと考えています。今後、何か指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たしてまいります。国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては今後とも分かりやすく説明していく。その努力を積み重ねていく考えであります。
今国会の論戦の反省の上に立って、国民の皆様の信頼を得ることができるように、冷静に、そして分かりやすく、一つ一つ丁寧に説明していきたいと思います。
(内閣広報官)
それでは、幹事社からもう一問頂きます。どうぞ。
(記者)
幹事社のTBSの岩田と申します。
今後の内政の課題について、何点か伺います。
まず、東京都議選まで2週間を切りましたけれども、自民党総裁としては何を争点に戦って、どの程度の議席の獲得を目標とするお考えでしょうか。
また、憲法改正について、自民党は年内に原案をまとめる考えですけれども、そのあたりも見据えまして、夏に任期が切れる自民党の役員人事、さらには内閣改造については、タイミングも含めて、どのような方針で臨むお考えでしょうか。
さらに、自民党内には来年の通常国会で改憲を発議して、次の衆議院選挙と同時に国民投票を行うという案も浮上していますが、この国政選挙と同時に国民投票を行うということの是非も含めてお考えをお願いします。
(安倍総理)
東京都議会議員選挙は、あくまでもこれは地方選挙でありまして、現在、東京都民の皆さんが直面している様々な地域の課題、東京独自のテーマが争点になるものと思います。自民党においても、東京都連が中心となって都民の皆さんに地域に根づいた身近な政策をしっかりと訴え、一人でも多くの当選を目指してまいりたいと考えています。
いかに暮らしやすい東京をつくっていくか。安全な、そして子育てしやすい、すばらしい環境のある、そういう東京をどうやってつくっていくか。そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてどう都政を進めていくかということも議論になっていくのだろうと思います。
いずれにせよ、正に東京都民の皆様方における様々な課題が当然、争点になっていくのだろうと思います。
また、憲法改正については、自民党立党以来の党是であります。先日、自民党総裁としての私の考え方をお示ししました。これを受けて、党の憲法改正推進本部において既に衆参の憲法審査会に提出する具体的な改正案の検討が始まっています。その上で、自民党としての提案をいまだ国会の憲法審査会に提出をしていない段階でありまして、現時点においては、その後の発議などについて申し上げる段階ではないと考えています。
そもそも衆参両院の3分の2を形成すること自体がそう簡単なことではない、容易なことではありません。まずは、与野党を越えて、建設的な議論を行えるような、そうした自民党提案となるよう、中身の検討を優先したいと考えています。
さらには、アベノミクスの一層の強化、働き方改革、「人づくり革命」など、様々な重要政策において、大きな推進力を得るためには、人材を積極的に登用し、党においても、政府においてもしっかりとした体制をつくっていくことが必要であります。そうした観点も踏まえながら、党役員人事、内閣改造についてはこれからじっくりと考えていきたいと思っています。
(内閣広報官)
これからは幹事社以外の方から御質問を頂きます。
質問を御希望される方は挙手をお願いいたします。私が指名いたします。指名を受けましたら、改めまして、所属とお名前を明らかにして質問をお願いいたします。多くの方が質問を希望されていますので、お一人様一問でお願いいたします。
それでは、リンダ。
(記者)
ロイター通信のシーグと申します。
外交についてお聞きしたいのです。アメリカのトランプ大統領は、中国との間で当初の予想を上回る良好な関係を築き上げました。アメリカと中国の緊密な関係が日本に悪影響をもたらす懸念がありませんでしょうか。
(安倍総理)
日本に悪影響ですか。日本に悪影響。
(記者)
はい。悪い影響。すみません。
(安倍総理)
米中関係が進展すると日本が困るのではないかという指摘はよくあることでありますが、私は全くそうは考えていません。米中の首脳同士が信頼関係を築いて、緊密に協力していくことは世界にとっても私は、また、日本にとってもプラスであると考えています。
世界の様々な課題に、大国である中国、米国とともに取り組んでいかなければならないわけでありまして、これは例えば気候変動の問題もそうでありますし、様々な課題に、共に手を取り合って取り組んでいくことが今、世界で求められているのだろうと、そう思います。
例えば北朝鮮問題への対応であります。北朝鮮に対して最も大きな梃子(てこ)を有するのは中国であります。そのためにも、日米、日韓、日米韓で協力を進めるとともに、中国とも緊密に連携をしていく必要があります。そのために日本から中国にも働きかけますし、米中がいわば認識を同じくしていく。この北朝鮮の問題は世界的な脅威であるという認識を同じくして、そして、同じ方向に向かって進んでいくことがこの問題を解決していく上においても必要だろうと考えています。
中国に対しては、先般、楊潔篪(よう・けつち)国務委員が訪日をした際、私からも働きかけを行いましたが、米国があらゆるレベルで中国と連携して、北朝鮮に圧力をかけていくことは日本にとっても利益になると思います。
いずれにせよ、日本にとって日米同盟は外交安全保障の基軸であります。首脳レベル、大臣レベル、そしてあらゆるレベルにおいて意思疎通を密にして、そしてサプライズがないという関係をつくっていくことも大切であろうと思いますし、今はそういう関係をつくることができていると考えております。
米中間においても、日中間においても、それぞれの関係を発展させていくことが、日米両国ともにプラスになってくいという認識で、今後対応していきたいと思います。
(内閣広報官)
それでは、次の質問。原さん。
(記者)
NHKの原と申します。
加計学園の問題、森友学園の問題に戻らせていただきます。
国会で公文書の扱いが問題となりまして、日本維新の会は、公文書の保存を義務づける文書の範囲を拡大する法案を提出しましたし、民進党なり野党側も同趣旨の法案を出しています。
今回の問題を踏まえまして、公文書管理法の改正あるいは公文書の管理の在り方について、総理はどのようにお考えでしょうか。法改正に取り組むお考えはありますでしょうか。
(安倍総理)
公文書管理については、過去から現在、そして未来へと国の歴史や文化を引き継いでいくとともに、行政の適正かつ効率的な運営を実践し、現在と将来の国民への説明責任を全うする上においても、重要なインフラであると言ってもいいと思います。
今回の国会審議において、公文書の扱いについて様々な議論がありました。そうした中でこのことの重要性について改めて認識したところであります。政府としてはその重要性を踏まえて、各行政機関における公文書管理の質を高めるため、不断の取組をしっかりと進めていく考えであります。
(内閣広報官)
それでは、次の質問を頂きたいと思います。
では、島田さん。
(記者)
日本経済新聞の島田と申します。
成長戦略に関連してお伺いします。構造改革が思うようなスピードで進んでいないのではないかという指摘も少なくない中で、先ほどキーワードとして挙げられた「人づくり革命」をもって構造改革を加速させるためには、会議体の設置にとどまらず、担当閣僚を置くべきではないかという指摘もありますが、そのような考えはございますでしょうか。
また、成長戦略の観点からTPPなど通商環境の変化への期待も聞こえてまいります。目下、交渉中のEUとのEPA交渉について、7月のG20首脳会議の頃までに大筋合意をする考えはございますでしょうか。 TPP11についても例えば年内など、早期に合意可能だと見ていらっしゃいますでしょうか。あわせて将来的にアメリカがTPPの枠組みに戻る可能性は高いとお考えでしょうか。よろしくお願いします。
(安倍総理)
安倍内閣において、各省庁にわたる重要な国家的な課題、例えば、地方創生あるいは一億総活躍社会、そしてまた働き方改革、そうした政策を前に進めていく上において有識者会議を設けるとともに、担当の大臣がリーダーシップを発揮していく。そして、分かりやすく国民の皆様に発信していくことによって政策を推進することができたと考えておりますので、今回の「みんなにチャンス!構想会議」におきましても、人づくりを進めていく上においても考えていきたいと思っています。
また、通商戦略についてでありますが、日本は自由貿易によって高度経済成長を遂げてきたわけであります。国境を越えて物が行き交う、そして人が行き交うことによって、様々な知見が、あるいは経験が交わり、新しい知恵が生まれ、そして国際社会の荒波の中で競争する中において、技術は進歩してきたと言ってもいいと思います。正にこのダイナミズムこそが世界の繁栄や平和の礎だろうと思います。
そして、それは基本的な考え方として誰にでも開かれていなければならない。そして公正なものでなければならないと考えています。日・EUのEPA交渉は、正に21世紀にふさわしい自由で公正なルールをつくり上げる作業であります。現在、東京で詰めの交渉が行われておりまして、できるだけ早期に大枠合意を実現したいと思います。
TPPについては、アジア太平洋地域を発展させるために必要なルールは何か、参加国が長い時間を掛けて真剣に話し合ってきた結果が、正に成果として結実したものだと思っています。11か国は、この成果を何とか生かそうとする点で一致をしています。
来月、我が国が主催する高級事務レベル会合で、TPPの早期発効のための方策の本格的な検討が始まります。我が国は、議長国として各国と緊密に連携をし、スピード感をもって11月のAPEC首脳会合に向けた議論を前進させていきたいと思いますし、そのためにも日本がリーダーシップを発揮していかなければならない。その責任も感じております。
日米間においては、新たな経済対話を立ち上げました。日米でアジア太平洋のモデルとなるルール志向の枠組みをつくりたいと考えています。日本はあらゆる手段を尽くして自由でルールに基づく公正なマーケットを世界に広げていく、これからも自由貿易の旗手としてリーダーシップを発揮していく考えであります。
(内閣広報官)
それでは、最後の質問にさせていただきます。
では、西垣さん。
(記者)
フジテレビの西垣です。よろしくお願いいたします。
北方領土問題についてお伺いします。平和条約締結交渉と。先般の山口、東京での首脳会談から半年たちましたが、当時言っていた元島民の方の初の航空機による墓参というのは、昨日、今日とこれは天候の関係で今は中止となっているわけで、手続が進んでいるという部分もあるかもしれません。
一方で、共同経済活動は、現地での実地調査など、そういった具体的な北方四島にという手続が滞っているように見えるわけなのですけれども、この現状と、今後これを進めていくための首脳会談を交えた何らかの手法、見通しについて、お伺いします。
(安倍総理)
昨年12月の長門における日露首脳会談、プーチン大統領との間で合意した事項については、次々と今、実現に向かって進んでいると思います。
今、御質問があった、航空機による特別墓参であります。これは島民の皆さんも御高齢になって、飛行機で行ければという強い思いがある中において、ロシア側もこれは了解したところでありますが、昨日か今日のいずれかに実現する予定でありましたが、国後島の空港が濃霧で航空機が着陸できないため、残念ながら延期となってしまいました。今後、元島民の方々と御相談しながら、天候の許す、できるだけ早い時期に墓参を実現したいと考えています。
また、共同経済活動については、先月、官民調査団がサハリンを訪問しました。そして、サハリン州知事を始めとする関係者と詳細な協議を行うなど、準備を進めてきています。今月下旬に官民の調査団が、北方領土を訪問し、現地調査を行う予定であります。前回はサハリンでありましたが、今度は北方四島の現地調査を行います。日露双方で関心の高い漁業や観光といった分野でプロジェクトが具体化できるよう、有意義な現地調査を行いたいと考えています。
プーチン大統領とは、7月上旬のG20サミットの際に首脳会談を行うことで一致をしております。これまでの進展を踏まえて、プーチン大統領と率直な意見交換を行い、今までの信頼関係の積み重ねの上に議論を進めていきたいと思いますが、特別墓参や共同経済活動の実現に向けて弾みを与え、平和条約締結に向けたプロセスを前進させたいと考えています。
(内閣広報官)
皆様、ありがとうございました。
以上をもちまして、記者会見を終了いたします。御協力に感謝申し上げます。
(安倍総理)
どうもありがとうございました。